No.047 アロマが脳波と瞑想にもたらす効果

これまではアロマセラピーについての抗不安効果が世界的権威のある学術誌で取り挙げられ (*1)、抗ストレス効果やリラクゼーション効果もエビデンスが示されていることを紹介しました(*2)。


今回もアロマに関する研究ですが、アロマオイル/エッセンシャルオイルが脳波にどのような影響をもたらすか、という点について科学的な知見を解説していきます。

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最初の研究は「The Effects of Lavender Oil Inhalation on Emotional States, Autonomic Nervous System, and Brain Electrical Activity(ラベンダーオイルの吸入が感情状態、自律神経系、脳の電気活動に及ぼす影響、*3)」というタイトルで、タイ・バンコクの大学から発表されたものです。

研究の対象としては、標準的な体型(BMI: body mass indexが20前後、一般的に18.5〜25が普通体重)の人、嗅覚異常や重病歴の無い人、年齢が18歳〜35歳(平均23.3歳)、男女10人ずつ計20人が選ばれました。

用いたアロマ(エッセンシャル)オイルはラベンダーオイル(Lavendula angustifolia: 真正ラベンダーとも呼ばれる*4)で、希釈用のオイルとしてはスイートアーモンドオイルが使用されました。スイートアーモンドオイルとは、良い香りがしそうな名前ですが、無臭でありエッセンシャルオイルを希釈するためのキャリアオイルとして一般に使用されるものです(*5)。ですので、ラベンダーオイルの効果と比較するための無臭のオイル(対照/コントロール)として使用されたものと考えてください。

アロマの投与方法は、参加者に酸素マスクのようなマスクを着用してもらい、そのマスクに酸素の代わりに10%希釈したラベンダーオイル1mlの気化した空気を流して吸入してもらいました。
自律神経系(ANS: autonomic nervous system)の評価として、血圧、心拍数、皮膚温度、呼吸数が記録されました。

気分(emotion) の評価としてはGEOS (Geneva Emotion and Odor Scale, *6)という“匂いと気分”に関する国際的評価基準が用いられました。
気分の評価方法は、前回も紹介したVAS (visual analogue scale: 下図)スケールという10cmのバーの任意の場所(0:Min〜10:Max)に印をつけてスコア化する手法が用いられました。気分の種類は、快い感情(気分が良い feel good)、不快な感情(気分が悪いfeel bad)、不快な uncomfortable、嫌悪感 disgusted、イライラ frustrated、ストレスを感じる stress、官能性(ロマンチックな romantic)、 リラクゼーション(リラックス relax、穏やか calm、眠いdrowsy)とリフレッシュ(リフレッシュfresh、元気active)という各項目がスコア化され解析されました。

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脳波測定(EEG: electroencephalography)については国際的な10-20システムという標準化された方法に基づいて計測されました(Figure 3, *7)。電極の分布は前頭葉(F: frontal)、側頭葉(T: temporal)、後頭葉(O: occipital)、頭頂葉(P: parietal)、中央部(C: central)が全体的に網羅されています。

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最初の自律神経状態(ANS)と気分の評価の実験セッションは3つのパートで構成されました。

I-1)安静時(rest)測定(10分間):10分間何もせずにリラックスし、その間の自律神経状態(ANS)の計測、終了時の気分状態の評価(参加者の自己評価)を計測。

I-2)スイートアーモンドオイル(SO)吸入実験(20分間):無臭のキャリアオイルであるスイートアーモンドオイルのみを吸入してもらい、その間の自律神経状態の計測、終了時の気分状態の評価(参加者の自己評価)を計測。

I-3)ラベンダーオイル(LO)吸入実験(20分間):ラベンダーオイルを無臭のSOで10%濃度で希釈したオイルを吸入してもらい、その間の自律神経状態の計測、終了時の気分状態の評価(参加者の自己評価)を計測。


続いて脳波測定(EEG)実験は初回実験から7日後に4つのパートに分けて行われました。
II-1)開眼時の脳波測定(7分間)
II-2)閉眼時の脳波測定(7分間)
II-3)スイートアーモンドオイル(SO 100%)のみ吸入して脳波測定(7分間)
II-4)ラベンダーオイル(LO: 10%濃度、90% SO)を吸入して脳波測定(7分間)
まず自律神経状態(ANS)の結果はどうだったかというと、Figure 4に示すような結果となりました。各条件(rest, SO, LO)の計測値が記されていますが、右から2列目を見ると安静時とSO吸入時の比較(rest vs. SO)が示されていて、p-valueが小さいほど統計学的に差があると言えます。

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こうして見るとSO吸入時でも心拍数(Heart rate)と呼吸数(Respitatory rate)で明らかに低下していることが示されています(下線部)。
また、Figure 4の一番右側の列にはSOのみ吸入した状態とラベンダーオイルを吸入した状態の比較(SO vs. LO)が示されています。これを見ると、SOの時よりもさらに収縮期血圧(SBP, p<0.001)、拡張期血圧(DBP, p<0.001)、心拍数(HR, p<0.001)、皮膚温(ST, p=0.001)において統計学的に明らかな変化が起こっていることが分かります(下線部)。自律神経の反応からも、ラベンダーオイルによって血圧低下や心拍数の減少といったリラクゼーション反応がもたらされていることが数値に表れています。


次に気分の変化の解析結果ですが、Figure 5のような結果となりました。
こちらも解説していきますが、右から2列目が安静時とスイートアーモンドオイル(SO)吸入時の比較(rest vs. SO)です。下線部が統計学的に有意差がある項目ですが、青色の下線部分は「気分が悪い方へ変化している」ことを示しています。SO単独吸入によってGood(気分が良い):低下、Bad(気分が悪い):上昇、Drowsy(眠気):上昇、Fresh(リフレッシュ):低下、という変化でした。これはスイートアーモンドオイルが不快な匂いがするわけではないと思いますが、言ってみれば、「ただのぬるい味のない水を飲んだ時」を想像してもらえると、あまり心地良くない気分が理解しやすいのではないかと思います。

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これに対してFigure 5一番右側の列、SOのみ吸入時とラベンダーオイル吸入時の比較(SO vs. LO)に着目すると、"Good"、"Active(活動的)"、"Drowsy(眠気)"、"Fresh"、"Relax(リラックス)"の6項目において明らかに差が出ており、いずれも良い方向に変化していることが示されています(赤下線部)。


そして脳波の解析をFigure 6に示します。
Figure 6左側を見るとシータ波(Theta)アルファ波(alpha 1, alpha 2)、ベータ波(beta)といった脳波ごとのパワーが部位別に並べられています。右から2列目のSO単独吸入時ではほとんど変化なし、あるいは低下した(青下線部)、1箇所のみ上昇した部分(赤下線部)が見られましたが、一貫した傾向は特に見られません。
これに対してFigure 6一番右側の列を見ると、ラベンダーオイル吸入時にシータ波、アルファ1波、アルファ2波、において脳全領域でパワーが増強していることが分かります(赤下線部)。これは非常に分かりやすい変化で、誰がどう見てもラベンダーオイル吸入によって脳波に明らかな変化がもたらされていることが分かるデータとなっています。

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この研究論文で公表されている脳波画像ではFigure 7(アルファ波解析結果)のようになりますが、これを見ても通常の閉眼時、SO吸入時、ラベンダーオイル吸入時の違いは一目瞭然です。
ちなみにSO条件でもLO条件でもベータ波には明らかな変化は見られませんでした。


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この研究結果から、「ラベンダーオイルは吸入するだけで、気分の落ち着き・リラクゼーション効果が得られ、その効果は自律神経の調節にも良いリラックス作用をもたらし、脳波では脳全体のアルファ波、シータ波の増強・活性化を促す」ということが言えるようです。


続いて最近の脳波とアロマに関する研究をもう一つ紹介します。タイトルは「Effects of inhaling essential oils of Citrus limonum L., Santalum album, and Cinnamomum camphora on human brain activity.(レモン、サンダルウッド、クスノキのエッセンシャルオイル吸入がヒトの脳活動に及ぼす影響, *8)」という研究で2023年、つい最近日本から報告された新しい研究です。

端的に実験概要を説明すると、24名の健康的な男性被験者(平均年齢21.8歳)に一定のデスクワーク(パソコン作業)を行わせ、その作業ストレス付加時にアロマオイルを吸入し、作業効率や脳波にどのような影響が現れるか、というものです。
与えられたタスク(パソコン作業)は“2-back作業記憶タスク(*9)”というもので、“文字が1文字ずつ表示され、○個前と同じ文字が現れたら一定の操作を行う”という“単純な認知と判断を繰り返す作業”です。

アロマオイルはアゴに固定されたコットンに各エッセンシャルオイル [レモン、サンダルウッド、クスノキ、シャム (後述) ] を塗布して吸入されました。シャム(sham)とは“見せかけのもの”といった意味でここでは“アロマオイルを含まない溶媒だけの液体”を指します。具体的にはジプロピレングリコール(DPG, *10)という化粧品等によく使われる溶媒で、先の実験のスイートアーモンドオイルのような役割と言えます。
実験の流れは以下の通りです。
1. 安静(1分間): 参加者は目を開けたままリラックス。
2. 吸入前タスク(2分間): 文字 2-back 作業記憶タスクを実行。
3. アロマ吸入(2分間):仕事休止、エッセンシャルオイル吸入。
4. 吸入後タスク(2分間): 再度文字 2-back 作業記憶タスクを実行。
各期間で脳波が計測され、この研究でも国際的な10-20システム(*7)に基づいて計測されました。

