No.055 光より速いもの(1)

前々回の記事では約137億年前の光である “宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB)が現在でも観測できること(*1)、そして前回の記事では宇宙がループする有限空間だとするとCMBから宇宙の大きさが推定できる(*2)ということが示されました。

前回までの記事を読んだ方は宇宙の大きさがどれほどかを知っていることと思います。宇宙の大きさを知ると次に何が理解できるのか、知らなかった真実を一つ手に入れることができるかもしれません。今回も宇宙の法則を知ることで意識を進化させていきましょう。


・最初の疑問
今回は最初に問題を出しますのでそれを考えてみてください (Figure 1)。
Q. 光よりも速い速度で地球から遠ざかる星が存在するか?

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この問題についてはどのように考える人が多いでしょうか? 「確か学校では“光より速いものは無い”と習ったような気が、、、」という人もいるかもしれませんし、「でも宇宙は広いし、、、」「あってもいいような気がする、、」という人もいるかもしれません。逆に自信を持って「光速を超えることは物理的に不可能だ!」という人もいるかもしれません。これらの疑問を一緒に考えていきましょう。


・アインシュタインの相対性理論: Theory of Relativity
やはり光の速度に関する問題ではアインシュタインの“相対性理論 (Figure 2, *3)”を避けて通ることができません。もちろん、「数式や物理は苦手」という人もたくさんいると思いますが、「全然問題無い」です。「数式を理解する必要は無い」です。「記事を読んで内容がわかるだけで一つ賢くなる」ことができます。これは「受験のためのお勉強ではなく」、「自分の進化のための学び」なので「読むだけで吸収できる」ように書かれています。

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・光速度不変の法則: The principle of the consistency of the velocity of light
それでは順番に考えていきましょう。
アインシュタインの相対性理論の中に“光速度不変の法則 (Figure 3, *3)”というルールがあります。この法則は聞いたことがある人も多いと思いますが、「観測者がどのような速度であったとしても光の速度は常に一定である」という法則です。

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初めてこの法則を知った時に「あれ?」と疑問に感じた人も多いと思います。
時速60km/hrで走る車から時速80km/hrで走る車を見たら遠ざかる速さは時速20km/hrに見えるはず」ですし、実際にそのような場面ではスピードの差は時速20km/hrに感じます。光速度不変の法則をまだ知らない場合は「ならば光速の50%の速度の乗り物から光の速度を測れば光は50%の速度に見えるのではないか?」と考えるのが自然です。

しかし実際には「静止状態でも時速100km/hrでも、光速の90%の速度だとしても光の速度は一定」ということが実証されています。この現象について考察していきます。


・速度と時間の関係式
物質や観測者の“動く速度”とその“時間の進み方”の関係をFigure 4に示しています。ここでは “ローレンツ変換 (Lorentz transformations)”が時間座標と空間座標を結びつける関係式として導出されます(*3, *4)。Figure 4の上段には“時間(t)”と“速度(v)”と“光の速度(c)”の関係式が書かれていますが、これも計算式を理解しなくとも下の図を見てもらえれば大丈夫です。

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Figure 4下段には速度v(光速に対する%比率)と時間t(速度に対する相対時間)の関係が描かれています。表の見方としては、「速度が光速の10%で移動する物体では、静止状態での1秒が0.995秒に感じる」ということが見て取れます。同様に「光速の80%で動くものは、周囲が1秒経過しても0.6秒にしか感じられない」、「光速の99.99999%で動くものは、1秒がたった0.0004秒にしか感じられない」と言えます。


数字が苦手な人でも速度と時間の矢印の長さを見るとその関係が直感的に理解できると思います。例えば「光の速度の99.99999%の宇宙船に乗っていた場合、宇宙船内では1日しか経ってなくても外界では2236日=6年以上経っている」ということが起こります。このように古典物理学における「時間も空間も絶対的なもの」という概念は崩れ、「時間と空間は互いに相対的な関係が成り立つ」ということを理論化したことが相対性理論の大きな功績です。


・速度の足し算
「時速50kmの電車の中で進行方向に時速10kmで走ったら移動速度は時速60kmになる」はずです。それならば「光速の50%の宇宙船から光速の50%の速度で物体を射出したら光速 (100%)になるはずでは?」という推測は正しいでしょうか。これについてもFigure 5にその計算式があります。

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Figure 5左上にはその計算式が示されており、右側には実際の計算結果が示されています。この計算に従うと先ほどのような条件の場合「光速の50%で飛行する宇宙船から光速の50%の速度で物体を射出した場合」、実際は時間の進み方が変わりFigure 5右の計算結果のように「射出された物体の速度は光速の80%」ということになります。さらに「光速で移動する宇宙船から前方に光を発したとしてもやっぱり光の速度は同じ」という計算式が成り立ちます。

日常生活の超低速でもこの法則が成り立ちますが、誤差レベルに小さい値のため無視しても影響ありません。そのためFigure 5下段のように「時速100kmの車から時速100kmで投げられたボールは時速200kmになる」という単純な足し算でも成立しますし、「日常レベルにおいては古典物理学でもほぼ正確」と言えます。


