No.038 UFO情報公開と某大国の動向

前回は世界的にUFOの存在が周知の事実となったことをお伝えしました(*1)。まず初めにこの記事では特定の国や政治的情報も出てきますが、あらゆる政治思想、宗教的プロパガンダを含まずに事実に基づいた情報を配信していることを宣言しておきます。

・かつての人気番組“X-ファイル"
本題に戻って、UFOや超常現象というと有名なのが「X-files(エックス・ファイル)」という番組です(*2, *3)。1993年から2002年までアメリカで制作された「サイエンス・フィクション・ドラマ」で、内容はFBI捜査官のモルダーとスカリーがUFOや超常現象といった「噂は聞くが真実かどうかはっきりしていない謎」「一般には謎とされる極秘情報(Xファイル)」にまつわる架空のSFドラマです(図1)。

確認飛行物体(UFO)、未確認生物(UMA: unidentified mysterious animal)、超常現象といった類の話は小中学生から大人まで一定のファン層があり、世代を超えて支持されています。“Xファイル”も日本国内でも放送され、本家アメリカでも約10年間シリーズが続いたことからこのジャンルに対する人気が伺えます。

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こういった「怪奇現象」「UFO・超常現象」というものは同じカテゴリにまとめられ、「まことしやかに語られる都市伝説」「実際の目撃談」「実際にUFO/宇宙人を調査している機関が存在するという噂話」に興味を持つ人は少なからずいました。Xファイルのポスターでも“信じたい(I want to believe)”というキャッチフレーズが有名でもありました。

しかし、“信じたい(I want to believe)”ということは、「真実かどうか分からない」「未知への好奇心」「サイエンス・フィクション」という架空の世界であったと言えます。UFOや宇宙人といった世界は「もしあったらどうする?」「こんな世界があったらドキドキする」という人々の好奇心を刺激する映画や想像の世界と皆認識していました。

・ CIAのカミングアウト
そんな中、2016年1月21日、アメリカのCIA(Central Intelligence Agency:中央情報局)が突如「Take a Peek Into Our "X-Files"(我々の“Xファイル”を覗いてみませんか)」という記事を公式ホームページに掲載しました(図2, *5)。

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図2に書かれているように「CIAは1940〜1950年代のUFOに関する何百もの調査報告書を機密解除(デクラス)しました」とコメントがあり、機密文書であったと思われるUFO画像と一緒に記事に掲載しています。「Xファイルは都市伝説ではなく実在のもので、見せれるものを公開しますよ」という米CIAからのカミングアウトです。
CIAでも1900年代半ばから秘密裏にUFO調査を行なっておりこれまで表に出ることはなかったのですが前回の記事(*1)でも紹介したようにUFO関連事象において“デクラス”がありその一連の流れかと思われます。テレビ番組の“Xファイル”ではモルダーはFBI捜査官だったのですが、それに例えてCIAが“我々のXファイルを見ていってよ”というところはさすがアメリカ、国家機関にしてはジョークが効いています。

リンクも示されており(*6)、そちらへ飛ぶとどうなるかというと図3のようなデータベースのページへと移動します。こちらにはCIAが保有する(機密保護されていない)全ての情報が情報公開法(FOIA: freedom of information act)に基づいて公開されています。

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そこで簡単に検索ウィンドウに“UFO”と入れて検索すると図3のように該当ファイルがずらっと出てきます。単純に該当ファイルを見てみると“UFO”でヒットしたファイルが1772個検索されたことが分かります。実際は“unidentified object”や“Flying saucer(空飛ぶ円盤)”など“UFO”でヒットしないファイルもあると思いますので詳細に探すとより多くなると考えられます。


・公開された実在の機密情報
具体的なファイルの1例を図4に示します。これは1949年に作成された報告書でアメリカ国内のある地域におけるUFO目撃情報の様です(*7)。「隕石や気球の様な自然浮遊物ではない」、「燃料問題を考えると他国飛行機の可能性も低い」など、当時としては真剣に“空飛ぶ円盤”について調査が行われたことを示しています。そして、目撃回数のグラフを見ると1947年7月に突出して目撃回数が多いことも自然現象では説明できないように見受けられます。

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次にUFO好きな人達にはたまらない"UFO写真集"のような開示文書も存在します(図5, *8)。これらは様々な時期のUFO関連写真をまとめたようですが、やはり一般公開されたのは2016年12月23日と比較的最近のようです。写真を撮られた時期も様々で、1950-2000年頃までの広い範囲で存在します。それでも現代の様にスマートフォンで誰でも写真や動画を撮れる時代ではなく、目撃しても写真すら撮れないので、「たまたまカメラを持っていた人がUFO出現場所にいた」時でないと撮れない貴重なものでした。

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写真の画質も悪く、作ろうと思えば“UFOっぽい写真”も容易に作れてしまうのでその真偽の見極めは困難であったと思われます。また、出現日時も予測困難な上に“デクラス”前で公然とUFOの情報を募集する訳にもいかず、CIAと言えども情報収集には難渋していたと予想されます。

このような背景からすると、前回記事(*1)で示した“米軍戦闘機によるUFO追跡画像”が“信頼おけるパイロット/世界最高性能レーダー/高速飛行撮影/編集無しの動画/不可解な飛行軌道の録画”という点において如何に“信頼性の高い証拠映像”であるかが再認識できると思います。

そして前回紹介した様に、2019年9月の米海軍によるUFO映像の公認発表(*9)、2020年4月の米国防総省によるUFO公認という流れへとつながっていきます。

・アメリカ政府機関の動き
ここであるアメリカ議会法案に注目してみます。図6に示すように米国の国会議事録なども一般から閲覧できるようになっています(*11)。ここで2020年6月の上院議会法案“S.3905”を見てみます。

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そしてこの議会法案“S.3905”に付随するレポートの抜粋を図7に示します。

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ここに何が書かれているかというと、主に赤線で示していますが大まかにまとめると以下のようになります。
・未確認飛行物体に関する情報収集や委員会の取り組みを支援する
・だが年配議員達においてはこれらへの意識が欠落している
・情報活動の報告を法案議決から180日以内に提出すべし
・未確認飛行物体に対する機関を超えた情報収集、研究の強化を推奨する

このようなUFOを含めた未確認飛行物体に対する斬新な取り組みを明文化して盛り込み、同時に“UFOというものを頭から信じておらず真剣に取り組もうとしない旧態依然とした年配議員達”に意識改革を求めています。

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・先進的な議会法案に署名認可した大統領
この2020年6月のアメリカ議会法案に署名して認可したのが第45代アメリカ大統領のトランプ氏(*13)です。トランプ氏がアメリカ大統領選に出馬表明したのが2015年6月、そして大統領選に勝利したのが2016年12月、そして2021年1月までの任期と記録されています。

先述のように"Xファイル"をもじったCIAのカミングアウトが2016年に発表され、前の記事のように元海軍パイロットのUFO目撃インタビューが2017年12月(*14)、同じ12月にUFO動画がアメリカ防衛省から流出(*15)、2019年9月に米海軍からUFO映像の公認発表(*9)、そして2020年4月にペンタゴンから3本のUFO映像公開(*10)

