No.044 数の瞑想(2)

今回は以前一度取りあげた「」について考えていきます。数も日常の領域を超えてスケールの大きな数を想像することで、宇宙や銀河を想像する瞑想と同様に「意識空間を広げる」効果があります。以前の記事“「数」の瞑想(*1)”は良いウォーミングアップになりますので読んでない人はそちらから読んでみると良いと思います


そしてリラックスできるアルファ波を誘導するような環境音楽でも聴きながらイメージしていくとさらに瞑想効果が高まると思います。


まず最初に、これ以上分割できない最小単位である「素粒子」をイメージします。
何もない空間に1つだけ素粒子があります。
1個なので1x10^0個ということなります。

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次は「原子」をイメージします。
原子核は陽子と中性子から成り、陽子と中性子はそれぞれ3つの素粒子から構成されています。
原子核の周りには電子という素粒子の一つが存在しています。
小さな原子は10個〜数十個程度の素粒子からできています。
(光子、グルーオン、ヒッグス粒子といった非物質的な素粒子は除外します)

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次に1グラムの水を想像します。
1モル(mol, *1)の水は18g(グラム)、
1モル(mol) = 6.02×10^23 個の分子を含みます。
よって、1gの水は6.02×10^23÷18 = 3.34×10^22個の水分子から成ります。
素粒子に換算して約10倍するとn×10^23個程度になります。

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では次に地球の大きさや体積を考えてみましょう。
地球の半径は約6400kmなので体積は4/3 ×π(3.14)×(半径6400km)^3 、
地球の体積(単純計算)は4/3 ×π×(6.4x10^8)^3 =1.1×10^27 cm^3となります。
仮に地球が全て水だとしたら構成する分子の数は何個になるか?
1g(1 cm^3)の水は3.34×10^22個の水分子から成り、地球の体積は約1.1×10^27 cm^3なので、地球は3.67×10^49個の分子から成ると概算されます。
素粒子の数にすると1桁上がっておよそn×10^50個と概算できます。

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次は太陽を想像します。
太陽の質量は約2.0×10^30kg、大部分が水素です(*2, *3)
水素の原子量は1なので、1g(グラム)の水素には6.02×10^23 個の水素原子が含まれ、
太陽の質量は2.0×10^30kg=2.0×10^33g(グラム)なので、
 “太陽を構成する水素原子の数”=約1.2×10^57 個となります。
水素の場合は素粒子に換算しても4倍程度なので全粒子数はn×10^57 個とします。

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次は銀河系を想像します。
銀河の画像で見えている光の粒は太陽クラスの“恒星(こうせい:自ら光を放つ星)”であり、見えている天体では質量の大部分を太陽のような恒星が占めています。
このような太陽クラスの恒星が銀河系には約2000億個あると言われています(*4, *5)。

銀河系を構成する粒子の数を考えます。
太陽の原子数=10^57 個
銀河系の恒星の数=2000億個=2.0×10^11 個
銀河を構成する原子の数=10^57 個×2.0×10^11 個=2.4×10^68 個
宇宙に存在する原子の90%以上は水素とされている(*6)ので、素粒子に換算して4倍程度として約n×10^68 個になります。
この直径10万光年の銀河系の中に含まれる全ての粒子を数えると約10^68個のオーダーと言えます。この辺りが「無量大数:10^68」を超える地点になります。

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ではその銀河の集団である「超銀河団」を考えてみます。
我々のいる天の川銀河が属する局所銀河群やおとめ座銀河団を含むさらに大きなラニアケア超銀河団(Laniakea Supercluster, *7)が存在しています。
この超銀河団は約10万の銀河を包括していると推定されています。
銀河1つに含まれる粒子数をn×10^68 個とすると
超銀河団に含まれる素粒子の数はおよそn×10^73個と概算されます。

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ではさらにもっと意識を広げていきます。
前回(*10)、前々回(*8, *9)の記事で紹介したように「宇宙全体の景色」を想像していきます。
超銀河団からさらに意識を拡大してズームアウトしていきます。前々回(*8, *9)の記事が参考になりますが、銀河団からズームアウトしていくと銀河が筋に沿って存在することが分かります。そしてさらに意識を拡大するとその筋が分岐したり結合したりしているのが見えてきます。そして全体が見えてくると、網目状の構造体「コズミック・ウェブ」が見えてきます

この宇宙には約2兆個の銀河があると現時点では考えられています(*11)
銀河の粒子の数を10^68と先程概算しましたが、そうなると10^68×2,000,000,000,000 = 10^80個の粒子がこの宇宙には存在していると推測できます。

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もちろん、ニュートリノ(*12)や宇宙の質量の90%を占めるダークマター(*13)などをカウントできたとしたらさらに10倍、100倍つまり、10^81個や10^82個に増えるのかもしれませんが、この先を読み進めると全宇宙の粒子数の10倍も100倍も誤差範囲ということがわかると思います。

ではこの宇宙の景色からさらに遠ざかっていきます。
意識をさらに拡張させていきましょう。
光が届く範囲、光として観測可能な宇宙の範囲(*14)、半径400億光年とも500億光年とも言われていますが、あなたの意識はそれを超えて広がっていきます


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すると「宇宙全体」を外側から見ることができました。
もちろん、宇宙を空間の外側から、光も到達していない地点から物理的に宇宙を「光」で観測することは不可能です。
但し、あなたの意識は「物質」ではありません
ですからあなたの意識は「物理法則」に従う道理など無いのです。
「見えるはずがない」という「物理法則的な思い込み」で意識を制限する必要はありません
「あなたの意識」は科学的に証明することが不可能です。
「あなたの意識」は物理科学的な枠に収めることができません。
あなたは物質的な肉体を持つことで「物質世界にいる」と錯覚していますが、
あなたの意識は「物質世界」にはありません
「意識」は形のない世界、「形而上学的世界」に存在しています。
「形而上学的世界」から宇宙全体を知覚できたでしょうか。
「形而上学的な世界から見た宇宙」をさらにズームアウトしていきます。
すると、その宇宙の周りには「似たような宇宙」がたくさん存在していました。

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それぞれの宇宙が1つの粒子として存在していました。
そして、その粒子が素粒子のように10個ほど集まって1つの原子を形成し、
粒子が10^23個集まって1グラムの水を形成し、
粒子が10^50個集まって地球のような惑星を形成しました。
粒子が10^80個から成る宇宙が別の世界の1つの粒子であり、その粒子が10^50個集まって別の世界の1つの惑星となっていたので、この惑星は10^50×10^80個の粒子から成っていることになります。

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またこの世界でも惑星が太陽系を構成し、
太陽のような恒星が銀河を形成し、
銀河が超銀河団を形成し、
そしてこれら全てを含む別の宇宙(Another Universe)を形成していました。
全宇宙(10^80個の粒子)が1つの粒子となりその粒子が10^80個集まってまた別の宇宙が形成され、この宇宙は10^80×10^80個の粒子でできていることになります。

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この宇宙の中でさらに意識を広げ、この宇宙を外側から見ると、またさらにその外側が存在していました。
そして、同じように意識を広げていくと同じように、その宇宙が一つの量子となり、原子となり、惑星となり、太陽になり、銀河になり、宇宙になっていました。
しかし、この宇宙のサイクルは3周では終わりませんでした。
10週巡ってもまだ終わらず、100周巡ってもまだ終わらず、1000周巡った時点で全体を見ると、それは一本の長い光の紐となっていました

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この光の紐に存在する粒子の数は
n×(10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×10^80×................... 10^80×10^80×10^80)[1000回繰り返し]個になっています。
粒子の数はn×10^80000個になります。

宇宙が何世代にも渡って延々と繰り返し続く光の紐を見ていると、
遠くに別の光の紐があるのが見えてきました
そして意識を拡大するとさらに何本も光の紐が見えてきました。
どれも延々と繰り返す宇宙によって織られた紐のようでした。
その光の紐は1つの巨大な光の玉へと集まっていました

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その光の玉に集まる光の紐は1000,000本ありました。
つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙が
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となりました。
粒子の数はn×10^80,080,000個になりました。

(読者の皆さん、大丈夫でしょうか。なるべく「千」・「万」といった言葉ではなく実際に粒子が1000個ある様子、10000個ある様子をイメージする方が瞑想効果が高くなります。考えるのを止めても瞑想効果は止まります。頭が重い、フラフラする、眠くなる、額が熱く感じる、という症状は脳が刺激を受けている状態です。「どれだけ多くのものを自在にイメージできるか」が瞑想力であり想像力であり、創造力になります。トレーニングと思って続けれるところまで続けてみましょう。それではまた瞑想へと戻ります。)

またさらに巨大な光の玉から遠ざかっていきます。
すると、同じような無数の紐が絡み合った光の玉がまた見えてきました
その巨大な光の玉は10個あるように見えました。
しかし、さらに離れると、その10個の光の玉はまた幾つも出現してきました。

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その光の玉は1万、10万、100万、いや、もっと多く存在していました。
その無数の紐が絡み合う光の玉は1,000,000,000(10億個)存在していました


つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000回繰り返し] 個の光の玉へとつながりました。


粒子の数はn×10^80,080,080,000個になりました。
この10億個の光の玉は全体で一つの大きな球体を形成していました。
そして、その巨大な球体からさらに遠ざかります。
非常にゆっくりですが、巨大な球体の全体が徐々に見えてきました
やっと巨大な球体の全貌が見えてきました。
さらに意識を広げていきます。