・光速を超えるとどうなる?
Figure 4の上段の式をもう一度見てみます。これを見ると分母が √(1 - (v/c)^2)になっています。もし物体の速度(v)が光速(c)より大きくなってしまうとこのルートの中が負の値(マイナス)になってしまいます。そうすると“虚数”という実体のない値が出てきてしまいます。このため「光の速度を超えることは理論上不可能」「実際に現在まで光速を超える物質は見つかっていない」と言われています。それでは光速より速く地球から遠ざかる星は存在しないのでしょうか。


・宇宙全体を考えてみる
ここで前回の記事「原初の光“CMB”から分かる宇宙の大きさ (*2)」を思い出してみます。もし前回の記事を読んでない人がいたら宇宙の大きさの測り方が解説されているので読んでみてください。そこで求められた観測可能な宇宙の大きさは「おおよそ半径450億光年以上、直径900億光年以上」という値でした (*2, *5, *6)。仮に宇宙を球体としてイメージするとFigure 6 (*c)のようになります。

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より細かくみると観測可能な宇宙の半径は460億光年(46 Billion light year)以上になります。そして太陽系から観測可能な宇宙の端までを対数時間軸で表したイラストがFigure 7 (*d)になります。Figure 7の外側(右側)にいくほど古い時代の光になり、星や銀河が誕生する前の光になっていきます。そして一番外側が約137億年前の光:宇宙マイクロ波背景放射(CMB: Cosmic Microwave Background)を表しています。


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・宇宙の膨張速度
ここで改めてみると宇宙誕生から現在までの時間は約137~138億年とされています(*7, *8)。そして宇宙の半径は少なくとも460億光年以上という説が有力です。そうなると単純に[宇宙の大きさ]÷[宇宙の年齢]から[宇宙の膨張速度]が計算できます。もし[膨張速度=光の速さ]ならば宇宙の大きさは137億光年しかないはずです。しかし計算してみると、[460億光年÷137億年] = 3.36、つまりなんと“宇宙の膨張速度は光の速さの3倍以上(!)”という計算結果になりました。


・宇宙の膨張速度が光速を超えることは相対性理論に矛盾しないか?
ここはおかしいと思う人もいるかもしれません。しかし現時点では「いかなる物質も光速を超えられない」ということは成立していますが、「空間に対してはこの制限は適用されない」ということが言えます。そう考えると宇宙が137億光年よりずっと大きくても矛盾なく理解することができます。
「宇宙は光速の3倍以上の速さで膨張し、宇宙に満遍なく星が存在している」と考えるとFigure 1の問い「光速より速く地球から遠ざかる星」は「存在する」と言えそうです。


・宇宙の端では時間はどうなる?
しかし光速で地球から遠ざかる星があるとするとその星の時間はどうなっているのでしょうか?

A: 時間が止まったように感じるほど限りなく時間が遅く進む
B: 逆に“地球が光速で遠ざかっている”と考えると地球時間よりずっと速く進む
C: 上のどちらでもない
これに関して考えていきましょう。

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Figure 8に拡大する宇宙空間と星の位置関係が示されています。これで見ると「地球と中央の惑星は宇宙空間の膨張によって一定速度で遠ざかっている(後退速度:Regression velocity, *9)」ことが分かりますが、「どちらも空間的に移動しているわけではない」です。このため、地球も遠ざかっている惑星も「同じように時間が経過する(答え:C)」が正解です。

これに対してFigure 8右側の宇宙船は空間に対して移動しています。このためこの宇宙船は「移動速度に応じて時間が遅く進む」という法則通りになります。


・宇宙の全体像
“観測可能な宇宙”の全体をイラストにしたものがFigure 9 (*e)になります。これもFigure 7と同様に太陽系を中心に時空が対数軸で表されています。

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この画像は太陽系を中心に地球で得られる信号から再構成された宇宙のイメージ画像であり、辺縁にいくほど地球から遠い場所の画像を表します。1億光年離れた場所の画像は1億年前の状態、50億年離れた場所の画像は50億年前の状態を表しています。円の辺縁部に銀河がなく雲のようになっているのは130億年以上前、まだ星や銀河が誕生する前の宇宙を表しているからです。

この宇宙図は宇宙全体を描いていると同時に宇宙誕生から現在までの縮図でもあります。辺縁に行けば行くほど現在の真の姿とは時差が広がっています。辺縁領域は正確に情報が得られるわけではありませんが今現在は成熟した星や銀河が行き渡っていると考えられます。(ただし、光速より速く遠ざかっている領域からの信号は地球に届かないので確認することはできません。)


・冒頭の問いに対する答え
まとめると疑問の答えとしては「A. 光より速く遠ざかる星は存在する」。ただし「星が光速より速く移動しているわけではなく、宇宙の膨張によって光より速い速度で地球から遠ざかっている」というのが現時点における解になります。


・光速を超える物質は存在できないか?
先にも述べたように、もし光速cを超える速度vの物体が存在したとすると、Figure 4上段の時間の計算式の分母:√(1 - (v/c)^2) においてルートの中がマイナスの値になり「時間における虚数」が出現してしまいます。一般的には「虚数解が出てきた時点でその方向性は違う」と解釈されることが多いです。ただし、「物理学において虚数の時間は否定されていない」と言えます。


実際に「虚時間(きょじかん:Imaginary time, *10, *11, *12)」という概念が存在し、今回扱った特殊相対性理論において虚時間を導入すると「時間と空間の対称性」が非常に良く当てはまるようになります。実際に虚時間 (Imaginary time)を量子物理学的に研究した論文も多く公表されています (*13)。

