No.043 宇宙は一つの有機体?マクロとミクロの同調性(シンクロニシティ)

前回の記事では太陽系→銀河系→局所銀河団→超銀河団→観測可能な宇宙のマッピング→宇宙の巨大構造のシミュレーション(ミレニアムシミュレーション *1, *2)というように、宇宙全体を俯瞰して見たときにどのように見えるのか、について現在分かっている最近の情報をまとめました(*3)。

今回はいきなりクイズからですが、下の図1はそれぞれ何の画像でしょうか?

20230804article043fig01.jpg

左右どちらの画像も何かが網の目のように張り巡らされた一定のパターンが見て取れます。どちらが何の画像なのか、いろいろと想像してみてください。

またこの記事は「瞑想」を主なテーマとして扱っているので、「それぞれの画像から何かを感じられるか?」ということを意識してみてください。

そしてこの画像を通して「画像の中の世界」に入り込んでみてください。
この画像の向こうにある「画像の中の世界」の雰囲気・エネルギー・波動、こういった数値では表せない抽象的(形而上学的)な感覚を感じてみてください

「画像を見ているあなたの意識」と「画像に写し出された世界」はつながっています。それは「量子もつれ(*4)」という現象で「意識した対象とリンクする」ことが科学的に説明されています。

そしてこの「意識と対象物の相互作用」というものが実験的に証明されていることは過去の記事でも紹介してきました(*5, *6)。

答えに気付いた人も、まだ気付いてない人も、図1のそれぞれの画像の世界のエネルギーを瞑想することによってしばらくの間感じてみてください(感じた感覚に正解というものはありませんので安心してください)。

それでは画像の答えを示していきます。
まず図1の右側は下の図2のように、どんどん拡大していくと網の目が光の集合体のように見えてきました。これは実は「銀河やダークマターをシミュレーションして100億光年の距離まで視野を広げた宇宙の画像でした(*1, *b)。この「超マクロ(極大)の宇宙の景色」については前回の記事で詳しく解説しているので詳細はそちらを読んでみてください(*7)。

20230804article043fig02b.jpg



そして図1左側の画像の正体ですが、こちらは「培養された脳神経細胞(ニューロン)のネットワーク」の画像です(*a)。こちらはマサチューセッツ工科大学で行われている、脳細胞を培養してアルツハイマー病の解明に努める研究を紹介した記事で引用された画像です(*7, *a)。

20230804article043fig03.jpg

このように、片方は100億光年規模の宇宙の超巨大構造であり、片方はミクロン単位の脳神経ネットワークの超微細構造でした。しかし分かった上で図1を見比べてみても非常に良く似ています
このダークマターと銀河が網羅された宇宙のネットワーク構造」と「脳神経細胞(ニューロン)の微細ネットワーク構造」に類似性を見出し、それを数学的に解析した天文学者と医師がいます。今回はその研究を詳しく紹介していきます。

紹介する研究は「The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web(神経細胞ネットワークとコズミック・ウェブの定量的比較, *9)」というイタリアの天文学者と医師による共同研究です。

20230804article043fig04.jpg


研究背景として近年は急速なスピードで宇宙の物理現象が解明されつつあります。前回の記事でも「ダークマターも計算に含めた宇宙全体のシミュレーション」が実現できるようになったことを紹介しましたが、Springel氏らによってそれが公開されたのも2005年と、もう15年以上も前のことになります。

これによって「銀河は見えない何かによってつながっている」、「そのつながりは網目のように広がり、ネットワークを形成している」ということが可視化されました(図2、*1)。可視化された宇宙を見た科学者が「何かに似ている」と思ったのが研究の動機であり、脳科学者の医師と手を組んで実現した研究です。


この研究の手法では、まず脳組織の方は実際に脳腫瘍手術で切除された正常な大脳皮質(Cortex)、小脳皮質(Cellebelum)を用いて40倍の光学顕微鏡で観察した画像が使用されました(図5上段)。
そして比較する宇宙はENZO(*10)と呼ばれる計算コードを用いて100メガパーセク(約326万光年)立方の宇宙構造をダークマターを含めてシミュレートし、それを脳標本のように断面を切って解析に用いました(図5下)。これらの画像は第三者も解析に使用できるようにURL(*11)として公開されています。