すると、10億の光の玉が集まった巨大な球体がまた一つ遠くに浮かんできました
それが視界に入るようにもっと意識を広げていきます。
すると予想通り、それは一つだけではありませんでした。
巨大な球体は10個、1000個、100万個、10億個、いや、さらにそれより多い1兆個存在していました

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1000周した宇宙から成る紐が100万本集まる光の玉が10億個集まった球体が1兆個存在していました。
つまりn×10^80個の粒子からなる宇宙
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000回繰り返し] 回の宇宙の周回となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000回繰り返し] 本の光の紐となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000回繰り返し] 個の光の玉となり
×(10^80×10^80................ ×10^80×10^80)[1000,000,000,000回繰り返し] 個の光の球体となりました。

粒子の数はn×10^80,080,080,080,000個になりました。
およそ10の80兆乗個という数字に到達しました。
無量大数=10^68すら「微々」たるものに感じますね。

10の80兆乗は書くと簡単ですが、実際には
100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000...........................0000000000(80兆個の0が並ぶ)という数字になります。
仮に「0」を1mmの大きさで書いたとしても、80兆個書くと80,0000,0000,0000ミリメートル=8000万キロメートル=地球2000周分です。
つまり、10^80兆のゼロを全て紙に書いて並べると地球2000周分になるということです。
ここまで来るとこれを表せる単位は無いだろう、と思うかもしれません。


しかしここでまた華厳経(けごんきょう,*15):(正式名称『大方広仏華厳経』だいほうこうぶつけごんきょう、サンスクリット語でブッダーヴァタンサカ・ナーマ・マハーヴァイプリヤ・スートラ)という大乗仏教経典の一部を見てみましょう。この四十五巻には昔から伝えられている数の単位が示されています。(経典を一字一句読まなくても大丈夫です


「一百洛叉為一俱胝,俱胝俱胝為一阿庾多,阿庾多阿庾多為一那由他,那由他那由他為一頻婆羅,頻婆羅頻婆羅為一矜羯羅,矜羯羅矜羯羅為一阿伽羅,阿伽羅阿 伽羅為一最勝,最勝最勝為一摩婆羅,摩婆羅摩婆羅為一阿婆羅,阿婆羅阿婆羅為一多婆羅,多 婆羅多婆羅為一界分,界分界分為一普摩,普摩普摩為一禰摩,禰摩禰摩為一阿婆鈐,阿婆鈐阿婆鈐為一彌伽婆,彌伽婆彌伽婆為一毘攞伽,毘攞伽毘攞伽為一毘伽婆,毘伽婆毘伽婆為一僧羯 邏摩,僧羯邏摩僧羯邏摩為一毘薩羅,毘薩羅毘薩羅為一毘贍婆,毘贍婆毘贍婆為一毘盛伽,毘盛伽毘盛伽為一毘素陀,毘素陀毘素陀為一毘婆訶,毘婆訶毘婆訶為一毘薄底,毘薄底毘薄底為 一毘佉擔,毘佉擔毘佉擔為一稱量,稱量稱量為一一持,一持一持為一異路,異路異路為一顛 倒,顛倒顛倒為一三末耶,三末耶三末耶為一毘覩羅,毘覩羅毘覩羅為一奚婆羅,奚婆羅奚婆羅為一伺察,伺察伺察為一周廣,周廣周廣為一高出,高出高出為一最妙,最妙最妙為一泥羅婆, 泥羅婆泥羅婆為一訶理婆,訶理婆訶理婆為一一動,一動一動為一訶理蒲,訶理蒲訶理蒲為一訶理三,訶理三訶理三為一奚魯伽,奚魯伽奚魯伽為一達攞步陀,達攞步陀達攞步陀為一訶魯那, 訶魯那訶魯那為一摩魯陀,摩魯陀摩魯陀為一懺慕陀,,,,,,,,,,,,」

これは一部ですが、引用の最後の行に「訶魯那(かろな、ka-ro-na)」という単位と「摩魯陀(まろだ、ma-ro-da)」という単位が出てきましたね。
1訶魯那=10^61572651155456(約10^61兆乗)
1摩魯陀=10^123145302310912(約10^123兆乗)

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つまり、今まで想像してきた宇宙を遥かに超えた「10の80兆乗」という数は、「1訶魯那(約10^61兆乗)よりは大きい」が「1摩魯陀(約10^123兆乗)に比べれば遥かに小さい」数ということになります。さらに摩魯陀の次には摩魯陀を遥かに超えた懺慕陀(ざんぼだ: za-n-bo-da)があり、まだその上へと続いていきます。

上の意識を拡大する瞑想に最後までついて来れた方はお疲れ様でした。良い頭の運動になったと思います。しかし、ここまで意識を拡大したとしても我々はまだ「お釈迦様の手の平から外側に出れていない」ということでしたね。

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最後は、「上で想像した10^80兆個の粒子からなる巨大な光の球体の集合体も、その一段上の巨大クラスターの一部だった」という画像でこの章を終わりにしたいと思います。もちろん、数の瞑想はまだ続きます。また次の「数の瞑想」をお楽しみに。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n0671628d60c7
*2. 太陽ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽
*3. 太陽質量ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽質量
*4. 銀河系ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/銀河系
*5. 「星の数」の話ーJST 日本宇宙フォーラム
https://www.pr.jsforum.or.jp/blog_20200519/
*6. 宇宙組成比
https://astro-dic.jp/cosmic-abundance-2/
*7. ラニアケア超銀河団
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラニアケア超銀河団
*8. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
https://note.com/newlifemagazine/n/ne70efe5c50cc
*11. 宇宙に存在する銀河は2兆個、従来の見積もりの10倍ーAstroArts
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/8745_galaxies
*12. ニュートリノ- Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニュートリノ
*13. 暗黒物質−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/暗黒物質
*14. 観測可能な宇宙−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙
*15. 華厳経ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/華厳経

画像引用 
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a9/Blausen_0615_Lithium_Atom.png
https://pixabay.com/illustrations/world-earth-globe-sphere-planet-1348808/
https://www.pexels.com/photo/sun-fire-hot-research-87611/
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https://ras.ac.uk/media/1176
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No.043 宇宙は一つの有機体?マクロとミクロの同調性(シンクロニシティ)

前回の記事では太陽系→銀河系→局所銀河団→超銀河団→観測可能な宇宙のマッピング→宇宙の巨大構造のシミュレーション(ミレニアムシミュレーション *1, *2)というように、宇宙全体を俯瞰して見たときにどのように見えるのか、について現在分かっている最近の情報をまとめました(*3)。

今回はいきなりクイズからですが、下の図1はそれぞれ何の画像でしょうか?

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左右どちらの画像も何かが網の目のように張り巡らされた一定のパターンが見て取れます。どちらが何の画像なのか、いろいろと想像してみてください。

またこの記事は「瞑想」を主なテーマとして扱っているので、「それぞれの画像から何かを感じられるか?」ということを意識してみてください。

そしてこの画像を通して「画像の中の世界」に入り込んでみてください。
この画像の向こうにある「画像の中の世界」の雰囲気・エネルギー・波動、こういった数値では表せない抽象的(形而上学的)な感覚を感じてみてください

「画像を見ているあなたの意識」と「画像に写し出された世界」はつながっています。それは「量子もつれ(*4)」という現象で「意識した対象とリンクする」ことが科学的に説明されています。

そしてこの「意識と対象物の相互作用」というものが実験的に証明されていることは過去の記事でも紹介してきました(*5, *6)。

答えに気付いた人も、まだ気付いてない人も、図1のそれぞれの画像の世界のエネルギーを瞑想することによってしばらくの間感じてみてください(感じた感覚に正解というものはありませんので安心してください)。

それでは画像の答えを示していきます。
まず図1の右側は下の図2のように、どんどん拡大していくと網の目が光の集合体のように見えてきました。これは実は「銀河やダークマターをシミュレーションして100億光年の距離まで視野を広げた宇宙の画像でした(*1, *b)。この「超マクロ(極大)の宇宙の景色」については前回の記事で詳しく解説しているので詳細はそちらを読んでみてください(*7)。

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そして図1左側の画像の正体ですが、こちらは「培養された脳神経細胞(ニューロン)のネットワーク」の画像です(*a)。こちらはマサチューセッツ工科大学で行われている、脳細胞を培養してアルツハイマー病の解明に努める研究を紹介した記事で引用された画像です(*7, *a)。

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このように、片方は100億光年規模の宇宙の超巨大構造であり、片方はミクロン単位の脳神経ネットワークの超微細構造でした。しかし分かった上で図1を見比べてみても非常に良く似ています
このダークマターと銀河が網羅された宇宙のネットワーク構造」と「脳神経細胞(ニューロン)の微細ネットワーク構造」に類似性を見出し、それを数学的に解析した天文学者と医師がいます。今回はその研究を詳しく紹介していきます。

紹介する研究は「The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web(神経細胞ネットワークとコズミック・ウェブの定量的比較, *9)」というイタリアの天文学者と医師による共同研究です。