結果の方ですが、まず被験者らのアロマに対する好みはFigure 8左のようになりました。レモン/サンダルウッド/クスノキの中ではレモンが一番好まれる結果となりました。20歳頃の男性からすると最も馴染みがあって人気なのは予想通りかもしれません。

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次に2-back作業記憶タスクの効率を示したのがFigure 8右に示されています。“d'スコア”というのは高いほど仕事の正確性や正答率が高く、3種のアロマ+対照の中では「レモンオイル吸入後が有意にd'スコアが高かった」という結果になりました。

脳波の解析結果はFigure 9のようになりました。この図は脳波信号[デルタδ波 (0.5 ~ 4 Hz)、シータθ波 (4.5 ~ 7.5 Hz)、アルファα波 (8 ~ 12.5 Hz)、ベータβ波 (13 ~ 30 Hz)、ガンマγ波 (30.5 ~ 40 Hz)]を解析し、有意に強くなった部位を赤で示し、その部位を平均的な脳MRI画像に投影したものです。
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この結果(Figure 9左側)を見ると、シャム(溶媒のみ)でもアルファ波、シータ波、デルタ派において前頭葉の一部に活性化が見られるようです。過去の紹介記事(*2)でもあったように「ただ大きく深呼吸するだけでも一定のリラックス効果が得られる」ということかもしれません
Figure 9中央はレモンのエッセンシャルオイル吸入後0-30秒、30-60秒の脳波を解析したものです。レモンの場合は開始後30秒以内に前頭葉の広い範囲でアルファ波、シータ波、デルタ波の活性化が見られることが分かります。ここでは省略していますが、120秒後までアルファ波の増加が見られたことが確認されています。

Figure 9右側はサンダルウッド吸入後の脳波の変化です。サンダルウッドの場合は吸入後60-90秒後に前頭部でベータ波とガンマ波の増加が見られました。クスノキのエッセンシャルオイルはこの実験では脳波における有意な変化は見られなかったとのことです。



今回紹介した2つの研究の要点は以下のようになります。
・ラベンダーオイルは気分を落ち着かせ、ポジティブに変化させる
・ラベンダーオイルは自律神経も安定させ、整える効果がある
・ラベンダーオイルは脳全域でシータ波、アルファ波を増強させる
・レモンオイルは記憶作業タスクのパフォーマンスを向上させる
・レモンオイルは吸入後速やかに前頭葉中心にアルファ波/シータ波/デルタ派を増強させる
・レモンオイルはアルファ波の増強を長く持続させる
・サンダルウッドは前頭葉でベータ波/ガンマ派の増強が見られた
ここで脳波の種類について簡潔に説明します(*11)。周波数は先の研究(*8)に従っていますが、細かい範囲は文献により異なりますが大きくは違わないので気にしないでください。

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・デルタδ波 (0.5 ~ 4 Hz):徐波睡眠、ノンレム睡眠(*12)、深い眠り、深い瞑想
・シータθ波 (4.5 ~ 7.5 Hz):半覚醒、想像、瞑想、記憶形成
・アルファα波 (8 ~ 12.5 Hz):知覚鋭敏、集中、高効率、学習、冷静
・ベータβ波 (13 ~ 30 Hz):覚醒、精神活動、葛藤、問題解決、判断
・ガンマγ波 (30.5 ~ 40 Hz):神経同期、並行情報処理、感覚結合
まだ未知の部分もありますが、大まかに説明して上のように覚えてもらって良いと思います。この中で一般的に瞑想時の脳波としてはシータ波やアルファ波が多いとされています。より深い深層意識を使う時はデルタ波などとも言われています。対して、日常の意識はベータ波が優位とされており、特に瞑想など日頃意識してない人はほぼベータ波が支配的と考えて良いでしょう。


こうして今回紹介した研究を振り返ってみると、ラベンダーオイルやレモンオイルは吸入して短時間のうちに脳波に変化をもたらし特にシータ波やアルファ波を増強させることができます。それはつまり、「吸入して短時間で瞑想に適した脳波状態へと誘導してくれる」効果があると言えます。

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アロマオイル、特に質の良いエッセンシャルオイル(精油)は不安症状や抑うつを改善するだけではなく、気分をポジティブな方向に変化させリラクゼーションや活力を与えてくれます。それは精神的な気分だけではなく、血圧/心拍数/体温といった自律神経の緊張状態も解きほぐしてくれます。
さらに今回の2つの研究で示されたように「アロマオイルはその香りを嗅ぐだけで即座に脳波を切り替える」ことができます。「気分を良くさせ、自律神経を介して身体のリラックスをもたらし、アルファ波やシータ波を高める」これは瞑想をする上では使わない手はありません。職場で集中して作業効率を上げたい時はレモンオイル、ゆったりした気分で部屋で深い瞑想を行う時はラベンダーオイルなどと使い分けてみるのも良いですね。もちろん他にも数多くのエッセンシャルオイルが入手可能ですし、香りは個人によって感受性(好き嫌い/合う合わない)も様々なので、いろいろと試してみるのが良いと思います。ちゃんと科学的根拠も示されたので、瞑想の効果を高めるために是非使ってみてください。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/na9b1dcba056e
*3. Sayorwan W, et al. The Effects of Lavender Oil Inhalation on Emotional States, Autonomic Nervous System, and Brain Electrical Activity. J Med Assoc Thai 2012; 95 (4): 598-606, 2012
*4. 真正ラベンダー Lavandula angustifolia-エルバエルヴェティカ日本総代理店HP
 https://www.esters.co.jp/plants/エッセンシャルオイル-d-l/lavandula-angustifolia-真正ラベンダー/
*5. キャリアオイル−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/キャリアオイル
*6. Chrea C, et al. Mapping the semantic space for the subjective experience of emotional responses to odors. Chem Senses 2009; 34: 49-62.
*7. 10–20 system (EEG)- Wikipedia. https://en.m.wikipedia.org/wiki/10–20_system_(EEG)
*8. Ueda K, et al. Effects of inhaling essential oils of Citrus limonum L., Santalum album, and Cinnamomum camphora on human brain activity. Brain and Behavior 13.2 (2023): e2889. doi: 10.1002/brb3.2889
*9. Nバック課題−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/Nバック課題
*10. ジプロピレングリコール(DPG)−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ジプロピレングリコール
*11. Sowndhararajan K, et al. Influence of Fragrances on Human Psychophysiological Activity: With Special Reference to Human Electroencephalographic Response Sci. Pharm. 2016, 84, 724–751; doi:10.3390/scipharm84040724
*12. レム睡眠/ノンレム睡眠−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/レム睡眠#ノンレム睡眠
画像引用
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No.046 アロマセラピー/アロマヒーリングの疲労回復・リラックス・抗ストレス効果に対するエビデンス

前回はアロマセラピーについてその科学的・医学的根拠があるかどうかについて研究論文を紹介しました(*1)。その結果は「かなりエビデンスレベルの高い研究で抗不安効果や抗抑うつ効果が得られた」ということが示されていました(*2)。

アロマオイルは現在日本では医薬品としては扱われていませんが、医学的に精神症状に何らかの効果があることは事実のようです。アロマオイルやエッセンシャルオイルの説明に「○○に効果がある」というような昔から伝わる効果効能をよく見かけますが、これらは“まじない”や“気休め”というわけではなく実際に効果があることが21世紀になってようやく証明され始めたことになります。

今回もアロマセラピーに関する医学的・科学的な目線で行われた精度の高い研究を紹介していきます。
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一つ目は「The Effect of Aromatherapy Inhalation on Fatigue Level in Individuals Undergoing Hemodialysis Therapy(血液透析患者の疲労感に対するアロマ吸入の効果、*3)」という研究です。これは2017年に公開されたトルコからの研究論文です。

目的はタイトル通り、疲労感や倦怠感の症状がある患者さんに対してアロマ(エッセンシャル)オイルの吸入がどのような効果をもたらすか?という内容です。対象者としてはある血液透析センターで透析治療中の105人の協力を得て行われましたが、最終的に条件(18歳以上、疲労症状あり、アロマに対するアレルギーなし、等)を満たす50人に絞られました。
この50人はランダムにアロマセラピー群と対照群に25人ずつ振り分けられた、いわゆる「ランダム化比較対照研究」というエビデンスレベルの高い研究デザインになっています。

疲労感/倦怠感の評価としては「Brief Fatigue Inventory(簡易倦怠感尺度, *4)」という10項目アンケートがあり、これによって疲労感がスコア化されました(例:「対人関係に支障がありますか?0:全く支障なし〜10:完全に支障があった」)。
もう一つの方法はVAS (visual analogue scale)というものです。これは下図のように0〜10までの範囲を表す一本の直線があり、そこに自分が感じる倦怠感を任意の場所に記入するものです。例えば、0(全く感じない)〜10(最大の疲労感)の間で自分が感じる疲労感を自由に表すことができます。数字でなくアナログで無段階に表現できることがこのVASスケールの長所です。また、「疲労・倦怠感」以外にも「痛み」「不安」といった「測定が困難なもの」の評価にも使用できるメリットがあります。

