No.054 原初の光“CMB”から分かる宇宙の大きさ

前回の記事では宇宙の初期、ビッグバンから数十万年後の初めて光が解放された時の名残りが“宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB)として現在でも観測できることが示されました (*1)。それによって何が分かるのか、これらからどのような情報が得られるのか、という観点から宇宙の神秘を探究していきます。

過去の記事でも紹介したインドのヴェーダを起源とする超越瞑想(Transcendental Meditation)(*2, *3)や形而上学の継承者によって編纂されたMAX瞑想(MAX Meditation) (*4, *5)においても“宇宙と意識を融合する”、“世界と自己が一体になる”というプロセスは非常に大きな意味を持ちます。途方も無い広さの宇宙をどうやって測るのか、人類がどのようにそれを積み重ねてきたのか、今回も時間と空間に対する意識を広げて宇宙の瞑想を行っていきましょう

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・宇宙の形を知る
はじめに宇宙の形がどうなっているかを考えてみます。過去の記事「宇宙瞑想:“宇宙の果て”について考える (*6)」で解説したように地球の表面は有限です。しかし、どこまでいっても端に辿り着くことはなく空間が途切れたりもしていません(Figure 2左)。

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宇宙の場合もFigure 2右のように、宇宙空間は計り知れないほど広いですが、空間が途中で終わったり端があるわけではなくどこかで連続していると考えられます。
端と端がつながった3次元空間」をどう考えるかというとFigure 3左の図のように表すことができます。まず空間の端のAと反対側のA' をつなげてこの軸で空間が連続することになりました。そして垂直方向の端Bと反対側のB'をつなぐことでドーナツ状の形状が出来上がります。

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このドーナツ状の形状を“トーラス (Torus, *7)”と言います。実際には3次元空間にはA方向とB方向のみではなくもう1軸ありますので、この図は模式図と考えてください。3次元空間のX/Y/Z軸の両端をつなげるので本来は“3次元では表現不可能”です。このトーラスというのは“3次元の宇宙空間がこのような形に曲げられている”と考えると良いです。宇宙は4次元から見るとFigure 3右のように見えます。“空間の4次元から見た宇宙”は3次元的な日常の思考では想像できないので瞑想のトレーニングとして想像してみると良いと思います。

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ただし、今回はより分かりやすくするために“4次元トーラス宇宙”から次元を下げて“3次元球体宇宙”として考えていきます。Figure 4右図のように宇宙空間が平面として球体の表面に張りつけられていると考えていきます。
“宇宙が拡大している”ということはFigure 4右図で考えると“球体が大きくなり宇宙空間(表面積)が膨張している”と擬似的に考えることができます。


・宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を思い出す
Figure 5は前回の記事(*1)を読んだ方なら覚えていると思いますが、宇宙マイクロ波背景放射(CMB, *8, *9)という「宇宙で最も古い光」と考えられている信号です。

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簡単におさらいすると、「ビッグバン以降、宇宙は膨張し続けており過去の光や地球から遠い天体ほどその光が引き伸ばされ、眼に見える可視光線ではなくマイクロ波という電磁波になっています。この信号(CMB)の発生源よりも速く地球から遠ざかっている天体があったとしても、遠ざかる速度の方が速いため、そこから発せられる光は地球に到達することはできません。つまりCMBの届く範囲が観測可能な宇宙の範囲」ということになります。
宇宙の大きさとCMBの観測結果で以下の3つのパターンが考えられます。


・パターン I
1つの例として、もし“地球から最も離れた場所から光が届く距離”=“現在の宇宙のサイズ”だと仮定すると、Figure 6左のようになります。ちょうど天体A (Heavenly body A)から地球に光が放たれて到達した距離と、今現在の宇宙の大きさ(半径)の距離が同じになるケースです。
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もしこのような条件の場合、CMBはどう見えるかというとFigure 6右のようになります。CMBは全天図になるので、一方から天体Aの信号が受信できますが、ちょうど180度正反対の方向から全く同じ天体Aの信号が観測されるはずです(注:Figure 6左はトーラスを球体の次元に下げているので、光は球面に沿っていても3次元空間では直進しています)。


・パターン II
次は“最も離れた天体からの信号が伝わる距離”>”現在の宇宙のサイズ”という条件を想定してみます。この場合はFigure 7左のようになりますが、この場合天体Aからの信号が進む距離が宇宙のサイズより大きいため、この信号が“地球を通り越してまた周回してくる”という状況が起こり得ます。

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するとCMBはどのように見えるかというと、一つの例としてFigure 7右のようになります。同じ天体からの信号がいくつも見える、というような観測結果が得られるかもしれません。宇宙を半周して地球に到達した光、1回転と半周して地球に到達した光、2回転と半周して地球に到達した光もあるかもしれません。そして反対側からも同じような光が観測されるかもしれません。このように宇宙のサイズが光の到達距離よりずっと小さい場合にはこのような結果が想定されます。


・パターン III
今度は反対に“最も離れた天体から信号が届く距離”<“現在の宇宙のサイズ”の場合にはどうなるでしょうか。この場合はFigure 8左のように観測できる最も遠くの天体からの光が地球に届いても天体Aから反対側に発せられた光がまだ宇宙を一周することができません

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この場合、観測されるCMBはFigure 8右のようになります。天体Aからの信号は1つのみです。天体Aから反対側に発せられた光はまだ地球に到達できないのでCMBを見渡しても他には見当たりません。このようなCMB観測図が予想されます。

・CMBから得られた信号の解析
現時点で、CMBにおいて同じような信号や反復する信号パターンは得られていないようです。そうなると、現在の宇宙の状態は“パターンIII”、つまり「観測可能な最も遠い領域からの光が到達できる範囲の2倍よりも宇宙は大きい」と考えられています

遠ざかる光源と地球との距離を図で表すとFigure 9のようになります。ある時点での天体Aと地球との距離を固有距離 (proper distance)とします。Aの地点から数十億年かけて地球に光が到達したとします。光が引き伸ばされた程度(赤方偏移 *10)によって光が発せられた地点Aまでの距離(光路距離、light-travel distance)は簡単に求められます。

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しかし、実際は数十億年かけて光が到達する間に宇宙の膨張によって天体AはA'まで距離が遠ざかっています。この図での“地球–A' ”間の距離を共動距離 (co-moving distance)と呼び、数十億年前に光を発した天体との現在の距離を求めるにはこの共動距離を求める必要があります。

そして、「天体Aからの信号」の代わりに「宇宙の原初の光であるCMB」を解析すると、「観測可能な宇宙の最も端までの距離」=「観測可能な宇宙の半径」が求められるという算段になります。

今回はこのCMBから宇宙の大きさを求める計算はGott III J. Richard氏らによる「A Map of the Universe.」(2005, *11)を参考にしました。


・宇宙の大きさを求める計算過程(詳しく知りたい人向け)
CMBを用いて宇宙の端までの共動距離を求める計算過程をFigure 10に示します。でも安心してください。数式を理解する必要はありません(安心してください、私もほとんど理解していません)。例によって下の赤い枠の部分だけ注目してもらえれば大丈夫です。
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(省略可能)「宇宙定数Λ (lambda) が宇宙を膨張させる力を表し、宇宙の質量ρmと放射線量ρrが宇宙を収縮させる力を表し、それらからフリードマン方程式をもとに膨張計数と共形時間(conformal time)を求め、それにハッブル半径を乗じたものにCMBの赤方偏移Zrec: 1089を適用すると14000Mpcになる」


・算出された宇宙の最小半径
とにかくいろいろ計算すると、「観測可能な宇宙の端までの距離は14000Mpc (メガパーセク) になる」という結論になります。14000Mpcは言い換えると約450億光年になり、「観測可能な宇宙の端までの距離は450億光年以上、つまり現在考えられる宇宙の最小半径は約450億光年、直径約900億光年」ということになります。どうでしょうか、読者の皆さんの予想に比べて小さかったでしょうか?それとも予想を超えて大きかったでしょうか?