20230804article043fig05.jpg


著者らが調査した概算によると、「観測可能な宇宙に存在する天の川銀河と同等以上の規模の銀河≒5.5x10^10個」、「成人の全脳のニューロンの数≒8.6x10^10個」、「成人の小脳のニューロンの数≒6.9x10^10個」という具合にほぼ同じ桁のオーダーで比較することが可能としています。
これら脳組織または宇宙シミュレーションモデルをパワースペクトル解析したのが図6の結果になります。

20230804article043fig06.jpg


ここで“パワースペクトル (power spectrum)について簡潔に説明すると「時間的・空間的に変動する信号(ゆらぎ)をフーリエ変換して、そのフーリエ係数の振幅の2乗を周波数の関数とみなしたもの(*12)」と説明されていますが、深く理解する必要はありません図6の各グラフがよく似た形で重なっていることが分かれば大丈夫です。
実際に図6を見てるとCortex(大脳皮質:黄)とCerebellum(小脳:オレンジ)の40倍(実線)と、Cosmic Web (ダークマター:青)/Cosmic Web(バリオン=物質粒子:紺)がよく重なり、「構造パターンが類似している」ことが数学的に示されています

ここで著者らは対照実験として別の“ランダムに見えるパターン”との比較も行っています(図7)。ここで比較対照として用いたものは「空にある雲 (Sky Clouds)」「樹木の枝 (Tree Branches)」「磁気流体力学的乱流 (MHD Turbulence)」「水の乱流 (Water Turbulence)」といった、自然界におけるランダムに見えるパターンと比較することによって、「脳のニューロンのパターンと宇宙のコズミック・ウェブが本当に類似しているのか」という点を比較しました。

20230804article043fig07.jpg

図7を見ると雲/木の枝/磁気乱流/水の乱流が灰色〜黒の点線で示されていますが、これらは脳ニューロン細胞やコズミックウェブとは類似していないことがわかります。この結果から「他の自然界の普遍的なパターンとは明らかに異なり、脳のニューロン構造と宇宙のコズミック・ウェブ構造は類似している」ということがパワースペクトル解析でも裏付けられたということになります。


次に著者らは脳のニューロンと宇宙のコズミック・ウェブを「ネットワーク解析」の手法で比較検討しました。
以下、小難しい話が苦手な人は「要するに、、、」まで読み飛ばしてOK

ネットワーク解析ではよく用いられるパラメータを2つ取り上げ、それらを解析しています。1つは次数中心性(Degree Centrality: Cd)であり局所領域内のネットワークの接続度合いを測定する解析であり、もう一つはクラスタリング係数(Clustering Coefficient: C)でランダムな点のネットワークと比較してノードの局所近傍内の構造を定量化する、すなわち与えられた接続クラスタ内の全ての三角形に対するノード接続された三角形の比率から求められる係数です(*13, *14)。
20230804article043fig08.jpg

図8ではノード(銀河団/細胞核)がそれぞれ結び付けられてネットワークが視覚化されているのが分かります。この結果、宇宙のノード当たりの平均接続数<k>は3.8〜4.1、小脳では<k>は1.9〜3.7、大脳皮質では<k>は4.6〜5.4という結果でした。
またグラフ下段のクラスタリング係数(C:図8左下)を見ると脳組織もコズミック・ウェブも0.1〜0.4の間にピークが見られています。そして次数中心性(Cd: 図8右下)を見ると1〜4x10^-3という範囲に分布しています。これらを「ランダムなノードの集合」と比較してみます。
20230804article043fig09.jpg

著者らはノードを生成するアルゴリズムであるErdös-Rényi(エルデシュ・レーニィ)モデル(図9、*15, *16)を使ってランダムにノードを生成した場合のクラスタリング係数は0.002以下と脳ニューロンネットワークやコズミック・ウェブ(0.1〜0.4)に比較して全く異なる数値であったと報告しています。さらに次数中心性(Cd)もニューロンや宇宙では1〜4x10^-3であったのに対し、ランダム生成ノードでは10^-6〜10^-7とこちらも3桁ほど異なる数値となったようです。


要するに「ネットワーク解析においてもニューロン・ネットワークとコズミック・ウェブは類似性があり、ランダムに生成されたモデルとは明らかに異なっていた」ことが数学的に示されたということになります。


自然科学的に今回の研究の要点は以下のようにまとめられます。
・脳ニューロンの構造とコズミック・ウェブ構造は類似している
・ニューロン構造とコズミック・ウェブはパワースペクトル解析でも類似性を示した
・雲/樹木の枝/水の乱流といった自然界にありふれたパターンとニューロン/コズミックウェブ構造は類似していなかった
・ネットワーク解析においてもニューロンとコズミック・ウェブは類似性を示した
・ランダム生成モデルとニューロン/コズミック・ウェブを比較したが、ランダムモデルは数値的にも全くかけ離れていて類似性はなかった