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研究背景として近年は急速なスピードで宇宙の物理現象が解明されつつあります。前回の記事でも「ダークマターも計算に含めた宇宙全体のシミュレーション」が実現できるようになったことを紹介しましたが、Springel氏らによってそれが公開されたのも2005年と、もう15年以上も前のことになります。

これによって「銀河は見えない何かによってつながっている」、「そのつながりは網目のように広がり、ネットワークを形成している」ということが可視化されました(図2、*1)。可視化された宇宙を見た科学者が「何かに似ている」と思ったのが研究の動機であり、脳科学者の医師と手を組んで実現した研究です。


この研究の手法では、まず脳組織の方は実際に脳腫瘍手術で切除された正常な大脳皮質(Cortex)、小脳皮質(Cellebelum)を用いて40倍の光学顕微鏡で観察した画像が使用されました(図5上段)。
そして比較する宇宙はENZO(*10)と呼ばれる計算コードを用いて100メガパーセク(約326万光年)立方の宇宙構造をダークマターを含めてシミュレートし、それを脳標本のように断面を切って解析に用いました(図5下)。これらの画像は第三者も解析に使用できるようにURL(*11)として公開されています。


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著者らが調査した概算によると、「観測可能な宇宙に存在する天の川銀河と同等以上の規模の銀河≒5.5x10^10個」、「成人の全脳のニューロンの数≒8.6x10^10個」、「成人の小脳のニューロンの数≒6.9x10^10個」という具合にほぼ同じ桁のオーダーで比較することが可能としています。
これら脳組織または宇宙シミュレーションモデルをパワースペクトル解析したのが図6の結果になります。

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ここで“パワースペクトル (power spectrum)について簡潔に説明すると「時間的・空間的に変動する信号(ゆらぎ)をフーリエ変換して、そのフーリエ係数の振幅の2乗を周波数の関数とみなしたもの(*12)」と説明されていますが、深く理解する必要はありません図6の各グラフがよく似た形で重なっていることが分かれば大丈夫です。
実際に図6を見てるとCortex(大脳皮質:黄)とCerebellum(小脳:オレンジ)の40倍(実線)と、Cosmic Web (ダークマター:青)/Cosmic Web(バリオン=物質粒子:紺)がよく重なり、「構造パターンが類似している」ことが数学的に示されています

ここで著者らは対照実験として別の“ランダムに見えるパターン”との比較も行っています(図7)。ここで比較対照として用いたものは「空にある雲 (Sky Clouds)」「樹木の枝 (Tree Branches)」「磁気流体力学的乱流 (MHD Turbulence)」「水の乱流 (Water Turbulence)」といった、自然界におけるランダムに見えるパターンと比較することによって、「脳のニューロンのパターンと宇宙のコズミック・ウェブが本当に類似しているのか」という点を比較しました。

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図7を見ると雲/木の枝/磁気乱流/水の乱流が灰色〜黒の点線で示されていますが、これらは脳ニューロン細胞やコズミックウェブとは類似していないことがわかります。この結果から「他の自然界の普遍的なパターンとは明らかに異なり、脳のニューロン構造と宇宙のコズミック・ウェブ構造は類似している」ということがパワースペクトル解析でも裏付けられたということになります。


次に著者らは脳のニューロンと宇宙のコズミック・ウェブを「ネットワーク解析」の手法で比較検討しました。
以下、小難しい話が苦手な人は「要するに、、、」まで読み飛ばしてOK

ネットワーク解析ではよく用いられるパラメータを2つ取り上げ、それらを解析しています。1つは次数中心性(Degree Centrality: Cd)であり局所領域内のネットワークの接続度合いを測定する解析であり、もう一つはクラスタリング係数(Clustering Coefficient: C)でランダムな点のネットワークと比較してノードの局所近傍内の構造を定量化する、すなわち与えられた接続クラスタ内の全ての三角形に対するノード接続された三角形の比率から求められる係数です(*13, *14)。
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図8ではノード(銀河団/細胞核)がそれぞれ結び付けられてネットワークが視覚化されているのが分かります。この結果、宇宙のノード当たりの平均接続数<k>は3.8〜4.1、小脳では<k>は1.9〜3.7、大脳皮質では<k>は4.6〜5.4という結果でした。
またグラフ下段のクラスタリング係数(C:図8左下)を見ると脳組織もコズミック・ウェブも0.1〜0.4の間にピークが見られています。そして次数中心性(Cd: 図8右下)を見ると1〜4x10^-3という範囲に分布しています。これらを「ランダムなノードの集合」と比較してみます。
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著者らはノードを生成するアルゴリズムであるErdös-Rényi(エルデシュ・レーニィ)モデル(図9、*15, *16)を使ってランダムにノードを生成した場合のクラスタリング係数は0.002以下と脳ニューロンネットワークやコズミック・ウェブ(0.1〜0.4)に比較して全く異なる数値であったと報告しています。さらに次数中心性(Cd)もニューロンや宇宙では1〜4x10^-3であったのに対し、ランダム生成ノードでは10^-6〜10^-7とこちらも3桁ほど異なる数値となったようです。


要するに「ネットワーク解析においてもニューロン・ネットワークとコズミック・ウェブは類似性があり、ランダムに生成されたモデルとは明らかに異なっていた」ことが数学的に示されたということになります。


自然科学的に今回の研究の要点は以下のようにまとめられます。
・脳ニューロンの構造とコズミック・ウェブ構造は類似している
・ニューロン構造とコズミック・ウェブはパワースペクトル解析でも類似性を示した
・雲/樹木の枝/水の乱流といった自然界にありふれたパターンとニューロン/コズミックウェブ構造は類似していなかった
・ネットワーク解析においてもニューロンとコズミック・ウェブは類似性を示した
・ランダム生成モデルとニューロン/コズミック・ウェブを比較したが、ランダムモデルは数値的にも全くかけ離れていて類似性はなかった


ではもう一度ニューロン・ネットワークの画像(図10左上/左下)とコズミック・ウェブの画像(図10右上/右下)を比べてみてください。偶然とは思えないような数学的にも裏付けられた類似性と自然の造形美が見て取れます。

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今回の研究を未知の領域に拡大し、あらゆる可能性を想像してみます。
・一つの銀河さえ宇宙の中では一つの細胞(銀河団クラスター)の中の微小器官なのかもしれない
・銀河同士をつなぐコールドダークマターとはニューロンの突起のような役割を果たしているかもしれない
・ダークマターは銀河クラスター間をつなぎ、領域間で何かを送受信する媒体かもしれない
・宇宙は脳神経のように有機的にネットワークが構築されているかもしれない
・宇宙全体が一つの巨大な有機体として機能しているかもしれない
・この宇宙は何者かの中枢神経組織なのかもしれない
・この宇宙全体が“意志”を持っているかもしれない
・一つの“意志”と一つの宇宙(A Universe)が結び付けられているかもしれない
・存在する“意志”の数だけ対応する“宇宙(Multiverse)”が存在しているかもしれない

全く突拍子もない机上の空論ですが、ダークマターといった未知の存在が宇宙の大部分を占めることがわかった現在、このような可能性を否定できる科学者がいるでしょうか?

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さらに今回の結果を科学を超えた形而上学的な領域で解釈すると以下の法則が見えてきます。
・超極小(ミクロ)の構造と超極大(マクロ)の構造は同期する
・超極小(ミクロ)の構造を追求すると超極大(マクロ)へ到達する
・反対に超極大(マクロ)を追求していくと超極小(ミクロ)へ到達する
・宇宙論が量子理論を決定し、同様に量子理論が宇宙論を決定する
・極小の一部(ミクロ)は全体(マクロ)を体現し、逆もまた真である
・極小と極大は同一である


これらのことは科学的に証明されている法則ではありません。しかし、「科学的に証明されているかどうか」は実は「取るに足らないこと」なのです。なぜなら、「毎年毎年科学的に新しい発見がある」ということは誰しも知っていることですが、それはつまり「新発見=科学が如何に不完全か/科学の無知の部分が一つ解明された」と言えるからです。科学も「成長中の人間と変わらない」と言えます。「科学的に証明されてないこと」と言っても「ただ不完全な科学が網羅してないだけ」ということを知る必要があります。


「真の叡智」とは、「何千年も前から変わらない/変わる必要がない」と言えます。このような智慧を扱う学問が「形而上学(けいじじょうがく)」です。「日々新説が更新され」「過去の常識が覆される」これが「科学」の脆弱性であり「永久不変の形而上学的法則」との決定的な違いです。科学は「未だ不完全/間違うこともある/成長していく」というものです。科学を過小評価も過大評価もせず正当に理解し、全てを包括する形而上学への理解を深めていきましょう「瞑想」は形而上学への扉の一つです。「瞑想」を使いこなし「形のない世界」への親和性を高めていきましょう。