これまで何十年も「トップ・シークレット」として秘密裏に調査されてきた“UFO(未確認飛行物体)”に対する情報が、この4年ほどの短期間に怒涛のように一般の目に触れるようになりました。トランプ氏が大統領在任期間とUFOに対する機密情報開示“デクラス”の流れは関連があるのでしょうか、それともただ偶然に時期が重なっただけでしょうか。ここは政治思想について述べる場所ではないので、事実やエビデンスに基づいた読者の判断にお任せします。


・大統領専用機(Air Force One)と一緒に目撃されるUFO
図8にアメリカ大統領専用機(Air Force One)と一緒に映されたUFOの画像を載せておきます。動画(*16)では飛行中のエアフォースワンに対し、後方から突然機影が現れ一瞬でエアフォースワンを追い越していく様子が録画されています。コマ送りにしても機影がはっきりしないほど高速で、明らかに鳥ではないですし空軍戦闘機のような形状でもありません。

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撮影は2017年1月19日、ワシントン行きとのことで機内には当時大統領のトランプ氏が搭乗していたと思われます。こちらはアメリカの報道番組でも放送され、捏造フィルムでもないとのことで当時話題になったようです。


もう一つ、大統領機エアフォースワンとUFOが並走する写真を図9に示します。
こちらも写真に写っているのは間違いなくアメリカ大統領専用機エアフォースワンです。そして先程の動画(*16)のように一瞬で通り過ぎていくというよりも大統領機に合わせて飛行しているようにも見えます。こちらはUFOの機体がはっきり写っており、銀色で翼が無く人類が作った飛行機には見えません。トランプ大統領を狙っているのか、護衛しているのか、それとも何か情報交換でもしているのでしょうか。こちらも動画を確認したかったのですが残念ながらYoutube上から削除されていました。見たい人は是非探してみてください。

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・現実をどう解釈するかはその人次第
前回の記事、今回の記事いずれにおいても公表されている事実・エビデンスを基に執筆してきました。“フィクション・創作”など断らず、引用元を明示しているものは全て実際の出来事または公表された事実と言えます。しかしながら、「UFOを信じますか?」と街頭で聞かれたら今でもYES/NOは大きく分かれるのではないかと思います。

筆者自身は「他者に自分の考えを押し付ける気はない」ので、今の時点では「UFOを信じて生きている人」も「UFOを信じずに生きている人」も一切生活に影響は出ないだろうと思われます。

・世界の動向
しかしながら、「世界がどちらの方向に動いているのか」というのはいずれ我々の生活にも大きく関わってくるでしょう。1900年代まではアメリカも「UFOなんて何をバカなことを」という姿勢で表面上はお茶を濁しながら「実は水面下で膨大な情報を蓄積していた」ということが分かりました。そして、2010年を過ぎてから急展開で機密解除/情報公開(デクラス)の動きが加速し、議会法案でUFOが真剣に論じられる潮流へと移行しました。


・人類の宇宙に対する意識
これまでは宇宙に特別関心のある人以外は宇宙に意識を向ける機会はあまり無かったのではないかと思われます。何故なら、もし「UFOも地球外生命体も存在しない」という前提の場合、
「宇宙には無生物の星がたくさんあるだけ」
「特に行きたいとも思わない(何もないから)」
「観測できる範囲に人類以上の知的生命体がいないし」
「生活圏内のこと以外は考えてない」
という思考に陥ってしまう可能性があるのではないでしょうか。

しかしUFOや宇宙人側の視点からしたら
「炭素燃料が主流の文明」
「まだ生き物を殺して食べる生活が主流」
「隣の惑星にも行けない文明レベル」
「対話は音声言語で言語も多過ぎ、思考通話できない」
「物質的な肉体しか使ってない」
「空間は3次元までしか認識できず我々を見れない」
「100年程度で肉体が滅び、更新できない」
「最近我々についてくる乗り物が出てきた」
といった具合に逆に人類が観察されていて上のような調査レポートを記録されているかもしれませんね。


・宇宙に意識を向ける
まず何事においても「自分が一番だと思ったらそこで進歩は止まる」ということが言えると思います。それは地球規模に限らず、クラスでも競技でも仕事でも何においても「自分で視野を狭め、自己に慢心してしまったらそこから成長は無い」と言えます。まず人類は「観測できる範囲に知的生命体はいない」という前提も見直してみる必要があるのではないでしょうか。

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「見えないから何もない」というのは大間違いで、実は「見えない我々の目や観測装置、そして我々の認識力が未熟すぎる」ということに気付くべきかもしれません。例えば宇宙空間や我々の銀河にも正体不明の質量“ダークマター”が存在しますが「殆ど何も分かってない」のが現状です(*18, *19, *20)。さらにダークマターの向こうに更なる正体不明のエネルギーも存在します。
人類として謙虚になり、銀河系や宇宙の中の一員として生きる意識を持つことが人類の種としての進化につながるだろうと思われます。今回のテーマのUFOについては、UFOを操作している側は地球の人類より高度の知的生命体と考えられるので、音声など使わず意識に語りかけてくる可能性もありますし、地球上の全言語など1日で解析し翻訳可能なコンピュータを持っているかもしれません。

これに対して意識を鍛錬してより広範囲に意識を広げてコンタクトしてみようとする人もいるかもしれませんし、逆に意識を鍛錬して防御力を上げて干渉されないようにしようとする人もいるかもしれません。どちらでもその人の自由だと思いますが、いずれにしても「宇宙には人類だけではないという意識」「瞑想による意識の鍛錬」はしておくことをお勧めします。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n675d5dea739e
*2. X-files. https://www.fox.com/the-x-files/
*3. X-files-Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/The_X-Files
*4. https://wallpapercave.com/w/GKT4HQz
*5. Take a peek into our X-files. CIA. 2016.1.21. https://www.cia.gov/stories/story/take-a-peek-into-our-x-files/
*6. FOIA (Freedom of Information Act). CIA's official page .
https://www.cia.gov/readingroom/
*7. "Flying saucers" FOIA, CIA.
https://www.cia.gov/readingroom/docs/DOC_0000015337.pdf
*8. "UFO photos" FOIA, CIA. https://www.cia.gov/readingroom/document/cia-rdp79b00752a000300130001-1
*9. The US Navy just confirmed these UFO videos are the real deal, CNN, 2019.9.18. https://edition.cnn.com/2019/09/18/politics/navy-confirms-ufo-videos-trnd/index.html
*10. Pentagon releases UFO videos for the record. 28 April 2020. BBC news.
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-52457805
*11. Congress Bill "S.3905". U.S.A. Government. https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/3905?s=5&r=1
*12. Congressional Report "S.3905". U.S.A. Government.
https://www.congress.gov/congressional-report/116th-congress/senate-report/233/1
*13.ドナルド・トランプ– Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルド・トランプ
*14. 2 Navy Airmen and an Object That ‘Accelerated Like Nothing I’ve Ever Seen’. The New York Times. 2017.12.16.
*15. Movie: US Department of Defence.
https://edition.cnn.com/2017/12/19/us/pilot-david-fravor-ufo-jim-sciutto-outfront-cnntv/index.html
*16. UFO Disc Flies Past President Trumps Plane?. Youtube.
https://www.youtube.com/watch?v=zrwq1yZLWE0
*17. Watch "President Trump plane being escorted by the PLEIADIANS UFO, they are here to help Humanity." on YouTube. URL is not available.
https://note.com/newlifemagazine/n/n594654ee1eb3
https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
https://note.com/newlifemagazine/n/n31c014dcbfac

画像引用
https://wallpapercave.com/w/GKT4HQz
https://wallpapercave.com/w/wp7037435, Uploaded by dannaisidoro.

