No.032 存在しているはずなのに科学的に観測できないもの

今回は、“この世に存在するものは科学的に証明されたものだけ”なのか、それとも“科学で証明できてないものが数多く存在する”のか、この命題について紐解いていきます。瞑想とは自己の内面に意識を向け自我を消し去り外界と融合し、全てを知る超自我へと昇華していく方法であることは多くの瞑想法で共通しています。今回もこの世界の“真理”について知り、考え、想像し、瞑想していきましょう。

・惑星の軌道の法則を導いたケプラー
我々の住む地球と太陽系について考えてみると、ご存知のように太陽を中心に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星というように天体が公転しています。この公転周期(太陽の周囲を回転する周期)には一定の法則があり、ケプラーの法則として知られています(*1)。

ケプラーの第1法則(楕円軌道の法則)、第2法則(面積速度一定の法則)、第3法則(惑星の公転周期の2乗は軌道長半径の3乗に比例する)というこれらの法則で太陽系惑星の動きに関して大きく理解が前進しました。この法則がケプラーによって世に公表されたのは1609年(*2)と今から400年以上前のことであり、その当時の貴重な文献の一部分を図1に引用します。日本では江戸時代初期の頃から宇宙に対する探究がここまで進んでいたことには驚かされます。

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・太陽系の惑星の公転周期と法則
これらの法則も応用することによって太陽系の惑星・準惑星の軌道や周期はほぼ正確に観測することができるようになりました。実際に公転周期を計測すると、地球が1回公転する時間(地球の1年)の間に各惑星がどのくらい移動するのかを図2に示します。

地球の1年の間に水星は約4.2周、金星は約1.6周、火星は約0.5周、木星は30度(1/12周)、土星は12度(1/30周)、天王星は4度(1/90周)、海王星は2度(1/180周)、冥王星は1.5度(1/240周)移動します(図2)。この図を見て分かることは、“内側の惑星ほど角(公転)速度が速く、外側の惑星ほど角速度が遅い”という法則が見えてきます。
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これは惑星に対して外向きに働く力(遠心力)と惑星に対して内向きに働く力(重力/引力)が釣り合うためのバランスを取るためと言えます。水星のように太陽に近いと重力(距離の2乗に反比例)の影響を強く受けるため、速く公転しないと遠心力が釣り合わず、反対に海王星や冥王星のような外側の天体は太陽からの重力が弱いので公転速度が速すぎると太陽系外に飛び出してしまいます。

このように、各天体の質量/重力や位置関係が分かると公転周期を求めることができ、逆に公転周期や軌道の天体の質量から中心部分(コア)の質量や重力を求めることが可能になります。 


・かみのけ座銀河団の質量を計算したスイスの科学者
時は1900年代に変わり、スイスのツヴィッキー(Fritz Zwicky)博士という天文学者がいて、この博士は大質量の星が起こす爆発“超新星(Supernova)*4”の研究の第一人者でした。この天文学者は研究の一環で“かみのけ座銀河団(Coma Cluster)”という銀河の集団について研究していました。各銀河の光度や運動を観測し、銀河団の質量を求めようというものです(*5)。
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かみのけ座銀河団(*6)について図3に観測画像を示していますが、図3左は1937年のZwicky氏による観測図で図3右は現代の観測データに加工を施して得られた画像です。注意して頂きたいのは、この点や光の粒の一つ一つが星ではなく銀河であることです。観測している銀河団は3.2億光年離れた位置に存在しているため撮影範囲も膨大な広さになります。この点一個が直径10万光年ある我々の天の川銀河と同クラスであることを想像し、如何に広大な領域を観測しているかを認識してください。

この時期にはある程度計測方法も確立してきていて、その天体の明るさ(光度)から“太陽の何個分”というように質量を求める方法(*7)(太陽系惑星全て足しても太陽の1/1000程度というように銀河の質量はほぼ恒星の数で概算できる)が知られていました。また、ツヴィッキー氏も使用した運動力学的に解を導出するビリアル定理(*8)といった手法も確立されていました。


・計算したら衝撃的な結果だった
ツヴィッキー氏は当時の観測データから、各銀河の直径、中心点からの距離と回転速度、運動エネルギー、重力定数、銀河団の中心と辺縁の運動、3次元的回転モデル、ポテンシャルエネルギーなど、当時判明しているあらゆる要素を漏らさずにチェックして計算結果を導きました。図4にその計算過程の一部を示しますが、実際の研究論文では30以上の方程式を用いて解を導き出しています。興味のある人は式を紐解いても良いと思いますが、結論だけで良いという人は図4下の赤枠にのみ注目してください。
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これらの計算の結果、予想を覆す答えが出てしまいました。図4赤枠に示す通り、かみのけ座銀河団全体の質量を各銀河の光度から算出すると「太陽質量の8.5×10^7倍」となるのに対し、運動力学的な計算法(回転速度や重力から質量を求める方法)では「太陽質量の4.5×10^10倍=4500×10^7倍」と全く異なる結果が出てしまったのです。

その差は実に500倍以上(!)。もちろんツヴィッキー氏は天文学者であり何度も過程を検証した上での計算結果であり、“超新星”といった大質量天体の専門家でもあったのでそういった存在も全て計算のうちに入っていたはずです。しかし、銀河の運動からするとこれだけの銀河団が高速運動しても離散させずに引きつけている“巨大な重力”が存在していると考えざるを得ません。しかし当時の高精度の望遠鏡でも光学的には巨大質量の原因となるものは全く観測されません。このときこの“何か正体の分からない質量や重力の原因”を“ダークマター(暗黒物質)”と呼びました。


・見えない“何か”をさらに裏付ける研究
その後の1970年、ヴェラ・ルービン(*9)というアメリカの女性天文学者がアンドロメダ銀河に関する奇妙な研究データを発表します。
アンドロメダ銀河(*10)は地球から約250万光年離れたところにありますが、夜空の視界が良ければ肉眼でも見える銀河です。直径は約22万光年で我々の天の川銀河(直径約10万光年)からすると直径が2倍以上ある巨大な銀河です。
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ルービン氏はこのアンドロメダ銀河を観測し、その回転速度と質量を導きました(*11)。すると、またもや予想と異なる結果が出てきました。図2の太陽系の公転速度一覧に示した通り、通常ならば“内側の天体ほど速く公転し、外側の天体ほど遅く公転する”はずです。ところが、ルービン氏らの観測データでは図6左に示すように、“アンドロメダ銀河の外側部分の星々も内側の星々と大きく変わらない速度で公転している”という結果が得られたのです。
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さらに、“運動から計算される銀河の質量”/“光度から計算される銀河の質量”の比を求めたところ、やはり“運動力学的な質量”が“光学的な質量”よりも10倍以上大きいという結果が出ました(図6右表赤枠)。

先のツヴィッキー氏の研究結果と同様に、このルービン氏の研究からも「銀河が高速回転しても星を引きつけておける大きな重力を持つ何か」が存在していることが示唆されました(図7)。

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・重力の正体はブラックホールでもなかった
近年では2019年に日本の研究チームが謎の質量の正体について“微小な原始ブラックホール”である可能性を検証していましたが、この説も“ブラックホールの可能性は否定的である”という結論に至っているようです(*12)。結果としては“観測されたブラックホールの数が想定するよりも非常に少なかった”ということと、“観測されたブラックホールでは謎の質量の0.1%程度にしかならない”という内容でした。