ではもう一度ニューロン・ネットワークの画像(図10左上/左下)とコズミック・ウェブの画像(図10右上/右下)を比べてみてください。偶然とは思えないような数学的にも裏付けられた類似性と自然の造形美が見て取れます。

20230804article043fig10.jpg


今回の研究を未知の領域に拡大し、あらゆる可能性を想像してみます。
・一つの銀河さえ宇宙の中では一つの細胞(銀河団クラスター)の中の微小器官なのかもしれない
・銀河同士をつなぐコールドダークマターとはニューロンの突起のような役割を果たしているかもしれない
・ダークマターは銀河クラスター間をつなぎ、領域間で何かを送受信する媒体かもしれない
・宇宙は脳神経のように有機的にネットワークが構築されているかもしれない
・宇宙全体が一つの巨大な有機体として機能しているかもしれない
・この宇宙は何者かの中枢神経組織なのかもしれない
・この宇宙全体が“意志”を持っているかもしれない
・一つの“意志”と一つの宇宙(A Universe)が結び付けられているかもしれない
・存在する“意志”の数だけ対応する“宇宙(Multiverse)”が存在しているかもしれない

全く突拍子もない机上の空論ですが、ダークマターといった未知の存在が宇宙の大部分を占めることがわかった現在、このような可能性を否定できる科学者がいるでしょうか?

20230804article043fig11.jpg

さらに今回の結果を科学を超えた形而上学的な領域で解釈すると以下の法則が見えてきます。
・超極小(ミクロ)の構造と超極大(マクロ)の構造は同期する
・超極小(ミクロ)の構造を追求すると超極大(マクロ)へ到達する
・反対に超極大(マクロ)を追求していくと超極小(ミクロ)へ到達する
・宇宙論が量子理論を決定し、同様に量子理論が宇宙論を決定する
・極小の一部(ミクロ)は全体(マクロ)を体現し、逆もまた真である
・極小と極大は同一である


これらのことは科学的に証明されている法則ではありません。しかし、「科学的に証明されているかどうか」は実は「取るに足らないこと」なのです。なぜなら、「毎年毎年科学的に新しい発見がある」ということは誰しも知っていることですが、それはつまり「新発見=科学が如何に不完全か/科学の無知の部分が一つ解明された」と言えるからです。科学も「成長中の人間と変わらない」と言えます。「科学的に証明されてないこと」と言っても「ただ不完全な科学が網羅してないだけ」ということを知る必要があります。


「真の叡智」とは、「何千年も前から変わらない/変わる必要がない」と言えます。このような智慧を扱う学問が「形而上学(けいじじょうがく)」です。「日々新説が更新され」「過去の常識が覆される」これが「科学」の脆弱性であり「永久不変の形而上学的法則」との決定的な違いです。科学は「未だ不完全/間違うこともある/成長していく」というものです。科学を過小評価も過大評価もせず正当に理解し、全てを包括する形而上学への理解を深めていきましょう「瞑想」は形而上学への扉の一つです。「瞑想」を使いこなし「形のない世界」への親和性を高めていきましょう。


引用
*1. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*2. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*4. *2. 量子もつれ:Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/量子もつれ
*5. “遠隔ヒーリング”は科学的に証明できるか? https://note.com/newlifemagazine/n/n349ffafbd715
*7. マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様? https://note.com/newlifemagazine/n/ndfd5e65abc17
*8. Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*9. Vassa F and Feletti A. The Quantitative Comparison Between the Neuronal Network and the Cosmic Web. Frontiers in Physics 2020(8), 525731. doi: 10.3389/fphy.2020.525731
*10. Bryan GL, Norman ML, O’Shea BW, Abel T, Wise JH, Turk MJ, et al. ENZO: an adaptive mesh refinement code for astrophysics. Astrophys J. (2014) 211:19. doi: 10.1088/0067-0049/211/2/19
*11. https://cosmosimfrazza.myfreesites.net/cosmic-web-and-brain-network-datasets
*12. パワースペクトル−天文学辞典. https://astro-dic.jp/power-spectrum/
*13. Hansen DL, Shneiderman B, Smith MA, Himelboim I. Social network analysis:
measuring, mapping, and modeling collections of connections. In: DL Hansen, B Shneiderman, MA Smith, I Himelboim, editors Analyzing social media networks with NodeXL. 2nd ed. Chap. 3, Morgan Kaufmann (2020) p. 31–51. doi: https://doi.org/10.1016/B978-0-12-817756-3.00003-0
*14. Golbeck J. Network structure and measures. In: J Golbeck, editor Analyzing the social web. Chap. 2. Boston: Morgan Kaufmann (2013) p. 25–44. doi: https:// doi.org/10.1016/B978-0-12-405531-5.00003-1
*15. Erdős–Rényi model−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model
*16. Erdös-Rényi(ER)モデルにおける平均次数、クラスタ係数、次数分布の求め方https://zenn.dev/aobaiwaki/articles/78b09d8b711fc9