引用
*1. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*2. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*4. *2. 量子もつれ:Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/量子もつれ
*5. “遠隔ヒーリング”は科学的に証明できるか? https://note.com/newlifemagazine/n/n349ffafbd715
*7. マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様? https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*8. Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*9. Vassa F and Feletti A. The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web. Frontiers in Physics 2020(8), 525731. doi: 10.3389/fphy.2020.525731
*10. Bryan GL, Norman ML, O’Shea BW, Abel T, Wise JH, Turk MJ, et al. ENZO: an adaptive mesh refinement code for astrophysics. Astrophys J. (2014) 211:19. doi: 10.1088/0067-0049/211/2/19
*11. https://cosmosimfrazza.myfreesites.net/cosmic-web-and-brain-network-datasets
*12. パワースペクトル−天文学辞典. https://astro-dic.jp/power-spectrum/
*13. Hansen DL, Shneiderman B, Smith MA, Himelboim I. Social network analysis:
measuring, mapping, and modeling collections of connections. In: DL Hansen, B Shneiderman, MA Smith, I Himelboim, editors Analyzing social media networks with NodeXL. 2nd ed. Chap. 3, Morgan Kaufmann (2020) p. 31–51. doi: https://doi.org/10.1016/B978-0-12-817756-3.00003-0
*14. Golbeck J. Network structure and measures. In: J Golbeck, editor Analyzing the social web. Chap. 2. Boston: Morgan Kaufmann (2013) p. 25–44. doi: https:// doi.org/10.1016/B978-0-12-405531-5.00003-1
*15. Erdős–Rényi model−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model
*16. Erdös-Rényi(ER)モデルにおける平均次数、クラスタ係数、次数分布の求め方https://zenn.dev/aobaiwaki/articles/78b09d8b711fc9

画像引用 
*a. Photo "Neurons thriving in a petri dish" by Matheus Victor, M. I. T. in article by Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*b. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*c. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model#/media/File:Critical_1000-vertex_Erdős–Rényi–Gilbert_graph.svg
*d. https://hellobio.com/media/catalog/product/f/i/fig2_1.jpg
*e. https://dendrotek.ca/blogs/scientific-papers/dendritic-polyglycerol-amine-1
*f. https://twitter.com/franco_vazza/status/1189539086375247872
*g. https://www.freepik.com. image by benzoix
*h. https://www.freepik.com. image by kjpargeter
*i. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet

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No.042 マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様?

今回は思考を大きく大きく拡大していく内容になります。我々は宇宙を局所的に見ていますが、もし視野をどんどん拡大していって宇宙全体を見渡せるほどに拡大した場合、宇宙はどのようなパターンになるでしょうか。極限まで大きなマクロ視点で宇宙を見たら、放射状か、らせん状か、同心円か、ハニカムか、網目状か、泡状か、あるいは別のパターンか、どんな模様が現れるでしょうか?今回も太陽系を超えて、銀河を超えて全宇宙レベルにまで思考を拡大していく宇宙瞑想を行っていきましょう。

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まずは我々のいる地球をイメージしましょう。下に挙げた画像は誰もが見たことがある地球の画像です(画像引用*a)。



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次にかなり範囲が大きくなりますが、太陽系全体をイメージしてみましょう。下に太陽系のイメージを挙げます。中心に点のように見える恒星が太陽です。その周りには水星、金星、地球、火星、木星、土星の軌道が描かれています。天王星、海王星、冥王星は軌道が画面の外にはみ出ています。

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さらに太陽系を超えて思考を拡大していきます。
太陽系外の星々、銀河の中では比較的近所の星々が見えてきます。画像では太陽の左下に8.6光年離れたシリウス(Sirius, *1)、左上には36.8光年離れたアークトゥルス(Arcturus, *2)、右の方向には25光年離れたところに夏の大三角形を形成するヴェガ(Vega, *3)が見えてきます。そのほかにも夜空に見える星々が含まれる範囲まで思考が広がってきました。

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さらに一気に思考を広げて我々のいる天の川銀河(Milkyway Galaxy)まで思考を広げていきます。天の川銀河の直径は約10万光年、先ほどのご近所の星々が数十光年の範囲だったので、数千倍〜1万倍の範囲まで意識の範囲が拡大しました。
この銀河の渦の腕の一部に我々の太陽系が見えないくらい小さく存在しています。

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この天の川銀河周辺をもう少し拡大すると下の画像のようになります。左側に天の川銀河があり、その周囲には小規模の銀河や恒星団や星雲が見られます。右側には我々の銀河の倍くらいの大きさのアンドロメダ銀河(*4)が存在しています。アンドロメダ銀河は直径が約22万光年の巨大銀河で、その距離は地球から250万光年と推定されています。

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さらに意識を拡大していきましょう。
我々の天の川銀河やアンドロメダ銀河のある局所銀河団は“おとめ座超銀河団(Virgo Supercluster, *6)”という超銀河団に属しています。下の画像のように天の川銀河もアンドロメダ銀河も識別できないほど小さく左側に存在しています。
右側には銀河が数多く集まっている中心部の“おとめ座銀河団(Virgo Cluster, *7)”が見えます。おとめ座銀河団は1300〜2000個の銀河から成っていて、地球からの距離は約15〜20Mpc(メガパーセク)、約4600万〜6500万光年とされています。

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またこのおとめ座超銀河団からズームアウトしていきます。
するとさらにその外側には別の超銀河団が現れてきました(下図)。数千個の銀河を含むおとめ座超銀河団(Virgo Supercluster)も小さく見え、周りにはペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)うみへび座・ケンタウルス座超銀河団(Hydra-Centaurus Supercluster, *8)が存在しています。もちろんこのほかにも数多くの超銀河団が存在しています。比較的近くにあるように見えるペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)もその距離は2.5億光年離れたところにあります。

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視界はおとめ座超銀河団を超えて数億光年という規模まで拡大してきました。この外側はどうなっているでしょうか?
この範囲を超えて宇宙の彼方まで観測しようというプロジェクトがあります。それは2dF Galaxy Redshift Survey (2dF銀河赤方偏移サーベイ, *9, *10)と称されるオーストラリアのアングロ・オーストラリアン天文台で行われた宇宙のマッピングプロジェクトです。最初の2dFというのは望遠鏡の観測範囲が2平方度(2 degree Field)であることに由来しています。


銀河赤方偏移というのは、以前の記事でも触れましたが(*11)、宇宙というのは現在も膨張し続けています。しかも遠くにある天体ほど高速で地球から遠ざかっています。そのために観測される光の波長が長く赤い方へ偏移(赤方偏移)します。この遠方銀河の赤方偏移を測定することによって宇宙地図を作成しようというものです。


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上の図がその観測結果を統合した宇宙地図の一部です(画像引用*b)。扇状になっているのは、地球が天の川銀河の中に存在するため、銀河円盤方向は内部の星々の信号によって遠方の情報が得られないためです。
この中の青い点が銀河等が高密度に存在している部分で、白地の部分が天体の少ない低密度の領域です。表示されている領域は赤方偏移(z)=0.2くらい、距離で言うと約15〜20億光年までの範囲が描画されています。


こうして見ると数億光年の範囲では宇宙は均一に銀河が散らばっているわけではなく、集中した密な領域と空白の領域が不均一に入り混じっていることが分かってきました。辺縁の方も密度が薄くなっていますが、これは10億光年以上先からの信号の減衰によるものと考えられます。


この先はどうなっているでしょうか。残念ながら地球から観測できる宇宙は天の川銀河の星々に遮られるため銀河赤道方向は正確なデータ収集が非常に困難です。
しかしコンピュータの計算速度の躍進と精度の向上によって宇宙をシミュレーションすることが可能となりました。そのプロジェクトは“ミレニアムラン(Millennium Run, *12)またはミレニアムシミュレーション(Millennium Simulation)”と呼ばれています。その結果が2005年Springel氏らによって公開されました(*13)。


この研究はイギリス、ドイツ、カナダ、アメリカ等の天体物理学者の共同研究である“ヴァーゴ・コンソーシアム(Virgo Consortium, *14)”で行われたシミュレーションです。この研究では下図左側のように銀河や天体をシミュレーションし、右側のジェームスウェッブ望遠鏡からの写真(NASA, *e)と比較するとこのようになります。

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このシミュレーションアルゴリズムは“N体シミュレーション(*15)”に基づいて行われており、天体物理学においては重力相互作用を有するN個の粒子の運動や変化を経時的にシミュレーションする方法です。比較画像のように銀河など一定の質量を持つ天体を粒子の集合体として計算します。


この研究では230〜460万光年立方当たり100億個(0.5〜1Mpc/h当たり2160の3乗個)の粒子をシミュレーションし、これまで観測された宇宙背景放射(CMB, Cosmic Microwave Background, *16, *f)や、銀河間に存在すると言われているコールド・ダークマター(CDM, *17)重力の大部分を占める要素として含まれていますコールド・ダークマターについては過去の記事でも説明しているので見てない方や忘れた方はそちらを読んでみてください(*18)。


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このミレニアム・シミュレーションの結果と先ほどの2dF Galaxy Redshift Survey(上の扇型の宇宙マッピング画像)を2点相関関数で比較したところ、上のグラフのように高い一致率を示し、シミュレーションは非常に高い精度で現在の宇宙を再現していることが分かります。

それではシミュレーションされた宇宙を見ていきます。

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上の画像の視野のサイズが約1800万光年で銀河が散在しています。



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視野を広げて、視野のサイズが約1億3000万光年ほどに広がりました。
先ほど銀河が散在して見えていましたが、何か筋のような構造が見え始めました。
さらに視野を広げていきます。


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さらに広がり、視野のサイズが約12億光年ほどになりました。
先の2dFGRS(扇型の宇宙マッピング画像)のように天体が高密度な領域と、疎な空白部分が混在しているのがこちらでも見えてきました。