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中学高校数学では「虚数は実在しない数」と習いましたが、「3次元以上の次元」や「有限宇宙空間の外側」「多次元宇宙」という概念が認知されてきている現在となっては「虚数の時間軸」があっても全く不思議ではありません。「光速を超える物質」は「我々が住む3+1 (空間+時間) 次元で見つかってない」だけで「普段認知されていない領域や形而上学的な領域」には存在しているかもしれませんね。


今回は「光速を超えるものは宇宙空間そのもの」であり「宇宙空間は現在も光速の3倍以上の速度で膨張し続けている」ということを覚えておいてください。そしてタイトルが「光より速いもの(1)」ということは、まだあるということかもしれませんね。そして今回のテーマは宇宙の膨張ですが、「宇宙はなぜ膨張するのか?」という根本的な謎が残されています。この理由や謎を考えながら日々瞑想してみてください。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n81e6c7a5cab8
https://note.com/newlifemagazine/n/nb2c1391e75ca
*3. Einstein's Theory of Relativity. By MAX BORN, translated by HENRY. L. BROSE, M.A. (Translation of third German edition, 1922). New York, E. P. Dutton and Co., 1924
*4. ローレンツ変換- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ローレンツ変換
*5. 観測可能な宇宙– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙
*6. Observable Universe- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Observable_universe
*7. Age of the Universe- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Age_of_the_universe
https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6
*9. 後退速度– 天文学辞典
https://astro-dic.jp/recession-velocity/
*10. 虚時間– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/虚時間
*11. 虚時間– 天文学辞典
https://astro-dic.jp/imaginary-time/
*12. Imaginary time- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Imaginary_time
*13. Lynn, J. E., and K. E. Schmidt. "Real-space imaginary-time propagators for non-local nucleon-nucleon potentials." Physical Review C 86.1 (2012): 014324.

画像引用: 
*a. https://www.freepik.com/free-psd/mercury-planet-foreign-planet-isolated-transparent-background_93506963.htm#query=planet&position=0&from_view=keyword&track=sph&uuid=a43af5cf-fbbc-4c47-9f99-75f7a66c3cd1, Image by tohamina
*b. https://www.irasutoya.com
*c. Image by Richard Powell.
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ファイル:Observable_universe_atlasoftheuniverse.gif.
*d. Image by Pablo Budassi.
https://binaryfortressdownloads.com/Download/WPF/Images/23405/WallpaperFusion-the-observable-universe-3840x1080.jpg
*e. Image by Unmismoobjetivo .
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Observable_universe_logarithmic_illustration.png

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No.054 原初の光“CMB”から分かる宇宙の大きさ

前回の記事では宇宙の初期、ビッグバンから数十万年後の初めて光が解放された時の名残りが“宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB)として現在でも観測できることが示されました (*1)。それによって何が分かるのか、これらからどのような情報が得られるのか、という観点から宇宙の神秘を探究していきます。

過去の記事でも紹介したインドのヴェーダを起源とする超越瞑想(Transcendental Meditation)(*2, *3)や形而上学の継承者によって編纂されたMAX瞑想(MAX Meditation) (*4, *5)においても“宇宙と意識を融合する”、“世界と自己が一体になる”というプロセスは非常に大きな意味を持ちます。途方も無い広さの宇宙をどうやって測るのか、人類がどのようにそれを積み重ねてきたのか、今回も時間と空間に対する意識を広げて宇宙の瞑想を行っていきましょう

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・宇宙の形を知る
はじめに宇宙の形がどうなっているかを考えてみます。過去の記事「宇宙瞑想:“宇宙の果て”について考える (*6)」で解説したように地球の表面は有限です。しかし、どこまでいっても端に辿り着くことはなく空間が途切れたりもしていません(Figure 2左)。

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宇宙の場合もFigure 2右のように、宇宙空間は計り知れないほど広いですが、空間が途中で終わったり端があるわけではなくどこかで連続していると考えられます。
端と端がつながった3次元空間」をどう考えるかというとFigure 3左の図のように表すことができます。まず空間の端のAと反対側のA' をつなげてこの軸で空間が連続することになりました。そして垂直方向の端Bと反対側のB'をつなぐことでドーナツ状の形状が出来上がります。

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このドーナツ状の形状を“トーラス (Torus, *7)”と言います。実際には3次元空間にはA方向とB方向のみではなくもう1軸ありますので、この図は模式図と考えてください。3次元空間のX/Y/Z軸の両端をつなげるので本来は“3次元では表現不可能”です。このトーラスというのは“3次元の宇宙空間がこのような形に曲げられている”と考えると良いです。宇宙は4次元から見るとFigure 3右のように見えます。“空間の4次元から見た宇宙”は3次元的な日常の思考では想像できないので瞑想のトレーニングとして想像してみると良いと思います。

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ただし、今回はより分かりやすくするために“4次元トーラス宇宙”から次元を下げて“3次元球体宇宙”として考えていきます。Figure 4右図のように宇宙空間が平面として球体の表面に張りつけられていると考えていきます。
“宇宙が拡大している”ということはFigure 4右図で考えると“球体が大きくなり宇宙空間(表面積)が膨張している”と擬似的に考えることができます。


・宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を思い出す
Figure 5は前回の記事(*1)を読んだ方なら覚えていると思いますが、宇宙マイクロ波背景放射(CMB, *8, *9)という「宇宙で最も古い光」と考えられている信号です。

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簡単におさらいすると、「ビッグバン以降、宇宙は膨張し続けており過去の光や地球から遠い天体ほどその光が引き伸ばされ、眼に見える可視光線ではなくマイクロ波という電磁波になっています。この信号(CMB)の発生源よりも速く地球から遠ざかっている天体があったとしても、遠ざかる速度の方が速いため、そこから発せられる光は地球に到達することはできません。つまりCMBの届く範囲が観測可能な宇宙の範囲」ということになります。
宇宙の大きさとCMBの観測結果で以下の3つのパターンが考えられます。


・パターン I
1つの例として、もし“地球から最も離れた場所から光が届く距離”=“現在の宇宙のサイズ”だと仮定すると、Figure 6左のようになります。ちょうど天体A (Heavenly body A)から地球に光が放たれて到達した距離と、今現在の宇宙の大きさ(半径)の距離が同じになるケースです。
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もしこのような条件の場合、CMBはどう見えるかというとFigure 6右のようになります。CMBは全天図になるので、一方から天体Aの信号が受信できますが、ちょうど180度正反対の方向から全く同じ天体Aの信号が観測されるはずです(注:Figure 6左はトーラスを球体の次元に下げているので、光は球面に沿っていても3次元空間では直進しています)。


・パターン II
次は“最も離れた天体からの信号が伝わる距離”>”現在の宇宙のサイズ”という条件を想定してみます。この場合はFigure 7左のようになりますが、この場合天体Aからの信号が進む距離が宇宙のサイズより大きいため、この信号が“地球を通り越してまた周回してくる”という状況が起こり得ます。

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するとCMBはどのように見えるかというと、一つの例としてFigure 7右のようになります。同じ天体からの信号がいくつも見える、というような観測結果が得られるかもしれません。宇宙を半周して地球に到達した光、1回転と半周して地球に到達した光、2回転と半周して地球に到達した光もあるかもしれません。そして反対側からも同じような光が観測されるかもしれません。このように宇宙のサイズが光の到達距離よりずっと小さい場合にはこのような結果が想定されます。


・パターン III
今度は反対に“最も離れた天体から信号が届く距離”<“現在の宇宙のサイズ”の場合にはどうなるでしょうか。この場合はFigure 8左のように観測できる最も遠くの天体からの光が地球に届いても天体Aから反対側に発せられた光がまだ宇宙を一周することができません

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この場合、観測されるCMBはFigure 8右のようになります。天体Aからの信号は1つのみです。天体Aから反対側に発せられた光はまだ地球に到達できないのでCMBを見渡しても他には見当たりません。このようなCMB観測図が予想されます。

・CMBから得られた信号の解析
現時点で、CMBにおいて同じような信号や反復する信号パターンは得られていないようです。そうなると、現在の宇宙の状態は“パターンIII”、つまり「観測可能な最も遠い領域からの光が到達できる範囲の2倍よりも宇宙は大きい」と考えられています

遠ざかる光源と地球との距離を図で表すとFigure 9のようになります。ある時点での天体Aと地球との距離を固有距離 (proper distance)とします。Aの地点から数十億年かけて地球に光が到達したとします。光が引き伸ばされた程度(赤方偏移 *10)によって光が発せられた地点Aまでの距離(光路距離、light-travel distance)は簡単に求められます。

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しかし、実際は数十億年かけて光が到達する間に宇宙の膨張によって天体AはA'まで距離が遠ざかっています。この図での“地球–A' ”間の距離を共動距離 (co-moving distance)と呼び、数十億年前に光を発した天体との現在の距離を求めるにはこの共動距離を求める必要があります。

そして、「天体Aからの信号」の代わりに「宇宙の原初の光であるCMB」を解析すると、「観測可能な宇宙の最も端までの距離」=「観測可能な宇宙の半径」が求められるという算段になります。

今回はこのCMBから宇宙の大きさを求める計算はGott III J. Richard氏らによる「A Map of the Universe.」(2005, *11)を参考にしました。


・宇宙の大きさを求める計算過程(詳しく知りたい人向け)
CMBを用いて宇宙の端までの共動距離を求める計算過程をFigure 10に示します。でも安心してください。数式を理解する必要はありません(安心してください、私もほとんど理解していません)。例によって下の赤い枠の部分だけ注目してもらえれば大丈夫です。
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(省略可能)「宇宙定数Λ (lambda) が宇宙を膨張させる力を表し、宇宙の質量ρmと放射線量ρrが宇宙を収縮させる力を表し、それらからフリードマン方程式をもとに膨張計数と共形時間(conformal time)を求め、それにハッブル半径を乗じたものにCMBの赤方偏移Zrec: 1089を適用すると14000Mpcになる」


・算出された宇宙の最小半径
とにかくいろいろ計算すると、「観測可能な宇宙の端までの距離は14000Mpc (メガパーセク) になる」という結論になります。14000Mpcは言い換えると約450億光年になり、「観測可能な宇宙の端までの距離は450億光年以上、つまり現在考えられる宇宙の最小半径は約450億光年、直径約900億光年」ということになります。どうでしょうか、読者の皆さんの予想に比べて小さかったでしょうか?それとも予想を超えて大きかったでしょうか?