・宇宙の大きさを知る意味
読者の方々は「地球が丸い」と知ったのはいつ頃だったか覚えているでしょうか?日常生活では我々は「地面は平らである」としか知覚できません。海を見ても水平線はほぼ直線にしか見えません。

しかし意外なことに地球が丸いことは紀元前6世紀のピタゴラスの頃から示唆されていたようです (*12)。また、星の見え方から地球が丸いことを明確に示したのはアリストテレスとされています。しかもアリストテレスは「大地は球体であまり大きくない」ということまで見通していたということも驚きです。そして実際に地球を一周したのは西暦1500年頃のマゼラン艦隊というのは知っている人も多いと思います。地球を西に進み続けると東から戻ってくる、というのは「地球が丸い」ということを知らなかったとしたら信じられない奇妙なことだと思われます。
しかしこの事実によって私たちは「唯一絶対の無限に広大な大地にいる」わけではなく「天に見える惑星や恒星と同じ星の一つに住んでいる」ことを知ることになります。しかも星々の中ではそれほど大きな星でもありません。これは人類の意識を「地球が世界の全て」というわけではなく「地球は宇宙の星々のほんの一つ」という真実に気付かせてくれました。人類の意識の中に「宇宙意識」が芽生えたことは「人類の意識の進化」と言えます。


・「宇宙意識」の進化
そして21世紀になった現在、未だ人類は太陽系を出ることすらできませんが、さまざまな科学的証拠から宇宙の形や大きさを推測し、“ループする有限な空間”であることが確からしいことが突き止められてきました。そして「永久不変の絶対的空間」ではなく「どこかの時点で創造され、現在も膨張し続ける有限な空間」であることも解明されつつあります

そうなると、「地球が数多の星々の一つ」であったように「もしかしたらこの宇宙も他にあるのではないか?」「星がどこかで誕生と消滅を繰り返すように、宇宙も誕生と消滅を繰り返しているのではないか?」「The only one Universe ではなく One of the Multiverse なのではないか?」という疑問が自然に浮かんできます。

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このテーマは科学者の間でも近年論じられています。しかし、当面はその存在を証明することは困難でしょう。なぜなら科学的に使えるツールは「光子 (photon)などの観測可能な素粒子 (quark) 」のみですが、光子を含めて「現時点で観測可能な素粒子はこの宇宙空間から出られない」からです。
しかし、「未だ科学で実態を観測できない“意識”」なら3次元宇宙空間から出ることが可能かもしれませんね。そして科学で扱えないものを扱える形而上学 (Metaphysics)ならば「宇宙空間の外側」を知ることが可能かもしれません。そんなことを考えながら瞑想を続けていればいつか宇宙の外側の情報を得ることができるかもしれませんね。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n81e6c7a5cab8
https://note.com/newlifemagazine/n/n12e335a385c6
*3. 超越瞑想- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/超越瞑想
https://note.com/newlifemagazine/n/nff19547b087c
*5. MAX瞑想システム(TM)- facebook
https://www.facebook.com/groups/max.meditation/
*6. 宇宙瞑想:“宇宙の果て”について考える
https://note.com/newlifemagazine/n/nfd5030576893
*7.トーラス−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/トーラス
*8. Cosmic Microwave Background- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*9. 宇宙マイクロ波背景放射- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙マイクロ波背景放射
*10. 赤方偏移−天文学辞典.https://astro-dic.jp/redshift/
*11. Gott III, J. Richard, et al. "A Map of the Universe." The Astrophysical Journal 624.2 (2005): 463.
*12. 地球球体説– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/地球球体説
*13. 観測可能な宇宙– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙

画像引用: 
*a. https://www.sci.news/astronomy/hubble-globular-cluster-ngc-6652-12136.html. Image credit: NASA / ESA / Hubble / A. Sarajedini / G. Piotto.
*b. https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Simple_Torus.svg. By YassineMrabet
*c. https://clipart-library.com/free/wire-globe-png.html
*d. NASA / WMAP Science Team - http://map.gsfc.nasa.gov/media/121238/ilc_9yr_moll4096.png
*e. https://www.freepik.com/free-vector/perspective-grid-pattern_24777042.htm#, Image by vector_corp on Freepik
*f. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Torus.png By Lucas Vieira

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No.053 宇宙の始まりの光を観る:“CMB”

前回までの記事では量子レベルで物質が発生したり消滅することを示してきました(*1)。これまでは意識をナノレベル (nano-level)に縮小し、量子の世界で起こる物質やエネルギーの生成を想像してきました。今回は視点を広げて宇宙のことについて話していきます。時間と空間に対する意識を広げて宇宙の瞑想を行っていきましょう



・さまざまな天体と地球との距離

まず最初に最も身近な天体である太陽 (the Sun) を想像してみましょう。皆さんが毎日見ている太陽です。太陽から地球までの距離は約1億5千万km、この距離は1天文単位(= 1 AU: astronomical unit) と定義されています(*2)。
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この太陽から地球までの距離に光が到達する時間が8分19秒かかります。つまり、我々はいつも8分ほど前の太陽の光を見ていることになります。


それでは次に恒星シリウス (Sirius) を想像してみましょう。この星は太陽以外で地球上から見える恒星では最も明るい1等星です。星座はおおいぬ座 (Canis Major) に属し、画像のように上方に見えるオリオン座 (Orion) の帯の3連星の延長上に位置しています (*3)。
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この恒星シリウスは地球から約8.6光年 (light-year) 離れた位置に存在しています。私たちが夜空に見ているシリウスの光は8.6年前に発せられた光になります。これでも夜空の星々の中ではかなり近い星であり、特別な親近感を感じる人も多いのではないかと思います。


それでは次に北極星 (Polaris) を想像してみましょう(*4)。この星は地球が自転してもその位置を変えず常に北の方角を示すため、古代から多くの人々の道標として活用されてきました。

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その存在感は神格化され、中国道教の天皇大帝(てんのうたいてい, *5)と仏教思想が融合して妙見菩薩(みょうけんぼさつ, *6)として信仰されたり、日本神話の創造神である天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ, *7)と同一視され祀っている神社も数多くあります。
この北極星までの距離は432光年で先ほどのシリウスよりも遠くに位置しています。今見える北極星の光は432年前の光ということになります。


次は銀河の中では最も知られているアンドロメダ銀河 (Andromeda Galaxy) をみていきます(*8)。実はこの銀河は我々がいる天の川銀河 (Milky-way Galaxy) から遠く離れた天体ですが、直径が約22万光年と天の川銀河の2倍以上の大きさがあるため、条件が合えば肉眼で観察することが可能です。アンドロメダ銀河は「肉眼で観察可能な最も遠くにある天体」としても知られています

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アンドロメダ銀河までの距離は何と250万光年にも及びます。つまり今私達が見ているアンドロメダ銀河の光は250万年前に発せられた光ということになります。人類がまだこの地球にいなかった頃にアンドロメダを出発した光かもしれませんね。


次はおとめ座銀河団 (Virgo Cluster, *9) を想像していきます。今までよりもさらにスケールが大きくなります。アンドロメダのような銀河が1300〜2000個も集まった銀河の集団(クラスター)を形成しています。

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このおとめ座銀河団にはM87、M86、M49など主要な銀河があり、地球からの距離は5000〜6000万光年と推定されています。このおとめ座銀河団の望遠鏡写真は5000万年以上前の光ということになります。


まだまだ遠くまで行ってみましょう。次はスローン・グレート・ウォール (Sloan Great Wall, *10) という巨大構造を観てみます。この構造は聞いたことがない人がほとんどだと思いますが、銀河団/銀河のクラスターがいくつも集まりマクロな視点で見て巨大な壁を形成している構造です。
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図の左側にあるように半径20億光年ほどの宇宙地図の中でも連なった壁のように見える構造がスローン・グレート・ウォールです。データから再構成された画像が図の右側です。このグレート・ウォールの長さは13.7億光年にも及び、地球からこのグレート・ウォールまでの距離は約10億光年とされています。このスローン・グレート・ウォールを観測した時に得られた信号は10億年前の信号であり、地球上には哺乳類も恐竜すらもいなかった時代の光と言えます。



・宇宙での距離を求める

それでは「遠く離れた天体の距離はどのように求めるのか?」についておさらいしていきましょう。

ある一つの方法を紹介すると、天体の中には一定周期で光の強度が変わる“変光星 (Variable Star)”というものが存在し、その変光周期から絶対等級/光度 (Absolute Magnitude) を計算することが可能です。過去の記事(「宇宙は永遠か?について考える」*11)でも解説していますが、宇宙は膨張していることが分かっているので、「ほとんどの天体は地球から遠ざかっている」ということが言えます。

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そして宇宙は膨張しているのでFigure 7のように「地球から遠い天体ほど速く地球から遠ざかっている」ことが分かります。この“地球から遠ざかる速さ”を“後退速度 (Recessional Velocity)”と呼びます。すると本来は同じ明るさの天体であったとしてもドップラー効果のようにその星が出す光の“見かけの波長”が引き伸ばされます。

波長が引き伸ばされた”結果として色調は「赤い方へ変移する/真の色より赤く見える」ということから、この現象を“赤方偏移 (せきほうへんい、Redshift, *18, *19)”と呼びます。この赤方偏移=「本来の光がどの程度引き伸ばされたか」を調べることによって「その天体が地球から遠ざかる速さ/その天体が地球から何光年離れているか/今どの位置にあるか」が計算できます。


・観測可能な最も古い“光”とは?

上の例では10億光年以上先の構造物を観測することができたということは、10億年以上前の信号を観測することができたということになります。それでは、一体どこまで過去の信号を観測することができるのでしょうか

それでは宇宙が誕生した頃まで戻ってみましょう。この頃の宇宙を知るには過去の記事「宇宙の始まり:“宇宙創造のアルケミー” *12」が参考になるのでまだ読んでない人は読んでみてください。

現在宇宙の起源で最有力な説は“ビッグバン理論 (*13)”ですが、それに基づくと宇宙が誕生してしばらくは宇宙全体がプラズマのような火の玉のような状態でした (Figure 8左)。
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このときはまだ宇宙の温度が高く、光子 (photon) と陽子 (proton) と中性子 (neutron)と電子 (electron)が結合できずに原子になっていなかった状態でした。このときは“光と影が分離する前”で“光しかない状態”でした。

しかし、宇宙の温度が低下して原子核と電子が結合し、光子と物質が分離されました。その結果、宇宙は初めて「光と影」が分離された状態になりました (Figure 8右。注:図はCGイメージです)。

このときの「光と影の分離」を「宇宙の晴れ上がり (Recombination, *14)」と呼び、近年の研究ではビッグバンからおよそ37万年後のことと考えられています(*15)。光が解放されたのはこの時であり、この時の光が“最も古い原初の光”と言っても良いでしょう。


・137億年前の“光”を観測できるのか?

先ほど説明したように、宇宙が初めて光と影に分離されたのがビッグバンから約37万年後のことです。その時の光を観測することなど可能なのでしょうか。

当時から宇宙は膨張し続けているとすると、今の地球がある位置から観測可能な範囲で最も離れていた光は「最大限に引き伸ばされている(=赤方偏移が極大)」であるはずです。「赤い可視光線」や「赤外線」を通り越してもっと波長の長い電磁波として観測されるかもしれません。また、宇宙の晴れ上がりの直前までは「宇宙全体は光で満たされていた」状態でした。なので、もしその状態から均等に宇宙が膨張したならば、その時の光はあらゆる方向から観測されるはずです。

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実際にその電磁波は発見され、1965年にPenzias氏とWilson氏らによって報告されました(*16)。その後も研究が進んで、その電磁波は非常に強い赤方偏移(z > 1000, *18, *19)によって波長が1000倍以上に引き伸ばされ、もう目に見える光ではなく知覚できない“マイクロ波”という電磁波になっていました。この電磁波は「宇宙の晴れ上がり」当時は3000度K程(赤い恒星からの光と同程度)でしたが、現在では絶対温度2.725度Kの物体からの輻射に相当することがわかっています(Figure 9)。

このマイクロ波は宇宙に蔓延しており、あらゆる方向から観測されることから「宇宙マイクロ波背景放射 (Cosmic Microwave Background: CMB)」と呼ばれ人工衛星を打ち上げて継続的に研究調査が行われています (*17)。この中で大きな役割を果たした衛星の一つがWMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe *20)です。この衛星は2001年にNASAによって打ち上げられ、宇宙マイクロ波背景放射 (CMB)のデータ収集を10年近く行いました。WMAPによって得られたデータを解析した画像の一つがFigure 10です。

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この画像は全天星図のように宇宙の全方位を表しています。図のように全方位から満遍なく信号が観測されていることが分かります。しかし、その中にも信号の強いところ(赤い部分)や信号の弱いところ(黒い部分)があり、何らかの要因で「宇宙の晴れ上がり (Recombination) の時に発せられた光」に“ゆらぎ (Fluctuation) ”があることが分かります。このCMBについては現在も研究が盛んに行われ、日々新たな発見が報告されています


・137億年前は身近に存在していた

上の図の通り、我々は宇宙の初期の姿、つまり推定137億年以上前の情報を観ることができるということです。しかもこの情報は特別な偶然で得られたものではなく、“常に宇宙のどこにいても普遍的に受け取ることができる”という性質のものでした。そしてこのCMBという太古の情報は今現在も地球に降り注ぎ、宇宙に蔓延し続けています。

この事実が意味するところは、宇宙が誕生してからさまざまな星が誕生し、星が何千億個も集まって銀河が誕生し、その銀河も数千億以上あると言われていますが、その間137億年も情報が失われずに保存されていたということになります。


・あらゆる情報は宇宙に刻まれている

上に挙げたスローン・グレート・ウォールを例にとると、10億光年離れた天体なので、Figure 11のように地球で得られる信号(10億年前に発せられた光)と現時点での現場の景色は相当変わっているでしょう。成長して巨大になった惑星もあれば、新たに太陽のような恒星になった星、超新星爆発を起こして消滅した星、新たに誕生した惑星、また巨大重力によってブラックホール化した星もあるかもしれません。
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しかし、その10億年間の変化の歴史は既に地球に向けて発信されていて、10億年かけて地球に向かっているはずです。その天体の5億年前の情報は今おそらく5億光年離れた場所にあるでしょうし、その天体の8億年前の情報はもう2億年ほどで地球に到達するはずです。

そう考えると、「10億光年離れた天体の現在姿は今観測される姿とかなり異なっている」ということが言えますが「その10億年分の変化の歴史は宇宙空間に存在している(現在地球に向かっている)」と言えます。


・永遠で不変の記録媒体は“光”かもしれない

私達は、古代から記録を後世に残そうとさまざまな努力を重ねてきました。それは壁画であったり文字であったり、石板であったり書物であったり、近年では磁気ディスク、CD/DVD-ROM、メモリーチップ、SSDなど、高速/高耐久/高容量へと年々進歩しています。しかし、これらの耐久年数は保存状態の良いCDで数十年、石板ならもしかしたら数千年保存できるかもしれません。
しかし、137億年も宇宙の情報を保存できる媒体があるでしょうか。そして容量が無限の保存媒体、そして真実をそのまま映し出し改変されない保存媒体、もしかしたらそれは“光”かもしれません。原初の宇宙の姿を我々にもたらしたCMBも“光(電磁波)”の一種です。同様に我々が何光年から何十億光年離れた場所の情報を正確に知ることができるのは“光(電磁波)”にその情報が刻まれていてそこから読み取ることができるからです。
“光”は実は永久不変で無限の容量を持つ記録媒体と言っても過言ではないでしょう。そして137億年前から現在に至るまで宇宙で起こった全ての記録を保持している、これも真実です。何億年も過去のことであろうと、何十億光年離れた遥か彼方の宇宙のことでも、我々が光を観ることでそれを知ることが可能です。

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サンスクリット語でアーカーシャ(阿迦奢、Ākāśa、आकाश)という言葉がありますがこれは「天空、空間、虚空」を意味する言葉です。ご存知の人も多いかもしれませんが、この宇宙のあらゆる事象が記録されているというアカシックレコード (Akashic records)の語源となっている言葉です。そしてアーカーシャの名前を冠する菩薩が虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ、アーカーシャガルバ、Ākāśagarbha, आकाशगर्भ)です。「宇宙のように広大な無限の智慧と慈悲をもって人々に智慧を与え救済する菩薩」とされています。

実はこの宇宙空間(天空)自体が、「この宇宙における全ての事象が記録されているアカシックレコード」の一部と言えるかもしれません。上に示したように我々は宇宙に満ち溢れている“光(電磁波)”だけでも過去から現在まで無限の情報を引き出すことができるという可能性が示されました。

仮に地球時間で21世紀の現在、1000光年離れた星から地球を観察したとすると、その星には1000年前(西暦1000年頃)の地球の姿が見えます。同じように10000光年離れた星から地球を観察すると10000年前の地球の状態がありのまま観察できることになります。このように、地球のすべての過去の歴史も宇宙空間のどこかに光として消滅することなく保存されていることになります。


もし光より速く宇宙の任意の地点に移動できるとしたなら、理論上あらゆる天体のあらゆる時代の情報にアクセスすることが可能です。もちろん、人類よりも遥かに早く進化し3次元を卒業した文明の智慧を得ることができるかもしれません。その状態がアーカーシャの一部と融合した状態と言えるかもしれません。しかし当然ながら「人間が存在する3次元空間で光速を超えて遠くに到達することは不可能」と思っている人も多勢いるでしょう。ただし科学が発展するにつれ、「真実の世界は我々の概念を覆し続けてきた」のはこれまでの記事を読んできた読者の方にはお分かりかと思います。