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アロマセラピーの方法は、ボウルにお湯200ccを入れてそこに調合されたアロマオイルを3滴たらし、30cmの距離で5分間吸入が行われました。アロマオイルの内容はラベンダーとローズマリーのエッセンシャルオイルを同じ比率で配合したものを用い、治療中は周囲を布で覆ってアロマの効果を最大限に得られるように工夫されました。
対する比較対照群ではアロマオイルの代わりにほぼ無味無臭のヒマワリ油が用いられました(ヒマワリ油は香りがほとんど無いためエッセンシャルオイルを希釈するキャリアオイルとしても使われます)。いずれのグループも週3回の透析時に各5分のセッションが行われ、その前後で疲労感/倦怠感の評価が行われました。
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結果はFigure 3に示した通りになりました。Fatigue Inventoryのスコアを見るとアロマ群(Intervention group)では42点から19点へとスコアの減少(倦怠感の改善)が見られました。また、VAS Fatigue (倦怠感のVASスケール評価)でも約7点から約3点へと改善しています。

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分かりやすくグラフ化するとFigure 4のようになります。それぞれのグラフの左側がアロマ群、右側が対照群となりますが、アロマ群の方が倦怠感スコアが大きく減少していることが分かります。p=0.001, 0.002というのは「偶然でこのような差が出る確率」を示しており、「偶然でこのような差が出る確率は0.1%」つまり「統計学的に明らかな改善」と言えます。

対して対照群の方は減少していても差が僅かでありp=0.71, 0.55という結果が出ていてこれは「偶然で差があるように見える確率が55%〜71%」という意味であり、「統計学的に有意な差は無し」ということを表しています。

この研究結果からは、「吸入によるアロマセラピー/アロマヒーリングでも明らかな疲労・倦怠感の改善効果が得られた」というエビデンスが示されました。大量に体に塗らなくても、数滴のエッセンシャルオイルでも効果が得られるというのはとても有益な情報ですね。

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続いてもう一編の研究を紹介します。次は「Effects of aromatherapy essential oil inhalation on the stress response after exposure to noise and arithmetic subtraction stressor: randomized controlled trial.(騒音/計算ストレス刺激後のストレス反応に対する吸入アロマセラピーの影響: ランダム化比較試験, *5)」という研究でこちらは2018年に韓国から公表された研究論文になります。

この研究の概要は、健康な被験者に能動的にストレスを与え、そのストレス反応に対して吸入アロマセラピーがどのような効果をもたらすかを調べるというものです。

対象者は20〜35歳の成人男女で、嗅覚に異常がないことが参加条件とされました。 
実験参加者に与えられるストレスは、最初にヘッドホンを装着しホワイトノイズ(*6)を3分間聞かされます。ホワイトノイズとは「サー、、、、、」という一定の雑音のことで、一般的には不快な雑音の一つです。そして、その後「6135から17ずつ引き算を繰り返す」という計算を2分間繰り返すよう指示されます。

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ストレスの指標は5項目測定されました。

1)ストレス指数(Stress Index)
これは自律神経反応(balance of ANS:autonomic nervous system) による5分間の心拍数の変動(Heart Rate Variability, Figure 6 left, *7)がストレスの指標となることも知られており、これをFigure 6 rightのような機器を用いて解析し、ストレス指数を算出します。1〜10の数値で表され、高いほどストレスが大きいことを意味します。

2)低周波活動(Low Frequency Activity)
これは交感神経の指標として上記と同様に5分間心拍数の変動(HRV)から算出され、数値が高いほどストレスが大きいことを示します。

3)血清コルチゾール濃度
コルチゾールはストレスで誘発されるストレスホルモンの一つですが、日内変動(時間帯によってもホルモン分泌量が変化する)があるため、変動の少ない午後4時〜午後7時の間に実験・血液採取が行われました。

4&5)血圧(収縮期血圧:SBP、拡張期血圧:DBP)
ストレスがあると血圧が上がる」と一般に言われますが、この項目もストレスが加わると上昇します。この値も解析に含まれました。

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グループ分けと処置の内容

i)アロマグループ
ストレス負荷後にこのグループの被験者らはエッセンシャルオイル(ラベンダーオフィシナリスLavandular officinalisとカナンガオドラタCananga odorata)をアロマストーンの上に2滴たらし、鼻から10cmの距離に置いて10分間吸入を行いました。

ii)プラセボグループ
このグループはストレス負荷後にアロマグループと同様に吸入を行いましたが、エッセンシャルオイルの代わりに生理食塩水(無香無臭)が用いられました。

iii)コントロールグループ
このグループはストレス負荷後に吸入は行わず、ただ10分間安静にしていました。

参加者はこれら3つのグループに完全にランダムに振り分けられ、最終的にアロマグループ33人、プラセボグループ31人、コントロールグループ31人がデータ解析まで行われました。この研究も「ランダム化比較対照実験」というエビデンスレベルの高いデザインで行われました。


結果をFigure 7に示しますが、このままでは難しいので順に説明していきます。
左側にStress Index, LF activity (低周波活動)など5項目あり、その隣にT0, Ts, T10等記載されていますが、これらは時間を表します
T0: 実験前、Ts:ストレス負荷時、T10:実験(処置開始)から10分後、T30: 実験(処置開始)から30分後、Difference T10-Ts: T10からTsのデータを引いた値、Difference T30-Ts: T30からTsのデータを引いた値、を表しています。

右側に統計学的な値が示されていますが、このPの値が小さいほど(一般的にP<0.05)“統計学的に明らかに差がある”ことを示しています。そして分かりやすいように0.05以下の数値に赤い下線をつけていますので、「赤い下線がある項目は全て有意差がある」と考えてください。

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上部のストレス指数(Stress Index)を例として見てみると、被験者がストレスを受けた後に処置(アロマ等)開始10分後の値(T10)と30分後の値(T30)でストレス指数に有意差(p<0.001)が出ているのが分かります。

そして、どの程度ストレス指数が減少したかの指標であるDifference T10-Ts, Difference T30-Tsの値もアロマグループがプラセボ(生理食塩水吸入)グループやコントロール(吸入無し)グループよりも大きく減少していることが示されています(p=0.013, p=0.013)。

数字だけでは分かりにくいという人のためにFigure 7のストレス指数の部分をグラフにして可視化してみました(Figure 8)。このグラフでは緑がアロマグループ、青/紺色がプラセボとコントロール(対照)グループを表しています。このグラフでは特に差分(T10-Ts, T30-Ts)グラフを見るとアロマグループのストレス減少作用が大きいことがよく分かります。

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同じようにFigure 7の表において、ストレスの交感神経活動の指標となるLF activity、ストレスホルモンのコルチゾール濃度、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)をそれぞれ見てもらうと赤い下線のある項目はそれぞれグループごとに有意差があることが分かります。自律神経制御作用、リラックス効果、血圧低下作用などストレスに関係する多くの項目においてアロマ(エッセンシャル)オイルの吸入が有意に数値を改善したことが科学的に実証されました。

面白いのは、ストレスホルモンのコルチゾールの濃度ですが、アロマグループとプラセボ(生理食塩水)グループで同じくらい改善しています(アロマ:-1.93、プラセボ:-2.01、コントロール(無処置):-0.62)。他にもよく見るとアロマ群ほどではないですがプラセボ群もコントロール群よりストレス改善傾向が見られます。これは“ゆっくりと大きく深呼吸する”だけでもストレス改善効果が得られているのかもしれません
アロマオイルを大きくゆっくりと吸い込むことは、エッセンシャルオイルの香りと成分を吸い込むと同時に“深呼吸によるリラックス効果”で一石二鳥のヒーリング効果を得ていると考えられます。

結論としてこの研究では「若い健常な成人男女をストレス環境に置き、アロマ群とプラセボ(生理食塩水)群とコントロール(無処置)群に無作為に振り分けてストレス反応を観察したところ、アロマ群において他の群よりも有意なストレス指標の改善効果が観察された」とまとめることができそうです。



それでは小難しい話はここまでにして、実際に知って得するエッセンシャルオイルの話をしていきます。
・ローズマリー Rosemary
最初の疲労回復の研究で用いられたエッセンシャルオイルで、ローズマリーは地中海沿岸が原産のようです(*9)。私も知らなかったですが、バラ(Rose)とは関係なくシソ科の植物のようです。甘みのある爽やかな香りを持つため、肉料理の匂い消しの香草/ハーブとしてよく知られています。
ポリフェノールを含むことから、抗酸化作用や美肌効果などが期待されると言われています。薬効としては抗菌効果や感染予防効果もあるとされ、これらのハーブを酢にして体に塗り感染予防したという記載もありますがエビデンスあるかどうかは分かりません。古くは魔除けや浄化の効果の言い伝えもあるようです。

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・ラベンダー Lavandular officinalis
今回の記事では最初の倦怠感改善の研究、2つ目のストレス低減/リラクゼーションの研究、どちらでも使用されたエッセンシャルオイルです。Lavendular officinalis とありますが、Lavendula angustifoliaと同義でさまざまな亜種がある中の“真正ラベンダー”という位置付けのようです。花は皆さんもよくご存知と思いますが、“ラベンダー色”というのが一般名詞になるくらい有名な独特の紫色の花を咲かせます。

ラベンダーの語源では疲れや関節をほぐすために入浴時に使われたラテン語の「洗う:lavo, lavare」に由来するという説や中世ラテン語の「青みがかった:lavindula」に由来するという説などあるようですが、ラベンダーの疲労回復効果やリラックス効果が中世から知られていたとしたら凄いことですね(*10)。

他にも効果効能としては、不安・不眠・うつ症状の改善、鎮痛作用、健胃作用、防虫殺菌効果などさまざまな効果が言い伝えられています。ハーブ/薬草としては万能薬としての位置付けでもあるようです(*11)。今までは「古くからの言い伝え/おまじない」程度にしか認識されていなかったかもしれませんが、今回の研究のように科学的なエビデンスによって効能が実証されつつあります。

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・Cananga odorata (イランイラン:Ylang-ylang)
カナンガ・オドラタと言われても聞いたことがない人も多いかもしれませんが、イランイランと聞くと多くの人が知っていると思います。熱帯地方に生息する樹木でFigure 11にあるような黄色い大きな花を咲かせます(*12)。

この花から採れた精油はイランイラン油と呼ばれ、ストレスを軽減させたりイライラした感情を沈める作用があることからアロマオイルでもよく用いられます(*13)。今回の研究では2つ目のストレス軽減実験で使用されたエッセンシャルオイルですが、この研究にふさわしいオイルだったと言えます。
お風呂上がりや寝る前にリラクゼーションを得るためにも良いですし、集中して読書したり、ストレスでイライラした気持ちを落ち着かせたいときにちょうど良いアロマオイルと言われています。

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今回は前回に引き続きアロマセラピーの最近のエビデンスを掘り下げてみました。ランダム化比較試験という信頼性の高い手法で出されたエビデンスで裏付けられたデータがあるので、アロマセラピーやヒーリングに疑問を抱いていた人達はこれらの科学的効果を信じて安心して受けて良いと思います。


今回紹介したラベンダーやローズマリーを使ったアロマセラピー/ヒーリングなど、科学的な根拠に基づいて知り合いに勧めることもできるでしょうし、まだ受けたことのない人は自身でその効果を体感してみると良いと思います。また、イランイランやローズマリーを使用したアロマキャンドルなども自宅で気軽にリラクゼーションや抗ストレス効果を得るのに良いと思われます。もちろん、瞑想をやる時も気持ちを落ち着かせ心身ともにリラックスさせてくれるアロマは効果的なのでぜひ様々なエッセンシャルオイルを試してみてください。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/na9b1dcba056e
*2. Wilkinson MS, et al. Effectiveness of Aromatherapy Massage in the Management of Anxiety and Depression in Patients With Cancer: A Multicenter Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol 25:532-539. 2007
*3. Bicer S and Demir G. The Effect of Aromatherapy Inhalation on Fatigue Level in Individuals Undergoing Hemodialysis Therapy. International Journal of Caring Sciences 2017, 10 (1) 161-168.
*4. Mendoza, TR, et al. The rapid assessment of fatigue severity in cancer patients, use of brief fatigue inventory. Cancer 1999; 85: 1186-1196.
*5. Bae I, et al. Effects of aromatherapy essential oil inhalation on the stress response after exposure to noise and arithmetic subtraction stressor: randomized controlled trial. Int J Clin Exp Med 2018;11(1):275-284
*6. white noise- wikitionary. https://en.wiktionary.org/wiki/white_noise
*7. Heart Rate Variability-Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Heart_rate_variability
*8. Canopy9 series-IEMBIO. http://iembio.com/
*9. ローズマリー−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ローズマリー
*10. ラベンダー−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ラベンダー
*11. 真正ラベンダー−aromanet-jp.com, https://www.aromanet-jp.com/セルフケア/lavandula-angustifolia/
*12. Cananga odorata- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Cananga_odorata
*13. イランイランノキ−武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
https://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno170.html
画像引用
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No.045 アロマセラピー/アロマヒーリングって科学的根拠あるの?

今回はアロマについて取り挙げてみます。アロマオイルやエッセンシャルオイルは香りで部屋を満たし、気分を変えたりリラックスするのに役立ちます瞑想においても香りは五感の中で重要な要素です。焼き魚の匂いやカレーの匂いの中で瞑想に集中できる人は少ないですが、イランイランやラベンダーなど部屋の香りを変えることでリラックスしたり集中効果を高めることもできます。


アロマオイルを使ってリラクゼーションあるいは何らかの症状改善効果があるとされるアロマセラピー/アロマヒーリングという施術も行われています。もちろん日本国内で医療行為としては認可されていませんが、精神的または身体的なリラックス効果などが期待されて実施されています。アロマセラピーの資格も存在し(*1, *2, *3)、引用した以外にも大小様々な団体がそれぞれのアロマセラピーの資格認定を行っています。このアロマセラピー/ヒーリングというものが心身に及ぼす影響に科学的な根拠があるのか?という点について掘り下げていきたいと思います。

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基本的な部分ですが「アロマ:aroma」とは英語で「芳香・香り」を意味しますが、ギリシア語・ラテン語に由来しており、ラテン語でaromaは「香料」という意味があるようです(*4)。

使用されるオイルはエッセンシャルオイル(精油)とアロマオイルに分けられ、エッセンシャルオイルとは植物(花・葉・果皮・果実・樹皮、等)から抽出した天然の素材で芳香成分を高濃度に抽出したもの(*3)とされているようです。これに対してアロマオイルとは天然成分以外にもアルコールや合成香料など人工的な成分も加えられたものを含むようです(*5)。アロマセラピーには一般的にエッセンシャルオイルが使用されるようですが、団体や協会によって言葉や施術の定義が異なる場合もあるようです。

ここから本題ですが今回取り挙げる研究は「Effectiveness of Aromatherapy Massage in the Management of Anxiety and Depression in Patients With Cancer: A Multicenter Randomized Controlled Trial.(がん患者の不安や抑うつに対するアロマセラピーマッサージの効果:多施設ランダム化比較試験 *6)」というタイトルのものです。
今回はアロマセラピーの効果の有無を見ていくと同時に、どうやって効果があるかないか科学的に判別するのか、という研究手法も解説していきます。

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こちらの研究論文はJournal of Clinical Oncology (*7)という医学学術誌であり一般の方には馴染みがないですが“かなり権威のある(信憑性の高い)学術誌”と思って頂くと良いです。そしてこの研究のクオリティですが、「ランダム化比較試験」というのは「均一な条件の被験者をランダムに2グループに振り分けて、その差を厳密に比較した」ことを表しています。つまり、その因子(今回はアロマセラピー)の影響だけを計測しやすい研究デザインです。


さらに「多施設試験」というのは「1施設の小規模な試験ではなく、多くの施設で実施されたデータを解析した」ことを示しています。これは多くの施設で行われることで1人の医師や少人数スタッフのバイアス(例えば研究主導者ややる気に満ちた職場スタッフ集団だとポジティブな解釈になりがち、など)が混ざりにくい、より公平性の高い研究デザインです。
つまりは、「多施設&ランダム化比較試験」というタイトルを見るだけで非常に厳正でクオリティの高い研究であることが分かります。
ではこの臨床試験の概要を見ていきます。


・対象選択
対象となったのは“イギリス国内の5つの施設におけるがん患者さんで不安や抑うつ症状のある人”に絞られたようです。ここでも厳密に研究参加者がスクリーニング(選別)され参加者が絞られていきますが、その過程が図3に示されています。

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まず最初に2555人が「補完代替療法の適応となるがん患者」として候補に挙げられます。しかし、「研究への参加を希望しなかった」人が848人、「既に別の支持療法を受けている」人が1184人、これらの人達が候補から外されて523人に絞られました

次にその523人を「不安/抑うつ症状」という観点からスクリーニングしていきます。ここで「研究への参加を希望しなかった」人が7人、「全く精神症状がない(172)/精神科的な治療を要する(40)/他の除外規定に該当(16)」という人が計228人除外され、最終的に288人が比較研究へと登録されました。

なぜこのようなステップで約9割もの対象者を厳正に選別するのかというと、できるだけアロマの影響が分かるように「参加者を均一にする」のが目的の一つです。そして同時に「都合の良い症例(例えば、“研究者の意に沿う反応をしそうな人”)だけ選んだりして結果が恣意的になるのを防ぐ目的もあります。

・ランダム化割り付け
先程288人が参加者として選別されましたが、次はこれらを無作為(ランダム)にアロマセラピー群と通常療法群(アロマセラピー無し)に割り付けます。この手順は多施設研究の場合は登録センターでランダムに割り振られることが多いです。つまり、研究者の医師も患者本人も「どちらに割り振られるか分からない」という条件で行われます。

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「アロマを受けたい人をアロマ群に入れてあげたらいいじゃない」と感じた人もいるかもしれません。但し、そうすると「アロマの効果を知っていてアロマが好きで期待している人がそちらに偏ってしまう」ことになります。そうなると当然公平なデータにならなくなってしまいますね(この時点で研究デザインを間違うと数年かけたデータが無駄になるおそれもあります)。

このため「アロマセラピーが好き/嫌い、経験あり/経験無し」関係なくランダムに割り振られました。図4に示すようにその後の離脱や辞退例を除外してアロマセラピー群の106人、通常支持療法の115人のデータが解析されました。


しかし「もしアロマセラピーが明らかに効果的であった場合にアロマ群に割り当てられなかった人達が不利益を被るのではないか」と思った人もいるかもしれません。そこは「解析期間(約10週間)が終わった後で自由に受けられますよ」とフォローすることで研究の倫理審査委員会からも承認されています(ちゃんとした研究はこの辺も周到に計画されています)。


・施術内容
アロマセラピー群:通常の支持療法に加え、アロマセラピー(アロマを体に塗りマッサージを行う施術)を週に1回1時間、それを4週間受けるコースに割り当てられました。施術には20種類のエッセンシャルオイルが用いられ、施設間で差がないようにアロマセラピストの間で共通したプロトコルが用いられました(下のアロマセラピーの画像はイメージで研究とは直接関係ありません)。
通常支持療法群:こちらは従来の診察や投薬やカウンセリングは受けられますが「解析期間中はアロマセラピー/マッサージは受けない」という条件に割り当てられました。

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・評価方法
主な効果の指標として「不安(Anxiety)/抑うつ(Depression)」が評価対象となりました。
「不安」の評価法としてState trait Anxiety Inventory (SAI: 状態特性不安検査, *8)というものが用いられました。これは不安を被験者の主観によるアンケートでスコア化するものです(例:私は不快感を感じている・・1[全くない]〜 4[とても感じる])。約20の設問に回答することによって不安という計測困難なものをある程度数値化することができます。

もう一つの「抑うつ」についてはCenter for Epidemiological Studies Depression (CES-D:うつ病自己評価尺度, *9)を用いて被験者の主観によってスコア化されました(例:私は悲しい気分だ・・0[全くない]〜3[とても感じる])。
他の項目として「疲労感/痛み/吐き気/等」がそれぞれ自己申告でスコア化され解析されました。


精神科医による面談での不安/抑うつの診断(SCID: Structured Clinical Interview for DSM-IV, *10)も行われましたがもちろん診断した医師らも「被験者がどちらの群に割り付けられたか」は知らずに診察しています。
これらの各項目は「割り付け時(治療前)」「割り付けから6週後」「割り付けから10週後」の時点で評価され比較検討が行われました。


・結果
主な結果を図6に引用します。
表が細かくて分かりにくいかもしれませんが、青枠が「アロマセラピー群」で黄枠が「通常療法(比較対照)群」です。そして「初期/6週後/10週後」の順にデータが並んでいます(色枠は原文には無くこちらで記載したもの)。

この中で注目する点は赤枠の部分です。この中で左側にSCIDと書かれているのが「医師面談による不安抑うつの診断」で、6週後の時点でアロマセラピー群が64%改善、通常療法群が48%の改善で「アロマセラピー群に有意な症状改善が見られた(p=0.01. ※p値が小さいほど統計学的に有意)」ということが示されています。10週後もアロマ群の方が改善率が良いですが統計学的に有意差までは出なかったようです。

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次は赤枠2段目のSAI(状態特性不安検査)に注目してみると、6週目の時点でアロマセラピー群が平均6.5点の改善、通常療法群が平均3.1点の改善と「有意にアロマ群が良好(p=0.04)」でした。さらに10週目の評価でもアロマ群が平均6.6点の改善、通常群が平均3.2点の改善でこちらも「有意にアロマ群が良好(p=0.04)」であったと言えます。つまり、「アロマセラピー群は6週目でも10週目でも通常療法群より有意に不安症状を改善した」ということが結果で示されました。
それ以外の「痛み/倦怠感/吐き気」に関しては良い傾向のものからほぼ影響しないものまであるようですが、統計学的に明らかな効果があると言えるものは無さそうでした。 

これらの結果を踏まえ、研究著者らはがん治療における補完代替療法の一環としてアロマセラピーの不安心理状態に対する一定の効果が示されたと結論づけています



・アロマセラピーの内容
この研究論文に記載されている内容はここまでで、具体的にどのようなエッセンシャルオイルが使用されているのかについては詳細が記述されていませんでした。そこで同じような過去の研究を調べたところ、同じ英国Marie Curie Cancer CareセンターのSusie Wilkinson氏からアロマセラピー/マッサージ療法に関する研究論文が公開されていました(*11)。
同施設の過去の研究によるとローマンカモミール(Roman Chamomile)のエッセンシャルオイルで精神的効果が得られたことが記されています。このことから先に紹介した研究でもローマンカモミールのオイルが使用されていた可能性が高そうです。
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ローマンカモミールとはキク科の多年草で日本ではローマンカミツレとも呼ばれるようです(*12, *13)。見た目は上の画像のような白い花で名前は知らなくとも見たことはある人は殆どではないでしょうか。もう一つのカモミールとして有名なジャーマンカモミールとは似ていますが分類上は少し異なるようです。

香りとしてはリンゴのような香りを持つとされ、古来から薬用にも用いられたとの記載があります。販売されているローマンカモミールのエッセンシャルオイルをいくつか見てみるとやはり抗ストレス作用や抗不安作用を記載しているサイトが多いです(*14, *15)。こういったアロマオイルやエッセンシャルオイルに記載されている効果・効能は「本当かどうか分からない」といった疑問もあったのですが、今回の医学研究を見ると「昔からの経験則が科学的に証明された」と言っても良さそうです。


・注意事項
ここで注意点ですが、「ある種のアロマやエッセンシャルオイルが医学的に特定の症状改善効果を持つ」ことは事実と言えそうですが、「商品や施術にそのような効果効能を謳って良いかどうか」というのは日本の法律の問題もあります。医師法や薬機法などの法律が日本にはありますので医療行為のように宣伝すると違法になる場合がありますので関係者の方はよくご存知と思いますが「科学的基盤と法律は別問題」という点はよく認識しておいてください(*16, *17)。

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今回はアロマセラピーが医学的に実際効果があるのか?という観点で研究を取り挙げてみました。結論としては「かなり厳密な多施設ランダム化比較試験において不安や抑うつ(特に不安)に対してアロマセラピーは有意な改善効果を示した」と言えるようです。また、アロマセラピーという医療としてはまだ認知されてない療法が権威ある医学誌に掲載されたのは大きな前進なのではないかと思います。良い香り」だけではなく「心身への良い効果」が広く認知され、「症状を改善する療法」として医療の一部として受けられるようになることを期待したいです。



引用:
*1. 日本アロマセラピー学会
https://aroma-jsa.jp
*2. 日本統合医学協会/メディカルアロマセラピー
https://www.medical-aroma.jp/medicalaromatherapy/
*3. 公益社団法人 日本アロマ環境協会
https://www.aromakankyo.or.jp
*4. “香辛料もアロマ” itacica.com
https://itacica.com/giapponese-italiano/moda/371/
*5. アロマオイル−Wikpedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/アロマオイル
*6. Wilkinson MS, et al. Effectiveness of Aromatherapy Massage in the Management of Anxiety and Depression in Patients With Cancer: A Multicenter Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol 25:532-539. 2007
*7. Journal of Clinical Oncology, An American Society of Clinical Oncology.
https://ascopubs.org/journal/jco
*8. Spielberger C, Gorsuch R, Lushene R, et al. Manual for the State-Trait Anxiety Inventory. Palo Alto, CA, Counseling Psychologists Press, 1983
*9. Radloff L. The CES-D scale: ‘A self report depression scale for research in the general population’. Appl Psychosoc Meas 1:385-401, 1977
*10. First MB, Gibbon M, Spitzer RL, et al. Structured Clinical Interview for DSM IV Axis 1 Disorders Version 2.0, 4/97 revision. New York, NY, Biometrics Research Department, New York State Psychiatric Institute, 1997
*11. Wilkinson S et al. An evaluation of aromatherapy massage in palliative care. Palliative medicine 13:5, 1999. https://doi.org/10.1191/02692169967814834
*12. ローマンカモミール−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ローマンカモミール
*13. カモミールの植物学と栽培−メディカルハーブ事典
https://www.medicalherb.or.jp/archives/166856
*14. ローマンカモミール・エッセンシャルオイル FLORIHANA
https://www.florihana.co.jp/?pid=159368325
*15. カモミール・ローマン enherb
https://www.enherb.jp/shop/g/ge210602-11/
*16. 薬機法とは?−契約ウォッチ編集部
https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/yakkihou/
*17. 【事例あり】薬機法違反の原因や罰則、対策を解説|注意すべき表示例もDigitalMarketingBlog. https://digitalidentity.co.jp/blog/pmd-act/violation-case.html

画像引用
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No.044 数の瞑想(2)

今回は以前一度取りあげた「」について考えていきます。数も日常の領域を超えてスケールの大きな数を想像することで、宇宙や銀河を想像する瞑想と同様に「意識空間を広げる」効果があります。以前の記事“「数」の瞑想(*1)”は良いウォーミングアップになりますので読んでない人はそちらから読んでみると良いと思います


そしてリラックスできるアルファ波を誘導するような環境音楽でも聴きながらイメージしていくとさらに瞑想効果が高まると思います。


まず最初に、これ以上分割できない最小単位である「素粒子」をイメージします。
何もない空間に1つだけ素粒子があります。
1個なので1x10^0個ということなります。

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次は「原子」をイメージします。
原子核は陽子と中性子から成り、陽子と中性子はそれぞれ3つの素粒子から構成されています。
原子核の周りには電子という素粒子の一つが存在しています。
小さな原子は10個〜数十個程度の素粒子からできています。
(光子、グルーオン、ヒッグス粒子といった非物質的な素粒子は除外します)

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次に1グラムの水を想像します。
1モル(mol, *1)の水は18g(グラム)、
1モル(mol) = 6.02×10^23 個の分子を含みます。
よって、1gの水は6.02×10^23÷18 = 3.34×10^22個の水分子から成ります。
素粒子に換算して約10倍するとn×10^23個程度になります。

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では次に地球の大きさや体積を考えてみましょう。
地球の半径は約6400kmなので体積は4/3 ×π(3.14)×(半径6400km)^3 、
地球の体積(単純計算)は4/3 ×π×(6.4x10^8)^3 =1.1×10^27 cm^3となります。
仮に地球が全て水だとしたら構成する分子の数は何個になるか?
1g(1 cm^3)の水は3.34×10^22個の水分子から成り、地球の体積は約1.1×10^27 cm^3なので、地球は3.67×10^49個の分子から成ると概算されます。
素粒子の数にすると1桁上がっておよそn×10^50個と概算できます。

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次は太陽を想像します。
太陽の質量は約2.0×10^30kg、大部分が水素です(*2, *3)
水素の原子量は1なので、1g(グラム)の水素には6.02×10^23 個の水素原子が含まれ、
太陽の質量は2.0×10^30kg=2.0×10^33g(グラム)なので、
 “太陽を構成する水素原子の数”=約1.2×10^57 個となります。
水素の場合は素粒子に換算しても4倍程度なので全粒子数はn×10^57 個とします。

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次は銀河系を想像します。
銀河の画像で見えている光の粒は太陽クラスの“恒星(こうせい:自ら光を放つ星)”であり、見えている天体では質量の大部分を太陽のような恒星が占めています。
このような太陽クラスの恒星が銀河系には約2000億個あると言われています(*4, *5)。

銀河系を構成する粒子の数を考えます。
太陽の原子数=10^57 個
銀河系の恒星の数=2000億個=2.0×10^11 個
銀河を構成する原子の数=10^57 個×2.0×10^11 個=2.4×10^68 個
宇宙に存在する原子の90%以上は水素とされている(*6)ので、素粒子に換算して4倍程度として約n×10^68 個になります。
この直径10万光年の銀河系の中に含まれる全ての粒子を数えると約10^68個のオーダーと言えます。この辺りが「無量大数:10^68」を超える地点になります。

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ではその銀河の集団である「超銀河団」を考えてみます。
我々のいる天の川銀河が属する局所銀河群やおとめ座銀河団を含むさらに大きなラニアケア超銀河団(Laniakea Supercluster, *7)が存在しています。
この超銀河団は約10万の銀河を包括していると推定されています。
銀河1つに含まれる粒子数をn×10^68 個とすると
超銀河団に含まれる素粒子の数はおよそn×10^73個と概算されます。

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ではさらにもっと意識を広げていきます。
前回(*10)、前々回(*8, *9)の記事で紹介したように「宇宙全体の景色」を想像していきます。
超銀河団からさらに意識を拡大してズームアウトしていきます。前々回(*8, *9)の記事が参考になりますが、銀河団からズームアウトしていくと銀河が筋に沿って存在することが分かります。そしてさらに意識を拡大するとその筋が分岐したり結合したりしているのが見えてきます。そして全体が見えてくると、網目状の構造体「コズミック・ウェブ」が見えてきます

この宇宙には約2兆個の銀河があると現時点では考えられています(*11)
銀河の粒子の数を10^68と先程概算しましたが、そうなると10^68×2,000,000,000,000 = 10^80個の粒子がこの宇宙には存在していると推測できます。

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もちろん、ニュートリノ(*12)や宇宙の質量の90%を占めるダークマター(*13)などをカウントできたとしたらさらに10倍、100倍つまり、10^81個や10^82個に増えるのかもしれませんが、この先を読み進めると全宇宙の粒子数の10倍も100倍も誤差範囲ということがわかると思います。

ではこの宇宙の景色からさらに遠ざかっていきます。
意識をさらに拡張させていきましょう。
光が届く範囲、光として観測可能な宇宙の範囲(*14)、半径400億光年とも500億光年とも言われていますが、あなたの意識はそれを超えて広がっていきます


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すると「宇宙全体」を外側から見ることができました。
もちろん、宇宙を空間の外側から、光も到達していない地点から物理的に宇宙を「光」で観測することは不可能です。
但し、あなたの意識は「物質」ではありません
ですからあなたの意識は「物理法則」に従う道理など無いのです。
「見えるはずがない」という「物理法則的な思い込み」で意識を制限する必要はありません
「あなたの意識」は科学的に証明することが不可能です。
「あなたの意識」は物理科学的な枠に収めることができません。
あなたは物質的な肉体を持つことで「物質世界にいる」と錯覚していますが、
あなたの意識は「物質世界」にはありません
「意識」は形のない世界、「形而上学的世界」に存在しています。
「形而上学的世界」から宇宙全体を知覚できたでしょうか。
「形而上学的な世界から見た宇宙」をさらにズームアウトしていきます。
すると、その宇宙の周りには「似たような宇宙」がたくさん存在していました。

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それぞれの宇宙が1つの粒子として存在していました。
そして、その粒子が素粒子のように10個ほど集まって1つの原子を形成し、
粒子が10^23個集まって1グラムの水を形成し、
粒子が10^50個集まって地球のような惑星を形成しました。
粒子が10^80個から成る宇宙が別の世界の1つの粒子であり、その粒子が10^50個集まって別の世界の1つの惑星となっていたので、この惑星は10^50×10^80個の粒子から成っていることになります。

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またこの世界でも惑星が太陽系を構成し、
太陽のような恒星が銀河を形成し、
銀河が超銀河団を形成し、
そしてこれら全てを含む別の宇宙(Another Universe)を形成していました。
全宇宙(10^80個の粒子)が1つの粒子となりその粒子が10^80個集まってまた別の宇宙が形成され、この宇宙は10^80×10^80個の粒子でできていることになります。

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この宇宙の中でさらに意識を広げ、この宇宙を外側から見ると、またさらにその外側が存在していました。
そして、同じように意識を広げていくと同じように、その宇宙が一つの量子となり、原子となり、惑星となり、太陽になり、銀河になり、宇宙になっていました。
しかし、この宇宙のサイクルは3周では終わりませんでした。
10週巡ってもまだ終わらず、100周巡ってもまだ終わらず、1000周巡った時点で全体を見ると、それは一本の長い光の紐となっていました

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この光の紐に存在する粒子の数は
n×(10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×................... 10^80×10^80×10^80)[1000回繰り返し]個になっています。
粒子の数はn×10^80000個になります。

宇宙が何世代にも渡って延々と繰り返し続く光の紐を見ていると、
遠くに別の光の紐があるのが見えてきました
そして意識を拡大するとさらに何本も光の紐が見えてきました。
どれも延々と繰り返す宇宙によって織られた紐のようでした。
その光の紐は1つの巨大な光の玉へと集まっていました

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その光の玉に集まる光の紐は1000,000本ありました。
つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙が
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となりました。
粒子の数はn×10^80,080,000個になりました。

(読者の皆さん、大丈夫でしょうか。なるべく「千」・「万」といった言葉ではなく実際に粒子が1000個ある様子、10000個ある様子をイメージする方が瞑想効果が高くなります。考えるのを止めても瞑想効果は止まります。頭が重い、フラフラする、眠くなる、額が熱く感じる、という症状は脳が刺激を受けている状態です。「どれだけ多くのものを自在にイメージできるか」が瞑想力であり想像力であり、創造力になります。トレーニングと思って続けれるところまで続けてみましょう。それではまた瞑想へと戻ります。)

またさらに巨大な光の玉から遠ざかっていきます。
すると、同じような無数の紐が絡み合った光の玉がまた見えてきました
その巨大な光の玉は10個あるように見えました。
しかし、さらに離れると、その10個の光の玉はまた幾つも出現してきました。

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その光の玉は1万、10万、100万、いや、もっと多く存在していました。
その無数の紐が絡み合う光の玉は1,000,000,000(10億個)存在していました


つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000回繰り返し] 個の光の玉へとつながりました。


粒子の数はn×10^80,080,080,000個になりました。
この10億個の光の玉は全体で一つの大きな球体を形成していました。
そして、その巨大な球体からさらに遠ざかります。
非常にゆっくりですが、巨大な球体の全体が徐々に見えてきました
やっと巨大な球体の全貌が見えてきました。
さらに意識を広げていきます。

すると、10億の光の玉が集まった巨大な球体がまた一つ遠くに浮かんできました
それが視界に入るようにもっと意識を広げていきます。
すると予想通り、それは一つだけではありませんでした。
巨大な球体は10個、1000個、100万個、10億個、いや、さらにそれより多い1兆個存在していました

20230816Article044fig16.jpg


1000周した宇宙から成る紐が100万本集まる光の玉が10億個集まった球体が1兆個存在していました。
つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000回繰り返し] 個の光の玉となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000,000回繰り返し] 個の光の球体となりました。

粒子の数はn×10^80,080,080,080,000個になりました。
およそ10の80兆乗個という数字に到達しました。
無量大数=10^68すら「微々」たるものに感じますね。

10の80兆乗は書くと簡単ですが、実際には
100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000...........................0000000000(80兆個の0が並ぶ)という数字になります。
仮に「0」を1mmの大きさで書いたとしても、80兆個書くと80,0000,0000,0000ミリメートル=8000万キロメートル=地球2000周分です。
つまり、10^80兆のゼロを全て紙に書いて並べると地球2000周分になるということです。
ここまで来るとこれを表せる単位は無いだろう、と思うかもしれません。


しかしここでまた華厳経(けごんきょう,*15):(正式名称『大方広仏華厳経』だいほうこうぶつけごんきょう、サンスクリット語でブッダーヴァタンサカ・ナーマ・マハーヴァイプリヤ・スートラ)という大乗仏教経典の一部を見てみましょう。この四十五巻には昔から伝えられている数の単位が示されています。(経典を一字一句読まなくても大丈夫です


「一百洛叉為一俱胝,俱胝俱胝為一阿庾多,阿庾多阿庾多為一那由他,那由他那由他為一頻婆羅,頻婆羅頻婆羅為一矜羯羅,矜羯羅矜羯羅為一阿伽羅,阿伽羅阿 伽羅為一最勝,最勝最勝為一摩婆羅,摩婆羅摩婆羅為一阿婆羅,阿婆羅阿婆羅為一多婆羅,多 婆羅多婆羅為一界分,界分界分為一普摩,普摩普摩為一禰摩,禰摩禰摩為一阿婆鈐,阿婆鈐阿婆鈐為一彌伽婆,彌伽婆彌伽婆為一毘攞伽,毘攞伽毘攞伽為一毘伽婆,毘伽婆毘伽婆為一僧羯 邏摩,僧羯邏摩僧羯邏摩為一毘薩羅,毘薩羅毘薩羅為一毘贍婆,毘贍婆毘贍婆為一毘盛伽,毘盛伽毘盛伽為一毘素陀,毘素陀毘素陀為一毘婆訶,毘婆訶毘婆訶為一毘薄底,毘薄底毘薄底為 一毘佉擔,毘佉擔毘佉擔為一稱量,稱量稱量為一一持,一持一持為一異路,異路異路為一顛 倒,顛倒顛倒為一三末耶,三末耶三末耶為一毘覩羅,毘覩羅毘覩羅為一奚婆羅,奚婆羅奚婆羅為一伺察,伺察伺察為一周廣,周廣周廣為一高出,高出高出為一最妙,最妙最妙為一泥羅婆, 泥羅婆泥羅婆為一訶理婆,訶理婆訶理婆為一一動,一動一動為一訶理蒲,訶理蒲訶理蒲為一訶理三,訶理三訶理三為一奚魯伽,奚魯伽奚魯伽為一達攞步陀,達攞步陀達攞步陀為一訶魯那, 訶魯那訶魯那為一摩魯陀,摩魯陀摩魯陀為一懺慕陀,,,,,,,,,,,,」

これは一部ですが、引用の最後の行に「訶魯那(かろな、ka-ro-na)」という単位と「摩魯陀(まろだ、ma-ro-da)」という単位が出てきましたね。
1訶魯那=10^61572651155456(約10^61兆乗)
1摩魯陀=10^123145302310912(約10^123兆乗)

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つまり、今まで想像してきた宇宙を遥かに超えた「10の80兆乗」という数は、「1訶魯那(約10^61兆乗)よりは大きい」が「1摩魯陀(約10^123兆乗)に比べれば遥かに小さい」数ということになります。さらに摩魯陀の次には摩魯陀を遥かに超えた懺慕陀(ざんぼだ: za-n-bo-da)があり、まだその上へと続いていきます。

上の意識を拡大する瞑想に最後までついて来れた方はお疲れ様でした。良い頭の運動になったと思います。しかし、ここまで意識を拡大したとしても我々はまだ「お釈迦様の手の平から外側に出れていない」ということでしたね。

20230816Article044fig18.jpg

最後は、「上で想像した10^80兆個の粒子からなる巨大な光の球体の集合体も、その一段上の巨大クラスターの一部だった」という画像でこの章を終わりにしたいと思います。もちろん、数の瞑想はまだ続きます。また次の「数の瞑想」をお楽しみに。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n0671628d60c7
*2. 太陽ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽
*3. 太陽質量ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽質量
*4. 銀河系ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/銀河系
*5. 「星の数」の話ーJST 日本宇宙フォーラム
https://www.pr.jsforum.or.jp/blog_20200519/
*6. 宇宙組成比
https://astro-dic.jp/cosmic-abundance-2/
*7. ラニアケア超銀河団
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラニアケア超銀河団
*8. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
https://note.com/newlifemagazine/n/ne70efe5c50cc
*11. 宇宙に存在する銀河は2兆個、従来の見積もりの10倍ーAstroArts
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/8745_galaxies
*12. ニュートリノ- Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニュートリノ
*13. 暗黒物質−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/暗黒物質
*14. 観測可能な宇宙−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙
*15. 華厳経ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/華厳経

画像引用 
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a9/Blausen_0615_Lithium_Atom.png
https://pixabay.com/illustrations/world-earth-globe-sphere-planet-1348808/
https://www.pexels.com/photo/sun-fire-hot-research-87611/
https://www.eso.org/public/images/eso1339g/
https://ras.ac.uk/media/1176
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No.043 宇宙は一つの有機体?マクロとミクロの同調性(シンクロニシティ)

前回の記事では太陽系→銀河系→局所銀河団→超銀河団→観測可能な宇宙のマッピング→宇宙の巨大構造のシミュレーション(ミレニアムシミュレーション *1, *2)というように、宇宙全体を俯瞰して見たときにどのように見えるのか、について現在分かっている最近の情報をまとめました(*3)。

今回はいきなりクイズからですが、下の図1はそれぞれ何の画像でしょうか?

20230804article043fig01.jpg

左右どちらの画像も何かが網の目のように張り巡らされた一定のパターンが見て取れます。どちらが何の画像なのか、いろいろと想像してみてください。

またこの記事は「瞑想」を主なテーマとして扱っているので、「それぞれの画像から何かを感じられるか?」ということを意識してみてください。

そしてこの画像を通して「画像の中の世界」に入り込んでみてください。
この画像の向こうにある「画像の中の世界」の雰囲気・エネルギー・波動、こういった数値では表せない抽象的(形而上学的)な感覚を感じてみてください

「画像を見ているあなたの意識」と「画像に写し出された世界」はつながっています。それは「量子もつれ(*4)」という現象で「意識した対象とリンクする」ことが科学的に説明されています。

そしてこの「意識と対象物の相互作用」というものが実験的に証明されていることは過去の記事でも紹介してきました(*5, *6)。

答えに気付いた人も、まだ気付いてない人も、図1のそれぞれの画像の世界のエネルギーを瞑想することによってしばらくの間感じてみてください(感じた感覚に正解というものはありませんので安心してください)。

それでは画像の答えを示していきます。
まず図1の右側は下の図2のように、どんどん拡大していくと網の目が光の集合体のように見えてきました。これは実は「銀河やダークマターをシミュレーションして100億光年の距離まで視野を広げた宇宙の画像でした(*1, *b)。この「超マクロ(極大)の宇宙の景色」については前回の記事で詳しく解説しているので詳細はそちらを読んでみてください(*7)。

20230804article043fig02b.jpg



そして図1左側の画像の正体ですが、こちらは「培養された脳神経細胞(ニューロン)のネットワーク」の画像です(*a)。こちらはマサチューセッツ工科大学で行われている、脳細胞を培養してアルツハイマー病の解明に努める研究を紹介した記事で引用された画像です(*7, *a)。

20230804article043fig03.jpg

このように、片方は100億光年規模の宇宙の超巨大構造であり、片方はミクロン単位の脳神経ネットワークの超微細構造でした。しかし分かった上で図1を見比べてみても非常に良く似ています
このダークマターと銀河が網羅された宇宙のネットワーク構造」と「脳神経細胞(ニューロン)の微細ネットワーク構造」に類似性を見出し、それを数学的に解析した天文学者と医師がいます。今回はその研究を詳しく紹介していきます。

紹介する研究は「The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web(神経細胞ネットワークとコズミック・ウェブの定量的比較, *9)」というイタリアの天文学者と医師による共同研究です。

20230804article043fig04.jpg


研究背景として近年は急速なスピードで宇宙の物理現象が解明されつつあります。前回の記事でも「ダークマターも計算に含めた宇宙全体のシミュレーション」が実現できるようになったことを紹介しましたが、Springel氏らによってそれが公開されたのも2005年と、もう15年以上も前のことになります。

これによって「銀河は見えない何かによってつながっている」、「そのつながりは網目のように広がり、ネットワークを形成している」ということが可視化されました(図2、*1)。可視化された宇宙を見た科学者が「何かに似ている」と思ったのが研究の動機であり、脳科学者の医師と手を組んで実現した研究です。


この研究の手法では、まず脳組織の方は実際に脳腫瘍手術で切除された正常な大脳皮質(Cortex)、小脳皮質(Cellebelum)を用いて40倍の光学顕微鏡で観察した画像が使用されました(図5上段)。
そして比較する宇宙はENZO(*10)と呼ばれる計算コードを用いて100メガパーセク(約326万光年)立方の宇宙構造をダークマターを含めてシミュレートし、それを脳標本のように断面を切って解析に用いました(図5下)。これらの画像は第三者も解析に使用できるようにURL(*11)として公開されています。


20230804article043fig05.jpg


著者らが調査した概算によると、「観測可能な宇宙に存在する天の川銀河と同等以上の規模の銀河≒5.5x10^10個」、「成人の全脳のニューロンの数≒8.6x10^10個」、「成人の小脳のニューロンの数≒6.9x10^10個」という具合にほぼ同じ桁のオーダーで比較することが可能としています。
これら脳組織または宇宙シミュレーションモデルをパワースペクトル解析したのが図6の結果になります。

20230804article043fig06.jpg


ここで“パワースペクトル (power spectrum)について簡潔に説明すると「時間的・空間的に変動する信号(ゆらぎ)をフーリエ変換して、そのフーリエ係数の振幅の2乗を周波数の関数とみなしたもの(*12)」と説明されていますが、深く理解する必要はありません図6の各グラフがよく似た形で重なっていることが分かれば大丈夫です。
実際に図6を見てるとCortex(大脳皮質:黄)とCerebellum(小脳:オレンジ)の40倍(実線)と、Cosmic Web (ダークマター:青)/Cosmic Web(バリオン=物質粒子:紺)がよく重なり、「構造パターンが類似している」ことが数学的に示されています

ここで著者らは対照実験として別の“ランダムに見えるパターン”との比較も行っています(図7)。ここで比較対照として用いたものは「空にある雲 (Sky Clouds)」「樹木の枝 (Tree Branches)」「磁気流体力学的乱流 (MHD Turbulence)」「水の乱流 (Water Turbulence)」といった、自然界におけるランダムに見えるパターンと比較することによって、「脳のニューロンのパターンと宇宙のコズミック・ウェブが本当に類似しているのか」という点を比較しました。

20230804article043fig07.jpg

図7を見ると雲/木の枝/磁気乱流/水の乱流が灰色〜黒の点線で示されていますが、これらは脳ニューロン細胞やコズミックウェブとは類似していないことがわかります。この結果から「他の自然界の普遍的なパターンとは明らかに異なり、脳のニューロン構造と宇宙のコズミック・ウェブ構造は類似している」ということがパワースペクトル解析でも裏付けられたということになります。


次に著者らは脳のニューロンと宇宙のコズミック・ウェブを「ネットワーク解析」の手法で比較検討しました。
以下、小難しい話が苦手な人は「要するに、、、」まで読み飛ばしてOK

ネットワーク解析ではよく用いられるパラメータを2つ取り上げ、それらを解析しています。1つは次数中心性(Degree Centrality: Cd)であり局所領域内のネットワークの接続度合いを測定する解析であり、もう一つはクラスタリング係数(Clustering Coefficient: C)でランダムな点のネットワークと比較してノードの局所近傍内の構造を定量化する、すなわち与えられた接続クラスタ内の全ての三角形に対するノード接続された三角形の比率から求められる係数です(*13, *14)。
20230804article043fig08.jpg

図8ではノード(銀河団/細胞核)がそれぞれ結び付けられてネットワークが視覚化されているのが分かります。この結果、宇宙のノード当たりの平均接続数<k>は3.8〜4.1、小脳では<k>は1.9〜3.7、大脳皮質では<k>は4.6〜5.4という結果でした。
またグラフ下段のクラスタリング係数(C:図8左下)を見ると脳組織もコズミック・ウェブも0.1〜0.4の間にピークが見られています。そして次数中心性(Cd: 図8右下)を見ると1〜4x10^-3という範囲に分布しています。これらを「ランダムなノードの集合」と比較してみます。
20230804article043fig09.jpg

著者らはノードを生成するアルゴリズムであるErdös-Rényi(エルデシュ・レーニィ)モデル(図9、*15, *16)を使ってランダムにノードを生成した場合のクラスタリング係数は0.002以下と脳ニューロンネットワークやコズミック・ウェブ(0.1〜0.4)に比較して全く異なる数値であったと報告しています。さらに次数中心性(Cd)もニューロンや宇宙では1〜4x10^-3であったのに対し、ランダム生成ノードでは10^-6〜10^-7とこちらも3桁ほど異なる数値となったようです。


要するに「ネットワーク解析においてもニューロン・ネットワークとコズミック・ウェブは類似性があり、ランダムに生成されたモデルとは明らかに異なっていた」ことが数学的に示されたということになります。


自然科学的に今回の研究の要点は以下のようにまとめられます。
・脳ニューロンの構造とコズミック・ウェブ構造は類似している
・ニューロン構造とコズミック・ウェブはパワースペクトル解析でも類似性を示した
・雲/樹木の枝/水の乱流といった自然界にありふれたパターンとニューロン/コズミックウェブ構造は類似していなかった
・ネットワーク解析においてもニューロンとコズミック・ウェブは類似性を示した
・ランダム生成モデルとニューロン/コズミック・ウェブを比較したが、ランダムモデルは数値的にも全くかけ離れていて類似性はなかった


ではもう一度ニューロン・ネットワークの画像(図10左上/左下)とコズミック・ウェブの画像(図10右上/右下)を比べてみてください。偶然とは思えないような数学的にも裏付けられた類似性と自然の造形美が見て取れます。

20230804article043fig10.jpg


今回の研究を未知の領域に拡大し、あらゆる可能性を想像してみます。
・一つの銀河さえ宇宙の中では一つの細胞(銀河団クラスター)の中の微小器官なのかもしれない
・銀河同士をつなぐコールドダークマターとはニューロンの突起のような役割を果たしているかもしれない
・ダークマターは銀河クラスター間をつなぎ、領域間で何かを送受信する媒体かもしれない
・宇宙は脳神経のように有機的にネットワークが構築されているかもしれない
・宇宙全体が一つの巨大な有機体として機能しているかもしれない
・この宇宙は何者かの中枢神経組織なのかもしれない
・この宇宙全体が“意志”を持っているかもしれない
・一つの“意志”と一つの宇宙(A Universe)が結び付けられているかもしれない
・存在する“意志”の数だけ対応する“宇宙(Multiverse)”が存在しているかもしれない

全く突拍子もない机上の空論ですが、ダークマターといった未知の存在が宇宙の大部分を占めることがわかった現在、このような可能性を否定できる科学者がいるでしょうか?

20230804article043fig11.jpg

さらに今回の結果を科学を超えた形而上学的な領域で解釈すると以下の法則が見えてきます。
・超極小(ミクロ)の構造と超極大(マクロ)の構造は同期する
・超極小(ミクロ)の構造を追求すると超極大(マクロ)へ到達する
・反対に超極大(マクロ)を追求していくと超極小(ミクロ)へ到達する
・宇宙論が量子理論を決定し、同様に量子理論が宇宙論を決定する
・極小の一部(ミクロ)は全体(マクロ)を体現し、逆もまた真である
・極小と極大は同一である


これらのことは科学的に証明されている法則ではありません。しかし、「科学的に証明されているかどうか」は実は「取るに足らないこと」なのです。なぜなら、「毎年毎年科学的に新しい発見がある」ということは誰しも知っていることですが、それはつまり「新発見=科学が如何に不完全か/科学の無知の部分が一つ解明された」と言えるからです。科学も「成長中の人間と変わらない」と言えます。「科学的に証明されてないこと」と言っても「ただ不完全な科学が網羅してないだけ」ということを知る必要があります。


「真の叡智」とは、「何千年も前から変わらない/変わる必要がない」と言えます。このような智慧を扱う学問が「形而上学(けいじじょうがく)」です。「日々新説が更新され」「過去の常識が覆される」これが「科学」の脆弱性であり「永久不変の形而上学的法則」との決定的な違いです。科学は「未だ不完全/間違うこともある/成長していく」というものです。科学を過小評価も過大評価もせず正当に理解し、全てを包括する形而上学への理解を深めていきましょう「瞑想」は形而上学への扉の一つです。「瞑想」を使いこなし「形のない世界」への親和性を高めていきましょう。


引用
*1. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*2. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*4. *2. 量子もつれ:Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/量子もつれ
*5. “遠隔ヒーリング”は科学的に証明できるか? https://note.com/newlifemagazine/n/n349ffafbd715
*7. マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様? https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*8. Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*9. Vassa F and Feletti A. The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web. Frontiers in Physics 2020(8), 525731. doi: 10.3389/fphy.2020.525731
*10. Bryan GL, Norman ML, O’Shea BW, Abel T, Wise JH, Turk MJ, et al. ENZO: an adaptive mesh refinement code for astrophysics. Astrophys J. (2014) 211:19. doi: 10.1088/0067-0049/211/2/19
*11. https://cosmosimfrazza.myfreesites.net/cosmic-web-and-brain-network-datasets
*12. パワースペクトル−天文学辞典. https://astro-dic.jp/power-spectrum/
*13. Hansen DL, Shneiderman B, Smith MA, Himelboim I. Social network analysis:
measuring, mapping, and modeling collections of connections. In: DL Hansen, B Shneiderman, MA Smith, I Himelboim, editors Analyzing social media networks with NodeXL. 2nd ed. Chap. 3, Morgan Kaufmann (2020) p. 31–51. doi: https://doi.org/10.1016/B978-0-12-817756-3.00003-0
*14. Golbeck J. Network structure and measures. In: J Golbeck, editor Analyzing the social web. Chap. 2. Boston: Morgan Kaufmann (2013) p. 25–44. doi: https:// doi.org/10.1016/B978-0-12-405531-5.00003-1
*15. Erdős–Rényi model−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model
*16. Erdös-Rényi(ER)モデルにおける平均次数、クラスタ係数、次数分布の求め方https://zenn.dev/aobaiwaki/articles/78b09d8b711fc9

画像引用 
*a. Photo "Neurons thriving in a petri dish" by Matheus Victor, M. I. T. in article by Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*b. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*c. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model#/media/File:Critical_1000-vertex_Erdős–Rényi–Gilbert_graph.svg
*d. https://hellobio.com/media/catalog/product/f/i/fig2_1.jpg
*e. https://dendrotek.ca/blogs/scientific-papers/dendritic-polyglycerol-amine-1
*f. https://twitter.com/franco_vazza/status/1189539086375247872
*g. https://www.freepik.com. image by benzoix
*h. https://www.freepik.com. image by kjpargeter
*i. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet

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