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No.037 21世紀、UFOに対する世界の認識

UFOとは未確認飛行物体のことですが、筆者も小中学生の頃はテレビの特番でUFO特集など行われており、クラスの同級生と「UFOって信じる?信じない?」といった話題にもなりました。もちろん、教師や大人たちとそんな話をしても真剣に取り合う人はいませんでしたが。

そんなインターネットもない時代から30年以上経過して21世紀を迎えた現在、世界におけるUFOの認識はどのようになっているかを、極めて真剣に科学的に検証したいと思います。

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・2017年12月~ アメリカ大手メディアからUFO証言記事
2017年12月16日にニューヨークタイムズ紙が「元海軍パイロット達が“見たことがない加速の物体”」(*1)という記事を載せ、続いて12月20日にCNNが「元海軍パイロットによる証言“今まで見たこともないUFOを見た”」(*2)という記事を載せました(図1)。
ニューヨークタイムズ紙と米CNNについては説明するまでもなく皆ご存知かと思いますがアメリカの大手メディアです。メディアが全て真実とは限りませんが、NYT紙は170年以上前から発行されている有名紙であり、CNNも世界30ヵ国以上に支局を持ち、いずれもスポーツゴシップ新聞レベルではなく世界的に一定の信頼性を得ているメディアです。

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記事に戻って元米海軍パイロットのDavid Fravor氏によると彼が戦闘機からUFOを目撃し録画したのは2004年とのこと、次のような証言が記録されています。
白い物体で長方形っぽい形をしていて動きは不規則だった
ヘリコプターの場合は動く時に機体が傾いてからゆっくりと移動し始めるがこの飛行物体はピンポン玉が跳ね返るように急な動き方をした
今まで見たことのない飛行の仕方
水上をホバリング(空中静止)した後、高度12000フィートまで垂直上昇した
私が近づこうとするとそれは急加速し、2秒足らずで姿を消した


・その記事とともに公開されたUFO動画(*3)
この時の動画は既にネット上でも公開されており(*3)、そのカットを図2に示します。
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動画を見ると戦闘機のレーダー画面の中央にはっきりとUFOの機影が写っているのがわかります。そして登場しているパイロットが「回転している」だとか「はっきり見えているだろう」と言っていることが分かります。レーダーにもしっかりとロックオンされており、幻や錯覚ではなく「物体」としてレーダーにも捕捉されていることが録画されています。


・さらに追加公開された2015年の2本のUFO動画
もう2本追加で公開された別のUFO画像を図3に示します。
図3Aでは海面を左下方向に高速飛行する物体がレーダーに捉えられています(*4)。UFO画像では珍しく上から見下ろす方向で撮られています。動画を見ると分かりますが、海面スレスレを非常に高速に飛行していますが海面には波が立ったりはしていません。

図3Bは同じ2015年撮影の別のUFO動画撮影している戦闘機はF/A-18(E/F) スーパーホーネットという最新鋭の機体です(*6)。そのレーダーの中心に白い飛行物体が捉えられているのが見えます。しかし、その白い飛行物体は突然に進路を変えて画面左方向へと消え去ってしまいました(図3B')アメリカの最新鋭の戦闘機を一瞬で振り切るほどの瞬発的な動きが記録されています。
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・パイロットの証言の信憑性について
まずパイロットの資格を得るには航空力学の専門的知識が必要不可欠であり飛行機/戦闘機/ヘリコプターなど航空機が飛ぶ原理を熟知していないといけません。図4に示すように人類が持ち得る飛行機やヘリコプターは全て翼の形状から得られる揚力やローター(プロペラ)から得られる揚力によって空中での高度を維持することができます(*7, *8, *9, *10)。飛行機や戦闘機は揚力を維持するために決まった角度で高速移動する必要があり、ヘリコプターは高速回転するローターが必要です。そしてどちらも“急発進/急停止/急な方向転換”はできません
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このような点からすると、動画に捉えられているUFOはパイロット達が航空士官学校で得た航空力学を完全に無視した飛行をしているように見えます。動画の中にはパイロット達が驚き、困惑している声も録音されていますが、それもこのUFOの動きの不可解さを表しています。

・戦闘機から見るUFOの信憑性
一般に誰もが一度は見たことのあるUFOの写真は地上から空を見上げた写真が多いのではないでしょうか。ただ「空に何かが映っている写真」では以下の問題点が挙げられます。
>遠近感が分からない(=大きさが分からない)
>移動しているかどうかや速度が分からない
>狙ったのかたまたま写ったものか分からない
>捏造が簡単(特殊撮影も写真合成も)
こういった点において疑わしい写真が多かったと言えます。

しかしこれまで紹介した3本のUFO動画に関しては、
>鮮明にUFOが映っている
>高速飛行しているのが動画で残されている
>空以外の背景(海面など)によってサイズ感や速度感が分かる
>最新鋭のレーダーにしっかり捕捉(フォーカス)されている
>プロのパイロットの驚きの反応も記録されている
このような点からこれまでの信憑性の疑わしい“UFO写真”とは一線を画するものになっていると考えられます。


・アメリカ海軍の公式な認定
2019年9月18日、アメリカ海軍の「これまで公開されてきた、戦闘機のレーダー画面に映っている3本のUFO動画は実際のものである」という公式発表が報道されました(図5、*11)。これが示すことは、「確かにこれらの動画は海軍戦闘機によって録画されたものである」「捏造画像ではない」「映っているレーダーもUFOと思われる飛行物体の映像も真実である」ということのお墨付きを出したようなものです。

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・なぜ15年も経ってから公式発表されたのか
元は2004年のデビッド=フレーバー元海軍パイロットによる目撃まで遡りますが、米海軍の公式発表が2019年と、公式認定まで約15年もの年月がかかっています。ここまでの年月が必要であった背景を考察してみます。

・動画自体の真贋(本物かどうか)の判定
まず今から20年前の当時は「UFO」というだけで「確証の無い目撃情報」「真偽の疑わしい大量の写真」「捏造写真の横行」「SF/オカルトおたくの集い場」というイメージが先行していたと思われます。このため、まずはこれらの動画が「本当に海軍戦闘機のレーダーの画像なのか」「映っている飛行物体の映像が加工や捏造ではなく実際にレーダーに映し出された映像なのか」という点、まず動画の出自が自軍の内部からで間違い無いかどうかの精査が最優先であったと考えられます。

・映った物体が実在するかどうかの判定
次に考えられる点として、可能性としては「レーダーの誤作動は無いか」「制御コンピュータのバグは無いか」「鳥や隕石などの飛行物の可能性は無いか」といった、飛行物体が実在したのかどうかという点が十分に精査されたと考えられます。

・自軍戦闘機情報の機密保持
UFO画像を見ての通り戦闘機のレーダー画面が丸々映っています。このレーダー画面からでも専門家が見れば「計器の情報」「レーダー画面の情報」「戦闘機の機動性能」など多くの情報を読み取れてしまいます。敵国からすると米軍戦力の情報は兵器開発における大きな指標になり、交戦する際の有力な判断材料になります。この動画はUFOの情報以外にも多くの情報が詰まっていることも当時公開しなかった理由の一つかもしれません。
・飛行物体が実物と判明し正体不明の場合
やはりこのパターンが一番対処が困難だと思われます。
アメリカというと常にどこかと戦争をしているので、敵国の兵器であることが最も脅威です。中東/ロシア/東アジアなど常に軍事力を警戒している地域が存在しています。アメリカの最新鋭の戦闘機が「追いつけない」「捉えきれない」「相手にならない」ような戦闘機を他国が保有しているとなるとアメリカにとっては一大事です。まずは「自国以外の国による人工物(兵器)なのかどうか」を見極めることが国防上の大きな問題と思われます。


・目撃者のパイロットにも調査メンバーにも機密保持が言い渡された
これは推測すれば当然なのですが「重要な情報ほど表に出てこない」ということになります。「機動力における圧倒的な性能差」を見せられ、その軍部における動揺がアメリカ国内外に報道が知れ渡ったとしたら国防に大きな影響を与えます。他国の諜報員(スパイ)も国内に潜伏している可能性があるので「アメリカ最新鋭機が正体不明機に敵わない」ということがメディアに報道されでもしたら、アメリカの軍事力を晒すことにもなり正体不明機の保有国に対して大きなアドバンテージを与えてしまうことになります。

こういった点から内部関係者やマスコミには「機密保持」「箝口令(かんこうれい)」が敷かれたと考えられます。当然ながら、もし当事者らに「UFOって存在するの?」と聞いたとしたら「え?そんなもの信じているの?」「馬鹿馬鹿しい質問しないでください」「もしかして陰謀論とか信じているの?」というように話を逸らされるか相手にされなかったでしょう。

2004年の目撃から2017年までの間アメリカでも日本でもこのような「UFOや地球外生命体が存在するかどうか」という重大問題にほとんど触れられなかった理由がこの「機密保持」にあります。国家機密情報を無断で公開してしまうとどうなるかというと、立派な犯罪になります。漏洩した情報の重要性にもよりますがアメリカでは重大なものだと禁錮100年以上、最悪死刑まで至る可能性があります。このため、目撃者当人もメディアも迂闊に話すことのできないタブーであったと言えます。


・「機密解除(デクラス:Declassification)」によって公表が許可された
これまで公開されたUFO動画を見てきましたが、このような“もう秘密にしなくても良いよ”という許可を「機密解除(デクラス)」と言います。海軍による正式な発表は図5の通り2019年(*11)ですが、2017年からUFO動画が公表され元海軍兵がメディアに出ている点からすると内部的には当時から“デクラス”されていたと考えられるでしょう。そうでなければ元軍人が国内でこのような反逆行為をするはずがありません。図6に示すように公開されている動画の字幕にも“デクラス”という言葉が記されており、軍部の許可が下りていることを示しています。
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・なぜ機密解除(デクラス)されたのか
これは世界最高の軍事力、兵器開発を誇るペンタゴン(米軍国防省)ですのでUFOの機動力を解析した結果、「これは地球上の技術で達成できる性能ではない」という結論に至ったのではないかと思われます。逆に「地球上の他国からの脅威」という可能性が除外できたためという見方もあります。そして、下記に記していますが国家としてプロジェクトが進んでいる以上「もう公開しなければならない時期」あるいは「もうUFOの存在を隠しきれない」と判断されたと考えられます。


・ペンタゴンから世界的に情報公開(2020年)
2020年4月28日英国メディアBBCから「ペンタゴンがUFO動画を公表した」と報道されました(図7、*13)。このニュースが英国メディアから報道されることが意味するのは「アメリカ国防省ペンタゴンがUFOの存在を完全に認め、それを世界に宣言した」ということになります。しかも「証明する動画3本付き」という「UFOを証明する太鼓判付き」と言えます。
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・肝心のUFOに対してペンタゴンはどう対応していたのか
先程、UFOの動画が国家の機密事項であり、その間はUFO動画のさまざまな可能性について機密調査が行われていたと説明しました。ここで「デマ/捏造」「他国の兵器」といった可能性についてはほぼ否定し得るという結論に至ったと推測されますが、「本物のUFO」の可能性が濃厚になったときペンタゴンはどのような対策を取っていたのでしょうか。

・水面下で進んでいた「対UFOプログラム」
実はこのような未確認飛行物体という脅威に対してAATIP (Advanced Aerospace Threat Identification Program: 先端航空宇宙脅威特定プログラム)という部署をペンタゴンの内部に設置し、ここに5年間で2200万ドル(約28億円)が投じられていたことをニューヨークタイムズ紙が報道しました(図8、*14)。
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ペンタゴンの公式発表ではこの部署は2007年に設置されたが2012年に調査は打ち切られこの部署も解体されたとしています。しかし米国としては「この5年の間、国防予算の中から約28億円もの予算をUFO調査に投じていた」ということを公表したことになります。2017年まではそういったことを一切表には出していませんでしたが、「UFOに対してアメリカが本気で調査していた」ということが分かるデータです。

しかもこのUFO予算に関するニューヨークタイムズ記事の出版日は2017年12月16日で図1の元海軍パイロットUFO目撃記事と同じ日です。このことも“機密解除(デクラス)”によってメディアが一斉に報道できるようになった(逆に報道も全てコントロールされている)ことを示しています。


・UFOプログラムのAATIPは解体後どうなったのか
上の記事の発表ではペンタゴンは「AATIPは2012年に解体された」としてお茶を濁していますが、その後も政府主導のUAPTF(Unidentified Aerial Phenomena Task Force: 未確認空中現象タスクフォース)という組織が2017年から2020年まで運営されていました(*15)。また、2020年から現在に至るまではAARO (All-domain Anomaly Resolution Office)という名前で活動が継続されています(*15)。つまり、UFO等の飛行物体に関する調査研究活動は現在も進行中であると言えます。


・機密解除(デクラス)後から現在までのUFO報道
その後に関してはまず図9左に示すように2021年5月にも新たな動画が公開されています。こちらでは海上に浮遊しているUFOが突然水中へと消え去る場面が録画されています(*16)。これも軍戦闘機のレーダー動画であり、国防省がUFOと認定している画像と思われます。

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・地球外生命体はいるのか?
世界最高峰の科学力を誇るアメリカ国防省が「人間の科学力の及ばないUFOの存在を公式認定した」となると、当然ながら「それを操作しているのは必然的に地球外生命体」という推論になります。もちろん「未来から時空を超えてやってきた人類」という可能性も否定はできません。ただいずれにしても「現代の人類よりも遥かに高度な技術と知能を有している」ということは間違いないでしょう。
・UFOを操作する知的生命体は人類の味方か敵か?
これは誰にも分からないことかもしれません。ただ、これまでの目撃情報が多数ある中で「明らかにUFOから攻撃を受けたという目撃」「明らかなUFOからの被害の形跡が出てきていない、公表されてない、ということから「いきなり抗戦的に対応する」のはこちらにとっても危険であり争いは考えるべきではないでしょう。


・宇宙に対する意識の分岐点
地球上で最高峰の軍事科学力を誇る組織(ペンタゴン)が長年“都市伝説/オカルト信仰”と扱われてきたUFOの存在を公式に認めたことは「人類の意識が宇宙に向けて一歩大きく前進した」と言えるのではないでしょうか。我々人類も同じ惑星の中で領土や資源を奪い合う争いを止めて宇宙へと進出していく共通意識を持った方が良いと言えるでしょう。
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1980年代より前は「UFOなんて本気で信じているの?」という人が多数派だったかもしれません。しかし21世紀に入って20年以上経った現在の認識では「UFOや宇宙人がまだSFや幻想だと思っているの?」という人の方が客観的に現実を見据えているかもしれません。地球上の非常に狭い範囲の中で仕事や損得・人間関係といった瑣末なことに意識を向けるよりも、地球と人類の未来を考える「地球意識」、銀河の一員として地球のあり方を考える「銀河意識」、宇宙全体の調和を考える「宇宙意識」を常に持っていた方が地球外生命体と仲良くなれるかもしれませんね。


引用:
*1. 2 Navy Airmen and an Object That ‘Accelerated Like Nothing I’ve Ever Seen’. The New York Times. 2017.12.16.
https://www.nytimes.com/2017/12/16/us/politics/unidentified-flying-object-navy.html
*2. Former Navy pilot: UFO 'something I had never seen in my life'. CNN
https://edition.cnn.com/2017/12/19/us/pilot-david-fravor-ufo-jim-sciutto-outfront-cnntv/index.html
*3. Movie: US Department of Defence.
https://edition.cnn.com/2017/12/19/us/pilot-david-fravor-ufo-jim-sciutto-outfront-cnntv/index.html
*4. Watch the Pentagon's three declassified UFO videos taken by U.S. Navy pilots. CNBC Television. https://www.youtube.com/watch?v=rO_M0hLlJ-Q
*5. FLIR1: Official UAP Footage from the USG for Public Release. To The Stars Academy of Arts & Science. https://www.youtube.com/watch?v=6rWOtrke0HY
*6. F/A-18E/F (航空機)- Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/F/A-18E/F_(航空機)
*7. 翼型– Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/翼型
*8. 運動能力向上機−Wikiwand. https://www.wikiwand.com/ja/運動能力向上機
*9. ヘリコプターの飛ぶしくみ.AIRBUS社HP.
http://www.airbushelicopters.co.jp/helicopter/mechanism/
*10. 揚力− Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/揚力
*11. The US Navy just confirmed these UFO videos are the real deal, CNN, 2019.9.18. https://edition.cnn.com/2019/09/18/politics/navy-confirms-ufo-videos-trnd/index.html
*12. Aliens, flying discs and sightings – oh my! A short history of UFOs in America. CNN. 2019.9.20. https://edition.cnn.com/2019/09/20/us/ufo-sightings-history-scn-trnd
*13. Pentagon releases UFO videos for the record. 28 April 2020. BBC news.
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-52457805
*14. Glowing Auras and ‘Black Money’: The Pentagon’s Mysterious U.F.O. Program. 2017.12.16. The New York Times.
https://www.nytimes.com/2017/12/16/us/politics/pentagon-program-ufo-harry-reid.html
*15. AARO- Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/All-domain_Anomaly_Resolution_Office
*16. Newly leaked video shows a UFO disappear into the water. 2021/5/19 CNN.
https://edition.cnn.com/videos/business/2021/05/19/ufo-navy-video-jeremy-corbell-orig-jm.cnn
*17. US government tracking more than 650 potential UFO cases, Pentagon says. 2023.4.19 https://edition.cnn.com/2023/04/19/politics/us-government-ufo-reports/index.html

画像引用
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No.036 未知の質量の可能性に迫る:ダークマター(3)

今回も、この世界の真の法則を知る、その全てを理解する、外界の全てを知ることは己の内面世界を知ることでもある、ということで純粋な知性の世界、形而上学/形而下学の世界を探究する瞑想を行なっていきましょう。

これまで“存在しているはず”なのに全く見えない・観測できない「ダークマター」というものがある、そしてそれは遠くの銀河から我々のいる天の川銀河まで正体不明の質量が宇宙に広く存在しているということを紹介しました(*1, *2)。もしまだこれらの記事を読んでいない読者の方はまず予備知識としてこれらに目を通しておくことを勧めます。

この未知の物体(?)であるダークマター(暗黒物質)に対してどのような候補が考えられているのかを今回は紹介します。
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・候補(1):アクシオン (Axion)
アクシオンとは、一部の研究者らによって想定されている未知の素粒子です。現時点では見つかっていませんが、その重さは電子=約500キロeV(電子ボルト)に対しアクシオン想定質量=数十〜数百マイクロeVと予測されており、質量が電子の1億分の1以下という“非常に軽い素粒子”と考えられています。

国内では京都大学を中心としたプロジェクトCARRACK(Cosmic Axion Research with Rydberg Atoms in Cavities in Kyoto)という実験で発見の取り組みが行われています。アクシオンは想定では「プリマコフ効果によって強い磁場の中で光子に変換される(図1)」と考えられておりこれによって変換されたアクシオンを計測しようという試みのようです(*3, *4)。現状ではアクシオンが発見されたという報告はありませんが、今後の成果が注目されています。

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・候補(2):WIMPs (Weakly Interacting Massive Particles) 
こちらも未発見の新たな素粒子の一つと考えられており、名前が表す通り“他の素粒子と非常に弱い相互作用しか示さない重い粒子(*5)”と考えられています。こちらは前述のアクシオンとは反対に、質量は100GeV以上=電子の数十万倍の重さの“非常に重い素粒子”と予測されています。
WIMPsは“光(電磁気力)”や“強い力(原子核を結びつける力)”と相互作用せず、“弱い力(核分裂や素粒子の変換に関与)”と“重力”のみしか相互作用しないと考えられています(詳しくは*6参照)。この性質はニュートリノとほぼ同様に考えられており相互作用を起こしにくい=“非常に検出しにくい”ものと考えられています(詳しくは*7参照)。

WIMPsを直接観測したり間接的に観測する試みが行われているようですが、現在までのところでは確固とした存在が証明されてはいないようです(*8, *9, *10)。



・候補(3):超対称性理論 (SUSY: supersymmetry)
超対称性理論とは、これまで知られている素粒子(図2左側)のボース粒子とフェルミ粒子に対してそれぞれ対応するフェルミ粒子とボース粒子(超対称性粒子:図2右側)が存在する、という仮説です。
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元々は1970年代初頭に複数の研修者グループらによりその概念が提唱され(*12, *13)、その数学的構造は多くの物理学的理論に適用されてきたとされています(*15,*16)。このモデルでは既知の素粒子に対応する同じ質量の超対称性粒子が存在すると予測されていて、もしかしたらこれらが未知の質量“ダークマター”である可能性が提唱されています。ただし、2023年現在のところまだこれらの粒子を発見するには至っていません



・改めて現状を理解する
これまで未知の質量“ダークマター”について“確実に見えない何かが存在する”、“この天の川銀河も大部分は未知のダークマター”というエビデンスが示されてきました(*1, *2)。

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図3右のグラフのようにこの銀河や宇宙にある質量のほんの10%程度のものしか我々の科学は把握できていない、と言えます。また図3左のイメージ図のように銀河には“何かがある”が、光/電磁波/弱い核力/強い核力と“相互作用しない”ために観測すらできないと考えられます。



・未知の質量の可能性について瞑想してみる
ここまで多くの科学者達が最先端の科学をもってしても未だにその片鱗すら見えてこない“ダークマター”ですが、こうなると常識的な考えでは全く理解不可能なものかもしれません。ここからは完全に空想の世界ですが、もともと有能な科学者達の頭脳でさえ解析できないものなので自由な発想で瞑想しながらいろいろ思考を巡らせてみましょう

可能性の一つとしては上記の超対称性理論に近いかもしれませんが、“もしかしたら我々の知り得ない素粒子のセットが存在する”かもしれませんね。“重力だけを共有し、他の相互作用とは一切干渉しない”別の素粒子のセットがあったら面白そうですね(図4)。

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・“相互作用しない”素粒子同士はどうなるか
我々の世界で知られている“4つの相互作用(電磁力/弱い力/強い力/重力)については過去の記事(*6)で掘り下げているのでそちらでおさらいしてください。そして、“他の物質とほとんど相互作用しない”物質でよく知られているのは“ニュートリノ”です。この“相互作用しない”性質も過去の記事(*7)で解説しているのでおさらいしてみてください。

では、“相互作用しないとどうなるのか”というと、「毎秒何億個ものニュートリノが我々の体を透過していっても我々は何も感じないし健康への影響も無い」ように、「互いに何も感じずにすり抜けていってしまう」ということが想定されます。

もし“相互作用する同じ素粒子でできた人同士が近づいたら”、図5Aのように当然ですがぶつかって転倒しますね。誰でも分かる当然のことです。しかし、もし“相互作用しない素粒子でできた人同士が近づいたら”どうなるかというと、図5Bのように“お互いに何も感じずに何事もなく通り過ぎる”ということが考えられます。もちろん、お互いに“見えてない”し“触れられない”という状態です。
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・相互作用しない素粒子の世界があったら?
我々の世界では図4左側のように、陽子や中性子を構成しているクォークや電子といったものしか観測できない(相互作用できない)ので、もし図4右側のように重力以外相互作用できない素粒子グループがあったとしたら我々は全く知覚することはできないでしょう。あちら側の素粒子の世界も我々の世界とは干渉せずに星や銀河が出来ていくだろうと考えられます(我々の世界の素粒子と同じような性質ならば)。

そうなると、もしかしたら図6のように我々のいる天の川銀河がある場所には我々の銀河だけではなく他の世界の別の銀河が重なっているのかもしれませんね。しかも、1つ2つではなくもっと多いかもしれません。むしろそのくらいでないと質量的に説明がつかないかもしれません。

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さらにはもしかしたら太陽系に似たような星系が別の素粒子の世界にあってもおかしくないですね。そしてもし“重力のみ相互作用する”としたら、“惑星間の重力によって引き合いつつ衝突はしない”ので実は重なって同じ軌道を周回していたりするかもしれないですね(図7)。パラレルワールドといったSFの世界の話も、“実は同じ座標空間に存在していた”なんていうことも可能性としては否定できないですね。


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月の表面は我々が知っている景色は図8左側のような、無味乾燥で荒涼とした何も無い地面だけが続く景色です。しかし、もしかしたら我々が別な世界を知覚できたとしたら図8右側のような、我々が干渉できず我々の科学が遥かに及ばないような高度な文明が築かれているかもしれません。さらにその上、あちら側の素粒子物理学を完全に制御して一方的にこちらの素粒子の世界を観測していたりするかもしれませんね。


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・さらなるダークマターの候補
重さと言えば、前回の記事“魂の重さは何グラム?(*18)”では人が亡くなる瞬間、全ての物質的現象を考慮しても原因不明な10〜21グラムの体重減少が起こることを示しました(*19)。研究著者は“魂の重さ”と考察しており、100年以上前の古い論文ですがこれを覆す検証結果は未だに示されていません。よって、今の時点では「魂の重さは平均15グラムであることが少ないデータながら示されているがこれを否定する科学的根拠は現在まで示されていない」と言えます。

この研究結果を真実と考えると“魂という科学的には直接観測できない存在が、重さを持ってどこかに存在している”ということになります。もしそうなら肉体が無くなっても存在し続けることになります。そうなると現状での世界人口は80億人を超えましたが、この地球上に存在している魂の数はこれを遥かに超える膨大な数になると考えられます。
また、魂というもの存在を科学的にも否定できないとなると、人の魂だけではなく“魂のような存在”あるいは死の際に迎えに来るような“魂とのみ相互作用できる存在”のことも考慮に入れる必要があるかもしれません

下の絵は14世紀頃にイタリアの詩人ダンテによって書かれた神曲(Divina Commedia *20)の一場面です。知らない方、まだ読んでない方は一読することをお勧めします。絵の場面は天国編でダンテとベアトリーチェが至高天(Empyrean)で見た光景です。ご覧の通り、そこには無数の天使達が天に舞っている様が描かれています。もしかしたらこのような世界も正体不明の質量の一部として実在しているのかもしれませんね。

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“神曲”が書かれるにあたって詩人のダンテが想像の中で見たものは何だったのでしょうか。完全なる空想や妄想の世界だったのでしょうか。それとも、通常は知覚できない・相互作用できない“魂の世界”を知覚したのでしょうか“魂の世界”は本当にあるのでしょうか。それとも確固とした実在世界であり“ただ一般の地球人が知覚できないだけ”に過ぎないのでしょうか。

・最先端の科学でも限界があることを知る
21世紀を迎え、人類は観測範囲を広げ100億光年以上離れた星の情報をも得ることが出来るようになりました。しかしながら図3右のグラフのように「我々人類は真実の10%しか観測できてない」ということも今の事実であり、これを否定する有能な科学者はいません。いくら“望遠レンズの感度と倍率を高めても、光というモダリティで観測できない領域が存在する”ということに気が付き始めていると思います。

“意識”、“魂”といった全く掴みどころの無いものも近年の瞑想に関する医学研究が増加していることから、関心や注目が高まっているようです。我々もこの世界は“目に見えて触れられる物質”だけから成っているわけではないということを嫌でも認識しなければならない時期に来ているようです。量子力学においても“観測するかどうか”や“意識”といった非物理的な要素が結果を変えることが知られています(*21, *22)。

我々は科学のような客観的なもの、物質的なもの、存在を確認できるもの、つまり形而下学(形あるもの)の世界が主体であると思って生きています。しかし、科学の進歩は“形をとらえられないもの”、つまり形而上学的な世界を直視せずにはいられない状況に直面しています。形而上学的な世界は“意識”によって知覚することができます。日々の瞑想によって“意識”を鍛錬し、ダンテと同じ光景を見に行きましょう。

引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n594654ee1eb3
https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
*3. アクシオン探索実験について ~CARRACK実験~ 時安 敦史 東北大学 電子光理学研究センター 2017. 1. 28 ダークマター懇談会
*4. アクシオン−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アクシオン
*5. WIMPs- Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Weakly_interacting_massive_particle
https://note.com/newlifemagazine/n/n90c2cc2fab80
https://note.com/newlifemagazine/n/nbcfce2b9ed18?magazine_key=mb580e4b26aa4
*8. Fox JP, Jung G, Sorensen P, and Weiner N. Dark matter in light of the LUX results. Phys. Rev. D 89, 103526 – Published 22 May 2014
*9. Davis JH. The Past and Future of Light Dark Matter Direct Detection. Int. J. Mod. Phys. A, 30, 1530038 (2015)
*10. COSINE-100 Collaboration (2018). "An experiment to search for dark-matter interactions using sodium iodide detectors". Nature. 564 (7734): 83–86.
*11. 超対称性理論−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/超対称性理論
*12. Gervais JL, Sakita B. (1971). "Field theory interpretation of supergauges in dual models". Nuclear Physics B. 34 (2): 632–639.
*13. Volkov DV, Akulov VP, Pisma Zh.Eksp.Teor.Fiz. 16 (1972) 621; Phys.Lett. B46 (1973) 109; Akulov VP, Volkov DV, Teor.Mat.Fiz. 18 (1974) 39
*14. 超対称性粒子の質量の持つ新しい性質. 奥村 健一(九州大学先端素粒子物理研究センター)https://www.sci.kyushu-u.ac.jp/koho/qrinews/qrinews_191115.html
*15. S. Dimopoulos; H. Georgi (1981). "Softly Broken Supersymmetry and SU(5)". Nuclear Physics B. 193 (1): 150–162.
*16. S. Dimopoulos; S. Raby; F. Wilczek (1981). "Supersymmetry and the Scale of Unification". Physical Review D. 24 (6): 1681–1683.
*17. 標準模型−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/標準模型
https://note.com/newlifemagazine/n/n0947b63de9cf
*19. Duncan MacDougall, Hypothesis Concerning Soul Substance Together with Experimental Evidence of The Existence of Such Substance. Journal of the American Society for Physical Research, Vol1-5, 237-275, 1907
*20. Dante Alighieri, Divine Comedy; Divina Commedia, around 1321.
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56

画像引用 
https://www.vecteezy.com/free-photos. Free Stock photos by Vecteezy
https://phys.org/news/2017-07-evidence-impacts-milky-galaxy.html
https://jp.freepik.com/free-vector, Image by macrovector on Freepik
https://www.digipot.net/?p=19053
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河#/
https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/potw2103a.jpg
https://en.wikipedia.org/wiki/Earth
https://www.seekpng.com/ An Earth Like Planet Shrouded In Clouds With Blue Oceans
https://wallpapers.com/images/featured-full/moon-surface-pictures-hlo75sufl9iswfrh.jpg
https://wallpaperaccess.com/future-space-city#google_vignette
https://en.wikipedia.org/wiki/Divine_Comedy_in_popular_culture

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No.035 魂の重さは何グラム?

今回も、この世界の真の法則を知る、その全てを理解する、外界の全てを知ることは己の内面世界を知ることでもある、ということで純粋な知性の世界、形而上学/形而下学の世界を探究する瞑想を行なっていきましょう。

これまで“存在しているはず”なのに全く見えない・観測できない「ダークマター」というものがある、そしてそれは遠くの銀河から我々のいる天の川銀河まで正体不明の質量が存在しているということを紹介しました(*1, *2)。今回は「こんなものに重さがあるのか」というような意外な研究を紹介します。

タイトルにもありますが読者の皆さんは“魂の重さ”についてどう思いますか?何らかの情報を知っている人もいるかと思いますが、一般的には“魂の重さ”とは聞いたことのない話です。

まず“魂”というものが存在するかどうかについては明確な科学的根拠は今のところ示されていません。多くの人は“あるだろう”と思っている、但し直接“見たり・触れたり・話したり”したことはない、というところが一般的な概念でしょうか。もちろん中には人の魂を見たり、話をしたりできる能力者もいるかもしれませんが。

“魂”とは一般的に目に見えず、形も定まらず、存在すらも認識できない、“形のない世界で知覚できるもの”つまり“形而上学”で扱われる事象と言えます。そして“重さ”とは皆さんもよく知っているもので、グラム・キログラム・トンといった明確な単位が存在し、宇宙の何処へ行っても“質量”は不変であり、誰が測定しても同じである科学的な単位、つまり“形而下学”的な属性を持つものです。今回は“形而上学”と“形而下学(自然科学)”をつなぐ研究の紹介となります。

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・医学的な“魂”の位置付けとは?
まず医学的な観点でお話しすると、“魂”とは明確に定義されていません。当然ながら教科書においても“魂の重さ”や“魂の大きさ”など記述されているのは見たことがありません。
魂に関する記述があるとしたら“死に直面した人”と対面するに当たり、“その人の魂/尊厳/スピリチュアルな側面を尊重し、受け入れて接しましょう”というやや漠然とした表現で記載されるくらいです(*3)。

・医学的に“魂”の研究に踏み込めない理由
まず第一に“科学的根拠が示せない”ということが挙げられます。例えば「レントゲンで撮影できたり」、「超音波で画像を描出できたり」、「心電図のような波形を観測できたり」したならば医学的研究も盛んに行われたかもしれませんが、残念ながら「再現性のある客観的な観測方法が無い」というのが大きな理由と考えられます。「形而下学が主体の西洋医学」では「形而上学的な領域にある魂」を扱うのは難しいということです。

もう一点は宗教・思想的な通説が混在してしまうことが問題点として挙げられます。これは各宗教の宗派や個人間でも思想が異なり、「話し合ってまとまるものではない」上に「誰もが納得するような科学的客観的証拠も示せない」という問題点は多くの人の想像に難くないと思います。これらの観点から、「医学的には魂についての探究はあまり進んでいない」と言っても良いでしょう。


・“魂”の計測に挑戦した医師
18世紀〜19世紀にかけてアメリカ・マサチューセッツ州にダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall)という一人の医師がいました。この医師がたった6人ではありますが、臨死の患者の状態を詳細に観察し“奇妙な体重変化”を発見した研究を紹介します。

タイトルは“Hypothesis Concerning Soul Substance Together with Experimental Evidence of The Existence of Such Substance(魂の物質的側面に関する仮説とその存在の実験的証拠, *4)”で1907年に確固とした学術雑誌に掲載されたものです(図1)。

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マクドゥーガル医師がどのような手法を用いたかというと、図2のような天秤のような秤(正確な秤の図はありませんが、用語からこのタイプと推測)を用いてベッドごと被験者の体重をグラム単位で正確に計測したと思われます。1907年頃なので精密機器は無い時代ですがこのタイプの天秤でもシンプルな分、非常に高精度に重さの変化を検出可能であることは知られています。以下にマクドゥーガル医師による詳細なレポートを記載します。
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・1例目(引用符の部分はほぼ原文意訳)
“結核で臨死状態の男性、死の3時間40分前から天秤で重量の観察が行われ、臨終の瞬間までほとんど体動はなかった。呼吸や汗による水分の蒸発は1時間に1オンス(約28.4グラム/時間)の体重減少で検出された。それまではゆっくりと一定の速度で体重が減少(約0.5g/分)していたが、男性が死亡した瞬間、数秒のうちに3/4オンス(約21グラム)の体重減少がみられた。腸の動きは無く、膀胱からの尿の排泄は1〜2ドラム(約1.8〜3.5グラム)ほどあった。しかしこれらがゆっくり蒸発したとしても数秒のうちに21グラム減少したことを説明することはできなかった呼吸も検証したが21グラムの体重減少を説明することはできなかった。魂の物質?それ以外に説明できるものがあるでしょうか?”

・2例目
“同じく結核で瀕死の男性。彼は臨死の4時間15分前から計測が開始された。最初の4時間は1時間に3/4オンス(約21グラム/時間)の割合で体重が減っていった。1例目より呼吸がゆっくりであったことが体重減少速度の違いと考えられた。最後の15分間一部の顔の筋肉が痙攣していたが、死が訪れると筋収縮は止まり、そのとき体重が0.5オンス(約14.2g)減少した。最後の約15分で体重は約46グラム減少した。それまでの4時間は約0.35グラム/分の減少であったのに、最後の15分では約3グラム/分と大きな差があった。”

・3例目
“3番目の症例である結核で死亡した男性は、死亡と同時に 0.5 オンス(約14.2グラム)の体重が減少し、数分後にさらに 1 オンス(約28.4g)の減少が見られた。

・4例目
“4番目のケースでは、糖尿病性昏睡で亡くなった女性だったが、残念ながら私たちの体重計は微調整されておらず、私たちの研究に反対する人々によるかなりの干渉があった. 死の前の時点に戻すのに 0.5 オンス(約14.2グラム)の重りを必要とした。しかし私はこのケースの測定結果にはあまり価値がないと考えている。”

・5例目
“5 番目の症例は結核で死亡した男性、説明できない約8分の3オンス(約10.6g)を必要とする秤の傾きを示した。これは死と正確に同時に発生した。減少した分の重りを乗せて釣り合わせると、奇妙なことに、15分間釣り合ったまま動かなかった. 8分の3オンス(約10.6g)の低下を説明することは不可能だった。その減少は非常に突然ではっきりとしたもので、秤は大きな音で下のバーに当たった。ケースのスケールは非常に敏感にバランスが取れていた状態だった。”

・6例目
“6番目で最後のケースは公正なテストではなかった。 患者はベッドに寝かされてからほぼ 5 分以内に死亡し、私が秤を調整している間に死亡した。
実験時にとった私のメモは、1.5オンス(約42.5グラム)の損失を示していたが、さらに実験は非常に急いでいたと言われるべきだった。体重計の振動は完全には止まらなかった。他のテストでこのようなことは無かったが、この1.5オンス(約42.5グラム)の見かけの体重減少は、秤の重りの偶発的な移動によるものかもしれない。”


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・6例のまとめ
ここまで得られたデータをまとめると図3の表のようになります。6例のデータの中でマクドゥーガル医師自身が「正確ではない」と言っている4例目と6例目は参考値として括弧書きで記載しています。
彼の実験は当時ながらも細部まで検討されており、“排尿/排便”はもちろんのこと、“呼吸による水分蒸泄”、“体動/筋収縮の影響”、といった重量に関与しそうな要素はほぼ考慮に入れられています。秤の精度も1〜2gの感度であったとのことなので、10g以上の変化は誤差とは言えないでしょう。

彼の考察では“あらゆる体重減少の経路を網羅したが、既知のものでは説明できない。何らかの計測可能な物質が死の瞬間に人体を離れることをこの実験は示している”と説明しており、やはり“魂”あるいは“肉体の死後も人格を継続または持続させるもの”と定義しています。
・“魂の重さ”の平均値の真の値の統計学的推測
これらから臨死の際に身体から離れるものが“魂”である前提で、 “魂の重さ”の平均値は「15グラム」という計算結果になります(図3)。これは大変興味深い結果です。ただしかし、科学者らからは「たったの4例で断言すべきではない」という反論も得られるかもしれません。そこで、統計学的解析を行ってみました(図4)。

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図4に記載されているようにサンプル/母集団の標準偏差/分散を求めて“魂の重さの真の平均値”を求めてみました。結果として魂の重さの95%信頼区間は7.6〜22.4グラムである(95%の確さでこの範囲に真の値がある)ことが言えます。

もし魂の重さを信用しない科学主義者がいたとしたら「魂の重さの観測値は平均15グラムで95%信頼区間は7.6〜22.4グラムです。もし異論があるのなら減少した重さの正体や反証データを示してください」と言えばおそらく反論できる人はいないと思われます。なぜなら、私も数百例の方々を看取った経験がありますが“臨終の瞬間に精密に体重を測ったことは無い”ですし、“現代においてそういう経験がある医師はまずいない”、つまり“誰も経験が無いから議論できない”からです。


・この研究の反響
この研究はなんと当時のニューヨークタイムズ紙に取り上げられました(図5)。やはり一般市民にとっても興味を惹きつけるような題材であったのでしょう。エビデンスレベルという概念も無い100年以上前の実験ではありますが、一流紙の記事に取り上げられるということは驚くべき注目度であったと考えられます。
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・その後の解析について
マクドゥーガル医師の研究の後は、残念ながら調べる限り同様の実験の報告は見られませんでした。技術的な面での難しさは全く無いのですが、やはり亡くなる瞬間の人の体重を計測する実験というのは倫理面、遺族感情の面で実行が難しいことが予想されます。

人の代わりに羊を用いて臨死の際の体重変化を観測した興味深い研究もあります(*8)。羊の場合は“予想に反して体重が増加した”とされています。図6に示すのがその一例ですが、矢印に示したように“不自然に”体重が増加しているのが分かります。しかも、“6秒間だけ74グラム増加してまた直後に戻った”とのことです。

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この研究では計12体の動物を用いて実験を行っていますが、“1〜6秒間の一過性の、18〜780グラムの体重増加”が見られたと記しています。もちろん、“呼吸・排泄・体動・蒸発等では説明できない現象”とされています。


まとめると以下のようになります。
・人間が死亡する瞬間、原因不明の体重減少が起こる
・減少の平均値は15グラム(95%信頼区間:7.6〜22.4グラム)
・人の場合は数秒のうちに急に10〜20グラム軽くなり、戻らない
・この減少は医学的に既知の原因(呼吸/排泄/蒸発等)では説明できない
・羊の場合も死の瞬間原因不明の体重変化が起こる
・羊の場合は “1〜6秒”、“18〜780gの体重増加”が起こりすぐに戻る
・人間と動物では起こる現象が異なっていた

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死の瞬間、水分や排泄物などの影響を全て除外した上で、肉体から離れたものは何だったのでしょうか。“魂”というもの以外に何か考えられるでしょうか。“魂”が重さを持つのなら何で出来ているのでしょうか。我々がこの世界の全てと考えている“標準模型(*9)”の素粒子である電子、クォーク、ニュートリノ、これらで魂を合成できるのでしょうか。それともこのモデルに無い科学的に知られてない“何か”があるのでしょうか。これらの答えは科学を超えた“形而上学”にありそうです。“魂”の栄養でもあり、“魂”の運動でもある“瞑想”をしながら人間の秘密を探究していきましょう。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n594654ee1eb3
https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
*3. トータルペイン(全人的苦痛)~心のケア~
https://ganclass.jp/treatment/pain/pain02.php
*4. Duncan MacDougall, Hypothesis Concerning Soul Substance Together with Experimental Evidence of The Existence of Such Substance. Journal of the American Society for Physical Research, Vol1-5, 237-275, 1907
*5. miniwebtool 標準偏差電卓(高精度)
https://miniwebtool.com/ja/standard-deviation-calculator/
*6. ke!san 平均値と標準偏差から真の値を推計
https://keisan.casio.jp/exec/system/1184294688
*7. Soul has weight, physician thinks. Dr. Macdougall of Haverhill Tells of Experiments at Death. The New York Times, March 11, 1907.
*8. Hollander LE Jr. Unexplained Weight Gain Transients at the Moment of Death. Journal of Scientific Exploration, Vol. 15, No. 4, pp. 495–500, 2001
*9. 標準模型−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/標準模型

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瞑想を通じて医学・健康
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