画像引用 
*a. Photo "Neurons thriving in a petri dish" by Matheus Victor, M. I. T. in article by Leslie Nemo. Brain Cells Blinking in Rhythm May Hold Clues to Alzheimer’s Disease. Scientific American. Feb 12 2021. https://www.scientificamerican.com/gallery/brain-cells-blinking-in-rhythm-may-hold-clues-to-alzheimers-disease/#
*b. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*c. https://en.wikipedia.org/wiki/Erdős–Rényi_model#/media/File:Critical_1000-vertex_Erdős–Rényi–Gilbert_graph.svg
*d. https://hellobio.com/media/catalog/product/f/i/fig2_1.jpg
*e. https://dendrotek.ca/blogs/scientific-papers/dendritic-polyglycerol-amine-1
*f. https://twitter.com/franco_vazza/status/1189539086375247872
*g. https://www.freepik.com. image by benzoix
*h. https://www.freepik.com. image by kjpargeter
*i. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet

※引用文献の内容に関する著作権は該当論文の著者または発行者に帰属します。 
※当コンテンツに関する著作権は著者に帰属します。当コンテンツの一部または全部を無断で転載・二次利用することを禁止します。
※著者は執筆内容において利益相反関係にある企業等はありません。

No.042 マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様?

今回は思考を大きく大きく拡大していく内容になります。我々は宇宙を局所的に見ていますが、もし視野をどんどん拡大していって宇宙全体を見渡せるほどに拡大した場合、宇宙はどのようなパターンになるでしょうか。極限まで大きなマクロ視点で宇宙を見たら、放射状か、らせん状か、同心円か、ハニカムか、網目状か、泡状か、あるいは別のパターンか、どんな模様が現れるでしょうか?今回も太陽系を超えて、銀河を超えて全宇宙レベルにまで思考を拡大していく宇宙瞑想を行っていきましょう。

20230721article042Fig00.jpg


まずは我々のいる地球をイメージしましょう。下に挙げた画像は誰もが見たことがある地球の画像です(画像引用*a)。



20230721article042Fig01.jpg

次にかなり範囲が大きくなりますが、太陽系全体をイメージしてみましょう。下に太陽系のイメージを挙げます。中心に点のように見える恒星が太陽です。その周りには水星、金星、地球、火星、木星、土星の軌道が描かれています。天王星、海王星、冥王星は軌道が画面の外にはみ出ています。

20230721article042Fig02.jpg

さらに太陽系を超えて思考を拡大していきます。
太陽系外の星々、銀河の中では比較的近所の星々が見えてきます。画像では太陽の左下に8.6光年離れたシリウス(Sirius, *1)、左上には36.8光年離れたアークトゥルス(Arcturus, *2)、右の方向には25光年離れたところに夏の大三角形を形成するヴェガ(Vega, *3)が見えてきます。そのほかにも夜空に見える星々が含まれる範囲まで思考が広がってきました。

20230721article042Fig03.jpg


さらに一気に思考を広げて我々のいる天の川銀河(Milkyway Galaxy)まで思考を広げていきます。天の川銀河の直径は約10万光年、先ほどのご近所の星々が数十光年の範囲だったので、数千倍〜1万倍の範囲まで意識の範囲が拡大しました。
この銀河の渦の腕の一部に我々の太陽系が見えないくらい小さく存在しています。

20230721article042Fig04.jpg


この天の川銀河周辺をもう少し拡大すると下の画像のようになります。左側に天の川銀河があり、その周囲には小規模の銀河や恒星団や星雲が見られます。右側には我々の銀河の倍くらいの大きさのアンドロメダ銀河(*4)が存在しています。アンドロメダ銀河は直径が約22万光年の巨大銀河で、その距離は地球から250万光年と推定されています。