・宇宙の大きさを知る意味
読者の方々は「地球が丸い」と知ったのはいつ頃だったか覚えているでしょうか?日常生活では我々は「地面は平らである」としか知覚できません。海を見ても水平線はほぼ直線にしか見えません。

しかし意外なことに地球が丸いことは紀元前6世紀のピタゴラスの頃から示唆されていたようです (*12)。また、星の見え方から地球が丸いことを明確に示したのはアリストテレスとされています。しかもアリストテレスは「大地は球体であまり大きくない」ということまで見通していたということも驚きです。そして実際に地球を一周したのは西暦1500年頃のマゼラン艦隊というのは知っている人も多いと思います。地球を西に進み続けると東から戻ってくる、というのは「地球が丸い」ということを知らなかったとしたら信じられない奇妙なことだと思われます。
しかしこの事実によって私たちは「唯一絶対の無限に広大な大地にいる」わけではなく「天に見える惑星や恒星と同じ星の一つに住んでいる」ことを知ることになります。しかも星々の中ではそれほど大きな星でもありません。これは人類の意識を「地球が世界の全て」というわけではなく「地球は宇宙の星々のほんの一つ」という真実に気付かせてくれました。人類の意識の中に「宇宙意識」が芽生えたことは「人類の意識の進化」と言えます。


・「宇宙意識」の進化
そして21世紀になった現在、未だ人類は太陽系を出ることすらできませんが、さまざまな科学的証拠から宇宙の形や大きさを推測し、“ループする有限な空間”であることが確からしいことが突き止められてきました。そして「永久不変の絶対的空間」ではなく「どこかの時点で創造され、現在も膨張し続ける有限な空間」であることも解明されつつあります

そうなると、「地球が数多の星々の一つ」であったように「もしかしたらこの宇宙も他にあるのではないか?」「星がどこかで誕生と消滅を繰り返すように、宇宙も誕生と消滅を繰り返しているのではないか?」「The only one Universe ではなく One of the Multiverse なのではないか?」という疑問が自然に浮かんできます。

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このテーマは科学者の間でも近年論じられています。しかし、当面はその存在を証明することは困難でしょう。なぜなら科学的に使えるツールは「光子 (photon)などの観測可能な素粒子 (quark) 」のみですが、光子を含めて「現時点で観測可能な素粒子はこの宇宙空間から出られない」からです。
しかし、「未だ科学で実態を観測できない“意識”」なら3次元宇宙空間から出ることが可能かもしれませんね。そして科学で扱えないものを扱える形而上学 (Metaphysics)ならば「宇宙空間の外側」を知ることが可能かもしれません。そんなことを考えながら瞑想を続けていればいつか宇宙の外側の情報を得ることができるかもしれませんね。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n81e6c7a5cab8
https://note.com/newlifemagazine/n/n12e335a385c6
*3. 超越瞑想- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/超越瞑想
https://note.com/newlifemagazine/n/nff19547b087c
*5. MAX瞑想システム(TM)- facebook
https://www.facebook.com/groups/max.meditation/
*6. 宇宙瞑想:“宇宙の果て”について考える
https://note.com/newlifemagazine/n/nfd5030576893
*7.トーラス−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/トーラス
*8. Cosmic Microwave Background- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*9. 宇宙マイクロ波背景放射- Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙マイクロ波背景放射
*10. 赤方偏移−天文学辞典.https://astro-dic.jp/redshift/
*11. Gott III, J. Richard, et al. "A Map of the Universe." The Astrophysical Journal 624.2 (2005): 463.
*12. 地球球体説– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/地球球体説
*13. 観測可能な宇宙– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙

画像引用: 
*a. https://www.sci.news/astronomy/hubble-globular-cluster-ngc-6652-12136.html. Image credit: NASA / ESA / Hubble / A. Sarajedini / G. Piotto.
*b. https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Simple_Torus.svg. By YassineMrabet
*c. https://clipart-library.com/free/wire-globe-png.html
*d. NASA / WMAP Science Team - http://map.gsfc.nasa.gov/media/121238/ilc_9yr_moll4096.png
*e. https://www.freepik.com/free-vector/perspective-grid-pattern_24777042.htm#, Image by vector_corp on Freepik
*f. https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Torus.png By Lucas Vieira

※引用文献の内容に関する著作権は該当論文の著者または発行者に帰属します。 
※当コンテンツに関する著作権は著者に帰属します。当コンテンツの一部または全部を無断で転載・二次利用することを禁止します。
※著者は執筆内容において利益相反関係にある企業等はありません。


No.053 宇宙の始まりの光を観る:“CMB”

前回までの記事では量子レベルで物質が発生したり消滅することを示してきました(*1)。これまでは意識をナノレベル (nano-level)に縮小し、量子の世界で起こる物質やエネルギーの生成を想像してきました。今回は視点を広げて宇宙のことについて話していきます。時間と空間に対する意識を広げて宇宙の瞑想を行っていきましょう



・さまざまな天体と地球との距離

まず最初に最も身近な天体である太陽 (the Sun) を想像してみましょう。皆さんが毎日見ている太陽です。太陽から地球までの距離は約1億5千万km、この距離は1天文単位(= 1 AU: astronomical unit) と定義されています(*2)。
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この太陽から地球までの距離に光が到達する時間が8分19秒かかります。つまり、我々はいつも8分ほど前の太陽の光を見ていることになります。