・どこにも見当たらない
一定の範囲を超えて大きな質量を持つ星は内部の核融合反応によって太陽のような自ら光を放射する「恒星」になります(*13)。これら太陽のような恒星に比べると地球や木星といった惑星の質量は微々たるものであり、「恒星の質量の総和が推測できればその(見えている)天体の質量の総和を推測できる」という考えで間違っていません。

そして恒星は可視光線、赤外線、紫外線、ガンマ線といった何らかの電磁波を常に放射しています。なので、そのような天体があれば何十億光年先のあらゆる波長の電磁波をも検知できる大型の天体望遠鏡で何らかの信号をキャッチすることが出来るはずです。しかし奇妙なことに天体望遠鏡や人工衛星でもそのような天体や物質は未だ観測できていません。 

・正体不明の物質(?):ダークマター
このように“全く見えず視覚的に捉えることが出来ない”という観点からこの正体不明の質量は“ダークマター(暗黒物質:dark matter)”と呼ばれています。“ダーク/暗黒”と言っても善悪の概念ではなく“見えない/正体不明”という意味でこう呼ばれています。正体不明の巨大質量というとブラックホールも頭に浮かびますが、先述の通りブラックホールのような空間を歪めるほどの大質量の可能性は今のところ否定的です。
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“見えない”ということは“光を発しない/光を反射しない/光を遮らない”、つまり“光や電磁波と相互作用しない”という性質を意味しています。しかしながら、“銀河の運動を見ると質量が見かけの質量の10倍〜500倍ほど大きい”というこれまでの研究結果から“確実に何かが存在していることは間違いない”と言えます。もしかしたらアンドロメダ銀河も科学的に観測されている写真(図8左)ではなく、全てが見えたら実際の姿は図8右のような様々なものが写っているかもしれませんね。

・“見えているものが全て”と思わないこと
我々は普段目で見ているものを信じ、科学的に証明されたことを信じて生活しています。ただ、ツヴィッキー博士やルービン博士らが示したように、“確実に存在していそうなのに科学的に姿を捉えられないものがある”ということが“科学的に証明された”と言えます。もちろん常に“新たな発見”は“それまで科学的に証明されてなかったことの証明”の連続です。一流の科学者達にとっては誰かに「そんなこと科学的ではない」と言われても「だから何なのだ?だから探究するのだろう」と全く取り合わないでしょう。

我々が見ているアンドロメダ銀河は実際の1/10以下かもしれないし、かみのけ座銀河団も本当の姿の1/500しか見えてないかもしれません。もちろん、我々の住む日常の世界も同じことが言え、もし物質として知覚できない世界(形而上学的世界)が見えたとしたら全く違う光景かもしれません。普段我々が認知している世界が如何に狭い領域かを認識し、瞑想によって宇宙の真の姿を理解し真理に近づいていきましょう。


引用:
*1. ケプラーの法則−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ケプラーの法則
*2. Johannes Kepler, Astronomia nova (1609), pp. 165–167.
*3. Fritz Zwicky−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Fritz_Zwicky
*4. 超新星−天文学辞典. https://astro-dic.jp/supernova/
*5. Zwicky F. ON THE MASSES OF NEBULAE AND OF CLUSTERS OF NEBULAE. The Astrophysical j. 86.3.p217, 1937
*6. かみのけ座銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/かみのけ座銀河団
*7. Kuiper GP. The Empirical Mass-Luminosity Relation. The Astrophysical J, 88,p.472, 1938
*8. ビリアル定理−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ビリアル定理
*9. ヴェラ・ルービン−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴェラ・ルービン
*10. アンドロメダ銀河−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
*11. Rubin V and Ford WK Jr. ROTATION OF THE ANDROMEDA NEBULA FROM A SPECTROSCOPIC SURVEY OF EMISSION REGIONS*. The Astrophysical J, 159,p379, 1970
*12. Niikura H, et al. Microlensing constraints on primordial black holes with the Subaru/HSC Andromeda observation. Nature Astronomy 3, p524–534 (2019)
*13. 恒星−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/恒星

画像引用: 
https://ja.wikipedia.org/wiki/かみのけ座銀河団#/media/ファイル:Ssc2007-10a1.jpg
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
https://cdn.britannica.com/05/94905-050-1830515C/Whirlpool-Galaxy-NGC-5195-Sc.jpg

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No.031  宇宙の創造・維持に不可欠な“4つの力”

今回も、我々の理解を遥かに超える宇宙の神秘に想いを巡らせる「宇宙瞑想」をやっていきましょう。

前回は「宇宙の始まり:ビッグバン」、「創成期の宇宙の状態」、「いかにして“物質宇宙”が誕生したか」について科学的側面を主体に解説しました(*1)。しかし、ただ物質がそこにあるだけでは何も起こりません物質間の“相互作用”という力が働くことで世界が機能していきます。

いわゆる“物理法則”、“自然界の法則”と呼ばれるルールで、どのようなものがあるかというと図1に示すように「プラスとマイナスが引き合う、マイナス同士が反発し合う」「原子核や軌道電子が形成される」「惑星同士が引力で引き合う」「磁界や電界が発生する」といった様々な力が存在しています。
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我々は小学校の理科の授業の時から当たり前のように「プラスとマイナスはくっつく」「地球には重力がある」と習ってきましたが、これらは生来その性質を持っているわけではなく、“何かによってこのような力を付与されている/何かが力を発生させている”と言い換えることができます。

・標準理論(標準モデル)
標準理論とは、この世界の物質や相互作用のほぼ全てを素粒子として体系化したものです(図2,*2)。例えば、この表の左側にある“アップクォーク”と“ダウンクォーク”の組み合わせで陽子や中性子を作ることが可能です。そしてその下に電子があるので、この3つの素粒子だけで地球上に存在するあらゆる原子を生成することが可能です。今回は物質を形成する素粒子ではなく、右の破線で囲まれた“相互作用/力の伝達を司る素粒子に焦点を当てて解説していきます。

力の素粒子が力を発生させる方法としては、“これらの力を媒介する素粒子が力の作用する物質間で交換されることにより力が発生する”、または“力の素粒子のエネルギーに満ちた「場」に物質が入ることによってその物質に力が発生する”というように考えられています。
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・4つの力(1):電磁気力
まず最初に誰でも聞いたことがあり、日常でも触れる機会の多いのがこの電磁気力です(図3, *3)。図にはイメージ画像を掲載していますが、形而上学的には「力を司る存在達」「宇宙の法則を維持する存在達」がいることになっているのでそう思って見てください。記号や文字の羅列が苦手な“理系アレルギー”の人にはこういう存在達の方が頭に入りやすいと思います。
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電磁気力とは電気が関与するあらゆる物がこの力によって動作しています。照明や電化製品など私たちの生活では切り離せない存在となっています。電磁気力を媒介する素粒子は“光子(photon)”です。光子とは我々が見ている“光”そのものです。正確にいうと、光子=電磁波であり、電波やラジオ波/赤外線/可視光線/紫外線/X線など全てが電磁波の一種で、我々が目に見える“光”と呼んでいるものはそのごく一部分に過ぎません。

ただし、もっと基本的な働きとしては「分子同士がすり抜けずに反発する(図3A)」、「物質が光と相互作用し反射する(図3B)」、「原子同士が電子を介して結合する(図3C)」という法則にも寄与しています。つまり、「我々が物に触れられる」「光を通じて物を見ることができる」「我々の体を構成する原子同士が結合している」のはこの“電磁気力”の相互作用があるからと言えます。