20230721article042Fig05.jpg


さらに意識を拡大していきましょう。
我々の天の川銀河やアンドロメダ銀河のある局所銀河団は“おとめ座超銀河団(Virgo Supercluster, *6)”という超銀河団に属しています。下の画像のように天の川銀河もアンドロメダ銀河も識別できないほど小さく左側に存在しています。
右側には銀河が数多く集まっている中心部の“おとめ座銀河団(Virgo Cluster, *7)”が見えます。おとめ座銀河団は1300〜2000個の銀河から成っていて、地球からの距離は約15〜20Mpc(メガパーセク)、約4600万〜6500万光年とされています。

20230721article042Fig06.jpg

またこのおとめ座超銀河団からズームアウトしていきます。
するとさらにその外側には別の超銀河団が現れてきました(下図)。数千個の銀河を含むおとめ座超銀河団(Virgo Supercluster)も小さく見え、周りにはペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)うみへび座・ケンタウルス座超銀河団(Hydra-Centaurus Supercluster, *8)が存在しています。もちろんこのほかにも数多くの超銀河団が存在しています。比較的近くにあるように見えるペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)もその距離は2.5億光年離れたところにあります。

20230721article042Fig07.jpg


視界はおとめ座超銀河団を超えて数億光年という規模まで拡大してきました。この外側はどうなっているでしょうか?
この範囲を超えて宇宙の彼方まで観測しようというプロジェクトがあります。それは2dF Galaxy Redshift Survey (2dF銀河赤方偏移サーベイ, *9, *10)と称されるオーストラリアのアングロ・オーストラリアン天文台で行われた宇宙のマッピングプロジェクトです。最初の2dFというのは望遠鏡の観測範囲が2平方度(2 degree Field)であることに由来しています。


銀河赤方偏移というのは、以前の記事でも触れましたが(*11)、宇宙というのは現在も膨張し続けています。しかも遠くにある天体ほど高速で地球から遠ざかっています。そのために観測される光の波長が長く赤い方へ偏移(赤方偏移)します。この遠方銀河の赤方偏移を測定することによって宇宙地図を作成しようというものです。


20230721article042Fig08.jpg

上の図がその観測結果を統合した宇宙地図の一部です(画像引用*b)。扇状になっているのは、地球が天の川銀河の中に存在するため、銀河円盤方向は内部の星々の信号によって遠方の情報が得られないためです。
この中の青い点が銀河等が高密度に存在している部分で、白地の部分が天体の少ない低密度の領域です。表示されている領域は赤方偏移(z)=0.2くらい、距離で言うと約15〜20億光年までの範囲が描画されています。


こうして見ると数億光年の範囲では宇宙は均一に銀河が散らばっているわけではなく、集中した密な領域と空白の領域が不均一に入り混じっていることが分かってきました。辺縁の方も密度が薄くなっていますが、これは10億光年以上先からの信号の減衰によるものと考えられます。


この先はどうなっているでしょうか。残念ながら地球から観測できる宇宙は天の川銀河の星々に遮られるため銀河赤道方向は正確なデータ収集が非常に困難です。
しかしコンピュータの計算速度の躍進と精度の向上によって宇宙をシミュレーションすることが可能となりました。そのプロジェクトは“ミレニアムラン(Millennium Run, *12)またはミレニアムシミュレーション(Millennium Simulation)”と呼ばれています。その結果が2005年Springel氏らによって公開されました(*13)。


この研究はイギリス、ドイツ、カナダ、アメリカ等の天体物理学者の共同研究である“ヴァーゴ・コンソーシアム(Virgo Consortium, *14)”で行われたシミュレーションです。この研究では下図左側のように銀河や天体をシミュレーションし、右側のジェームスウェッブ望遠鏡からの写真(NASA, *e)と比較するとこのようになります。

20230721article042Fig09.jpg

このシミュレーションアルゴリズムは“N体シミュレーション(*15)”に基づいて行われており、天体物理学においては重力相互作用を有するN個の粒子の運動や変化を経時的にシミュレーションする方法です。比較画像のように銀河など一定の質量を持つ天体を粒子の集合体として計算します。


この研究では230〜460万光年立方当たり100億個(0.5〜1Mpc/h当たり2160の3乗個)の粒子をシミュレーションし、これまで観測された宇宙背景放射(CMB, Cosmic Microwave Background, *16, *f)や、銀河間に存在すると言われているコールド・ダークマター(CDM, *17)重力の大部分を占める要素として含まれていますコールド・ダークマターについては過去の記事でも説明しているので見てない方や忘れた方はそちらを読んでみてください(*18)。