それでは次に恒星シリウス (Sirius) を想像してみましょう。この星は太陽以外で地球上から見える恒星では最も明るい1等星です。星座はおおいぬ座 (Canis Major) に属し、画像のように上方に見えるオリオン座 (Orion) の帯の3連星の延長上に位置しています (*3)。
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この恒星シリウスは地球から約8.6光年 (light-year) 離れた位置に存在しています。私たちが夜空に見ているシリウスの光は8.6年前に発せられた光になります。これでも夜空の星々の中ではかなり近い星であり、特別な親近感を感じる人も多いのではないかと思います。


それでは次に北極星 (Polaris) を想像してみましょう(*4)。この星は地球が自転してもその位置を変えず常に北の方角を示すため、古代から多くの人々の道標として活用されてきました。

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その存在感は神格化され、中国道教の天皇大帝(てんのうたいてい, *5)と仏教思想が融合して妙見菩薩(みょうけんぼさつ, *6)として信仰されたり、日本神話の創造神である天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ, *7)と同一視され祀っている神社も数多くあります。
この北極星までの距離は432光年で先ほどのシリウスよりも遠くに位置しています。今見える北極星の光は432年前の光ということになります。


次は銀河の中では最も知られているアンドロメダ銀河 (Andromeda Galaxy) をみていきます(*8)。実はこの銀河は我々がいる天の川銀河 (Milky-way Galaxy) から遠く離れた天体ですが、直径が約22万光年と天の川銀河の2倍以上の大きさがあるため、条件が合えば肉眼で観察することが可能です。アンドロメダ銀河は「肉眼で観察可能な最も遠くにある天体」としても知られています

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アンドロメダ銀河までの距離は何と250万光年にも及びます。つまり今私達が見ているアンドロメダ銀河の光は250万年前に発せられた光ということになります。人類がまだこの地球にいなかった頃にアンドロメダを出発した光かもしれませんね。


次はおとめ座銀河団 (Virgo Cluster, *9) を想像していきます。今までよりもさらにスケールが大きくなります。アンドロメダのような銀河が1300〜2000個も集まった銀河の集団(クラスター)を形成しています。

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このおとめ座銀河団にはM87、M86、M49など主要な銀河があり、地球からの距離は5000〜6000万光年と推定されています。このおとめ座銀河団の望遠鏡写真は5000万年以上前の光ということになります。


まだまだ遠くまで行ってみましょう。次はスローン・グレート・ウォール (Sloan Great Wall, *10) という巨大構造を観てみます。この構造は聞いたことがない人がほとんどだと思いますが、銀河団/銀河のクラスターがいくつも集まりマクロな視点で見て巨大な壁を形成している構造です。
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図の左側にあるように半径20億光年ほどの宇宙地図の中でも連なった壁のように見える構造がスローン・グレート・ウォールです。データから再構成された画像が図の右側です。このグレート・ウォールの長さは13.7億光年にも及び、地球からこのグレート・ウォールまでの距離は約10億光年とされています。このスローン・グレート・ウォールを観測した時に得られた信号は10億年前の信号であり、地球上には哺乳類も恐竜すらもいなかった時代の光と言えます。



・宇宙での距離を求める

それでは「遠く離れた天体の距離はどのように求めるのか?」についておさらいしていきましょう。

ある一つの方法を紹介すると、天体の中には一定周期で光の強度が変わる“変光星 (Variable Star)”というものが存在し、その変光周期から絶対等級/光度 (Absolute Magnitude) を計算することが可能です。過去の記事(「宇宙は永遠か?について考える」*11)でも解説していますが、宇宙は膨張していることが分かっているので、「ほとんどの天体は地球から遠ざかっている」ということが言えます。

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そして宇宙は膨張しているのでFigure 7のように「地球から遠い天体ほど速く地球から遠ざかっている」ことが分かります。この“地球から遠ざかる速さ”を“後退速度 (Recessional Velocity)”と呼びます。すると本来は同じ明るさの天体であったとしてもドップラー効果のようにその星が出す光の“見かけの波長”が引き伸ばされます。

波長が引き伸ばされた”結果として色調は「赤い方へ変移する/真の色より赤く見える」ということから、この現象を“赤方偏移 (せきほうへんい、Redshift, *18, *19)”と呼びます。この赤方偏移=「本来の光がどの程度引き伸ばされたか」を調べることによって「その天体が地球から遠ざかる速さ/その天体が地球から何光年離れているか/今どの位置にあるか」が計算できます。


・観測可能な最も古い“光”とは?

上の例では10億光年以上先の構造物を観測することができたということは、10億年以上前の信号を観測することができたということになります。それでは、一体どこまで過去の信号を観測することができるのでしょうか

それでは宇宙が誕生した頃まで戻ってみましょう。この頃の宇宙を知るには過去の記事「宇宙の始まり:“宇宙創造のアルケミー” *12」が参考になるのでまだ読んでない人は読んでみてください。

現在宇宙の起源で最有力な説は“ビッグバン理論 (*13)”ですが、それに基づくと宇宙が誕生してしばらくは宇宙全体がプラズマのような火の玉のような状態でした (Figure 8左)。
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このときはまだ宇宙の温度が高く、光子 (photon) と陽子 (proton) と中性子 (neutron)と電子 (electron)が結合できずに原子になっていなかった状態でした。このときは“光と影が分離する前”で“光しかない状態”でした。

しかし、宇宙の温度が低下して原子核と電子が結合し、光子と物質が分離されました。その結果、宇宙は初めて「光と影」が分離された状態になりました (Figure 8右。注:図はCGイメージです)。

このときの「光と影の分離」を「宇宙の晴れ上がり (Recombination, *14)」と呼び、近年の研究ではビッグバンからおよそ37万年後のことと考えられています(*15)。光が解放されたのはこの時であり、この時の光が“最も古い原初の光”と言っても良いでしょう。


・137億年前の“光”を観測できるのか?