・4つの力(2):強い核力
この“強い核力”(*4)というのはあまり聞くことはなく日頃意識することは無いですが、非常に重要な役割を担っています。その主な役割は“素粒子(クォーク)同士を結合させ、陽子や中性子を形成する”というもので、媒介する素粒子は“グルーオン”と呼ばれます。陽子や中性子の内部で働く力なのでその範囲は10^-15m(1フェムトメートル)という極めて小さな範囲で作用します(図4)。また、原子核で陽子や中性子を結合させているのもこの“強い相互作用”が担っています。

この力の特徴としてはその名の通り“非常に強力”という点が挙げられます。具体的には10^-15mという極小距離において他の力と比較すると、電磁気力”の約137倍、後述する“弱い核力”の約100万倍、“重力”の約10の38乗倍という驚異的な強さを持っています。このために電気的には反発する陽子同士の電磁気力を抑え込んで原子核を形成しています。

その代わりその有効範囲は非常に小さく、原子核の大きさを超える範囲では急に弱まり無視できる程度になります。これにより、原子核をまとめつつ周囲の軌道電子には影響しないという絶妙なバランスを保っています。
このように、“強い核力”は見えないところで原子の存在自体を維持している“縁の下の力持ち”的な存在です。
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・4つの力(3):弱い核力
次に説明するのは“弱い核力(弱い相互作用*5)”ですが、これも4つの力の中ではあまり一般には知られてないと思われます。媒介する素粒子はW/Zボソンと呼ばれ、上にある通り、その強さは原子核を結びつける“強い核力”に比べると約1/100万と小さく、有効範囲も10^-16〜10^-17mと“強い核力”よりもさらに狭い範囲に限られています。

しかし、この“弱い核力”には変わった能力があります。この力は“素粒子(クォーク)を別のものに変える”という特殊能力があります。具体的には図5右上にあるように、中性子(アップクォーク×1+ダウンクォーク×2)のダウンクォークをアップクォークに変化させ陽子(アップ×2+ダウン×1)に変えることができます。この時、同時に電子1個とニュートリノ1個を放出して電気的にプラスマイナス0になります(図5右中)。
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中性子が陽子に変わると何が起こるかというと、「原子の基本的な性質は原子番号(陽子の数)によって決まる」という法則から、「原子番号が変わって別の性質の原子になる」ということが起こります。具体例では、アルゴン(Ar)は常温では安定した気体ですが、ベータ崩壊という弱い核力の作用によって金属のカリウム(K)原子へと変化します。

他にも“パリティ対称性の破れ”など特有の性質を持つことが知られていますが、他の力のように基本的に“引き合う/反発し合う”という力学的性質ではなく、“物質を変化させる”という点で非常にユニークな存在であると言えます。


・4つの力(4):重力
4つ目は誰もがよく知っている“重力”(*6)です。物質には質量があり、質量を持つもの同士の間には必ず重力が発生します。しかし、分子レベルにおいては重力はほぼ無視しても良いくらいに微々たる力です。上に挙げた“強い核力”と比較すると、その10^38乗分の1しかなく、強さだけで見ると最弱かもしれません。

しかし、その影響範囲は無限に広く、宇宙空間全てに到達するほどと言えます。“強い核力”/“弱い核力”は原子サイズを超えると殆ど影響力は無くなり、“電磁気力”も地球規模となると重力より力は弱くなります。太陽系の惑星の運動を見ると分かりますが、この規模になると全ての惑星はほぼ太陽の重力と惑星自身の重力によって公転運動が決定されていることが分かります。さらに太陽系どころではなく、直径何十万光年もある銀河の動きも重力によって支配されており、銀河同士が互いの重力によって衝突/融合する様子がハッブル望遠鏡で観察されています(*7)。
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重力を媒介する素粒子はヒッグス粒子(*8. 追記:未発見の重力子グラビトンはここでは割愛)ですが、ヒッグス粒子が粒子として存在しているというよりも“ヒッグス場”という“電場”や“磁場”のような領域を形成しています。簡略的に説明すると、そのヒッグス場の中にある物質は質量が付与され、重力が発生するという仕組みです(正確には“真空期待値”による“自発対称性の破れ”が質量付与に関与していますが詳細知りたい人はリンクを参照してください*9)。

このヒッグス場は宇宙誕生とともに全宇宙に行き渡っていると考えられています。なので現時点では“重力の存在しない領域”は宇宙空間で発見されてません。もしヒッグス場が無かったとしたら、地球は質量がゼロになるため、パチンコ玉とぶつかっても弾かれてどこかに飛んで行きます。そもそも物質に引力が働かないと星が誕生することができません。そういう点でも重力は宇宙の形成に不可欠な力と言えます。


・4つの力の特徴まとめ
これまで挙げた4つの力の特徴をまとめると図7のようになります。
・“電磁気力”は原子同士の結合に関与している普遍的な力。
 電磁相互作用によって我々は“物に触れる”ことができ、“電磁波によって物を見る”ことができる。
・“強い核力”は陽子や中性子を形成している強力な力。
 原子核が強固に結合しているのもこの力に支えられている。
・“弱い核力”は物質を変化/変容させる唯一の力。
 また他の力と異なり“パリティ対称性の破れ(*10)”の性質を持ち前の記事で述べた“物質と反物質から僅かに物質が残った”という物質宇宙の誕生の鍵を握っている。
・“重力”はミクロではゼロに近いが、無限遠方まで届く。
 宇宙では銀河同士を引き寄せ合うほど、またブラックホールという物理法則すら崩壊するほどの強大な力を発生させる。
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このように、宇宙の創造にあたって創造主はクォークや電子やニュートリノや反物質などを創り出しましたが、それだけでは現在の宇宙の姿にはなりません。ほぼ同数の物質と反物質から物質だけが残るには“弱い核力”の非対称性が作用していたと考えられ、出来たクォークから陽子や中性子を形成するのに“強い核力”が働き、電子が捕捉されて水素やヘリウムといった原子ができるのに“電磁気力”が作用し、このような物質のガスが引力によって凝集して星が誕生するのに“重力”が寄与しています。
このような“物質”と“力”、これらが揃って初めて宇宙が形成され、宇宙を維持している全ての要素として図2の標準モデルが物理学界の通説となっています。


・4つの力以外の力は存在しないのか?
現在物理学界では宇宙のあらゆる力はこの4つに集約されると考えられており、これらの3つ(電磁気力/強い核力/弱い核力)をまとめる大統一理論(*11)、さらには重力もまとめる超大統一理論を築こうと日々研究が重ねられています。しかし本当に宇宙に存在する力はこの4つだけなのでしょうか。

量子力学における不思議な性質を証明した実験として「二重スリット実験」というものがあります(*12, *13, *14)。これについてはさまざまな実験が為されていてこの瞑想記事でも何度も取り上げてきました(*15, *16, *17)

概要を図8に示しますが、起こる現象としては「1個の光子が二重スリットを通過する時、普通に行うと“波”として干渉縞が出現する(図8B)が、光子が通過した方を観測しようとすると“粒子”として振る舞い干渉縞が消滅する(図8C)」というものです。この現象のトリガーは他の一切の干渉を排除した結果「観測すること」であり、物理学界でも「観測問題」として認知されています(*18)
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この現象は「厳密な1個の光子による実験」なので、当然ながら「他の光子による相互作用」は排除されています。そして同一環境なので「重力の影響の変化」も考えられません。また、「クォークや原子核に作用する強い核力」もここでは考える必要がありません。もちろん「原子核崩壊を起こす弱い核力」の影響も考えられません