20230721article042Fig11.jpg

このミレニアム・シミュレーションの結果と先ほどの2dF Galaxy Redshift Survey(上の扇型の宇宙マッピング画像)を2点相関関数で比較したところ、上のグラフのように高い一致率を示し、シミュレーションは非常に高い精度で現在の宇宙を再現していることが分かります。

それではシミュレーションされた宇宙を見ていきます。

20230721article042Fig12a.jpg


上の画像の視野のサイズが約1800万光年で銀河が散在しています。



20230721article042Fig12b.jpg



視野を広げて、視野のサイズが約1億3000万光年ほどに広がりました。
先ほど銀河が散在して見えていましたが、何か筋のような構造が見え始めました。
さらに視野を広げていきます。


20230721article042Fig12c.jpg



さらに広がり、視野のサイズが約12億光年ほどになりました。
先の2dFGRS(扇型の宇宙マッピング画像)のように天体が高密度な領域と、疎な空白部分が混在しているのがこちらでも見えてきました。

20230721article042Fig12d.jpg


さらに視野を広げていきます。
この視野は約100億光年ほどのサイズになります。
現状では宇宙年齢が約138億年、観測可能な宇宙の大きさは400億〜500億光年(*19)、あるいはそれよりも広いとも考えられていますが、宇宙のかなり広い部分を含んだ視野と言えます。

この構造は泡のようにも見えますし、細かい網の目が張りめぐされているようにも見えます。この構造から巨大視野(マクロ)における宇宙の構造はコズミック・ウェブ(Cosmic Web)と呼ばれています。



銀河はただ宇宙空間を漂っているわけではなく、コールド・ダークマターのような何かのネットワークでつながっているようです。そしてそれは我々の知覚できないレベルでそれは宇宙全体に広がっているようです。宇宙のイメージは最初の予想と合っていたでしょうか、それとも意外な結果だったでしょうか?様々な瞑想法で宇宙と自己の意識を融合させることが取り入れられています。それは波動を上昇させる手段であったり、最終到達段階であったりします。いずれにおいても実際の宇宙の状態を知ることは宇宙全体像の可視化、自己のイメージの具現化に役立つでしょう。意識を宇宙レベルに拡大するトレーニングに使ってみると良いと思います。


引用
*1. シリウス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/シリウス
*2. アークトゥルス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アークトゥルス
*3. ベガ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ベガ
*4. アンドロメダ銀河−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
*5. おとめ座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座超銀河団
*6. おとめ座銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座銀河団
*7. ペルセウス座・うお座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ペルセウス座・うお座超銀河団
*8. うみへび座・ケンタウルス座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/うみへび座・ケンタウルス座超銀河団
*9. The 2dF Galaxy Redshift Survey. http://www.2dfgrs.net
*10. 2dF銀河赤方偏移サーベイ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/2dF銀河赤方偏移サーベイ
*11. 宇宙瞑想:“宇宙は永遠か?”について考える. https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6?
*12. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
*13. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*14. The Virgo Consortium. https://www.virgo.dur.ac.uk/index.html
*15. N体シミュレーション−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/N体シミュレーション
*16. Cosmic microwave background−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*17. コールドダークマター−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/コールドダークマター
*18. 私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2) https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
*19. 観測可能な宇宙−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙

画像引用
*a. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f4/Earth%27s_Location_in_the_Universe.jpg
*b. http://www.2dfgrs.net/Public/Pics/2dFzcone_big.jpg
*c. https://jp.freepik.com/free-vector
*d. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*e. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet
*f. https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/wmap.png

※引用文献の内容に関する著作権は該当論文の著者または発行者に帰属します。
※当コンテンツに関する著作権は著者に帰属します。当コンテンツの一部または全部を無断で転載・二次利用することを禁止します。
※著者は執筆内容において利益相反関係にある企業等はありません。

プロフィール

T@N

Author:T@N
 
こちらは
瞑想を通じて医学・健康
科学・量子力学・宇宙論
形而上学(けいじじょうがく)
こういったことを取り扱っています。
エビデンスを示しながら
”科学的”なことから
”非科学的”なことまで
真面目に探究する研究室です。


サムネールCredit: https://www.vecteezy.com, nuchyleephoto
ヘッダーCredit: https://pixabay.com,galaxy-starry-sky-stars

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR