2023/03/14
No.001 瞑想が脳にもたらす変化
今回は「瞑想熟練者による瞑想時の自己誘導性・高振幅ガンマ波同期(の研究)」というLutz氏による研究をご紹介します。Proceedings of the National Academy of Sciences USA (通称PNAS)という日本でも有名な学術雑誌があり、2004年に掲載された研究です。
研究対象となる”瞑想熟練者“のチベット僧の方は8名で平均年齢は45±15歳、対して比較対照となる”瞑想初心者“の一般白人大学生は10名で平均年齢21±1.5歳でした。
”瞑想熟練者“の方は15年〜40年(数万時間の)瞑想修行を続けてきた方々で、対する”瞑想初心者“は瞑想に興味はあるけども殆ど瞑想経験は無く実験の1週間前に軽いトレーニングを受けた程度です。
この両者のグループに数十秒〜数分間のサイクルで、準備→瞑想→休憩→準備→瞑想→休憩→、、、と繰り返し行ってもらう実験が行われました。ちなみに、瞑想の内容は「無償の愛・思いやり」「あらゆる生命に対する無条件の慈愛」といったテーマが与えられました。
計測の結果は、瞑想熟練者の方が一般人の対照群に比べて、ガンマ波帯と呼ばれる25〜42Hzの脳波が高度に活性化していることが観測されました。


グラフ(図1:引用文献より抜粋)を見ると分かりますが、一般学生(青いライン)が瞑想に入ってもほとんど変化しないのに対して、瞑想熟練者(赤いライン)の方を見ると初期状態から瞑想導入にかけて脳波の活性が上昇し、瞑想状態に入ると一般学生を大きく引き離して上昇しているのが分かります。これは統計学的な解析においても明らかに一般学生と瞑想熟練者のグラフの動きが異なることが証明されています(P<0.05, ANOVA:統計学的に有意な違い)。
そして、脳波のデータを画像化したものを見てみましょう(図2:引用文献より抜粋)。
見比べてみると一目瞭然ですが、瞑想熟練者(右)の方が全体に赤〜黄色の部分が多く、脳全体が活性化していることが分かりますね。特に前頭部〜側頭部・頭頂部で非常に高い活性が見られます(図の丸く赤い部分)。
この研究を通して分かったことは、以下の通りです:
・瞑想熟練者ではガンマ波帯と呼ばれる25〜42Hzの脳波が高度に活性化していることが観測された
・瞑想熟練者では一般人に比べて、非常に明瞭にかつ迅速に活性化された脳波が検出された
・瞑想熟練者では、脳の局所的な部分のみではなく、前頭部・側頭部・頭頂部と広い範囲にわたって脳が機能していることが観測された。
最後に研究者らは「瞑想というメンタル・トレーニングが、経時的な統合メカニズムを経て、短期的および長期的な脳神経ネットワークの変化・発達をもたらす可能性がある」と結論づけています。
まとめると、難しい勉強をしなくても脳は活性化し、「無償の愛/無条件の思いやり」を想って瞑想を行うだけで脳の発達と変化が促されるようです。そして、長期間続けるほど、瞑想に熟練していくほど、脳が迅速に“瞑想状態(活性化状態)”に切り替わることが示された研究でした。
私たちも毎日少しずつでも瞑想を行って“活性脳”を作っていきましょう。
引用文献
Lutz A, et al. Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchrony during mental practice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Nov 16;101(46):16369-73
※引用文献の内容に関する著作権は該当論文の著者または発行者に帰属します。
※当コンテンツに関する著作権は著者に帰属します。当コンテンツの一部または全部を無断で転載・二次利用することを禁止します。
※著者は執筆内容において利益相反関係にある企業等はありません。
コメント