No.051 「無」と「有」の等価性:「0 = 1」を科学的・形而上学的に理解する

前々回は「反物質の発見(*1, *2)」、そして前回は「それらは何処からやってきたのか?(*3, *4)」という点について研究を紹介してきました。これらの研究は世界的に影響を与え、ノーベル物理学賞につながって人類の進化に大きく貢献したものもありました。

我々は古来から「見えるものしか信じない」「形のあるもの以外は信じない」という考えに捕らわれてきました。しかし、「無いもの」と「有るもの」は「絶対的なのもの」なのか、「無いもの」と「有るもの」は互いに変化しうるものなのか、真実を知りながら想像していきましょう。


タイトルは「0 = 1」など科学的ではありませんが、今回も内容は科学的な内容です。しかし、この世界は「見えるもの」だけで成り立っているわけでははく「見えないもの」も広く存在しています。「科学で証明できるもの」も存在していれば、我々の意識や感情など「科学で証明できない=形の無い(形而上学的な)もの」も存在しています。

つまり、この世界を深く理解するには「科学的な面だけに捕らわれて」も不完全ですし、それは反対に「形而上学的な面だけに捕らわれて」も不完全と言えます。言ってみれば「右脳と左脳」の関係のように、「どちらの方が優れているか/劣っているか」という次元の話ではなく、「両者を理解し、使いこなし」この世界を深く理解していくための知性を身につけていくことがこの記事の目的です。

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形而上学的な側面では「あるものには反対の性質を持つものが必ず存在する」、また有る側面の性質は別な側面での性質と一致する」という普遍的な法則が存在します。つまり、「科学をより深く理解する」ことはもう一方の側面である「形而上学をより深く理解する」ことと「全く同じ」ことであると言えます。


それでは科学的に証明された事実を理解し、それを想像し瞑想して自分の意識に取り入れ、自己と外界、科学と形而上学を融合させていきましょう。今回の記事は以前の「有るはずのない物質:“反物質” (*2)」、「「無」から「有」は生み出されるのか?(*4)」と続いているので、これらを読んでからこの記事を読むと理解が早いと思います。


それでは本題に入ってFigure 2を見てみます。一つの原子(Atom)に宇宙線やガンマ線などの電磁波(Electromagnetic wave/ Cosmic-ray/ Gamma-ray)が入射した図です。光は電磁波(Wave)であると同時に粒子(particle)光子(photon)としての性質も持っています(粒子と波の二重性について詳しくは過去記事参照: *5)。

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この内部を拡大していくとFigure 3のようになります。エネルギーの強い光子(photon)原子核(Nucleus)の周囲のクーロン場(Coulomb field)を通過すると、電子(e-: electron)陽電子(e+: positron)が発生します (*6)。クーロン場とは原子核の周りの電磁気力が働く領域のことです。

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簡単に言ってしまいましたが、実際にはすごいことが起こっています。
ただの「光」という「物質ではないもの」から「電子/陽電子」という「実体のある物質」が出来た、ことになります。「真空(無)から物質(有)が突然現れた」とも言えます。この現象は電子対生成(Electron pair production)と呼ばれています。


ここで終わってしまってはまだまだ浅い知識で終わってしまうので、もう少し深く掘り下げていきます。物理や数学が苦手な人でも大雑把に読むだけでも理解可能ですので少しだけ我慢して読み進めてみてください。

Figure 4を見てみましょう。エネルギー (Energy) と運動量 (Momentum) の法則(Energy-Momentum Relation)とありますが、ある物体が持つ全エネルギー[E]の2乗=(運動量 [p] * 光速 [c])の2乗+ (質量 [m] * 光速 [c]^2乗)の2乗 という公式が与えられています (*7)。

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Figure 4下段を見ると光子 (photon) が持つ全エネルギー [E-photon] は運動量 [p1]*光速 [c] (=hc/λ)で表されます。生成した電子の全エネルギー [E-electron] は (運動量 [p2]*光速 [c]^2乗+0.511^2乗)の平方根で表されます。陽電子の全エネルギー [E-positron]も同様です。

0.511は何を表しているかというと、電子または陽電子の“重さ”をエネルギーに変換した値(単位はメガ電子ボルト= Mev: mega-electron volt)です (*8)。光には重さがないため、この質量エネルギーが“0”で表されています。Figure 4が何を表しているかというと、まず第一段階として“光子”/“電子”/“陽電子”が持つ全エネルギーを値として表したものになります。

次にFigure 5を見てみましょう。こちらは実際に電子対生成が起こった状況に運動量やエネルギー量を書き加えた図です。

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Figure 5の左側には光子とその全エネルギー量 [E-photon] が示され、右側には真空から出てきた電子とその全エネルギー量 [E-electron]、そして同時に生成された陽電子とその全エネルギー量 [E-positron] が示されています。下の式を見ると、E-photon = E-electron + E-positron という等式が成り立ち、その下の「p1c = ・・・」という式も表記が違いますが“左辺と右辺が等しい”ということを表しています。

Figure 5の一番下の式は“質量のみ”という前提ですが「無(0)」が「有(1)」になったということを表しています。数学者の方々もここは意図を解釈して頂けると良いかと思います。


次はFigure 6ですが、今度は反対に「電子と陽電子が接触して消滅し、2つの光子になる」という反応を図にしたものです。

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ほとんど運動していない状態の電子 (e-: electron) と陽電子 (e+: positron)が接触すると“消滅 (Annihilation)”し、2つの光子 (photon) が発生します。このとき発生する光子のエネルギーは正確に0.511 Mevで、正反対方向に2つの光子が飛んでいきます。この発生した正反対方向の2つの光子(電磁波)を消滅放射線 (Annihilation irradiation)”と呼びます。電子と陽電子はどうなるかというと、消滅して「無」になります。

これを現実的に“運動している電子と陽電子の衝突”として図にするとFigure 7のようになります。[p2]の運動量を持つ電子と[p3]の運動量を持つ陽電子が衝突し、[p4]の運動量を持つ光子と[p5]の運動量を持つ光子の2つが生成されます。

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Figure 7の下段の方が上段の反応を式で表したものです。電子の全エネルギー [E-electron]+陽電子の全エネルギー [E-positron] = 光子1の全エネルギー [E-photon1] + 光子2の全エネルギー [E-photon2] で“左辺と右辺が等しい”ことが分かります。こちらも一番下の式は“質量のみ”の前提で表記したものです。「2つの電子の質量」が「2つの質量ゼロの光子」へと変換されるため、「有 (1)」=「無 (0)」であると言えます(もちろん物質的な側面のみの視点です)。


これらの対生成 (Pair Production) と対消滅 (Pair Annihilation)をまとめるとFigure 8のように表せます。物質的視点では「物質が真空から出現」したり、「物質が消滅」したりしているようですが、エネルギーつまり「見えないもの」も含めると「上半分と下半分は常に等しい」、「全ての質量やエネルギーは保存されている」ということが分かります。

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物質=目に見えるもの=有るもの=1」と「非物質=目に見えないもの=無いもの=0」は「等しい」ということが分かります。もう一度言いますが、この記事は「科学的」でもあって「形而上学的」でもありますので、矛盾はしていません。「0 = 1であり、1 = 0である」ということが言えますが、ここまで読んだ方ならFigure 8を見てよく理解できると思います。

この反応で一つ条件があるとすると、Figure 5の中段の式にあるように光子の全エネルギー [E-photon] ≥ 1.022 Mev である必要があります。これは、“電子2個分(0.511Mev×2)の質量以上のエネルギーを持った光子でないと電子/陽電子のペアを生み出せない”ことを意味しています。どんな光子でも電子を生み出せるわけではなく、反応の前後でちゃんと計算が合っています。ですので「0 = 1であり、1 = 0である」と言える一方で、「何一つ減ってはいないし、何一つ増えてもいない」という「エネルギー保存の法則」も成立しています。


このことから分かるように「物質 (Mass)」は「エネルギー (Energy)」であり、「エネルギー (Energy)」は「物質 (Mass)」です。「見えるもの」と「見えないもの」は等価値であり、「形あるもの」と「形のないもの」も等価値であることを科学を通して理解できたと思います。