この実験系に影響しているものは実験者が「観測するかどうか」だけなのです。これまで挙げた“4つの力”では説明することができません。しかし、現実に変化が起こっている以上、「何らかの力が光子に相互作用を引き起こしている」と言えます。また、“意識が光子に変化を起こす実験(*16)”でも他の影響を全て排除した上で、何千キロも離れた場所から何らかの力が実験系に影響を及ぼしていることが示されています。
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この意識」や「観測という行為」がもたらす影響は二重スリット実験が世に知られるまであまり認知されてきませんでした。このため、最初に知られたときは物理学界に古典物理の常識を覆す大きな波紋をもたらしました。「光子や電子といった量子は光であると同時に波でもある」という見解には至っているものの、「何がどう影響して粒子と波を切り替えているのか」という点は未だ明確な解は得られていません(*17, *19)

ヒッグス粒子も発見されたのは2011年頃とごく最近のことであり、まだまだ人類には未知の力や素粒子があっても不思議ではありません。形而上学的に認知されていても科学的に証明されていないものはたくさん存在しています。もしかしたら我々の「意識」には科学的に証明されていない未知の力があるかもしれません。日々の瞑想で「意識」の力を最大限に発揮できるように磨いていきましょう。


引用:
https://note.com/newlifemagazine/n/n724aead9b9a4
*2. 標準模型−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/標準模型
*3. 電磁相互作用−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/電磁相互作用
*4. 強い相互作用−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/強い相互作用
*5. 弱い相互作用−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弱い相互作用
*6. 重力−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/重力
*7. Hubblesite-HP. https://hubblesite.org/contents/media/images/2011/11/2837-Image.html
*8. ヒッグス粒子−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒッグス粒子
*9. ヒッグス機構−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒッグス機構
*10. パリティ−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/パリティ_(物理学)
*11. 大統一理論−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/大統一理論
*12. Jönsson C (1974). Electron diffraction at multiple slits. American Journal of Physics, 4:4-11.
*13. 二重スリット実験−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/二重スリット実験
*14. 単一フォトンによるヤングの干渉実験(浜松ホトニクス/1982年)(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=ImknFucHS_c
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56
https://note.com/newlifemagazine/n/nf66f91110a61
*18. 観測問題−Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/観測問題
https://note.com/newlifemagazine/n/n96af4cbc0890

画像引用: 
https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Blausen_0615_Lithium_Atom.png
https://en.wikipedia.org/wiki/Quark
https://wallpaper.dog/
https://www.pngfind.com

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No.030 宇宙の始まり:“宇宙創造のアルケミー”

今回も、我々の理解を遥かに超える宇宙の神秘に想いを巡らせる「宇宙瞑想」をやっていきましょう。以前、ハッブル氏の研究をきっかけに「宇宙は膨張し続けている」、「宇宙には始まりがあり、有限の空間である」と考えられていることを紹介しました(*1, *2)。今回はその宇宙の始まりはどのような様子であったのか、科学的/形而上学的に考えていこうと思います。宇宙の創造の過程を知りたい人には有益な情報となるでしょう。

まず現代科学においては宇宙の歴史は図1のように考えられています(*3)。左側に宇宙の始まりであるビッグバンが示され、そこから宇宙は高温高圧の状態で急激な膨張(インフレーション)を起こします。そして時間と共に宇宙が冷却され、宇宙の塵が集まり、様々な星や銀河を形成して図の右端に約137億年後の現在の宇宙が描かれています。今回は著名な物理学者であるジョナサン=オールデイ博士の著書"Quarks, Leptons and the Big Bang"(*4)に従って宇宙の誕生期の様子を想像していきます

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宇宙の誕生期の状態を知る前に我々の現状の世界では物質がどのような形態で存在しているかをおさらいします。

我々の生活できる環境(常温:約20℃=293K、1気圧)では図2の左に示すように、あらゆる物質は「分子」として原子同士が結合して存在しています。そして「原子」は中性子や陽子からなる原子核とその周囲を回る電子から成っています(図2中)。

そして原子核を構成する陽子や中性子は最小単位ではなく「素粒子(クォーク, *5)」の組み合わせで構成されています(図2右)。これが私達が生活できる環境における物質の安定した形態です。

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・宇宙の誕生:0秒〜10^-43秒後
最初に何かをきっかけに(科学的には不明ですが)宇宙の誕生=ビッグバンが起こります。宇宙誕生より約10^-43秒後の状態について説明します。

この10^-43秒後というのは約1プランク時間(5.391x10^-44秒, *6)後の宇宙のことです。この数値は“これ以上分割できない宇宙で最も小さな時間の単位”と考えられており、“なぜこれ以上時間を分割できないか”については過去の記事“時間と空間は量子化できるか?”という記事をおさらいしてみてください(*7)。また、10の何十乗という数に苦手意識がある方は“数の瞑想(*8)”という記事で頭のウォーミングアップをしてみると良いと思います。

本題に戻って、このときの宇宙は爆発的に誕生した直後なので、その温度も10^33K以上と途方もない温度でした。太陽の表面温度が約6000度(6×10^3K)なので太陽の温度の1兆倍×1兆倍×100万倍以上の温度です。

このような高温高圧の状態では物質は図2のような原子構造すら保つことはできません。陽子や中性子も形を保つことができず、さらに細かい素粒子(クォーク)がバラバラの状態で存在しています(図3)。この時の宇宙に存在できたものは単体の素粒子、電子、ニュートリノやそれらの反物質といったものが主体で、これらが衝突してエネルギーとなったり、またはエネルギーから生成されている状態でした。
20230121瞑想コラム30Fig3
しかし、“全ての素粒子と全ての反物質が全く同数”であった場合、全てが対消滅して±0になってしまいますが、“反物質10億個に対して、物質の方が10億+1個と僅かに多かった”ため、現在の物質的宇宙が出来上がったと考えられています。

・宇宙の初期状態(2)10^-35秒後
次にビッグバンから10^-35秒後になると宇宙の温度が少し下がってきて素粒子同士が結びつくことが可能な温度に近づいてきます。ただし、まだ宇宙の密度が高く素粒子同士の距離が近すぎるため、結合してはすぐに分解するという状態が続きます。

図4のように、素粒子同士が一時的に結合して陽子/反陽子/中性子/反中性子といった物質を形成しますが、これらはまたすぐに衝突して光子のエネルギーを放出し消滅します。反対に光子のエネルギーから陽子や反陽子といった物質が生成される反応も生じています。

図4に示す通り、陽子+反陽子←→光子2個の反応で平衡が保たれていますが、ここでも計算上は光子10億個に対して1個の陽子が過剰に生成され、現在の物質宇宙が形成されていると推測されています。
20230121瞑想コラム30Fig4


・宇宙の初期状態(3)10^-5秒後〜1.09秒後
ビッグバンから10^-5秒後〜1.09秒後までの説明に移ります。この時期になると物質と反物質の反応はほぼ終わり、先程説明したように“僅かに超過した物質”が残って物質的宇宙の主体となります。なので反陽子/反中性子/反(陽)電子/反ニュートリノといった反物質はもう残っていません

そして、この時の宇宙の温度は約100億度(K)なので素粒子同士が安定して結合し、陽子や中性子として存在することが可能です。ここまで他の物質と激しく相互作用を繰り返していたニュートリノも温度の低下によって現状のような“殆ど他の物質と相互作用しない”性質へと変化します。
20230121瞑想コラム30Fig5
・宇宙の初期状態(4)3.2分後〜30万年後
ビッグバンから約3.2分後、宇宙の温度がまた少し低下し、バラバラに存在していた陽子や中性子が結合し始めます。図6に示す通り、陽子(p)と中性子(n)が反応して重水素(2H)、三重水素(3H)、ヘリウム原子核(3He/4He)といった原子核が合成され始めます。