先ほど説明したように、宇宙が初めて光と影に分離されたのがビッグバンから約37万年後のことです。その時の光を観測することなど可能なのでしょうか。

当時から宇宙は膨張し続けているとすると、今の地球がある位置から観測可能な範囲で最も離れていた光は「最大限に引き伸ばされている(=赤方偏移が極大)」であるはずです。「赤い可視光線」や「赤外線」を通り越してもっと波長の長い電磁波として観測されるかもしれません。また、宇宙の晴れ上がりの直前までは「宇宙全体は光で満たされていた」状態でした。なので、もしその状態から均等に宇宙が膨張したならば、その時の光はあらゆる方向から観測されるはずです。

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実際にその電磁波は発見され、1965年にPenzias氏とWilson氏らによって報告されました(*16)。その後も研究が進んで、その電磁波は非常に強い赤方偏移(z > 1000, *18, *19)によって波長が1000倍以上に引き伸ばされ、もう目に見える光ではなく知覚できない“マイクロ波”という電磁波になっていました。この電磁波は「宇宙の晴れ上がり」当時は3000度K程(赤い恒星からの光と同程度)でしたが、現在では絶対温度2.725度Kの物体からの輻射に相当することがわかっています(Figure 9)。

このマイクロ波は宇宙に蔓延しており、あらゆる方向から観測されることから「宇宙マイクロ波背景放射 (Cosmic Microwave Background: CMB)」と呼ばれ人工衛星を打ち上げて継続的に研究調査が行われています (*17)。この中で大きな役割を果たした衛星の一つがWMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe *20)です。この衛星は2001年にNASAによって打ち上げられ、宇宙マイクロ波背景放射 (CMB)のデータ収集を10年近く行いました。WMAPによって得られたデータを解析した画像の一つがFigure 10です。

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この画像は全天星図のように宇宙の全方位を表しています。図のように全方位から満遍なく信号が観測されていることが分かります。しかし、その中にも信号の強いところ(赤い部分)や信号の弱いところ(黒い部分)があり、何らかの要因で「宇宙の晴れ上がり (Recombination) の時に発せられた光」に“ゆらぎ (Fluctuation) ”があることが分かります。このCMBについては現在も研究が盛んに行われ、日々新たな発見が報告されています


・137億年前は身近に存在していた

上の図の通り、我々は宇宙の初期の姿、つまり推定137億年以上前の情報を観ることができるということです。しかもこの情報は特別な偶然で得られたものではなく、“常に宇宙のどこにいても普遍的に受け取ることができる”という性質のものでした。そしてこのCMBという太古の情報は今現在も地球に降り注ぎ、宇宙に蔓延し続けています。

この事実が意味するところは、宇宙が誕生してからさまざまな星が誕生し、星が何千億個も集まって銀河が誕生し、その銀河も数千億以上あると言われていますが、その間137億年も情報が失われずに保存されていたということになります。


・あらゆる情報は宇宙に刻まれている

上に挙げたスローン・グレート・ウォールを例にとると、10億光年離れた天体なので、Figure 11のように地球で得られる信号(10億年前に発せられた光)と現時点での現場の景色は相当変わっているでしょう。成長して巨大になった惑星もあれば、新たに太陽のような恒星になった星、超新星爆発を起こして消滅した星、新たに誕生した惑星、また巨大重力によってブラックホール化した星もあるかもしれません。
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しかし、その10億年間の変化の歴史は既に地球に向けて発信されていて、10億年かけて地球に向かっているはずです。その天体の5億年前の情報は今おそらく5億光年離れた場所にあるでしょうし、その天体の8億年前の情報はもう2億年ほどで地球に到達するはずです。

そう考えると、「10億光年離れた天体の現在姿は今観測される姿とかなり異なっている」ということが言えますが「その10億年分の変化の歴史は宇宙空間に存在している(現在地球に向かっている)」と言えます。


・永遠で不変の記録媒体は“光”かもしれない

私達は、古代から記録を後世に残そうとさまざまな努力を重ねてきました。それは壁画であったり文字であったり、石板であったり書物であったり、近年では磁気ディスク、CD/DVD-ROM、メモリーチップ、SSDなど、高速/高耐久/高容量へと年々進歩しています。しかし、これらの耐久年数は保存状態の良いCDで数十年、石板ならもしかしたら数千年保存できるかもしれません。
しかし、137億年も宇宙の情報を保存できる媒体があるでしょうか。そして容量が無限の保存媒体、そして真実をそのまま映し出し改変されない保存媒体、もしかしたらそれは“光”かもしれません。原初の宇宙の姿を我々にもたらしたCMBも“光(電磁波)”の一種です。同様に我々が何光年から何十億光年離れた場所の情報を正確に知ることができるのは“光(電磁波)”にその情報が刻まれていてそこから読み取ることができるからです。
“光”は実は永久不変で無限の容量を持つ記録媒体と言っても過言ではないでしょう。そして137億年前から現在に至るまで宇宙で起こった全ての記録を保持している、これも真実です。何億年も過去のことであろうと、何十億光年離れた遥か彼方の宇宙のことでも、我々が光を観ることでそれを知ることが可能です。

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サンスクリット語でアーカーシャ(阿迦奢、Ākāśa、आकाश)という言葉がありますがこれは「天空、空間、虚空」を意味する言葉です。ご存知の人も多いかもしれませんが、この宇宙のあらゆる事象が記録されているというアカシックレコード (Akashic records)の語源となっている言葉です。そしてアーカーシャの名前を冠する菩薩が虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ、アーカーシャガルバ、Ākāśagarbha, आकाशगर्भ)です。「宇宙のように広大な無限の智慧と慈悲をもって人々に智慧を与え救済する菩薩」とされています。

実はこの宇宙空間(天空)自体が、「この宇宙における全ての事象が記録されているアカシックレコード」の一部と言えるかもしれません。上に示したように我々は宇宙に満ち溢れている“光(電磁波)”だけでも過去から現在まで無限の情報を引き出すことができるという可能性が示されました。

仮に地球時間で21世紀の現在、1000光年離れた星から地球を観察したとすると、その星には1000年前(西暦1000年頃)の地球の姿が見えます。同じように10000光年離れた星から地球を観察すると10000年前の地球の状態がありのまま観察できることになります。このように、地球のすべての過去の歴史も宇宙空間のどこかに光として消滅することなく保存されていることになります。


もし光より速く宇宙の任意の地点に移動できるとしたなら、理論上あらゆる天体のあらゆる時代の情報にアクセスすることが可能です。もちろん、人類よりも遥かに早く進化し3次元を卒業した文明の智慧を得ることができるかもしれません。その状態がアーカーシャの一部と融合した状態と言えるかもしれません。しかし当然ながら「人間が存在する3次元空間で光速を超えて遠くに到達することは不可能」と思っている人も多勢いるでしょう。ただし科学が発展するにつれ、「真実の世界は我々の概念を覆し続けてきた」のはこれまでの記事を読んできた読者の方にはお分かりかと思います。

もしかしたら「過去・現在・未来」という時間も我々の概念にしか存在しないかもしれません時間という概念すらも存在しない領域が「虚空」であるかもしれません。我々の概念を超えた領域(虚空)には人類の想像の及ばない叡智があるでしょう。それはどこに在り、どうやったらそこに到達できるのか、それは虚空蔵菩薩様に会えるなら教えてもらえるかもしれませんね。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n145e8ffec367
*2. 天文単位- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天文単位
*3. Sirius- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Sirius
*4. Polaris- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Polaris
*5. 天皇大帝- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天皇大帝
*6. 妙見菩薩- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/妙見菩薩
*7. 天之御中主神- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/天之御中主神
*8. Andromeda Galaxy- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Andromeda_Galaxy
*9. Virgo Cluster- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Virgo_Cluster
*10. Sloan Great Wall- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Sloan_Great_Wall
https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6
https://note.com/newlifemagazine/n/n724aead9b9a4
*13. Jonathan Allday, "Quarks, Leptons and the Big Bang" Second Ed., The King’s School, Canterbury, Institute of Physics Publishing Bristol and Philadelphia, 2002
*14. Recombination- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Recombination_(cosmology)
*15. Tanabashi et al. 2018, p358, chapter. 21.4.1: "Big-Bang Cosmology" (Revised September 2017) by K.A. Olive and J.A. Peacock.
*16. Penzias, Arno A., and Robert W. Wilson. "A measurement of excess antenna temperature at 4080 MHz." A Source Book in Astronomy and Astrophysics, 1900–1975. Harvard University Press, 1979. 873-876.
*17. Cosmic Microwave Background- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*18. 赤方偏移- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/赤方偏移
*19. Redshift- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Redshift
*20. WMAP Highlights. NASA. https://map.gsfc.nasa.gov

画像引用: 
*a. https://wallpaperaccess.com/earth-and-sun
*b. Photo by atsushi1984. https://pixabay.com/ja/photos/オリオン-星空-神社-日本-8319275/
*c. Photo by Kush.Chandaria - Own work, CC BY-SA 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=108074228
*d. Photo by Aleksandr Burzinskij: https://www.pexels.com/photo/spiral-andromeda-galaxy-11780390/
*e. By Chris Mihos (Case Western Reserve University)/ESO.
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d3/ESO-M87.jpg
*f. By Willem Schaap. https://en.wikipedia.org/wiki/File:2dfdtfe.gif
*g. By Pablo Carlos Budassi. https://en.wikipedia.org/wiki/File:Sloan_great_wall.png
*h. By Roses_Street. https://pixabay.com/ja/illustrations/生成された-アンドロメダ-銀河-7621669/
*i. NASA / WMAP Science Team - http://map.gsfc.nasa.gov/media/121238/ilc_9yr_moll4096.png
*j. Image by vecstock. https://www.freepik.com/free-photo/abstract-spaceship-orbiting-starry-galaxy-backdrop-circle-generated-by-ai_40968273.htm#from_view=detail_alsolike

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