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さらに視野を広げていきます。
この視野は約100億光年ほどのサイズになります。
現状では宇宙年齢が約138億年、観測可能な宇宙の大きさは400億〜500億光年(*19)、あるいはそれよりも広いとも考えられていますが、宇宙のかなり広い部分を含んだ視野と言えます。

この構造は泡のようにも見えますし、細かい網の目が張りめぐされているようにも見えます。この構造から巨大視野(マクロ)における宇宙の構造はコズミック・ウェブ(Cosmic Web)と呼ばれています。



銀河はただ宇宙空間を漂っているわけではなく、コールド・ダークマターのような何かのネットワークでつながっているようです。そしてそれは我々の知覚できないレベルでそれは宇宙全体に広がっているようです。宇宙のイメージは最初の予想と合っていたでしょうか、それとも意外な結果だったでしょうか?様々な瞑想法で宇宙と自己の意識を融合させることが取り入れられています。それは波動を上昇させる手段であったり、最終到達段階であったりします。いずれにおいても実際の宇宙の状態を知ることは宇宙全体像の可視化、自己のイメージの具現化に役立つでしょう。意識を宇宙レベルに拡大するトレーニングに使ってみると良いと思います。


引用
*1. シリウス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/シリウス
*2. アークトゥルス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アークトゥルス
*3. ベガ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ベガ
*4. アンドロメダ銀河−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
*5. おとめ座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座超銀河団
*6. おとめ座銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座銀河団
*7. ペルセウス座・うお座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ペルセウス座・うお座超銀河団
*8. うみへび座・ケンタウルス座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/うみへび座・ケンタウルス座超銀河団
*9. The 2dF Galaxy Redshift Survey. http://www.2dfgrs.net
*10. 2dF銀河赤方偏移サーベイ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/2dF銀河赤方偏移サーベイ
*11. 宇宙瞑想:“宇宙は永遠か?”について考える. https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6?
*12. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
*13. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*14. The Virgo Consortium. https://www.virgo.dur.ac.uk/index.html
*15. N体シミュレーション−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/N体シミュレーション
*16. Cosmic microwave background−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*17. コールドダークマター−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/コールドダークマター
*18. 私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2) https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
*19. 観測可能な宇宙−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙

画像引用
*a. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f4/Earth%27s_Location_in_the_Universe.jpg
*b. http://www.2dfgrs.net/Public/Pics/2dFzcone_big.jpg
*c. https://jp.freepik.com/free-vector
*d. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*e. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet
*f. https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/wmap.png

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No.041 ダイソン・スフィアは存在するか?:「タビーの星」への探求

前回は広大な宇宙に存在する知的生命体の文明レベルを分類した“カルダシェフ・スケール(Kardashev scale)”というものについて説明しました(*1, *2)。その中でType IIの文明の定義に“太陽のような恒星1個のエネルギーを使いこなす:ダイソン球(Dyson sphere)の建設が可能なレベル”という記載がありました。
ダイソン球とは、図1画像のように太陽のような恒星を丸ごと包み込むような構造体と考えられ、その恒星から放出されるエネルギーを最大効率で吸収し活用するシステムと考えられています。その形状は様々なバリエーションが考えられていますが、“恒星からのエネルギーを効率良く吸収するシステム”というコンセプトです。

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前回お話ししたように、ダイソン球の名前の由来となっているF.J. Dyson氏は元々は人工的生存圏(artificial biosphere)という意味で高度文明のスペースコロニーなどを意図していたようですが(*3)、その概念が修飾されてカルダシェフ氏や他の科学者らには図のような恒星規模の巨大球体として認識された経緯があるようです。

このような高度な文明による人工物が本当に存在するのでしょうか?このような構造体が実在した場合、星からの光が不規則に変化することが予想されます。今回はその可能性を秘めた天体の研究を紹介していきます。UFOが認定された現代の概念に従って、あらゆる固定観念を捨てて柔軟な思考で真実を探求していきましょう。


・一般的な変光星
変光星とは太陽のような恒星の中で光度が変化するタイプの星を指します。変光星の中でも一定の周期で明るさが変化する変光星のことを脈動変光星(Pulsating variable, Figure 2)と定義されていますが、一般的にその原理は「星が膨張と収縮を一定間隔で繰り返す、あるいは一定の周期で星が変形するため」とされています(*4, *5)。

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我々が住む地球のような惑星は鉄が主成分の中心核、岩石が中心のマントルからなる固体型惑星であり太陽系の水星・金星・火星なども同じ仲間に分類されます。固体型惑星からすると「星が膨張したり収縮したりする」という現象は想像しにくいですが、太陽のような恒星はほぼ水素とヘリウムで構成されており、ガスの核反応が常に起こっている状態です。このような恒星の中では一定周期で膨張/収縮を繰り返すミラ型変光星(*5)やケフェイド(セファイド)変光星(*6)というタイプが知られています。


・NASAによるケプラーミッション
2009年にケプラー宇宙望遠鏡がNASAによって打ち上げられました(Figure 3, *7)。この探査機は太陽系外の惑星探査ミッションのために打ち上げられたもので、銀河系内での地球のような生育環境のある惑星の探索を目的の一つとしていました。そのためにケプラーは固定された視野で15万個以上の恒星の明るさを30分毎に計測する光度計が備えられていました。
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・奇妙な減光を示す星“KIC 8462852”
そのケプラーミッションのデータ解析の中で、2016年エール大学の天文学者タベサ=ボヤジアン (Tabetha S Boyajian)氏奇妙な星についての研究報告を公表しました(*8)。図4は観測データの一部ですが、グラフの横軸は観測の日数、縦軸はある恒星“KIC8462852”の相対光度を示しています。これを見ると図1に挙げたような周期的な変光を繰り返すのではなく、減光(DIP)が不規則に出現していることが分かります。

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特に図4下段に拡大されていますが800日目付近の光度の落ち込み(D800)、1500日目付近の光度の落ち込み(D1500)は特に目立っていて、最大で20%以上も光度が低下しています。しかも光度の低下も一定ではなく、D1500では不規則な減光が集中して出現しています。この原因について調査が進められました。


・恒星KIC8462852の基本データは?
KIC8462852ははくちょう座の方向に地球から1480光年離れた場所に存在します。この星のスペクトル分析や色温度関係に当てはめると、温度は約6780K(約6500℃)で太陽(約5770K)に比べると1000度ほど高温、質量は太陽の1.43倍、光度は太陽の4.68倍、直径は太陽の1.58倍であることが分かりました。我々の見ている太陽よりやや大きいですがほぼ同規模の恒星であると考えられます。

・減光の原因はKIC8462852の惑星?
“KIC8462852の惑星によって光が遮られた”という仮説は成り立つでしょうか。まず我々の太陽系で考えてみましょう。太陽系最大の惑星木星は地球と比べると直径が11倍、質量は318倍と非常に大きな惑星です。しかし太陽と比べると木星でも半径は太陽の1/10、質量は1/1000というサイズです。

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無限遠方から太陽系を観測したときに太陽とその惑星のサイズ比は図5のように見えます。この真ん中に見える大きな惑星が木星ですが、それでも太陽に比べるとこの程度の大きさになります。太陽と木星の直径の比率は10 : 1なので、投影サイズ(面積比)は100 : 1となり、木星が太陽の光を遮ったとしても最大で1%程度の減光にしかなりません。


さらに太陽より約1.6倍大きなKIC8462852の22%も光を遮るような惑星は存在可能でしょうか。ここまで大きな星になると惑星ではなく褐色矮星(かっしょくわいせい: brown dwarf, *9)という太陽の一歩手前の段階の星になります。これらの場合は温度が数百K〜2000Kの温度になり可視光線の光度よりも赤外線領域の光度が高くなりますが、赤外線領域の過剰な電磁波は検出されず、大きな惑星や褐色矮星は否定的と考えられてます。


・KIC8462852の伴星の影響?
さらにKIC8462852をイギリスの赤外線望遠鏡(United Kingdom Infra-Red Telescope: UKIRT)で観測したところその信号分布が非対称であることから「KIC8462852の近くに暗い伴星がある」ということが示唆されました。そこでさらに世界第2位の口径を有するハワイ・マウナケア山頂にあるKeck-II赤外線望遠鏡を用いて高精度な観測が行われました。
結果、図6に示すようにKIC8462852から約2秒角離れた位置に実際に暗い伴星が存在することが確認されました。
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分析ではこの天体はKIC8462852の近くにある星でほぼ間違いない、そして太陽質量の0.4倍以下の褐色矮星であると推定されています。そして偶発的に近くを通過した天体ではなくKIC8462852を公転する伴星であると考えられます。しかしこの天体の公転角度や周期、質量を可変的にシミュレーションしてもKIC8462852の“謎の減光”を説明するものにはなりませんでした

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・小惑星や彗星群の影響?
この謎の減光現象に対して“彗星群の通過”、“小規模惑星の衝突”といった仮説がNASA研究グループからも提唱されていました(図7想像図、*10)。そこで研究グループはスピッツァー宇宙望遠鏡(*11)や広視野赤外線探査機(WISE: Wide-field Infrared Survey Explorer, *12)を用いてKIC8462852の解析を行いました(図8)。
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もしKIC8462852の減光が“彗星群の通過”であればその彗星から放出される塵からの赤外線放出が観測され、“小惑星の衝突”等によるものであれば同様に赤外線が観測されるであろうという予測です。しかし結果としては予想を裏付けるような赤外線の放出は観測されませんでした(*13)。通常考えられる彗星の塵や小惑星衝突による減光は否定的であり、もしかしたら“冷たい彗星群”の可能性はあるかもしれないと結論づけられました。


・“彗星群説”の残された可能性はあるか?
“赤外線を放出するような熱反応のある小天体群”という仮説は先程の赤外線望遠鏡観測によって否定されましたが、“ならば冷たい彗星群なのではないか”という仮説で彗星群説を支持する意見もありました(*10)。そこでまた別の天文学者がハーバード大学のデータアーカイブから1890年から 1989年まで100年にわたるKIC8462852についての記録を解析しました(図9、*14)。

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この研究は100年に及ぶ観測データを遡った解析ですが、その結果は意外なことに「KIC8462852は年間0.164等級の割合で100年間の間徐々に減光している」という結果が示されました。また「このような100年にわたる減光は前例がない」「急峻な減光もユニークな現象」としています。「これらの減光を彗星で説明するならば、直径200kmもの巨大な彗星が64万8000個通過しなければならない」という分析をしており、“彗星群、小惑星衝突説”はいずれも否定的と考えられます。

・他の研究解析
その後も「カラースペクトル分析によって減光現象ではスペクトルによる違いがあることがわかった(*15)」という、完全に不透明なものではなく塵による減光を支持する報告や、「KIC8462852が惑星を吸収することによって減光や一過性の増光が起こっている(*16)」という新説を提案する天文学者も出てきました。
しかし、どの説も「100年に及ぶ長期的な減光」「不規則な減光の頻度」「極端な減光(DIP)のメカニズム」は未だ解明されていません


・KIC8462852の別名“タビーの星”
この”謎の減光を示す恒星”は天文学的にはKIC8462852と命名されていますが天文学者の間では「タビーの星(Tabby's Star)」や「ボヤジアンの星(Boyajian's Star)」というように最初の研究報告者の名前をとった愛称で広く知られています。やはり「高度な地球外生命体の存在か?」「もしかするとダイソン球なのか?」という疑問は皆どこかで持っており、地球外生命体支持派や自然現象支持派もいずれの立場からも熱心に研究が進められています。いずれにしてもはるか遠くの一つの恒星に対して短期間で多くの研究がなされていることから、この星に対する関心の高さが伺えます。

この「タビーの星」に関しては、「人類の考え付く範囲内でこの減光現象を説明できる理論はない」というのが現状です。



・別のタイプの変光星「アルゴル型変光星」
ここでまた別の“謎の星”を紹介します。冒頭で図2に挙げた変光性は一定周期の波のような波形を示していますが、実は不規則なタイプの「アルゴル型変光星(Algol-type variable, *17, *18)」というものが知られています。図10に示すように大きな減光と小さな減光を交互に繰り返すパターンで、その周期は比較的長いことが知られています。
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原理としては2つの恒星による連星が食の状態になる際に「光度の低い星が手前に来ると大きく光度が下がり、光度の高い星が手前にくると光度が少し下がる」と考えられています。ただし、このタイプが初めて知られたのは1600年代と非常に古く、原理が説明されたのは1780年頃と当時の考え方で説明がなされていました。(解明されてない部分もまだあるようです


・アルゴル型にもあった“謎の変光星:ぎょしゃ座イプシロン星”
このタイプの変光星の中で以前から注目を集めていたのが「ぎょしゃ座ε(イプシロン)星(Epsilon Aurigae, *19)」です。この星は連星による食変光星と分類されましたが、変光周期が27.1年と非常に長く、減光期間も約2年も続くという異質な星で関心を集めていました。当初の観測データではぎょしゃ座ε星は太陽の15〜20倍ほどの質量と考えられ、減光をもたらす伴星の質量も太陽の10倍程度あると考えられていました

しかし、「太陽の10倍ほどの質量の星が観測できない」ということは天文学者たちに謎をもたらしていました。また「伴星は小型のブラックホールでは?」という説も提唱されましたがその場合も「周囲の塵やガスから何らかの電磁波や放射線が放出されるはず」ということで何の信号も観測されないことは謎のままでした。


・“ぎょしゃ座ε星の謎”に一筋の光明か
2010年、アメリカの天文学者のハワード(DW Hoard)氏が最先端のスピッツァー望遠鏡を用いてスペクトルエネルギー分析(図11左)を行い、この星の謎に迫る研究成果を報告しました(*20)。その結果、主星のサイズはおよそ太陽の5.9倍、その伴星は太陽の約2.2倍の大きさの恒星で、その伴星は周囲に分厚いガスや塵のような円盤を伴っている(図11右)、との解析結果が得られました。
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・謎の変光星“ぎょしゃ座ε星”はダイソン球ではなさそう、、、
2010年という比較的最近の研究結果ではぎょしゃ座ε星の質量は太陽の6倍程度に修正され、その伴星も太陽の2.2倍程度の恒星のようですが、伴星は厚い塵の層で覆われているようです。伴星を覆っている厚い塵/ガスの円盤は外径が3.8AU(火星軌道よりやや大きい直径)、平均温度が180度℃前後と推測され、これによって伴星の光が外部に出てこない、と結論づけられています。

ハワード氏の研究で以下のような点が明らかになりました。
 - ぎょしゃ座ε星とその伴星はどちらも恒星と考えられる
 - この伴星は恒星のはずだが存在が分からないくらい光が観測できない
 - ぎょしゃ座ε星の伴星は厚い塵やガスのようなもので覆われている(推測)
 - 伴星を覆っている構造は巨大な外径で円盤状である(推測)
 - 伴星を覆っている構造からは180度℃程度の熱放射が観測される

・アレ?もしかしてこちらの方がダイソン球では?
2010年のハワード氏らの研究成果によって長年謎とされていたアルゴル型変光星“ぎょしゃ座ε星”とその連星による変光メカニズムが図11右や図12(いずれも想像図)のようにイラスト化されています(図12の矢印/コメントは筆者によるもの)。

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このようなイラストを見るとぎょしゃ座ε星よりもその伴星の方がダイソン球の特徴を持っているのではないでしょうか。
 - 恒星を包み込むような円盤状構造物
 - 恒星からの光を外部に出さない=恒星からのエネルギーを効率良く吸収
 - 塵状円盤からの放射熱もエネルギー変換消費産生熱の可能性
 - 物質的生命体が存在可能な空間と温度帯が存在する可能性

さらに時期を考慮するとこのぎょしゃ座ε星の研究が公表されたのは2010年であり、「タビーの星(KIC8462852)」や「ダイソン球」に注目が集まる2015年よりも前のことであったため、この伴星とダイソン球と関連づける発想はまだ無かったかもしれません。検索でも「KIC8462852 & Dyson」では数十件の文献が検索されますが、「Epsilon Aurigae & Dyson」では直接関連した文献はほとんど出てきません。タイミングが合えばぎょしゃ座ε星の方もダイソン球の可能性として注目が高まったかもしれませんね。



今回は地球外生命体によるダイソン球の存在の可能性についてリサーチしてみました。「タビーの星」の謎の減光は人工的な原因によるものか、という疑問に対しては“諸説あるがまだ明確な解は得られてない”というところで「我々の想像を超える超自然現象かもしれないし、高度文明による介入かもしれない」と言えます。

また、ぎょしゃ座ε星の謎の変光メカニズムに関しては“ほとんど光を観測できない恒星の存在が示唆された”ことまでは分かりましたが「巨大円盤状構造はまだ推測の域であり、それがダイソン球のような人工的構造物なのかどうかという議論にはまだ至っていない」と言えます。


2020年にUFO情報が公認され、デクラスによって未確認物体に対する国家機密が公開される現代において皆さんの考えはどうでしょうか(*21, *22)。「これらは何かの自然現象で地球外生命体はいない」と思い続けるか、「地球外生命体は存在しているし、人類より高度な宇宙文明は確実にあるだろうな」と思考を拡大していくか、両者で住む次元が変わっていくでしょう。いずれ化石となって風化する社会通念よりも、自分の内にある真実を常に観ながら生活していきましょう。ちなみに今観測している「タビーの星」は1500年前の様子なので、今はとっくに次の進化レベルに到達しているかもしれませんね。


引用:
*1. N. S. Kardashev. TRANSMISSION OF INFORMATION BY EXTRATERRESTRIAL CIVILIZATIONS. SOVIET ASTRONOMY-AJ VOL. 8, NO. 2. Translated from Astronomicheskii Zhurnal, Vol. 41, No. 2, pp. 282-287, March-April, 1964
https://note.com/newlifemagazine/n/n70bc3ea7059a
*3. FJ Dyson. Search for artificial stellar sources of infrared radiation. Science, 1960 -Vol 131, Issue 3414, pp. 1667-1668
*4. 脈動変光星–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/脈動変光星
*5. ミラ型変光星–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ミラ型変光星
*6. ケフェイド変光星−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケフェイド変光星
*7. ケプラー (探査機)–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケプラー_(探査機)
*8. T. S. Boyajian, et al. Planet Hunters IX. KIC 8462852 – where’s the flux? MNRAS 457, 3988–4004 (2016)
*9. 褐色矮星−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/褐色矮星
*10. Strange Star Likely Swarmed by Comets. NASA.
https://www.nasa.gov/feature/jpl/strange-star-likely-swarmed-by-comets
*11. スピッツァー宇宙望遠鏡–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/スピッツァー宇宙望遠鏡
*12. 広視野赤外線探査機(WISE)–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/広視野赤外線探査機
*13. Marengo M, et al. KIC 8462852: THE INFRARED FLUX. The Astrophysical Journal Letters, 814:L15 (5pp), 2015 November 20. doi:10.1088/2041-8205/814/1/L15
*14. Schaefer BE. KIC8462852 Faded at an Average Rate of 0.164±0.013 Magnitudes Per Century From 1890 To 1989. 2016 ApJL 822 L34. DOI 10.3847/2041-8205/822/2/L34.
*15. Deeg HJ, et al. Non-grey dimming events of KIC 8462852 from GTC spectrophotometry. arXiv:1801.00720, 2018. https://doi.org/10.48550/arXiv.1801.00720
*16. Metzger BD, et al. Secular Dimming of KIC 8462852 Following its Consumption of a Planet. arXiv:1612.07332, 2017. https://doi.org/10.48550/arXiv.1612.07332
*17. アルゴル型変光星−天文学辞典
https://astro-dic.jp/algol-type-variable/
*18. アルゴル型変光星−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルゴル型変光星
*19. ぎょしゃ座イプシロン星−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ぎょしゃ座イプシロン星
*20. Hoard DW, et al. Taming the Invisible Monster: System Parameter Constraints for є Aurigae from the Far-ultraviolet to the Mid-infrared. The Astrophysical Journal, 714 549, 2010. DOI 10.1088/0004-637X/714/1/549
https://note.com/newlifemagazine/n/n675d5dea739e
https://note.com/newlifemagazine/n/n5e9e3a134353
画像引用
*a. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6f/Dyson_Sphere_Render.png
*b. https://ja.wikipedia.org/wiki/ミラ型変光星#/media/ファイル:Mira_light_curve.png
*c. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3f/Keplerpacecraft.019e.jpg
*d. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/28/MilkywaykeplerfovbyCRoberts.jpg?uselang=ja
*e. https://i.redd.it/a-size-comparison-of-our-solar-system-1-000-jupiters-could-v0-imw8qbmp6me81.jpg?s=beffea9f446b7fc56d2358757d7eced0c9a04920
*f. https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/pia20053-label.jpg
*g. http://www.spitzer.caltech.edu/images/3072-SIRTF-Spitzer-Rendered-against-an-Infrared-100-Micron-Sky
*h. https://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA17254
*i. https://encyclopedia2.thefreedictionary.com/Algol
*j. https://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_1580.html
*k. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Epsilon_Aurigae_star_system.png
*l. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Dyson_Swarm_-_2.png
*m. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Dyson_Bubble.png

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No.040 宇宙規模での地球の文明レベルは?:カルダシェフ・スケール

今まで私達が学校で受けてきた教育では「人間が生物界の頂点であり、現在のところ地球外生命体や文明の痕跡は確認されていない」という前提で教えられてきたと思います。しかしこれまでの記事で焦点を当てたように、まず未確認飛行物体(UFO)が地球にやってきていることがほぼ確実なようです(*1, *2)。そしてよく訓練された旧ソビエト連邦の宇宙飛行士が6人同時に翼を持った人型の発光体を目撃するという事例も過去に報じられています(*3)。

もし私達以外にもこの銀河系や宇宙に文明を持つ生命体がいるとしたら、どれほど発達した文明が存在しているのでしょうか。また、我々の文明は宇宙規模で見たらどの程度発達しているのでしょうか。過去の記事で挙げたUFOの飛行性能からすると、彼らの持つテクノロジーは現在の人類の持つ科学技術を遥かに凌駕しているようです。こうなると我々が受けてきた教えの大前提が変わってくることになります。
今回は1960年代の非常に古い研究ではありますが、当時から既に地球外生命体や地球外文明にフォーカスを当てていたスケールの大きな論文を紹介します。今回も地球人類のテクノロジーを超えて、銀河レベルのテクノロジー・宇宙レベルのテクノロジーについて思考を拡大し瞑想していきましょう。
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・旧ソビエトの天文学者:ニコライ・カルダシェフ
1955年旧ソビエトのモスクワ大学を卒業したニコライ・カルダシェフ(N. S. Kardashev, *4)はシュテンベルク天文学研究所の研究員となり、強い電磁波を放出する天体・クエーサー(*5)について研究することになります。そこで外宇宙から放出される電磁波が地球外文明からの信号である可能性について研究し、地球外生命体研究の専門家となりました。カルダシェフ氏は既にこの時期から地球外生命体の存在を意識し、1964年に興味深い研究論文を発表しています(*6)。


・天体間の通信の可能性を探究
カルダシェフ氏は当時研究していたクエーサーからの強い電磁波の研究にヒントを得て「広大な宇宙に存在する文明の情報を知るには、その天体との通信が可能であることが大前提である」という考えに至ります。そのような視点から、地球を越えて宇宙に向けた電磁波による通信の可能性を探索していきました。

宇宙規模の遠くの天体と通信するにはまず「電磁波信号の出力が一定レベル以上、銀河から放出される熱または電磁波によるノイズよりも強い信号でなければならない」といった条件を満たす必要があり、これについて図2のような計算過程が構築されました(Figure 2. *6)。(図の計算内容自体は理解せずに読み飛ばしても大丈夫です)

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・情報出力のパワーをエネルギー消費量から推測
カルダシェフ氏は“情報出力における重要な要素であるパワーは、その文明のエネルギー消費量に比例する”と提唱しています。ここで同氏は当時の世界におけるエネルギー入力/出力の総量に着目します。当時のエネルギー産生/消費の世界的な動向を調査した資料(Figure 3, *7)によると木材→石炭→石油/ガスなど燃料の世代交代が行われる度にエネルギー生産効率が指数関数的に増加していくことが示されています。当時のデータでは全人類が1秒間に消費するエネルギーの総量は約4.0x10^19erg(現在のSI単位では約4.0x10^12W: ワット)とされており、年間増加量は3~4%という試算がされています(*7)。

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・エネルギー消費量増加の試算
カルダシェフ氏の試算では、人類のエネルギー消費の年間増加分を x%とすると、

  [ t年後のエネルギー消費量 = (1+x)^t  =  e^tx ]

で概算可能としています。これによると3200年後には人類の消費エネルギーは4×10^33 erg/sec (4×10^26W: ワット)となり、太陽が生み出すエネルギーに等しくなり、さらに5800年後には太陽の10^11倍(太陽約1000億個分)のエネルギーを産生するようになるだろう、と推測しています。


・当時の推測の妥当性
このようなカルダシェフ氏の展望は一見飛躍した理論のように聞こえるかもしれませんが、ある面では人類の技術的進化は指数関数的に伸びることが実証されています

コンピュータ業界では有名な法則で「ムーアの法則」というものがあります。これはゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏により「集積回路の密度(=コンピュータの性能)は毎年2倍のペースで向上する」ということがカルダシェフ氏論文とほぼ同時期の1965年に研究報告されています(*8)。

そしてなんとFigure 4のグラフに示されるように、当時の報告から50年以上経ってもその法則に沿って毎年2倍の速度でコンピュータの性能が向上し続けています(*9)。なので、カルダシェフ氏によるエネルギー消費量の試算も考え方は妥当性の高いものと考えられます。

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・エネルギー消費量によって文明レベルを層別化したカルダシェフ・スケール
カルダシェフ氏は人類のエネルギー消費量の試算から、文明のレベルを以下の3つに分けました(Figure 5, *6, *10)。

Type I: エネルギー消費量が現状の地球のレベルに相当する。目安として4×10^12ワット(Fig 5は後述するCarl Sagan氏の提案に基づいているため数値が若干異なっています)。

Type II: エネルギー消費量が太陽の産生エネルギーに匹敵する。目安として4×10^26ワット。“ダイソン球(Dyson sphere: 後述)”の建造が可能なレベル。

Type III: エネルギー消費量が銀河全体の産生エネルギー(およそ太陽1000億個分)に匹敵する。目安として4×10^37ワット。

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このカルダシェフ・スケールを言い換えると、Type I=惑星1個分のエネルギー、Type II=太陽と同等の恒星1個分のエネルギー、Type III=銀河1つ分の全エネルギーを使いこなせる文明レベル、と説明することができます。これは当時としても発想のレベルが想像をはるかに上回っていたのではないでしょうか。

・カール・セーガン (Carl Sagan)氏による補正
この後約10年ほど経った1973年、アメリカの天文学者カール・セーガン氏が発行した著書“The Cosmic Connection. An Extraterrestrial Perspective(宇宙とのつながり.地球外の視点 *11)”においてカルダシェフ・スケールの補正案を提唱しています。この著書では太陽と同等の恒星の全エネルギー(約10^26W:ワット)を使いこなせる文明をType IIとし、Type IIの1/10^10(100億分の1)=10^16W(惑星レベル)をType IType IIの10^10倍(100億倍)=10^36W(銀河レベル)をType IIIと定義しました。Figure 5はこの補正されたスケール(*11)を基に描かれており、原版のカルダシェフ・スケール(*6)と若干ずれているのはこのためです。


・地球の文明レベルはType いくつ?
セーガン氏により補正されたカルダシェフ・スケールでは、その文明の消費エネルギーが10^16WをType 1.0、10^17WならType 1.1、10^18WならType 1.2、、、というように10倍になる毎にスケールが0.1ずつ上昇するように設定されています。Type I→Type II→Type IIIとちょうど10^10倍になっているのはその間にある文明も0.1刻みで表現しやすいよう考慮されていると考えられます。

そこで肝心の地球の文明レベルですが、当時のデータから地球の消費エネルギーが10^12Wくらいとすると地球の文明レベルは Type 0.7くらいであろうとセーガン氏は提唱しています。宇宙規模ではType Iに満たない開発途上惑星かもしれません

・1964年のカルダシェフ・スケールの先見性
今から50年以上も前のことで“宇宙人/地球外生命体”というとSF小説やフィクションの世界であったと思われます。実際、カルダシェフ氏が地球外文明探索に乗り出すきっかけとなった宇宙からの未知の電波源はクエーサー(*5)であることがわかりましたが、このような常識にとらわれない研究視点は当時は貴重であったと思われます。そしてカルダシェフ氏の“人類の技術的進歩が指数関数的に増加する”という試算はムーア氏によって翌年同じような予測が提唱されており(*8)、実際にその後の50年間ほぼ予測通りに技術が発達していることは両氏の先見性が非常に優れていたことを裏付けています。

また太陽の全エネルギーや銀河系の全エネルギーを使いこなす文明の存在を定義するなど、その発想の規模も我々の常識的な考えを打ち破る壮大なものであると言えます。


・カルダシェフ氏の想定外だったこと?
21世紀になり、つい最近になって“UFOが実在する”ということが国際的な認識になってきており、地球外生命体というのもほぼ確実とみられています。カルダシェフ・スケールは“天体間の通信を確立するために必要なエネルギー”という前提で計算されています。同氏の研究のきっかけも宇宙からの強い電波であったように“遠く離れた天体に信号を送信または受信可能なエネルギー限界”という視点から計算が構築されています。


しかし「実は彼らは既に来ていた」のではないでしょうか。確かにカルダシェフ氏らの考える通り、人類の文明は指数関数的に発達していき同様にどこかに存在している地球外生命体の文明も指数関数的に発達していき、いずれは恒星1個の全エネルギーを使いこなせるほどのテクノロジーを発展させるかもしれません。ただし、そのようなテクノロジーを持つ文明が通信技術を用いるよりも「直接来ることができる」という水準にまで到達してしまう可能性が高いと考えられます。

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・もっと遠い過去から地球外文明が降り立っていた可能性
さらに推測するならば、外宇宙の高度に文明を発達させた惑星では数百年、いや数千年以上前から地球に対してメッセージを送っていたのかもしれません。奇跡的に有機体で出来た生命の生息できる地球に対して何百光年も離れた星からサインを送り続けていた可能性もあります。もしかしたら「地球から我々にメッセージを送れるまで文明の進化を待つよりも直接行った方が早いのでは?」という決断に至ったのかもしれません。

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Figure 7はほんの一部ですが紀元前から地球に存在していた古代文明の代表例です。シュメール・メソポタミア文明、エジプト文明、マヤ文明など古代の遺跡や壁画、文字など多くの文明の痕跡が現在まで残されています。その中には「知られてないはずの太陽系の惑星や星々/翼を持つ人型の存在/異形の頭を持つ神々/宙に浮く乗り物の絵」など地球上のものとは思えないものが描かれ、中には現代に至っても謎が解明されていないことも数多く存在します。


学校の教育では何の解説もなく「過去の人類はこのような文明をもっていた」と教えられてきましたが、原始人のような人類が自力で急にこのような文明を世界各地で同時期に発展させたのでしょうか?「広い宇宙に人類以外に生命体はまずいない」「人類は何千万年もかけて猿から進化した」と何の疑問もなく教育されてきましたが、「UFOが実在した」「人類よりはるかに高度な技術を持つ知的生命体がいた」「有史以前から既に地球にコンタクトしていた」という仮説が成立すると全く話が変わってくるのではないでしょうか。


実際に、カルダシェフ氏の文献(*6)では「Type IIやType IIIの文明が銀河系内に1つでも存在すれば膨大な情報が得られる可能性がある」と記述されています。地球上においても先進国から開発途上国に技術がもたらされると急速に発展が促されるケースがあります。それと同様に古代人類に知識と文明をもたらしたのは先にType II/IIIに到達した地球外文明であったのかもしれませんね


・ダイソン球(Dyson sphere)とは
先程のカルダシェフ・スケールのType IIに“ダイソン球の建造が可能なレベル”と定義されていました。これはフリーマン・ダイソン(Freeman J Dyson)という物理学者がカルダシェフ氏の研究発表に先駆けて1960年に公表した研究(*14)において、文明の進化が指数関数的に加速することや地球外生命体の存在について考察しており、「我々がそのような地球外生命体を観測できる頃にはその文明ははるかに進歩しているだろう」という考察を述べています。

さらに「高度に進歩した文明においては太陽のような恒星から放出される熱や光を効率良く利用できるような人工生物圏(artificial biosphere)を構築しているだろう」と記述しています。これはどうやらスペースコロニーのような人工生物圏を意味していたとも言われていますが、下図(画像引用 *f)のような「恒星をまるごと取り囲みエネルギーを収集する球体(sphere)」というイメージが定着し、カルダシェフ氏もそのような概念でType II文明レベルに組み込んだとされています。

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いずれにしてもとても規模の大きな話です。カルダシェフ・スケールというのは皆さんご存知だったでしょうか。もちろん知らなくても当然のことですが、太陽を丸ごと包み込んでしまうような球体の構築やこの銀河全体のエネルギーを自在に使いこなせる文明とはどのようなものなのか想像を巡らせてみましょう。ここで紹介したカルダシェフ氏やセーガン氏、ダイソン氏らの頭の中にはこれらのような文明がイメージされていたのではないでしょうか。


ちなみに人類の技術の進歩は現在も急速に進んでいます。歴代のスーパーコンピュータでは1997年〜2000年まではアメリカのサンディア国立研究所製の"ASCI-Red"というスーパーコンピュータが約1テラFLOPS(1秒間に1兆回の計算速度)で3年間世界一を保持していました(*15, *16, *17)。その大きさは15メートル〜20メートル四方の部屋にコンピュータが敷き詰められているようなサイズです。

しかし、2022年に発売されたスマートフォンのiPhone 14は約2テラFLOPSでこのASCI-Redを上回りました。つまり、12年前は世界一であったスーパーコンピュータの倍の性能のコンピュータが街を歩いている一般人のポケットに入っていたりする昨今です。


宇宙は予想以上に急速に私たちにとって身近な領域になるかもしれません。宇宙規模・宇宙視点で物事を観ることができるように思考を宇宙に向けて大きく拡大していきましょう。そして、我々が学校で受けてきた教育や学校の教え、今まで信じてきた常識がどこかで180度ひっくり返るかもしれません。その時がいつ来てもいいように、常に周囲に流されることなく自分の直感を信じて正しい情報を選び、自分で想像して考えるようにしていきましょう。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n675d5dea739e
https://note.com/newlifemagazine/n/n5e9e3a134353
https://note.com/newlifemagazine/n/nd948625fbace
*4. ニコライ・カルダシェフ−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコライ・カルダシェフ
*5. クエーサー−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/クエーサー
*6. N. S. Kardashev. TRANSMISSION OF INFORMATION BY EXTRATERRESTRIAL CIVILIZATIONS. SOVIET ASTRONOMY-AJ VOL. 8, NO. 2. Translated from Astronomicheskii Zhurnal, Vol. 41, No. 2, pp. 282-287, March-April, 1964
*7. P.C. Putnam, Energy in the Future, New York 1948.
*8. Moore G. Cramming more components onto integrated circuits. Electronics, Volume 38, Number 8, April 19, 1965
*9. ムーアの法則−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ムーアの法則
*10. Kardashev scale- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Kardashev_scale
*11. Carl Sagan. The Cosmic Connection. An Extraterrestrial Perspective. New York : Doubleday, 1973.
*12. Watch the Pentagon's three declassified UFO videos taken by U.S. Navy pilots. CNBC Television. https://www.youtube.com/watch?v=rO_M0hLlJ-Q
*13. https://edition.cnn.com/2017/12/19/us/pilot-david-fravor-ufo-jim-sciutto-outfront-cnntv/index.html
*14. FJ Dyson. Search for artificial stellar sources of infrared radiation. Science, 1960 -Vol 131, Issue 3414, pp. 1667-1668
*15. 2020-06-26スーパーコンピュータ演算性能の変遷. by ATATAT.
https://atatat.hatenablog.com/entry/2020/06/26/003000
*16. ASCI Red-Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/ASCI_Red
*17. FLOPS-Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/FLOPS
画像引用
*a. https://wallpapercave.com/w/1pHKafp
*b. https://wallpaperaccess.com/sumerian
*c. https://pixabay.com/photos/egypt-papyrus-royals-1744581/: By Souza_DF
*d. https://pixabay.com/photos/camel-desert-pyramids-egypt-person-1839616/ By Pexels
*e. https://wallpaperaccess.com/mayan#google_vignette
*f. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6f/Dyson_Sphere_Render.png
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