この時に存在した陽子と中性子の割合が87:13、これらを材料に安定な水素原子核(p)と安定なヘリウム原子核(2p2n)を合成すると水素原子核:He原子核の割合が74:26となり、現在宇宙に存在する割合とほぼ同程度になります。ただし、この時点では宇宙の温度は数億度〜数万度と高温でまだ原子核と電子は結びついておらず、それぞれがバラバラに飛散している状態=“プラズマ状態”(*9)であり、それが約30万年ほど続いたと考えられています

20230121瞑想コラム30Fig6
・宇宙の初期状態(5)約30万〜38万年後:大きな転機
ここまで宇宙は1万度を超える超高温状態であり、宇宙は図7左のように原子核/電子/光子などがバラバラに存在しているプラズマ状態でした。この状態では光子は自由電子と相互作用を起こしてしまい、まっすぐ飛ぶことができません。光は粒子の中で乱反射して遠くまで到達できない状態であり、蛍光灯や太陽の内部と同じような状態で「光の乱反射によって何も見えない状態」であったと考えられます。つまり、「宇宙全体が太陽のようであり光しかない状態」でした。

しかしこの時期に宇宙に大きな転機が訪れます。宇宙の温度が低下し約3000Kになった頃、もう太陽の表面温度約6000Kよりも十分に低温の状態となりプラズマ状態から「原子核と電子が結合した状態」へと相転移します。図7右に示すようにそれまで飛散していた自由電子が原子核に捕捉され、光子と相互作用しにくくなりより遠くへ光が到達するようになります。

もしその時宇宙を見ることができたならば、「光の乱反射で何も見えない状態」から「原子が安定した状態になり宇宙が晴れ渡って見える状態」へと劇的に変化したと考えられます。この時初めて「光と闇が分離した状態」になったと言えます。このときの状況を宇宙科学の用語では“宇宙の晴れ上がり(clear up of the Universe)*10”と呼んでいます。
20230121瞑想コラム30Fig7

そしてここから原子同士が集まり、宇宙の塵から星が生まれ、恒星が誕生し、銀河が形成され、137億年経った現在の宇宙が形成されたと考えられています(図1)。
・“原初の光”の痕跡
宇宙誕生からしばらくの間は宇宙の中は光で満たされていて影を造り出すような固形の物質は存在しない状態でした。ビッグバンから30〜38万年後に前述のように“宇宙の晴れ上がり”が起こり、ここで初めて光と闇という概念が生じたとも言えます。このとき、全宇宙に行き渡っていた光子は一度に解放され、全方位へ拡散することになります。

そして、この“原初の光”は驚くべきことに約137億年経った現代においても観測することができます。宇宙の膨張とともに光の波長は伸び、当時の3000Kという温度ではなく現在は絶対温度3Kという非常に低い温度で全方位から観測される“宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background)*11, *12(図8)”という形で捉えられ、現在でも研究が進んでいます
20230121瞑想コラム30Fig8
・旧約聖書における宇宙の始まり
私自身は宗教家でも何でもありませんが、ユダヤ教の聖典である旧約聖書の「創世記(*13, *14)」の冒頭部に世界創造の描写があるのでそれを以下に引用します。

「1 はじめに神は天と地とを創造された。
In the beginning God created the heavens and the earth.
2 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。
Now the earth was formless and void, and darkness was over the surface of the deep. And the Spirit of God was hovering over the surface of the waters.
The First Day
3 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
And God said, “Let there be light,” and there was light.
4 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた
And God saw that the light was good, and He separated the light from the darkness.
5 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。
God called the light “day,” and the darkness He called “night.”
夕となり、また朝となった。第一日である
And there was evening, and there was morning—the first day.」
創世記 第1章冒頭部 (*13, *14)

この聖書の冒頭部によると第3節に書かれているように「光あれ(FIAT LUX)」と神様が言って光が創られた、となっています。そして第4節にあるように、その後に「光と闇を分けた」という順序になっています。こうして見ると、初めから光があったわけではなく、闇があったわけでもなく、両方同時に存在していたわけでもなかった。何も無いところから「まず光が創られ」、そして「光と闇が分けられた」という順序で光と闇の世界が創られています。

この紀元前から伝わる旧約聖書が作られた時代は科学は全く発達しておらず、「地面は平ら」「太陽が地球の周りを回る」「宇宙は永遠不変」と信じられていた頃です。今は誰も疑わないですが「ビッグバン理論」「宇宙誕生説」というのは実はごく最近の科学によって裏付けられてきた理論です(*15, *2)。科学の歴史を振り返ると、創世記冒頭第3・第4節のたった2行ですが、これまで人類が研究を重ね続けて辿り着いた最新理論とよく整合するのには感銘を受けます。光を創造する前にも記述がありますが、「天と地」とは単純な「空と大地」ではないかもしれません。但しここは科学的検証が不可能な領域、形而上学的な領域かもしれないので今ここでは触れません。
20230121瞑想コラム30Fig9
・宇宙創造の化学錬成(アルケミー)の経緯
「ビッグバン」が起こるための何らかの前段階(科学的に未解明)
→莫大なエネルギーの爆発(ビッグバン)とともに現宇宙の時空そのものを生成
→超高温下で物質と反物質の大量生成と消滅
→わずかな非対称性から物質のみを生成
→宇宙冷却とともに水素・ヘリウム原子核等を合成
→さらに冷却され原子核と電子が結合
→「“原子”の生成」と同時に「光の解放/闇の生成」が成される.

この宇宙が創造される初期の過程を“極めてシンプルに/とても分かりやすく/創造者に無礼なほど単純に”記述すると上のようになると思われます。他の科学者達もそうであると思いますが自然科学を理解すればするほど、万物の存在の仕組み、その緻密さと奥深さに感銘を受けます。人類の知能では何千年もかけてその一部を理解するのがやっと、というところです。もしこの宇宙の理を創った創造主がいるならば人類の知能では到底足元にも及ばない“全てを知り全てに能う”存在に畏敬の念を抱かずにはいられません(絵:ミケランジェロ)。

私も当時はそうでしたが、昔学校で覚えたように「スイ(H)、へー(He)、リー(Li)、べ(Be)、、、」と丸暗記することと、自身の頭で知識と経験を統合し物事の本質を理解するのでは脳の活性化する部位や“感動/気付き/アハ体験(*16)”に必ず違いが出てくるでしょう。“知らないことを理解しようとすること”、“疑問を探求し続けること”、“自発的に興味が湧き考えてしまうこと”、これらも能動瞑想という瞑想法の一種です。学びや瞑想を続けていくことによって、脳/意識/自分の環境に変化を起こしていきましょう。


引用:
*1. Hubble E. A Relation between Distance and Radial Velocity among Extra-Galactic Nebulae, Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 15, no. 3, pp. 168-173, 1929. https://doi.org/10.1073/pnas.15.3.168
https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6
*3. The Big Bang and expansion of the universe
https://www.jpl.nasa.gov/infographics/the-big-bang-and-expansion-of-the-universe
*4. Jonathan Allday, "Quarks, Leptons and the Big Bang" Second Ed., The King’s School, Canterbury, Institute of Physics Publishing Bristol and Philadelphia, 2002
*5. 素粒子−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/素粒子
*6. プランク時間−Wikpiedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/プランク時間
https://note.com/newlifemagazine/n/ndab571fd44c3
https://note.com/newlifemagazine/n/n0671628d60c7
*9. プラズマ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/プラズマ
*10. 宇宙の晴れ上がり– Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙の晴れ上がり
*11. Planck and the cosmic microwave background. The European Space Agency.
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Planck/Planck_and_the_cosmic_microwave_background
*12. 宇宙マイクロ波背景放射–Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙マイクロ波背景放射
*13. 創世記 第1章
https://www.wordproject.org/bibles/jp/01/1.htm
*14. Bible-Genesis 1
https://biblehub.com/genesis/1.htm
*15. ビッグバン–Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ビッグバン
*16. アハ体験– Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アハ体験