もしかしたら「過去・現在・未来」という時間も我々の概念にしか存在しないかもしれません時間という概念すらも存在しない領域が「虚空」であるかもしれません。我々の概念を超えた領域(虚空)には人類の想像の及ばない叡智があるでしょう。それはどこに在り、どうやったらそこに到達できるのか、それは虚空蔵菩薩様に会えるなら教えてもらえるかもしれませんね。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n145e8ffec367
*2. 天文単位- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天文単位
*3. Sirius- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Sirius
*4. Polaris- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Polaris
*5. 天皇大帝- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天皇大帝
*6. 妙見菩薩- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/妙見菩薩
*7. 天之御中主神- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天之御中主神
*8. Andromeda Galaxy- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Andromeda_Galaxy
*9. Virgo Cluster- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Virgo_Cluster
*10. Sloan Great Wall- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Sloan_Great_Wall
https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6
https://note.com/newlifemagazine/n/n724aead9b9a4
*13. Jonathan Allday, "Quarks, Leptons and the Big Bang" Second Ed., The King’s School, Canterbury, Institute of Physics Publishing Bristol and Philadelphia, 2002
*14. Recombination- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Recombination_(cosmology)
*15. Tanabashi et al. 2018, p358, chapter. 21.4.1: "Big-Bang Cosmology" (Revised September 2017) by K.A. Olive and J.A. Peacock.
*16. Penzias, Arno A., and Robert W. Wilson. "A measurement of excess antenna temperature at 4080 MHz." A Source Book in Astronomy and Astrophysics, 1900–1975. Harvard University Press, 1979. 873-876.
*17. Cosmic Microwave Background- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*18. 赤方偏移- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/赤方偏移
*19. Redshift- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Redshift
*20. WMAP Highlights. NASA. https://map.gsfc.nasa.gov

画像引用: 
*a. https://wallpaperaccess.com/earth-and-sun
*b. Photo by atsushi1984. https://pixabay.com/ja/photos/オリオン-星空-神社-日本-8319275/
*c. Photo by Kush.Chandaria - Own work, CC BY-SA 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=108074228
*d. Photo by Aleksandr Burzinskij: https://www.pexels.com/photo/spiral-andromeda-galaxy-11780390/
*e. By Chris Mihos (Case Western Reserve University)/ESO.
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d3/ESO-M87.jpg
*f. By Willem Schaap. https://en.wikipedia.org/wiki/File:2dfdtfe.gif
*g. By Pablo Carlos Budassi. https://en.wikipedia.org/wiki/File:Sloan_great_wall.png
*h. By Roses_Street. https://pixabay.com/ja/illustrations/生成された-アンドロメダ-銀河-7621669/
*i. NASA / WMAP Science Team - http://map.gsfc.nasa.gov/media/121238/ilc_9yr_moll4096.png
*j. Image by vecstock. https://www.freepik.com/free-photo/abstract-spaceship-orbiting-starry-galaxy-backdrop-circle-generated-by-ai_40968273.htm#from_view=detail_alsolike

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No.052 本当の「真空(0)」からエネルギーが取り出せる?:“真空ゆらぎ”

過去の記事は「本来存在しないはずの反物質の発見(*1, *2)」、そして「それらはどのように発生したのか(*3, *4)」、そして「見えないもの(エネルギー)と見えるもの(物質)は等価交換可能である(*5)」ということを解説してきました。

前回の記事(*5)においても、1.022 Mev (メガ電子ボルト)以上の光子(高エネルギー電磁波)から電子 (electron) と陽電子 (positron) のペアが創り出され、逆に電子と陽電子のペアが接触すると消滅して 0.511 Mevの光子が2個発生することが示されました。

電子 (electron) も陽子 (proton) も中性子 (neutron) も原子 (atom) も全ての物質はエネルギーに変換でき、そして反対に「質量に相当するエネルギー」からは「物質を生成する」ことができます。つまり「無いもの(非物質:エネルギー)」と「有るもの(物質:質量)」は「全く等しい」「相互に変換可能である」ということが科学的に証明されてきました。

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以前の記事のタイトルでは「無から有が生み出される」と記していますが「やっぱり相当のエネルギーを与えないと物質は生み出されないのか」「結局何かを与えないと取り出せない」と思った人もいたかもしれません。

しかし「本当に何も無い真空(0)には何も無い」と思いますか?それとも「本当に何も無い真空(0)から何かが生成される」としたら奇跡的なことだと思いませんか?今回はそんな事が可能なのかどうか、という点について解説していきます。


はじめにFigure 2を見てください。容器(Container 1)の中には空気が入っていてその中にはもう一つの容器(Container 2)があり、この中にも空気が入っています。図中の青い丸は気体分子と考えてください。どちらの容器も内部は1気圧(1 atm)に保たれているので容器2の内部と外部で力が釣り合っているため動くことはありません。

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次にFigure 3Aを見てみます。容器2から空気を抜き、気圧を 0.1 atmに下げました。そうすると外気圧は1 atmなので図のように内圧よりも外圧の方が大きくなります
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するとFigure 3Bのように容器2の壁は外圧から押されて平たく潰れてしまいます。このことは小中学生の理科の授業でも習うことで誰でもよく知っている現象だと思われます。


ここでFigure 4Aを見てみます。今度は容器(Container 1)の中は真空で原子などあらゆる物質は一切存在していません。そして、電磁場(Electro-magnetic field)や電磁気力(Electro-magnetic force)といったものも存在していません外部から高エネルギーの電磁波(Electro-magnetic wave)が照射されるということも今回はありません

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この容器の中には図のような2枚の並行な平板(Parallel plates)が設置されています。これらの平板にも電圧がかけられたり磁気を帯びていることもありません。重力に対しては垂直なので水平方向に地球の重力の影響を受けることはありません。2枚の平行板の間は“d”だけ距離が開けられています

このような状態の中でFigure 4Bのように平行板の間隔“d”を縮めていくとどのようなことが起こるでしょうか?以前記事にした「宇宙における4つの力(*6)」に従って予想すると、まず“電磁気力(Electro-magnetic force)”に関しては2つの平板に電場も磁場も作用していないので電磁気力は作用しないはずです。次に“重力(Gravity)”ですが、地球の重力は平行板の間に働く力に影響はないはずです。2つの平行板の質量によって非常に小さな重力が働きますがそれも計算に含めます。そして“強い相互作用(Strong interaction)”や“弱い相互作用(Weak interaction)”はいずれも作用距離が原子の大きさ(約10^-10m)よりも遥かに小さいので影響はありません。

このようにFigure 4Bのように「真空の中で2枚の平行板を近づける」というだけのことです。これで「何かが起こる」とは普通の人には考えつきません


しかし、1948年にオランダで量子力学を研究していた物理学者のヘンドリック=カシミール(Hendrik Casimir, Figure 5, *7)博士がある発表をします。彼は「何も無い真空の中で2枚のプレートを近づけると力が発生する」ということを予測しました。

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Figure 5右側に計算された数式の一部を示しています。ここでは全て表記しきれないほどの長さなので大部分は省略されていますし、現時点では過程を全て理解する必要はありません。

ここでは右下の枠で囲まれた「F=...」の部分だけ注目してください。ここでは「h (エイチバー)」はディラック定数、「c」は光速(定数)、なので変数は「a (2枚のプレート間の距離:μm)」のみです。これらの定数は変化しないのでFigure 5の方程式を要約すると「Fは aの4乗に反比例する」つまり「距離がミクロン単位で小さくなるほど2枚のプレート間の何らかの力が大きくなる」ということを表しています


この力は当時でも電磁気力や重力のいずれにも該当しないものと考えられていたため「カシミール力(Casimir force)/カシミール効果 (Casimir effect)」と呼ばれるようになりました。しかし、これは机上の計算結果です。「実際に観測できるのか」という点に関してはこの研究論文の発表当時では「精密な平板/厳密な真空/正確な計測」という条件を満たすことが困難であり実証には至ってませんでした
しかしながら当時から50年ほど経過してこの理論に近い条件を再現した実験がいくつか報告されました。そのうちの一つがBressi氏らによる「Measurement of the Casimir force between parallel metallic surfaces (平行な金属表面間のカシミール力の測定, *10)」という2002年の研究論文です。


なぜ1948年のカシミール理論が2000年頃まで実証されなかったかというと、この理論はミクロン単位の精度が要求されます。2枚の精密な鏡面(凹凸があったりミクロの傷があってもいけません)を平行に保つ(ミクロンレベルでの平行さが要求されます)、しかもこれらに対して“何らかの力”が発生しても平行に保たれる機構が必要になります。

このような条件をクリアするために彼らが準備した装置がFigure 6のようなものでした(しばらくは実験方法なので結果だけ知りたい人は結果まで飛ばしても大丈夫です)。

Figure 6左にこの装置の概要が示されていますが、点線で囲まれた部分が真空 (vacuum) の容器を表し、その中の2枚の平行板の1つが“カンチレバー Cantilever”という構造で、もう1枚の平行板の方が“ソース Source”と呼ばれています。これが“真空中の2枚の平行板”という基本的な構造です。大きさは“Cantilever”の方が1.9cm×1.2mm×47µmというサイズなので微細な領域を扱う実験だと思ってください。

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しかしながら、真空容器の中でこの微細な装置を精密に平行状態にするのは人の手では不可能です。そのため“Source”の方が高精度の位置制御モーターに接続され、Figure 6右の画像のように電子顕微鏡的に平行な位置を設定します。さらに静電容量計 (Capacitance meter)によって“1.2mmにわたって30nm以内の平行度(1.2mで0.03mm以内の平行度に等しい)”を保つように電気的に制御されています。

しかし、電気的に位置制御される場合に問題となるのは「2枚の平行板に電位差が生じて静電気力が発生してしまう」ことです。そのため2枚の平行板“Source”と“Cantilever”は電圧校正計 (Precision voltage callibrator)に接続され推定される何通りかのカウンター電圧(Vc)をかけることで電位差を打ち消す対策がなされています。

ここまでのステップは「実証実験に必要な2枚の平行板をどのようにセットアップするか」というところまでです。次にこの「2枚の平行板に生じた僅かな力をどのように計測するか」という点を解決する必要があります。


これに用いられたのはFigure 6左側の容器の外部にある“光ファイバー干渉計 (Optic fiber interferometer)”です。これは“Cantilever”の位置の変化を非常に鋭敏に検出し、10^-7 m/Vの精度(ナノレベル)で動きを検知することが可能です。そしてこの“Cantilever”の共振周波数(Hz)を測定することでこれら2枚の平行板に生じる力の大きさを数値化することができます(力が強いほど周波数が高くシフト)。

結果がFigure 7のようになります。
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Figure 7左は静電気力を打ち消すために何通りかの固定したカウンター電圧 (Vc)によって得られたデータ、そしてFigure 7右はこれらの3つから余分な静電気力を排除し、距離補正して得られたデータです。

横軸(dr/d)が2枚の平行板の距離(µm)縦軸が共振周波数(=平行板に加わる力)です。いずれのグラフを見ても左側に来るほど(平行板の間隔が近くなるほど)下向きになっており、「近づくほど平行板が引きつけ合う方向に力が働いている」ということを示しています。特にFigure 7右のグラフをみると、平行板の距離が1µm(1マイクロメートル=1/1000ミリ)よりも小さくなったときにこの力が顕著に表れています。

「何も無いはずの真空で2枚の平行板が近づこうとする何らかの力」が存在していることが科学的に証明されました。では「この力は何なのか」という点を説明していきます。


過去の記事でも量子(光子でも電子でも陽子でも)は「波 (wave)」でもあり「粒子 (particle)」でもあるということを科学的に示してきました (*11)。
ということは、
「波動が存在できるところには何かが出たり消えたりしているのではないか」
「真空とは、巨視的(マクロ)に見て何も無い(0)状態であるが、微視的(ミクロ)で見ると何かが出ては消えているのではないだろうか」
「波動が存在できないように空間を制限したらその空間のエネルギーも制限されるのではないだろうか」
というように思考を展開したのが上に挙げた科学者達です。その上でFigure 8を見てみます。

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Figure 8はCasimir博士の理論や今回の実験のように「2枚の平行板で空間を制限した」状態を図にしたものです。こうしてみると実は真空というのは“さまざまな波長の波が存在している”と考えられます。そして実は“真空は常に平坦なゼロ(0)ではなくエネルギーが絶え間なく出ては消えている”と考えられます。

そして2枚の平行板によって空間を制限した結果、一部の波長のエネルギーがそこに出現できなくなり、外側とのエネルギーに差が生じました。その結果、2枚の平行板の間のエネルギーは相対的に弱くなり外側から押される力が発生した、ということがFigure 7のグラフで示されています。


このように「真空は実は常に平坦な無(0)ではなくエネルギー的な変動を繰り返している」という現象を“真空ゆらぎ Vacuum fluctuation/量子ゆらぎ Quantum fluctuation (*12)”と呼びます。Figure 3に戻ってみると、空気の中で容器の中の空気を抜いたら気圧の力で容器が押し潰されるのは誰がみてもわかりますね。実は空気と同じように真空の空間はエネルギーで満たされていて条件が揃うとそのエネルギーを取り出すことができそうです。

このカシミール効果は提唱されたのは非常に古いですがこれを実現する技術が追いついてきて現在も盛んに研究が行われています。この力は距離が0.01µmになると1気圧の力を生じることが分かっていて、マイクロマシンやナノテクノロジーに革新を起こすかもしれません(*13)。
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前回までの話では、「物質」と「エネルギー」は等価交換「見えるもの」と「見えないもの」はそれぞれ等しいものに変換される、ということを解説しました。しかし、今回はさらに驚くべきことに「本当の真空(0)からエネルギーが出てくる」ということを示しました。しかもこれらは「常に無限に出ては消えている」“ゆらぎ fluctuation”という現象です。つまり、空気が誰にとっても無償で無限に与えられているように、この「空間自体も無償で無限のエネルギー源になり得る」ということが言えます。


一方で形而上学的にはこのような言葉が知られています。

FROM THE EXHAUSTLESS RICHES OF ITS LIMITLESS SUBSTANCE I DRAW ALL THINGS NEEDFUL, BOTH SPIRITUAL AND MATERIAL(その無限の質量の無尽蔵の豊かさから、私は霊的にも物質的にも必要なもの全てを引き出す)” (*14)

初めて読むとよく分からないかもしれませんが、実は「我々の周囲は常に無尽蔵の資源に満たされており、見えないもの(光、エネルギー)でも見えるもの(物質)でも思い通りに(意志によって)取り出せる」ということを何千年も前から我々に説いていたのかもしれません。

今回も科学がまた一つ我々の常識を覆す真実を立証したことに驚き、そのように奥深く創造された自然の摂理に脱帽させられる回でした。宇宙の真理を知ることで宇宙と自己が少しずつ統合されていきます。“真空ゆらぎ”、“カシミール効果”は非常に奥が深いのでまた改めて詳しく解説していきます。


引用:
*1. Anderson CD. Cosmic-Ray Positive and Negative Electrons. Phys. Rev. 44, 406-416, 1933.
https://note.com/newlifemagazine/n/n56fb7ec42b46
*3. Standil S, and Moore RD. "Absolute Pair Production Cross Section of Lead at 2.76 Mev." Canadian Journal of Physics 34.11 (1956): 1126-1133.
https://note.com/newlifemagazine/n/n8833f57562bf
https://note.com/newlifemagazine/n/n96b7b89af9fd
https://note.com/newlifemagazine/n/n90c2cc2fab80?
*7. Hendrik Casimir- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Hendrik_Casimir
*8. Casimir HBG. "On the attraction between two perfectly conducting plates." Proc. Kon. Ned. Akad. Wet.. Vol. 51. 1948.
*9. Casimir HBG, Polder D. The influence of retardation on the London-van der Waals forces. Physical Review 73.4 (1948): 360.
*10. Bressi G, Carugno G, Onofrio R, Ruoso G. (2002). Measurement of the Casimir force between parallel metallic surfaces. Physical review letters, 88(4), 041804.
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
*12. Quantum fluctuation- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Quantum_fluctuation
*13. Lambrecht, Astrid. "The Casimir effect: a force from nothing." Physics world 15.9 (2002): 29.
*14. The Pattern on the Trestleboard. B.O.T.A. https://www.bota.org/resources/the-pattern-on-the-trestleboard

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No.051 「無」と「有」の等価性:「0 = 1」を科学的・形而上学的に理解する

前々回は「反物質の発見(*1, *2)」、そして前回は「それらは何処からやってきたのか?(*3, *4)」という点について研究を紹介してきました。これらの研究は世界的に影響を与え、ノーベル物理学賞につながって人類の進化に大きく貢献したものもありました。

我々は古来から「見えるものしか信じない」「形のあるもの以外は信じない」という考えに捕らわれてきました。しかし、「無いもの」と「有るもの」は「絶対的なのもの」なのか、「無いもの」と「有るもの」は互いに変化しうるものなのか、真実を知りながら想像していきましょう。


タイトルは「0 = 1」など科学的ではありませんが、今回も内容は科学的な内容です。しかし、この世界は「見えるもの」だけで成り立っているわけでははく「見えないもの」も広く存在しています。「科学で証明できるもの」も存在していれば、我々の意識や感情など「科学で証明できない=形の無い(形而上学的な)もの」も存在しています。

つまり、この世界を深く理解するには「科学的な面だけに捕らわれて」も不完全ですし、それは反対に「形而上学的な面だけに捕らわれて」も不完全と言えます。言ってみれば「右脳と左脳」の関係のように、「どちらの方が優れているか/劣っているか」という次元の話ではなく、「両者を理解し、使いこなし」この世界を深く理解していくための知性を身につけていくことがこの記事の目的です。

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形而上学的な側面では「あるものには反対の性質を持つものが必ず存在する」、また有る側面の性質は別な側面での性質と一致する」という普遍的な法則が存在します。つまり、「科学をより深く理解する」ことはもう一方の側面である「形而上学をより深く理解する」ことと「全く同じ」ことであると言えます。


それでは科学的に証明された事実を理解し、それを想像し瞑想して自分の意識に取り入れ、自己と外界、科学と形而上学を融合させていきましょう。今回の記事は以前の「有るはずのない物質:“反物質” (*2)」、「「無」から「有」は生み出されるのか?(*4)」と続いているので、これらを読んでからこの記事を読むと理解が早いと思います。


それでは本題に入ってFigure 2を見てみます。一つの原子(Atom)に宇宙線やガンマ線などの電磁波(Electromagnetic wave/ Cosmic-ray/ Gamma-ray)が入射した図です。光は電磁波(Wave)であると同時に粒子(particle)光子(photon)としての性質も持っています(粒子と波の二重性について詳しくは過去記事参照: *5)。

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この内部を拡大していくとFigure 3のようになります。エネルギーの強い光子(photon)原子核(Nucleus)の周囲のクーロン場(Coulomb field)を通過すると、電子(e-: electron)陽電子(e+: positron)が発生します (*6)。クーロン場とは原子核の周りの電磁気力が働く領域のことです。

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簡単に言ってしまいましたが、実際にはすごいことが起こっています。
ただの「光」という「物質ではないもの」から「電子/陽電子」という「実体のある物質」が出来た、ことになります。「真空(無)から物質(有)が突然現れた」とも言えます。この現象は電子対生成(Electron pair production)と呼ばれています。


ここで終わってしまってはまだまだ浅い知識で終わってしまうので、もう少し深く掘り下げていきます。物理や数学が苦手な人でも大雑把に読むだけでも理解可能ですので少しだけ我慢して読み進めてみてください。

Figure 4を見てみましょう。エネルギー (Energy) と運動量 (Momentum) の法則(Energy-Momentum Relation)とありますが、ある物体が持つ全エネルギー[E]の2乗=(運動量 [p] * 光速 [c])の2乗+ (質量 [m] * 光速 [c]^2乗)の2乗 という公式が与えられています (*7)。

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Figure 4下段を見ると光子 (photon) が持つ全エネルギー [E-photon] は運動量 [p1]*光速 [c] (=hc/λ)で表されます。生成した電子の全エネルギー [E-electron] は (運動量 [p2]*光速 [c]^2乗+0.511^2乗)の平方根で表されます。陽電子の全エネルギー [E-positron]も同様です。

0.511は何を表しているかというと、電子または陽電子の“重さ”をエネルギーに変換した値(単位はメガ電子ボルト= Mev: mega-electron volt)です (*8)。光には重さがないため、この質量エネルギーが“0”で表されています。Figure 4が何を表しているかというと、まず第一段階として“光子”/“電子”/“陽電子”が持つ全エネルギーを値として表したものになります。

次にFigure 5を見てみましょう。こちらは実際に電子対生成が起こった状況に運動量やエネルギー量を書き加えた図です。

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Figure 5の左側には光子とその全エネルギー量 [E-photon] が示され、右側には真空から出てきた電子とその全エネルギー量 [E-electron]、そして同時に生成された陽電子とその全エネルギー量 [E-positron] が示されています。下の式を見ると、E-photon = E-electron + E-positron という等式が成り立ち、その下の「p1c = ・・・」という式も表記が違いますが“左辺と右辺が等しい”ということを表しています。

Figure 5の一番下の式は“質量のみ”という前提ですが「無(0)」が「有(1)」になったということを表しています。数学者の方々もここは意図を解釈して頂けると良いかと思います。


次はFigure 6ですが、今度は反対に「電子と陽電子が接触して消滅し、2つの光子になる」という反応を図にしたものです。

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ほとんど運動していない状態の電子 (e-: electron) と陽電子 (e+: positron)が接触すると“消滅 (Annihilation)”し、2つの光子 (photon) が発生します。このとき発生する光子のエネルギーは正確に0.511 Mevで、正反対方向に2つの光子が飛んでいきます。この発生した正反対方向の2つの光子(電磁波)を消滅放射線 (Annihilation irradiation)”と呼びます。電子と陽電子はどうなるかというと、消滅して「無」になります。

これを現実的に“運動している電子と陽電子の衝突”として図にするとFigure 7のようになります。[p2]の運動量を持つ電子と[p3]の運動量を持つ陽電子が衝突し、[p4]の運動量を持つ光子と[p5]の運動量を持つ光子の2つが生成されます。

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Figure 7の下段の方が上段の反応を式で表したものです。電子の全エネルギー [E-electron]+陽電子の全エネルギー [E-positron] = 光子1の全エネルギー [E-photon1] + 光子2の全エネルギー [E-photon2] で“左辺と右辺が等しい”ことが分かります。こちらも一番下の式は“質量のみ”の前提で表記したものです。「2つの電子の質量」が「2つの質量ゼロの光子」へと変換されるため、「有 (1)」=「無 (0)」であると言えます(もちろん物質的な側面のみの視点です)。


これらの対生成 (Pair Production) と対消滅 (Pair Annihilation)をまとめるとFigure 8のように表せます。物質的視点では「物質が真空から出現」したり、「物質が消滅」したりしているようですが、エネルギーつまり「見えないもの」も含めると「上半分と下半分は常に等しい」、「全ての質量やエネルギーは保存されている」ということが分かります。

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物質=目に見えるもの=有るもの=1」と「非物質=目に見えないもの=無いもの=0」は「等しい」ということが分かります。もう一度言いますが、この記事は「科学的」でもあって「形而上学的」でもありますので、矛盾はしていません。「0 = 1であり、1 = 0である」ということが言えますが、ここまで読んだ方ならFigure 8を見てよく理解できると思います。

この反応で一つ条件があるとすると、Figure 5の中段の式にあるように光子の全エネルギー [E-photon] ≥ 1.022 Mev である必要があります。これは、“電子2個分(0.511Mev×2)の質量以上のエネルギーを持った光子でないと電子/陽電子のペアを生み出せない”ことを意味しています。どんな光子でも電子を生み出せるわけではなく、反応の前後でちゃんと計算が合っています。ですので「0 = 1であり、1 = 0である」と言える一方で、「何一つ減ってはいないし、何一つ増えてもいない」という「エネルギー保存の法則」も成立しています。


このことから分かるように「物質 (Mass)」は「エネルギー (Energy)」であり、「エネルギー (Energy)」は「物質 (Mass)」です。「見えるもの」と「見えないもの」は等価値であり、「形あるもの」と「形のないもの」も等価値であることを科学を通して理解できたと思います。



さらに話題を発展させますが、「形を持つ」か「形を持たない」かは「光子」だけでも起こりうる現象です。先にも述べたように「光」は「波 (Wave)」でもあり「粒子 (Particle)」でもあるという「二重性 (Duality)」という性質を持っています。つまり、「常に振動し、境界が無く、無限の広がりを持ち、形のない、数えられない [0]」「波」の性質であると同時に「球状の形をとり、位置や大きさが特定され、数えられる [1]」「粒子」の性質を同時に持っています。

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光はこの「0の状態」と「1の状態」を同時に有しています。つまり光の状態においても「0 = 1」という式が成り立ちます。そしてこれは「物質ではない光子」にも、「物質である電子」でも当てはまる非常に興味深い性質です。「二重スリット実験」を知っている人ならもう驚かないかもしれませんが、もし知らない人がいるならば過去記事(*5)を見直してみてください。

興味深いことに光子の状態[ 0 / 1 ] を切り替えるのは「観測するかしないか」という「人間の意図」によって変化します。「観測しようとする」と光は「粒子」の状態になり、逆に「観測をやめる」と「波」の状態になります (Figure 9)。この点においてははっきりと再現性をもって証明されています。そして「人の意識」が「量子状態に作用する」ときには「空間を超えて作用する」ということも実験的に示されています (*9)。ただし、現時点では「意識」と「物質」の相互作用については科学ではまだ未解明な部分が多いです。ここから先はさらに本格的な形而上学の領域になるかもしれません。

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今回は、「形のないもの」と「形のあるもの」、「エネルギー」と「物質」、「波」と「粒子」、「0」と「1」、というような2つの状態について「科学」と「形而上学」という対照的な視点から解説しました。

・「無」も視点を変えれば「有」である
・「無」と「有」は等価値のものに変換できる
・「形あるもの」は形が無くなっても「別の何か」に変わる
・いずれも同じものが形を変えただけにすぎない
・「形のないもの」を見ることで全体が理解できる
・実は「何一つ失われたり超過するものは無い」
・「無」と「有」の変換に「意識」が相互作用する可能性がある


科学と形而上学で「電子と陽電子の対生成」という現象を解釈するとこのようになります。形而上学の法則に「As above, so below. As below, so above (下なるは上の如く、上なるは下の如し)」という言葉があります(*10)。意味や解釈は非常に深遠ですが、端的には二つの世界の片側に存在するものはもう一方の世界にも同じように顕現する、という意味です。「形あるものの世界をみることで、形ないものの世界を知ることができる。そして逆もまた真なり」ということです。「科学物理の世界 (Physics)」と「形而上学の世界 (Metaphysics)」は表裏一体です。人類が「全て科学的に網羅した」と思った先にそれより広い「形而上学の世界」が存在しています。そして「意識」がその境界を行き来する「鍵」と言えます。瞑想によって「意識」を使いこなせればその世界とこちらの世界を行き来できるようになるかもしれませんね。


引用:
*1. Anderson CD. Cosmic-Ray Positive and Negative Electrons. Phys. Rev. 44, 406-416, 1933.
https://note.com/newlifemagazine/n/n56fb7ec42b46
*3. Standil S, and Moore RD. "Absolute Pair Production Cross Section of Lead at 2.76 Mev." Canadian Journal of Physics 34.11 (1956): 1126-1133.
https://note.com/newlifemagazine/n/n8833f57562bf
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
*6. Bethe, HA, and Maximon LC. "Theory of bremsstrahlung and pair production. I. Differential cross section." Physical Review 93.4 (1954): 768.
*7. Energy–momentum relation- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Energy–momentum_relation
*8. Electron mass- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Electron_mass
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56
*10. As above, so below- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/As_above,_so_below
画像引用:
*a. https://all-free-download.com/ Author: Public-domain-photos
*b. https://en.wikipedia.org/wiki/Atomic_nucleus#/media/File:Nucleus_drawing.svg
*c. https://www.freepik.com/ Image by freepik
*d. https://www.freepik.com/ Image by kjpargeter
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No.050 「無」から「有」は生み出されるのか?

今回は突然ですが最初に何の説明も無い状態で下の画像を見てください。

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見たことがある人もいるかもしれませんが、一般の人には「黒板にチョークで書かれた落書き」のようにも見えますし、「印象派の近代アート作品」に見える人もいるかもしれません。この画像については最後まで読めば分かりますのでそれまでいったん傍に置いておきます。


それではタイトルに戻って、「何も無いところから何かが出てくることがあるのか?」という点について考えていきましょう。次の画像のように何も無い中にライトで光が当たっている状況をイメージしてみます。真空の中に光を当てて何か物体が出てくることがあるのでしょうか?

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この状態で何か物質が生成されると思う人はいるでしょうか?普通に考えたら何も無い空間に光を当てて何かが出てくることはありませんね。実生活においても「ライトを点けたら何か物体が出てくる」ということはありません。もしそういうことが起きたら明るい部屋は何かが出てきて困るでしょうし、ライトを消し忘れて外出したら大変なことになってしまいます。

ここで光の性質をおさらいしておきましょう。光とは「電磁波:波」としての性質と「粒子(光子:photon)」としての性質を同時に持っている、ということは過去の記事でも紹介した通りです(*2)。

Figure 3に示すように光は「電磁波」でもあって「光子」でもあります。そして我々が見える光が可視光線と呼ばれ、波長300〜800nm(ナノメートル)の領域の光を肉眼で見ることができます。

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そして「光」は「波であっても粒子であっても」、「質量は無く」「物質では無い」ものです。ではこの光のエネルギーを強くしていくとどうなるかというと、可視光線から紫外線(UV)になり、さらに強くしていくとレントゲン検査で使われる「X線(X-ray)」や放射性物質から放射される「ガンマ線(Gamma-ray)」へと呼び方が変わります(Figure 3)。いずれも「電磁波」というエネルギーであり、物質ではありません。

この電磁波を標的に当てて「そこから何かが出てくるのか?」というのが今回解説するテーマとなります。そして今回紹介する実験は前回の記事で紹介した「反物質=陽電子(positron)」とも関係していますので、もし読んでない方は最初にそちらを読むことを勧めます(*3)。

今回は1950年代にカナダの大学で行われた研究実験をまとめた「An absolute measurement of the pair production cross section of lead at 2.76 MeV(2.76 Mevでの鉛における対生成断面積の絶対測定、*4, *5)」という内容の研究論文を紹介します。
当時は電子などの素粒子や原子がどのような相互作用を起こすかについて研究が盛んでした。前の記事のように1930年頃にカール=アンダーソン博士が陽電子を発見してノーベル賞を受賞してからさらにこの分野の研究は加速していきました。
この実験の主旨も「強い電磁波を何かに当ててそこから何が発生するか」ということを調べることでした。この実験で「強い電磁波(光子:photon)」として用いられたのが高エネルギーの放射線=ガンマ線でした。具体的にはナトリウムの放射性同位体:Na24が線源として用いられました(*6)。このNa24は数種類の放射線を出しますが、最大のエネルギーが2.76 MeV(メガ電子ボルト:mega-electron-volt)の電磁波になります。我々が見える光「可視光線」のエネルギーが2〜3 eVなのでその100万倍くらいのエネルギーの光子です。
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このために用いられたのがFigure 4左に示す装置です。このNa24線源を周囲が鉛に覆われた装置の中央に格納し、図の右側に高エネルギーの光子が照射されるように配置しました。そして図の標的(Target)の周囲で反応が起こり、飛び出した光子や素粒子が周囲のカウンター(Counter 1, 2)に検出されるという仕組みです。

前回紹介した記事では反物質である陽電子(positron)の発見について取り上げました(*3, *8)。通常はこの地球上に存在しないはずの反物質である陽電子は「どこからやってきたのか?」「エネルギーの中から発生したのか?」を検証するのもこの実験の目的の一つです。この陽電子と電子(electron)は“物質と反物質”という“互いに対をなすペア”の関係です。

Figure 5Aに示すように、陽電子と電子が衝突すると「0.511 MeVのエネルギー(annihilation irradiation)を正反対の2方向に放出して消滅する」ことが知られています。Figure 4左の装置を線源(Source)から見るとFigure 5Bのように見えますが、このように高エネルギーの光子ビーム(photon beam)を標的に当て、出てくるものを計測します。

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標的物質(Target)は“反応を起こしやすくするための物質”であり、標的から何かが出てくるわけではありません。もし陽電子が発生したとしても、標的物質の中の無数の電子と反応してFigure 5Aのようにすぐに消滅してしまいます。しかし、その時に発生する0.511MeVの光子(電磁波)を捉えることができれば「存在してない陽電子が発生した」ということを示せます。

こうして計測した結果がFigure 6です。検出された信号のカウント数(縦軸)とその信号のエネルギー(横軸)のグラフですが、ちょうど0.511MeVのエネルギーの付近にピーク(矢印部分)が形成されているのが分かります。

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これはもしかすると陽電子の発生を示しているのかもしれません。ただし、これだけではまだ陽電子の消滅放射線(annihilation irradiation)なのか、ただの光子の散乱線なのか分かりません。たまたま0.511MeVの光子が多く検出されただけかもしれず、陽電子が発生した確証にはなりません。

そこで“陽電子の消滅”のもう一つの特徴である“正反対に2つの0.511MeVの光子(annihilation irradiation)を放出する(Figure 5A)”という現象を利用します。Figure 4左、Figure 5Cのように対称に2つの検出器(Detector/Counter 1&2)を設置します。そしてFigure 4右のように“2つの検出器に同時に感知された信号のみを検出する回路”を設置します。

これによってFigure 5Cのように、“陽電子の消滅によって中心から同時に逆方向に発生した光子のカウント(Coincidences per minute)”だけを検出することが可能になります。精度は10^-6秒(100万分の1秒)以下の正確性で“一致率/同時性(Coincidence rate)”を検出できる回路なので、これによってエネルギーが0.511MeV付近でも陽電子から発生した光子と関係のない光子を区別することが可能になります。

この実験結果はFigure 7のようになりました。縦軸が“反対方向に同時に検出された信号(Coincidence per minute)”で横軸が“ターゲットの鉛の重さ”です。これらの縦軸は“陽電子による消滅放射線の量”と考えることができます。

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標的の鉛が大きくなるほど、陽電子が発生する反応が起こりやすくなりグラフが右上に伸びているのが分かります。この直線グラフは“計算上の陽電子の発生量”になり、曲線の方は“実際に計測されたカウント数”になります。ここに差が生じる理由は「鉛が大きくなるほど反応が起こりやすくなるが、鉛自体が消滅放射線をカットする」ために「実際の発生量よりも計測値は少なくなる」という現象を意味しています。これらの結果が「陽電子が発生した」という間接的な証明となり、「高エネルギーの光子の中から陽電子が発生する」、つまり「非物質から物質が生成される」という科学的に大きな前進をもたらす事実を証明しました。