さらに話題を発展させますが、「形を持つ」か「形を持たない」かは「光子」だけでも起こりうる現象です。先にも述べたように「光」は「波 (Wave)」でもあり「粒子 (Particle)」でもあるという「二重性 (Duality)」という性質を持っています。つまり、「常に振動し、境界が無く、無限の広がりを持ち、形のない、数えられない [0]」「波」の性質であると同時に「球状の形をとり、位置や大きさが特定され、数えられる [1]」「粒子」の性質を同時に持っています。

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光はこの「0の状態」と「1の状態」を同時に有しています。つまり光の状態においても「0 = 1」という式が成り立ちます。そしてこれは「物質ではない光子」にも、「物質である電子」でも当てはまる非常に興味深い性質です。「二重スリット実験」を知っている人ならもう驚かないかもしれませんが、もし知らない人がいるならば過去記事(*5)を見直してみてください。

興味深いことに光子の状態[ 0 / 1 ] を切り替えるのは「観測するかしないか」という「人間の意図」によって変化します。「観測しようとする」と光は「粒子」の状態になり、逆に「観測をやめる」と「波」の状態になります (Figure 9)。この点においてははっきりと再現性をもって証明されています。そして「人の意識」が「量子状態に作用する」ときには「空間を超えて作用する」ということも実験的に示されています (*9)。ただし、現時点では「意識」と「物質」の相互作用については科学ではまだ未解明な部分が多いです。ここから先はさらに本格的な形而上学の領域になるかもしれません。

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今回は、「形のないもの」と「形のあるもの」、「エネルギー」と「物質」、「波」と「粒子」、「0」と「1」、というような2つの状態について「科学」と「形而上学」という対照的な視点から解説しました。

・「無」も視点を変えれば「有」である
・「無」と「有」は等価値のものに変換できる
・「形あるもの」は形が無くなっても「別の何か」に変わる
・いずれも同じものが形を変えただけにすぎない
・「形のないもの」を見ることで全体が理解できる
・実は「何一つ失われたり超過するものは無い」
・「無」と「有」の変換に「意識」が相互作用する可能性がある


科学と形而上学で「電子と陽電子の対生成」という現象を解釈するとこのようになります。形而上学の法則に「As above, so below. As below, so above (下なるは上の如く、上なるは下の如し)」という言葉があります(*10)。意味や解釈は非常に深遠ですが、端的には二つの世界の片側に存在するものはもう一方の世界にも同じように顕現する、という意味です。「形あるものの世界をみることで、形ないものの世界を知ることができる。そして逆もまた真なり」ということです。「科学物理の世界 (Physics)」と「形而上学の世界 (Metaphysics)」は表裏一体です。人類が「全て科学的に網羅した」と思った先にそれより広い「形而上学の世界」が存在しています。そして「意識」がその境界を行き来する「鍵」と言えます。瞑想によって「意識」を使いこなせればその世界とこちらの世界を行き来できるようになるかもしれませんね。


引用:
*1. Anderson CD. Cosmic-Ray Positive and Negative Electrons. Phys. Rev. 44, 406-416, 1933.
https://note.com/newlifemagazine/n/n56fb7ec42b46
*3. Standil S, and Moore RD. "Absolute Pair Production Cross Section of Lead at 2.76 Mev." Canadian Journal of Physics 34.11 (1956): 1126-1133.
https://note.com/newlifemagazine/n/n8833f57562bf
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
*6. Bethe, HA, and Maximon LC. "Theory of bremsstrahlung and pair production. I. Differential cross section." Physical Review 93.4 (1954): 768.
*7. Energy–momentum relation- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Energy–momentum_relation
*8. Electron mass- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Electron_mass
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56
*10. As above, so below- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/As_above,_so_below
画像引用:
*a. https://all-free-download.com/ Author: Public-domain-photos
*b. https://en.wikipedia.org/wiki/Atomic_nucleus#/media/File:Nucleus_drawing.svg
*c. https://www.freepik.com/ Image by freepik
*d. https://www.freepik.com/ Image by kjpargeter
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