画像引用: 
https://www.pngwing.com
https://pt.wikipedia.org/wiki/Ficheiro:Water_molecule_3D.svg
https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Blausen_0615_Lithium_Atom.png
https://en.wikipedia.org/wiki/Quark

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No.029 宇宙瞑想:“宇宙の果て”について考える

今回も、非常に些細な日頃の雑念を捨て去り、広大で我々の理解を遥かに超える宇宙の神秘に想いを巡らせる「宇宙瞑想」をやっていきましょう。前回のテーマで「宇宙は膨張し続けている」、「宇宙には始まりがあり、有限の空間である」ということが分かりました(*1, *2)。

有限ならば「宇宙の端、辺縁はどうなっているのだろうか」という疑問を持つ人も多いと思います。少年少女の頃誰もが一度は考えたことがあると思いますが、大人になるにつれ日常の雑念の中に埋もれていってしまいます。これについて考えてみます。

・“宇宙の果て”はどうなっているでしょう?
もし我々が超高度の文明を持っていて光の速度を超えて宇宙の果てに到達できるとしたら、宇宙の果てはどうなっているでしょう?
以下に候補として3つのパターンを挙げてみます(図1)。

A.時空が途絶えている(これ以上先に進めない)

B.別の宇宙へとつながっている

C.宇宙の反対側から出てくる

読者の皆さんも自分なりの答えを予想してみてください。
では答えに行く前に2次元空間で考えてみましょう。

20230101瞑想コラム29Fig01

・2次元空間での空間の広がり
図2に示すように2次元の世界は前後左右(XY軸)が存在しますが上下(Z軸)の概念が存在しません。図2を見ての通り、この空間は各方向へ無限に広がっているように見えます。ではこのような空間は「無限」に広がっているのでしょうか、それとも「有限」であることも考えられるのでしょうか?もしこの空間の前の方へ延々と進んでいったらどうなるのでしょうか?

20230101瞑想コラム29Fig02
・身近な擬似的2次元空間
ここで図2の2次元空間を改めて見るととても見覚えのある光景に見えます。図3の左側に示されるように、我々が普段よく見る光景は2次元空間のような広がりを持ちますし、我々が普段使う地図も2次元表示です(図3右)。つまり、地球規模のマクロな視点から見ると高層ビルも地下街も誤差レベルの微々たるものですので我々はほぼ地球の表面でしか生活していない、つまり「地球の表面は擬似的な2次元空間世界」と言えます。


20230101瞑想コラム29Fig03

・地球表面を2次元空間と考える
では地球表面を擬似的な2次元空間と考えると、一見地面は地平線が見えるほど遥か遠くに続いていますし、海も水平線が見えるほど果てしなく遠くまで続いています。ただし、これが無限に続いているかというとそうではありません。もしジェット機でどんどん先へと進んでいくとどうなるかというと、現代人は誰もが知っていることですが自分が出発した地点と反対方向から戻ってくることになります(図4右)。

 そしてこの地球表面の2次元空間は「有限」な空間ですが「果て(辺縁)」は存在しませんどこまでも進み続けることができますが、同じところをループし続けて辺縁に辿り着くことはありません。図4左はこの2次元世界を展開した地図ですが黄色矢印と青色矢印は2次元空間的には離れていますが実際は継ぎ目もなく連続していることが分かると思います。

20230101瞑想コラム29Fig04
・2次元の人間は球面を知覚できるか?
私達は元々3次元の世界の住人なので球面が湾曲していたり、平らに見える地面も実際は地球という球体であることを知っています。それでは仮に2次元世界に住人がいた場合、「立体」や「3次元」という概念のない彼らに「平面が曲がっていること」「球体の表面であること」を知覚したり理解することが可能なのでしょうか?

2次元世界からすると曲げたり歪んだりしても3次元的な概念を持たない彼らにはそれを知覚する術が無いように思われます。しかし2次元世界にいながら3次元的な変形を把握する方法も実はあります。例えばその一つは「3角形の内角の和」でも表されます。

誰もが「3角形の内角の和=180°」だと思っていて「それ以外にあるのか?」と思う人もいるかもしれません。しかしながらそれは「まったく歪みのない完全な平面」でのみ成り立つ法則です。

平面の曲率には「+」「−」「±0」の3パターンあり、曲率によって三角形の内角の和が180°よりも大きくなったり小さくなったりします(図5、*3)。例えば、“日本と北極点とエジプト”の3点を最短距離で結んだ3角形の内角の和はどうなるかというと図5Aのように180°より大きくなります。なので、もし3次元を知覚できない2次元の住人がいたとしても広大な規模で角度を検出することで「自身が存在する2次元空間が平坦か曲がっているか」を知ることが可能です。

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・3次元的な空間がループする場合どのような構造になるか
図4の左の平面地図の端と端を合わせると図4右のような球体の地球になります。それと同じように、今度は3次元空間の端と端をつなげるように想像してみましょう。図6にそのイメージを載せていますが、まず我々の存在する空間の端と端(図6AとA')を合わせると円筒状になります。そして同様に開いた端と端(図6BとB')を合わせるとドーナツ状の構造体になります(図6右下)。この構造が「トーラス(*4)」と呼ばれる構造です。基本図形を一枚の平面のように表していますが、実際は3次元空間を表しています。そしてトーラス構造(図6右下)は3次元より高次元から見た構造と考えられています。

20230101瞑想コラム29Fig06


・3次元世界から高次元の構造を観測するには
3次元を直接知覚できない2次元世界から時空の歪みを検知するには3角形の内角の和を計測してみるというのが2次平面の曲率を求める一つの方法でした。では3次元空間の曲率を知るための方法としては、その一つに「宇宙背景放射(CMB, *5)」という宇宙の原初の光を調べる方法があります。

これは探査人工衛星COBE(1989-)、WMAP(2001-)、Planck(2009-)といった衛星で宇宙のごく初期の光を全方向から計測し、これを基に宇宙のさまざまな情報を解析するという手法になります。

20230101瞑想コラム29Fig07
この宇宙背景放射の“2点相関関数”を解析すると、この宇宙は「ほぼ平坦な(曲率の少ない)トーラス構造」つまり、対極にある時空の端がつながっている構造である可能性が高いことが最近の研究で示されています。さらにそのトーラス(繰り返し構造の基本単位)の大きさは観測可能な宇宙サイズ(光速×ハッブル時間=約138億光年)の3〜4倍程度(400〜500億光年)である可能性が高いとされています(*6)。

・宇宙は「トーラス」構造
我々は生活範囲において地面はどこまでいっても平坦な構造と感じています。ただし、マクロな視点で見ると正の曲率をもった有限の球面であり、進み続けるといずれは元の場所へと戻ってきます。つまり地球で考えると「有限ではあるが地面や海面が途絶えたりはしていない」、「どこまでも無限に進める(周回できる)が、他の惑星に辿り着くことはない」、そして「ある方向に進み続けると反対側から現れる」という空間に我々は存在しています。図8上のように、平面ではあるが端がつながっていて終わりのない面を形成しています。

宇宙も同じような構造と考えられていて「対極の時空がつながっている」、図8下のように我々が知覚する宇宙は3次元空間であるが、より高い次元で宇宙を見ると図8右下のようにドーナツのようなトーラス構造をとっている可能性が高いようです。

20230101瞑想コラム29Fig08
・最初の問題の答えとは
最終的に最初の問いの答えとしては、“宇宙の果て”は「急に時空が途絶えてしまうわけではなく」、「別の宇宙へとつながっているわけでもなく」、「いずれは反対側から元の場所へ戻ってくる」、つまり現代の宇宙論から推察すると図1の中では「C」が最も現実的と考えられます。予想通りだったでしょうか、それとも意外な答えだったでしょうか?