さらにこのときよりも後になって、この現象を画像化したものがアメリカにあるローレンスバークレー研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)から公表されました。それがFigure 8左の画像です。
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Figure 8は一見子供が描いた落書きのようにも見えますが、これは霧箱と似たような泡箱(Bubble chamber)という“粒子の軌跡を可視化する容器”に高エネルギーのガンマ線を照射して中を撮影した写真です。

まずは下の2つのうず巻きについて説明します。これは2つとも同じ点から発生し、各々逆方向に同じくらいの大きさのうず巻きを形成しています。これは「電荷が反対で同じくらいの質量の物質」、つまり陽電子(e+)と電子(e-)を表しています。そして、その2つのうず巻きの発生地点からもう一本の線が上に伸びています。これは「同時に発生したもう一つの粒子」です。
注目すべき点は、この3つの粒子は同じ地点から発生していますが「突然何も無いところから発生している(下矢印)」ことが分かります。これは「物質では無いガンマ線(光子)から急に物質(電子/陽電子)が発生する様子」、つまり「無(非物質/エネルギー)から有(物質/電子対)が生成される」瞬間を捉えた画像ということになります。この現象は電子対生成(Electron pair production)と呼ばれ、高エネルギーの光子が起こす現象として知られています。


Figure 8の中央付近ではまた別の粒子のペアが生成されていますが、これらも軌跡が逆方向にカーブしているため、電子と陽電子のペアが生成されたと考えられます。先の実験ではこれらを直接撮影したのではなく、この陽電子が消滅した際に発せられた0.511MeVの光子を測定して陽電子の発生を証明した(Figure 7)ことを表しています。

光が物質になる」「光が物質を創造するポテンシャルを持っている」ということが理解できたでしょうか。「無(だと思っていたもの)から有(形あるもの)が生み出される」ということも我々の古い概念を覆す事実ではないでしょうか。

そしてこれらを知った上でFigure 1(冒頭の画像)をもう一度見てみましょう。こちらも実はローレンスバークレー研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)で撮影された高エネルギーの光子や素粒子の相互反応を捉えた実験画像でした(*1)。もうただの落書きには見えないはずです。たくさんの線は幾つもの生成された粒子であり、何も見えない黒い空間には膨大なエネルギーの光子が巨大な滝のように流れているのが感じられるはずです。そして丸い泡のような軌跡は無数の粒子が生成と消滅を繰り返す、絶え間ない動的なエネルギー、躍動的なエネルギーを感じられるのではないかと思います。


次のFigure 9はアメリカのフェルミ国立加速器研究所数百GeV(ギガ電子ボルト)という超高エネルギーを用いて行われたニュートリノの相互作用を捉えた瞬間です(*10)。これも注釈を読んで理解しなくとも、どのような現象が起こっているかは何となく想像できると思います。ただ超高エネルギーが物質を生成する超越した世界や、瞬間のうちに起こる無数の創造と消滅のエネルギーを感じてください。
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Figure 10もローレンスバークレー研究所での実験画像の一部です(*11)。大きなエネルギーの流れがあり、そこに爆発的なエネルギーとともに数多くの粒子が放射されている様子が捉えられています。飛び散った粒子がまたさらに新たな粒子を生み出しているのが見て取れます。これらは火山の噴火のようでもあり、植物が花を咲かせる様子にも見えます。

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次のFigure 11CERN (Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire, 欧州原子核研究機構)でのニュートリノと電子の相互反応を泡箱で捉えた画像です(*12)。この画像を見て何を感じるでしょうか。これは素粒子の世界というよりもむしろ銀河や宇宙のようにも見えます。いずれにしても小難しい理論を超えて、自然科学の造形美と純粋な知の探究の結晶とも捉えられるような美しさを感じる人もいるのではないでしょうか。

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今回は「純粋なエネルギーから物質が発生する」ということを示した科学者達の研究を紹介しました。「無(非物質)から有(物質)が創り出される」ということを知ったことは科学的にも形而上学的にも大きな一歩と考えられます。

前回の記事の最後の疑問「なぜ陽電子は下から飛んできたのか?」というのももう分かりますね。そうです、高エネルギーの宇宙線によってチャンバーの下で創り出された陽電子がチャンバーの中に飛び込んできたのです。


無から有が生じる」ということは物質界のみに起こることではありません。私自身も調べるうちに「知らなかった」ことに気付くことが多いですが、今回紹介した物理法則を「知らなかった」、「今回初めて知った」という人がいたなら、その人の意識の中に形而上学的に「何かが生み出された」かもしれません。

この「物質の創造を知らずに初めてFigure 1を見た時」と、「物質の創造の神秘を知ってFigure 1を見た時」で感覚に違いを感じたならば、その人の中に「何か変化が起こった」と言えます。もちろん物質的な視点で見ても「この記事を読む前と読んだ後の人では、物質的な変化は全く無い」はずです。しかし、形而上学的にその人の意識を見てみると、この自然法則を知ることによってその人が知らなかった領域「無知:Ignorance」の中に「知:Pure Intelligence」が生まれたと言えます。そしてその「知:Pure Intelligence」がFigure 1の「理解:Understanding」をもたらし、「好奇心:Curiosity」、「神秘:Mystery」、「美:Beauty」「感動:Emotion」といった感覚が生じた人もいるでしょう。
今列挙した「知:Intelligence」「理解:Understanding」「好奇心:Curiosity」「神秘:Mystery」「美:Beauty」「感動:Emotion」これらはいずれも「測定できない:Immeasurable」「見れない:Invisible」「比較できない:Uncomparable」ものです。つまり、「物理的でない:Not physical」=「形而上学的:Meta-physical」な要素です。物質世界と同様に非物質世界「形而上学の領域」でも「無の中から有が生じる」という法則が成り立つのではないでしょうか。

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今回の重要なテーマは物質世界において「無(物質ではないもの)から有(質量を持つ物質)が生成される」そして「エネルギーと物質は様々な相互作用を引き起こす」ということです。しかし同時に形而上学的な領域においても「無知という暗闇に知性という光が生成されうる」そして「無の中に生じたものはまた新たなものを無の中に生み出していく」ということが言えます。「物質世界の究極の法則」を現実化(Manifestation)し解明してきた科学者達は非常に偉大だと思います。しかしその科学者達を動かしてきた「原動力」は何でしょうか?彼らを動かしてきた原動力(Driving force)、探究心(Spirit of inquiry)、知性(Intelligence)は「物質ではない」はずです。人類の進化と成長をもたらした著名人達は“無”から“有”を生み出し続けてきたのかもしれません。我々は「“無”から生じた“有”」の中に生きているのかもしれませんね。


引用:
*1. 15-inch bubble chamber event. Photograph taken March 27, 1958. Bubble Chamber-442, National Archives Catalog. https://catalog.archives.gov/id/22122920
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
https://note.com/newlifemagazine/n/n56fb7ec42b46
*4. Moore, RD (1956). An absolute measurement of the pair production cross section of lead at 2.76 MeV (Master's thesis).
*5. Standil S, and Moore RD. "Absolute Pair Production Cross Section of Lead at 2.76 Mev." Canadian Journal of Physics 34.11 (1956): 1126-1133.
*6. ナトリウム24- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ナトリウム24
*7. 可視光線- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/可視光線
*8. Anderson CD. Cosmic-Ray Positive and Negative Electrons. Phys. Rev. 44, 406-416, 1933.
*9. Bubble chamber event. Invisible gamma ray photons produce pairs of electrons and positrons in a bubble chamber at the Lawrence Berkeley National Laboratory. One of the most important results of modern physics, the direct conversion of energy into matter. See also XBD200007-01094.TIF. XBB6911-07281. https://catalog.archives.gov/id/22122522
*10. Picture of Neutrino Interaction. Source: The Village Crier Vol. 8 No. 18, May 6, 1976. https://history.fnal.gov/historical/experiments/neutrino_picture.html
*11. Department of Energy. Lawrence Berkeley National Laboratory. Public Affairs Department. Strategic Resources Office. Photography Services. 2012. File:Cosmic ray event. Photograph taken July 1, 1960. Bubble Chamber-924 - DPLA - 191460725238ea887116556a03df3aba.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cosmic_ray_event._Photograph_taken_July_1,_1960._Bubble_Chamber-924_-_DPLA_-_191460725238ea887116556a03df3aba.jpg
*12. CERN Photo Archive: https://cds.cern.ch/record/39468

画像引用 
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