・次元を認識し知覚するには
我々は肉体を持ち、3次元の宇宙の中で生活しています。我々の身体は細胞、タンパク質、アミノ酸、分子、元素、素粒子、いずれのレベルにおいても「物質」で構成されており、3次元の物理法則に支配されている「肉体」は別の次元へ移動することはできません。ただし、我々が保持しているものの中で「物質」ではないものがあります。これまでの記事を読んでいる読者の方々ならもう気付いていると思いますが、そうです、我々の「意識」です。意識は形を持たず物質的な側面を持ちません。つまり、次元の壁を越えられるツールの一つなのです。

ただし、会社勤めや知人との雑談、家庭の雑事といった日常生活において「次元」を意識することは“絶対に”ありません。「次元」を知覚し認識するための方法が「瞑想」です他の次元を知覚するには「この3次元の現実世界からのあらゆる刺激を遮断する」必要があります。少しでも3次元現実世界のことを考えた瞬間にあなたの意識は「いつもの日常の意識」に引き戻されるでしょう。

そうならないためにはある程度の鍛錬が必要です。意識も使い方次第では「日々の雑事の心配とストレスを生み出すだけのツール」にもなれば「次元や宇宙を超越できるツール」に鍛え上げることも可能です。そして「瞑想」が意識の変容だけでなく身体にも良い効果をもたらすことは過去の記事でも取り上げている通りです(*7)。
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・次元を超えた世界の学問=形而上学
今科学は観測できる範囲を超え、その先にあるものを推測し解析する段階になっています。しかしそれは最近に始まったことではなくアインシュタインの時代には既に「まだ科学的に発見されてないものを提唱する」ということは行われていました。科学では扱えない“形のない、常識的に捉えられないもの”の学問として「形而上学(けいじじょうがく)」があります。そしてこの3次元を超えた4次元以上の概念も「形而上学」では何世紀も前から伝えられていることであり、アインシュタインも形而上学に精通していたと言い伝えられています。「形而上学」は自然科学を超えた真の世界を理解する一助となり、「瞑想」は3次元にいながら4次元以上の高次元を知覚する良い方法となるでしょう。ぜひ日々の瞑想習慣を取り入れていきましょう。

引用:
*1. Hubble E. A Relation between Distance and Radial Velocity among Extra-Galactic Nebulae, Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 15, no. 3, pp. 168-173, 1929. https://doi.org/10.1073/pnas.15.3.168
https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6
*3. Cosmic Topology
http://www.scholarpedia.org/article/Cosmic_Topology
*4. トーラス−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/トーラス
*5. 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙マイクロ波背景放射
*6. Aurich R, Buchert T et al, The variance of the CMB temperature gradient: a new signature of a multiply connected Universe, arXiv:2106.13205 [astro-ph.CO], 24 Jun 2021, https://doi.org/10.48550/arXiv.2106. 13205
https://note.com/newlifemagazine/m/mb580e4b26aa4

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No.028 宇宙瞑想:“宇宙は永遠か?”について考える

宇宙は我々にとって絶対的な空間です。その存在は疑う余地もなく、無限とも思える広さを持っています。では宇宙は“永遠に変わらない普遍的なもの”なのか、それとも“大きくなるのか小さくなるのか”、”出現したり消滅したりするのか”、これらについて科学的、形而上学的に考えてみたいと思います。

既にご存知の方もいるかもしれませんが、調べればすぐに“宇宙の年齢は〇〇◯億年”、だとか“宇宙の誕生はビッグ・〇〇”という情報も出てくると思います。一旦これらを忘れ、これらがどのように導かれるのか一緒に考え、他の一切の日常を忘れて宇宙のことのみを考える「宇宙瞑想をやっていきましょう。
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「宇宙は変化し続けているのか?それとも永久不変なのか?」

・初めに星との距離を調べてみる
まずは宇宙を調査してみようと天文学者は考えますが、我々人類は地球から外には行けません。太陽系内の惑星にすら行くことが出来ないレベルの科学技術なので宇宙の情報を得るには“観測する”以外に方法はありません。最も分かりやすい観測方法は天体望遠鏡で星を見ることです。やはり目に入るのは夜空で輝く星、太陽のように光を放つ“恒星”です。これらは我々の生きている期間で見ると、季節によって常に決まった方角に現れ、その位置も輝く強さも不変であるように見えます。このような星々との距離や位置関係が分かれば宇宙のことが少しでも理解できると天文学者たちは考えました。

星の光を観測すると、近い星ほど光が強く明るく見え、反対に遠い星は光が弱く暗く見えます。ただし、星の本来の大きさや明るさはそれぞれ異なるので、明るさが同じに見える星でも“近くにある小さく暗い星”なのか、“遥か遠くにある巨大で明るい星”なのか、“光の強さだけでは距離を計測できない”という問題点があります。この問題をどのように解決したのでしょうか。

・足掛かりとなる“セファイド変光星”
ここで宇宙には面白い性質を持つ星の存在が確認されていました。セファイド(ケフェイド)変光星と呼ばれるタイプの星で、一定の周期で明るさが変わることが知られています(図2、*1, *2, *3)。明るさが変わる理由は星全体が膨張と収縮を繰り返す振動運動のためと言われています(*4)。そして、その“変光周期”と“絶対等級”をグラフにプロットすると図2Bの様に同じタイプの恒星では一定の相関関係があることが明らかになりました。これによって“その星の真の明るさ(絶対等級)”が求められます
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・真の明るさ(絶対等級)から分かること
その星の“真の明るさ(絶対等級)”が分かれば、地球から観測できる明るさ(見かけ上の等級)でどれほど離れた星なのかが分かります。図3に示されるように各々の恒星は地球で観測される“見かけ上の等級”がありますが、変光星では“真の等級”を求めることでその星との距離をある程度正確に求めることが可能となります(*5, *6)。
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・様々な星や銀河の距離を調べて分かった法則
上に書いた通り、“変光星の周期”や“その星の地球から見た明るさ”が分かれば距離が分かります。それによって次のことが分かってきました。

・ほぼ全ての天体は静止しているのではなく、地球から遠ざかって動いていた
・地球から遠くにある天体ほど、速い速度で地球から遠ざかっていた

というような、当時としては予想外な現象が発見されました。これは図4のグラフを見ると分かりやすいですが、地球からの距離(横軸)が大きな星ほど、遠ざかるスピード(縦軸)が大きいことが分かります(*7)。この法則はハッブル(=ルメートル)の法則(*8)と呼ばれていますが、恐らく誰でも一度は聞いたことがある有名な「ハッブル宇宙望遠鏡」のハッブル氏です(*9)。

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・全ての天体が地球から遠ざかっている?
宇宙の星々は広い宇宙の中にある程度均一に散らばっているはずです。それぞれが独自の方向に運動していることは考えられますが、“全てが一点から遠ざかっている”ことはあり得るのでしょうか。例えば、「大きな湖の中の数千匹の魚を観察したら全ての魚が一点から遠ざかる方向へ泳いでいた」と同じような現象と考えられますが、偶然でこのような現象が起こるとは考えにくいです。

これらを説明する説として考えられたのが「宇宙空間そのものが膨張・拡大している」のではないか、というモデルです(図5)。確かに“空間そのものが膨張している”ならこれらの現象も説明が可能です。また、「遠く離れた天体ほど速い速度で遠ざかっている」という現象も「宇宙空間自体の膨張」を裏付けています
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・膨張する宇宙から導かれたハッブル定数
図4のように遠く離れた天体(銀河や恒星)の“距離(D)”と“遠ざかる速さ(v)”の関係はほぼ一定の比例関係であり、以下の式1で表されます。

   v = H(0)D ・・・(式1)

H(0)はハッブル定数(*8)と呼ばれるものでその単位はkm/s/Mpc(キロメートル/秒/メガパーセク、1Mpc=約326万光年)です。このハッブル定数はまだ完全ではなく、宇宙の観測精度が上がるにつれて年々少しずつ変わっていますが、最近の2017年の発表では“70.0(km/s/Mpc, *10)"という値が得られています。これは「地球から1メガパーセク(約326万光年)離れた天体は70km/秒のスピードで遠ざかっている」ことを意味しています。このハッブル定数はまた後ほど使用します。


・“宇宙が膨張する速度”が分かると何が求められるか
このハッブル氏が分析した“宇宙空間自体が膨張している”という事象から推測できることは、逆に考えると“離散する銀河や恒星は過去に遡るとお互いに近付いていく”ことを示しています。そして、図6に示すように“全ての天体は時間的空間的にある一点に収束する”ということが推測できます。

“地球とある天体の距離”と“離れる速度”が分かっていて、“元々は同じある一点から発生した”と考えられています。そうすると“宇宙が始まった瞬間”、“全宇宙の全てのものが凝集していた特異点”までの時間が計算できます。先程の式1は以下の通りです。
   v = H(0)D ・・・(v=“速度”、D=“距離”)

そして誰もが知っている公式を以下に示します。
  “速度”=“距離”÷“時間”
この関係から、
  “時間”=1/H(0)
つまりハッブル定数の逆数が“宇宙の始まりの特異点から現在までの時間”であることが分かります。

20221202Fig6_convert_20230513230426.jpg

・ハッブル定数の逆数“1/H(0)”を計算してみる
ハッブル定数の単位のMpc:メガパーセクをkmに直して分子分母から外します。スマホやPCでもできるので時間のある人は計算してみてください。

H(0) = 70.0 (km/s)/Mpc [1Mpc=326万光年、1光年=約9兆5000億km]
=70 / (326,0000×9,5000,0000,0000) = 1/(4424×10^14) (/s)

求めたH(0)の逆数を導きます。

1/H(0) = 4424×10^14 秒[1年=60秒×60分×24時間×365.25日=31557600秒]
=140.188×10^8 年=約140億年

するとこのように約140億年という時間が現れました。実際には宇宙の加速膨張(*11)という概念があり、最近(2013年)の解析では宇宙年齢は約138億年とされています(*12)。


・宇宙は「永遠」ではなかった
タイトルに戻りますが、我々人類にとっては宇宙は常に“不変”であり“永遠不滅の時空”であるように考えられていました。但し実際には、“常に変化し続け”ていて、“ある瞬間から始まった”ということが分かってきました。“永遠”とは“始まりも終わりも無い”、“時間という概念さえ無い”、“生まれることがなく滅びることもない”絶対的な存在のものと言えます。

そうなると「宇宙は永遠か、永遠ではないのか」という問いに対しては「宇宙は始まりがあった=永遠ではなかった」と言えそうです。そして「宇宙は無限か有限か?」という問いには「宇宙の果てまで行かないと分からない」とも言えますが、これまでの理論からすると「宇宙は有限の空間である」ということが言えそうです。ということは更なる疑問が出てきます。


・「宇宙が始まる前は“何”があったのか?」
これは残念ながら“科学”では解明できません。何故なら、現代科学は“光”、“時間”、“距離”、“質量”といった「測定可能なもの」しか扱えないという根本的な“限界”があるからです。膨張する宇宙の外部の領域には恐らく “物質”も“空間”も“時間”も“無い”、“真空すらも無い”ということが言えます。

これらの科学で扱えない領域”には別の学問が必要です。それは“形而上学(けいじじょうがく)”という形の無い領域を扱う学問になります。“科学を究める”ほど“科学的でない領域の存在が確定的になる”ということは興味深いパラドックスです。但し形而上学から見ると至極当然のことかもしれません。

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形而上学というと科学よりも難解で日常生活では触れる機会が無さそうに考えがちですが、形而上学的なツールは実は我々に最も身近なところに存在しますその一つは“我々の意識”です。

「我々は科学的なものしか認知していない」と思いがちですが「あなたの意識を科学的に計測できますか?」と聞かれてその方法や単位を答えれるでしょうか。また“意識”が科学的物質世界に影響を与えることも証明されてきています(*13, *14)。そのツールを磨き、感度を上げ、強度を高める方法が「瞑想です。

“宇宙を超える領域”へ想いを巡らす偉大な科学者達の探究心や想像力も「瞑想」と同じ脳の使い方だったのかもしれません。“科学を知る”ことを通じて“科学的ではないものを認識する”、これも瞑想法の一つです。日々の瞑想で脳と意識を活性化していきましょう。


引用:
*1. Barry F. Madore and Wendy L. Freedman. The Cepheid Distance Scale. 1991 PASP 103 933. DOI 10.1086/132911
*2. 国立科学博物館HP. https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/ space/galaxy/galaxy05.html
*3. ケフェイド変光星−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケフェイド変光星
*4. セファイド−天文学辞典 https://astro-dic.jp/cepheid/
*5. ESA- The European Space Agency. https://sci.esa.int/s/8ZkRKOA
*6. パーセク- Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/パーセク
*7. Hubble E. A Relation between Distance and Radial Velocity among Extra-Galactic Nebulae, Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 15, no. 3, pp. 168-173, 1929. https://doi.org/10.1073/pnas.15.3.168
*8. ハッブル=ルメートルの法則−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハッブル%3Dルメートルの法則
*9. ハッブル宇宙望遠鏡−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハッブル宇宙望遠鏡
*10. The LIGO Scientific Collaboration et al. “A gravitational-wave standard siren measurement of the Hubble constant” (英語). Nature volume 551, pages 85–88 (2017) https://www.nature.com/articles/nature24471
*11. Garnavich PM, et al. "Constraints on cosmological models from Hubble Space Telescope observations of high-z supernovae" Astrophysical Journal 493 (2): L53+ Part 2 Feb. 1 1998
*12. PAR Ade et al. Planck 2013 results. I. Overview of products and scientific results. arXiv:1303.5062 [astro-ph.CO], https://doi.org/10.48550/arXiv.1303.5062
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56?magazine_key=mb580e4b26aa4
https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a?magazine_key=mb580e4b26aa4

画像引用 
https://wallpaperaccess.com/outer-space#google_vignette
https://sci.esa.int/s/8ZkRKOA
https://en.wikipedia.org/wiki/Galaxy#/media/File:Probing_the_distant_past_SDSS_J1152+3313.tif
https://wallpapersafari.com/w/q9K4rY#google_vignette

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